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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart51【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 22:50:28 ID:jFl/JUa30

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1181533782/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss


2 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 22:52:39 ID:jFl/JUa30
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
上・戦闘神話  下・七人の超将軍 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/337.html
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html

3 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 22:55:51 ID:jFl/JUa30
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (エニア氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
DBIF (クリキントン氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/293.html
ドラえもん のび太と天聖導士 (うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tennsei/01.htm
脳噛ネウロは間違えない (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/320.html
最強伝説の戦士 黒沢 (ふら〜りさん)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/341.html

4 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 23:04:06 ID:jFl/JUa30
>ふら〜りさん
暖かい作風が気に入っています。
新スレでも頑張って下さい。

ちょっとご無沙汰の方々が戻ってこられるといいですね。

5 :作者の都合により名無しです:2007/08/05(日) 08:50:58 ID:kcIYNW/v0
新スレ乙。
うみにんさん現スレでは復活しないかな

6 :作者の都合により名無しです:2007/08/05(日) 23:29:49 ID:4LdJVSKb0
今日あたり誰か来ないかな

7 :作者の都合により名無しです:2007/08/06(月) 08:24:22 ID:s0Gip//H0
1さん乙。
お盆には俺も書くから。

8 :作者の都合により名無しです:2007/08/06(月) 12:45:50 ID:ABOMPyZ40
サマサさん、ミドリさん復活きぼん

9 :作者の都合により名無しです:2007/08/06(月) 13:21:02 ID:kpP002ue0
関係ないが質問させてください。
作者の下のはどういう意味があるんですか?
これ↓
http://www.uploda.org/uporg946475.jpg.html
パス(zip)

10 :作者の都合により名無しです:2007/08/07(火) 00:02:58 ID:BhWei2lq0
新スレ乙。

>>8
サマサさんどうしたんだろうね
最近なかなか職人さん来ないから寂しいな
NBさんとかさいさんとかも

11 :作者の都合により名無しです:2007/08/07(火) 13:25:53 ID:5U6ZPPhA0
社会人が多いから忙しいんだよ

12 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2007/08/07(火) 19:40:10 ID:wIV7jyQh0
心配してくださっている方もいるようなので、とりあえず生存報告を…。
5月半ばに鬱病(軽いもんですが)を発症し、精神科通いでした。
毎日を過ごすのが精一杯で、パソコンの前に座っても何も書けないという有様でした。
パート50にも一度も投下できなかったし…。
今は医者にもかかっていないので、9月〜10月にはどうにか復帰できると思います。
その頃には全盛期の精神テンションに戻っている!と言いたいところです。

13 :作者の都合により名無しです:2007/08/07(火) 21:53:48 ID:k4+FG//F0
>サマサさん
そういう事情でしたか。

ところで。
『神界〜』&『超機神〜』呼んでて思い出したのですが、ドラマCD(初期)の稟と
マサキは、中の人が同じでしたね。

それでは、御自愛下さいませ。

14 :作者の都合により名無しです:2007/08/08(水) 08:38:01 ID:xSqr7ami0
大丈夫かサマサさん・・
まだ新社会人でしたっけ?
まずはお体を治して下さい。

15 :作者の都合により名無しです:2007/08/08(水) 23:36:17 ID:alscmnLD0
サマサさん、今はゆっくりとして下さい。
そして復活を待ってます。

16 :作者の都合により名無しです:2007/08/09(木) 10:54:45 ID:JBHxevrr0
結構職人さんで精神的に追い詰められる方多いな・・
サマサさん、お大事に。

17 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/09(木) 22:08:16 ID:JGzhsqmR0
>>ttp://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/341.html
プレハブの外、プレハブの裏、人気のない工事現場の片隅。
じっ、というより、じと〜っと黒沢を見る野明と、うな垂れた黒沢が向かい合っている。
「昨日のことなんですけど、未確認生命体第2号について何かご存知ではないですか?
いつ、どこからどうやって出現したのかとか……」
「っ!」
あの時。そうだ、この子も殺されてなかったし瀕死の重傷だったってわけでもない、
てことは見られてる? いや待て、だったら既に武装した警官隊がここに殺到してるはず。
そうじゃないってことは、第2号自身だと思われてはいない、か。それなら何とかなる!
「オ、オレは何もしてないし、知らない。ただひたすら怖くて逃げ回って、結局あのクモ男に
ボコられて、でも運良く軽傷で……あ、ほら、あんたと一緒にいたあのデカいお巡りさん、
確か彼も、殺されてはいないんだろ? いやあ運が良かった、あんな現場にいたのに」
「ひろみちゃんは……山崎巡査は今、集中治療室です。一晩、生死の境をさまよいました。
何とか峠は越したので、命は助かるそうですけど……」
ぐっ、と野明の拳が握られる。その声が少しずつ、震え始めた。
「……あんなに大勢の人が、あんなに酷い殺され方をした現場にいたのに……あたしは、
何もできなかった……何もできずにただ、イングラムの中で震えてた……それで今、
自分が無傷だったことにホッとしてる……最低……こんな奴、警察官失格……」
「い、いや、そんな、待てよ。状況が状況だったんだし、そんなに自分を責めることは」
「……あたしは……絶対に、未確認生命体を許さないっっ!」
野明の、涙に揺れる瞳の向こうで、憎悪の炎が揺れていた。
「黒沢さん。もう一度聞きます。本当に何も知らないんですか? 2号、いえ1号のことでも」
野明が詰め寄ってくる。黒沢の顔を覗き込む。昨日はこの子のこれにびっくりして……いや、
テレて赤面してどぎまぎして、尻餅をついた黒沢であった。だが今はもう、それどころではなくて。
「し、知らねぇよ……今言ったばかりだろ。オレはただ、あのクモ男にボコられただけだっ」
野明を正視できず、黒沢は目を逸らしてしまう。野明はそんな黒沢をしばらく見つめていたが、
「……わかりました。けど何か思い出しましたら、すぐに警察までご連絡下さい。
あんなバケモノの犠牲者を、これ以上出さない為に」
と言って黒沢に背を向け、去って行った。
黒沢は一人、ぽつんと残された。プレハブの中ではまだ取材が続いているらしい。あそこで
大々的に名乗りを上げて、ヒーローとして脚光を浴びる予定だったんだが……


18 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/09(木) 22:10:46 ID:JGzhsqmR0
『……な、なんだよ、これっ……オレはいつの間にか、未確認生命体第2号って奴で……
異形の怪物……? 重武装した警察が全力で駆除……? 「あんな」バケモノ……? 
あの子、涙浮かべて憎々しげに吐き捨ててたな……絶対許さない、って……』
それも道理というもの。自分が誰も守れなかったことを、涙まで浮かべて悔しがれる子だ。
最初の印象通り、純粋で正義感の強い子なんだ、ものすごく。だから未確認生命体を、
そして何もできなかった自分を許せなくて……あんなに、悲しんで。
「……ちくしょおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
黒沢は吠えた。さきほどの野明に負けないぐらいの涙を浮かべて、いや、あっという間に
溢れさせて、ボロボロボロボロ流しまくって、
「オレが何したっていうんだ、ええ!? オレは体を張って、命を賭けて戦って、あのバケモノを
撃退したんだぞ! 変身して、悪者をやっつけて、仲間や女の子を救ったんだぞ……っ! 
これって、充分立派に、正義のヒーロー……ウルトラマンだろ、スーパー戦隊だろ……っ、
そして、そして、ガキの頃に誰よりも憧れた、あの……人類の自由と平和を守る為に
戦う……か、か、仮面ライダー……じゃ、ねえのかよっっ! ああ!? それが、それが……
警察に追われる身……しかも逮捕じゃねえ、駆除されるバケモノ……!」
もう事態はヒーローものではない。パニック映画だ。ホラーだ。漫画で言うなら『寄生獣』だ。
ぎっ、と黒沢は睨みつけた。自分の腹を。あのベルトが潜り込んだ辺りを。
そして殴った。何度も何度も、思いっきり。
「出て行け! 出て行けよ、出て行けってば! お前のせいだ、お前のせいだ、何もかも
お前のせいだああぁぁっ! オレだって、オレだって、人並の幸せ……いや、人として
最低限の幸せぐらい、夢見てたんだ! でも、お前がいたらオレはもう人間じゃねえんだ! 
人間の枠外に出されちまうんだよ! だから出てけ、出てけ! 出ていけええええぇぇ!」
だが殴っても殴っても、ただ自分が痛いだけ。ベルトは何も答えなかった。

【ひとたび身に着ければ 永遠に 汝と共に在りて その力と ならん】

19 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/09(木) 22:13:09 ID:JGzhsqmR0
未確認生命体第1号・2号が出現してから数日が過ぎた。警察は彼らの行方を追っているが
手がかりもなく、一向に捜査は進まない。そうこうしている間に、事態は更に一歩悪化した。
《……この失血死事件により、昨夜一晩で五人もの犠牲者がでました。現場から飛び去る
羽の生えた怪物の姿が目撃されており、警察では未確認生命体第3号との見方を……》
テレビでそんなニュースが流されている中、その第3号事件の現場に野明がいた。
未確認生命体と接触、身近で観察できた存在として捜査協力を要請されたのだ。
「今までの情報から考えると、1号や2号とは違いますね。やはり第3号、新たな未確認
生命体に間違いないと思います」
「そうか。街に下りてきて人を襲う熊、ってんならたまに聞くが、血を吸われてるってなぁ……」
担当の杉田警部が溜息をついた。第3号に襲われたと思われる五人は首に牙の跡があり、
獣か何かに咬まれたようであった。そして体内の血がほぼ吸い尽くされていたという。
「吸血鬼かよ、全く。お前さんたちを襲った第1号はクモだったそうだが、今度はコウモリ
かもな。そういや第1号にやられて入院したっていう、ええっと、」
「山崎巡査でしたら、ようやく意識も戻って一般病棟に移れることになったそうです。
ですので、今夜は付き添いをしてあげたいのですが……」
「ああ、構わんよ。どうせ未確認どもについちゃ、まだまだ解らんことだらけだからな」
「すみません」
沈み込んだ表情で頭を下げる野明。やはりまだ引きずっているらしい。
1号と2号が暴れた時、何もできなかった自分の無力さを。

「黒沢さん。あれから僕なりに考えたんですけどね」
山奥の工事現場。もう捜査は終わっているので、黒沢たちの作業が再開されている。
浅井と二人、並んでセメント袋を担いだ黒沢が、黙々と歩いている。
「最初に僕が言った冗談、あれがどうやら本当らしいじゃないですか。魔物の復活。
とすると、多分あのベルトは魔物たちを封印した伝説の戦士が使ってたものですよ。
その継承者が黒沢さん。凄いじゃないですかっ」
「……」
「確かに、現代と古代では少々事情が違ってて、マスコミや警察や世間はああいう
扱いしてますけど、でも伝説の戦士ですよ。ロト? ランス? ラル? キャハ」

20 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/09(木) 22:14:22 ID:JGzhsqmR0
「……いや。残念ながらオレは失格らしい」
どさ、とセメント袋を積んで黒沢は腰を叩く。歳のせいか、最近よく痛む。歳のせいと
いえば、腹も出っ張って久しい。あと老眼だし、耳も心なしか遠くなってきたし。
そんなのが伝説の戦士とかになれるか、普通? と黒沢は寂しげに説明した。
「それにだ。あのベルトが見せたイメージ映像みたいなものの中じゃ、戦士は赤い体
だったんだ。だがオレがなったのは、お前も知っての通り白かった」
「ふむ。ベルトとしては不満な、不完全バージョンなのかなやっぱり……あ、別に他意は」
「いいよ。オレなんてもともと、伝説の戦士なんて器じゃねえんだ。実際あのクモ男に
だって、まともにやってたら確実に負けてたしな。ほら、んなこと言ってねえで仕事」
「でも黒沢さん、第1号の死体とか確認されてませんし、第3号も出たそうですし……」
「だから何だ」
黒沢が、ギロリと浅井を睨む。
「警察が大々的に捜査して未確認どもの駆除に全力を尽くすっていってるだろ。オレたちゃ
いつも、こういう時に奴らに働いて貰うために、税金払ってんだ。なら任せとけ。一般市民
が口出す問題じゃねえ」
「一般市民って、でも黒沢さんは……うぶっ」
言いかけた浅井の口を、黒沢の大きな手が塞いだ。
「ベルトのことは秘密だぞ。オレは二度と絶対金輪際、あの白い姿にならねえから、お前も
忘れろ。いいな。でなきゃ……オレが警察に殺される前に、この手でお前を殺すっっ」
黒沢の、低く籠もった声がマジだ。浅井は涙目でペコペコ頷いた。
「よし、約束だぞ。約束だからなっ」
咳き込む浅井を放して、黒沢は仕事に戻る。
『そうとも、こんなことは警察に任せときゃいいんだ。って、そういやあの子も捜査に加わっ
てるのかな。あの様子だと、自分から未確認どもにケンカ売りかねん……ちと心配だな』
そういえば、あの日一緒にいたデカいお巡りさんが入院してるって言ってたっけか。
……見舞いを口実に、もう一度あの子に会ってみようかな……

21 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/08/09(木) 22:15:51 ID:JGzhsqmR0
天空より舞い降りし光の巨人・ウルトラマンと共に地球を守ってきたのが、闇の手に造られし
改造人間・仮面ライダー。が、現代では差別表現だか何だかで「改造人間」はNGとのこと。
そんなわけで新世紀新シリーズ第一作・クウガが背負うこととなったのが、今回の本作の
ような設定というか状況です。近年では戦隊のような強化スーツ型も増えましたけどね。

>>1さん
おつ華麗さまです! >>1さんのご期待に応えられますよう、努力奮闘いたす所存!
どうかお付き合い下されぃ! ……まぁスレ自体は今少々寂しくなってますが、しばし
経てばまた賑わいますよ、きっと。新しい職人さんが書いてくださるかもしれませんし。

>>サマサさん
左様でしたか……休む時には休んで、元気な時に元気な作品でお会いできると期待して
待っております。ペコvsプリムラの図はいつかオリジナル長編でパクりたいとか企んでますし、
あのアスランは辿りつきたい目標の一つ。また、可愛くパワフルな作品で目指させて下さい。

22 :作者の都合により名無しです:2007/08/10(金) 01:00:58 ID:pORhdyVn0
妄想伝、容量オーバー。桐島英理子もペルソナフル発動で慟哭。

【ブルードラゴン外伝】
伝説の光の戦士ではないことが判明したブーケ。いつか皆と合流する、もうすぐ皆たすけにくる・・・。
そんな儚い希望に縋り、鬼畜どもの手中で蠢く第二次性徴期入り口の女体。
影も、衰弱した小動物のように弱体化。ブーケの体には常に1つ以上の鉄枷が付いている。
「仲間の能力を吐くんだ」。用無しになれば身の保障が無いブーケ。仲間を強敵から守らんとするブーケ。
いつか、仲間が強くなって強敵を倒す日が、近いうちにくるんだと信じて・・・・・・。
「プルミラはいつもファウルカップを穿いています・・・・・・」。ブーケの戯言に、今日もきれる鬼畜。
「来い、脱ぎ魔・・・。今日はコウノトリだからな」。ブーケの体を引き摺るようにして、責め棟に続く廊下を
進む鬼畜グループ。ブーケのか細い呼吸も、廊下に響く複数人の足音に掻き消える。

23 :作者の都合により名無しです:2007/08/10(金) 08:06:52 ID:lCBwogPW0
ふらーりさんお疲れ様。
黒沢は一応頑張ってるけど、原作みたいに悲しいエンディングになるのかな?
ふらーりさんの作品に限ってそれはないだろうけど

24 :作者の都合により名無しです:2007/08/10(金) 10:09:11 ID:rW54L7So0
ふら〜りさんの作風好きだし、
今バキスレピンチっぽいから頑張って欲しい。

25 :作者の都合により名無しです:2007/08/10(金) 15:06:23 ID:MUAI8Cm30
面白いけど黒沢の汗臭い&泥臭い&鈍臭いところがもう少しほしいな

26 :作者の都合により名無しです:2007/08/10(金) 23:47:57 ID:SNvf1ZZ90
テンプレの作品、このままじゃほとんど未完になるな・・
楽しみにしてる作品沢山あるんで
職人さんたちカムバック。

27 :作者の都合により名無しです:2007/08/12(日) 11:06:55 ID:l0VSUkRL0
お盆には帰ってくるだろうか

28 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:24:49 ID:fBsrClQI0
約四ヶ月前。四月下旬。銀成市郊外の森の中にあるL・X・Eアジト。
その近くに一人の戦士が現れた。
名を剣持真希士(ケンモチマキシ)。
巨大な体と鋭くもどこか愛嬌のある眼差しが印象的な彼には、夢があった。
『楽園』
中学三年の時、ホムンクルスの集団に家族を殺され、兄のおかげでかろうじて命を取り留
めて以来、世界をホムンクルスのいない『楽園』にするコトを夢見ていた。
その手……その二本の腕と、兄から譲り受けた三本目の腕で。
真希士の武装錬金は「アンシャッター・ブラザーフッド」といい、両手持ちとしては最大級の西
洋大剣(ツヴァイハンダー)と、掌から両脇までをすっぽり覆う籠手、それから一番特徴的で
一番重要なパーツで構成されていた。
肩甲骨のあたりから延びる第三の腕。
それを真希士は兄から譲り受けた三本目の腕と頑なに信じ、徹底的に活かし、通常では到
底ありえないアクロバティックな太刀筋を以て闘っていた。
だが、L・X・Eへの潜入捜査へのさなか。

「む〜ん。まさかあの逆向君まで斃しちゃうとは」
「佐藤君も重傷。来るべき決戦に参加できるかどうか」
「しかも諦めが悪いから」
「丸二日ばかりかかっちゃたよ」

ムーンフェイスとの戦いに敗れ、落命した。

「けど、なんだな。『楽園』を夢見る者同士仲良くしようじゃないか」
「といっても、私たちが望むのは月面のように荒れ果てた地球だけれどね」
「そのためにキミの死体は、この私が有効利用させてもらうよ」
「そうだね、パピヨン君みたいな不完全なホムンクルスを作ってみるのも面白そう。む〜ん」

そして文字通り黄色く干からびた月の顔を持つ燕尾服の怪人が数人ばかり真希士の死骸を
見下ろす後ろで、ホムンクルス浜崎は。
乱戦のさなか真希士に刺し貫かれた章印をさすりながら、焦点さだかならぬ目でぼんやりと
死を待っていた。

29 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:27:26 ID:fBsrClQI0

「おやおや、よりにもよって君まで虫の息とはね」
「ひょっとして『本体』の方までやられちゃったのかな?」

振り返り、白目で歯をかっきり組み合わせたいくつかの笑顔を見ながら、浜崎は力なく頷いた。
するとムーンフェイスは「うーん、それじゃあ」と尖った顎に手を当て茶目っ気たっぷりに考え
込んでからこういった。

「実はいま研究中のいい物があってね。でもまだまだ実験段階。もっと沢山のモルモット君が
必要なんだけど、あいにく今はDr.バタフライからの厳命でホムンクルスを無駄遣いできない
状態。いくら私でも彼の逆鱗にはさすがにちょっとふれたくないしね。む〜ん、そこが悩み所」
月を見上げて、つかみ所のない半笑いを浮かべる彼はどこまでも不吉な気配が漂っている。
ともすれば利用されるだけ利用され、捨てられるという気配。
そもそも冷戦後にいつの間にやらふらりとL・X・Eに加盟した彼は、水面に浮かぶ油一膜の
ようなギリギリさでL・X・Eと融和していない。
彼の分身体である朏魄(ひはく)などはそれを逆手に取って、「ギリギリな感じが受けてます
む〜ん」などとのたまっているが、笑うものなどおらず、それがますます融和のなさを印象づ
けてもいる。
有事が起これば真希士戦のように骨身を惜しまず闘い、一見ではさも重要な幹部としてL・X・E
に融和しているように見えるが、それは瓶を振りたくって混ぜた水と油のような一時的な物に
すぎず、少し時が経てばすぐにどこか非融和的な雰囲気になる。
「きっと彼の武装錬金に見せつけられるのは、米ソ冷戦時代の忌まわしい記憶。ああ、何と
も悲しい哉わが人生。いったいどうすればいいのやら」
芝居がかった身振り手振りと口調でまんべんなく自らの困惑を訴えると、彼はようやくなが
らに用件を切り出した。この迂遠さ一つ見ても、彼はどうにも喰えない。
「ちょっと手伝ってくれないかな? どうせそのままじゃ死ぬしかないんだから、悪い話じゃな
いと思うんだけど、どうかな? どっちに転んでもDr.バタフライに怒られはしないよ」

(そして得たのがこの体……)
浜崎の下半身はもはや一つの岩石として地面に膠着している。

30 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:30:12 ID:fBsrClQI0
その中央から伸びるは蝶の胴体。てらてらと黄色い粘膜の湿気が淡く輝いている。
胴体には申し訳程度の黒い触角が二本生えており、背後では大小さまざまなひし形の破片
が連なり、一対の羽となっている。。
その間には毒々しい紫の粒子が鱗粉よろしく絶え間なくゆれ動き、時おり羽ばたきに押し上
げられてゆらりゆらりと上空に散っていく。
わずか一握の鱗粉はやや特殊な要素を帯びているらしく、上空へ向かううち相ぶつかりあっ
て絶え間なく摩擦を繰り返し、やがて粒子間でプラズマを発生させた。
あたかも小規模な雷雲だ。
刹那。まばゆく輝く先駆放電(ステップリーダー)が斗貴子を貫いた。
(いまだ試作の試作もいいところだが)
翼を動かす。肉体としてはまったく接点がないというのに、巨大な翼は意のままに動いた。
おそらくこれも粒子の効果なのだろう。似たような例ではバタフライのアリスインワンダーランド
(チャフ)を介した会話があげられる。これは粒子に特殊な振動を加えて声を伝達していた
と思われるのだが、真・蝶・成体にもそういう原理が働いているらしい。
(さすがはバタフライ様とムーンフェイス様の技術結晶。よくできている。負けなどありえん!)
羽から巻き起こった風に、竹林は台風上陸時のように派手に折れ曲がって斗貴子もなすす
べなく吹き飛ばされた。
「くっ、まだ!」
とっさにくるりと身をひるがえして奇麗に着した斗貴子は、重い体を必死に伸ばして立ち上がる。
(まだだ。攻撃自体は強力だが、それと引き換えにアイツは動けなくなっている)
浜崎の下半身は岩と化しているのだ。いわば砲台を相手にしているのと変わらない。
(射程距離さえ脱してしまえば逃げるコトはたやすい。だが)
この夜の斗貴子の心はどうしよもなくホムンクルスを憎く思っている。
後輩たる剛太を貴信や香美に痛めつけられ、彼らからは聞きたくない言葉を浴びせかけら
れ傷心に塩を塗り込められたような屈辱を受けている。
すでに五十六体のホムンクルスを葬り去り、貴信・香美も存分に痛めつけてはいるが、しか
しそれでもまだ足りない。
洋上で破られた誓い。二度と取り返せない少年の存在。
それらを埋めるためにはまだ足りない。たとえ全てのホムンクルスを斃した所で埋まるか
どうか。
それでも斃さずにはいられない。それ以外の意義がない。意味を知らない。

31 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:32:15 ID:fBsrClQI0
テロリストを殺戮するのに躍起な軍国のように、抜本的な解決策も練られぬままただ状況に
流されている。
けれどそういう人生に導いたのがホムンクルスだ。
だから憎しみを解くコトなどできない。傍らで笑ってくれる少年がいない限りは。
(カズキ…… 本当は私は、どうすればいい……)
右の肩甲骨の辺りに鋭い痛みが走った。それに身を震わすと、今度は膝にも。
満身創痍ゆえにか。
ささやかな痛みへの反応が、恐ろしいほどあちこちに伝播してひっきりなしに痛みが起こる。
バルキリースカートもボロボロ。いつへし折られても不思議ではない。
(……いや、この状態なら却って好都合だ)
鉄くさい気配に口を押さえると、血がべっとりと掌についた。貴信に崖へ叩きつけられたとき、
肺が出血をきたしたのだろうか。傷が多すぎてよくわからない。
(動きの早い奴を相手にするよりは勝機がある。何とかして近づきさえすれば──…)
「何ができるというのかなァ」
おぞましい気配に斗貴子は遮二無二もなく飛びのいた。
水ぐらいならすぐ沸騰しそうな熱気がすぐ傍を通りすぎ、爆音が響いた。
雷だ。
そして敵を見ると、吐瀉物と寄生虫を煮詰めたようにドロドロの視線が直視できた。
猛烈な風が吹いた。短いスカートがたなびき白い足をあらわにする。
バルキリースカート地面に突き立てて凌ごうかと思ったが、それでは雷の回避ができない。
結局、華奢で弱り切った斗貴子がしのぐコトなどできよう筈もなく。
先ほど自分が無銘にしたように、竹をへし折りながら竹藪に吹き飛ばされた。
「っの! まだだ、まだ負けるワケには……」
言葉とは裏腹に足に力が入らない。太い竹に背を預け、力なく座ったままだ。
折れた竹が目についた。か細くはあるが、溺れる者は藁をもつかむ。
泳ぐような手つきでかっさらい、立とうと試みる。
が、体重を受けてひん曲がると、折れる予兆をミシミシと訴え始めた。
(クソ。もっと頑丈なのはないのか。こんな細い竹じゃしなるばかりで──…)
とそこまで考えた斗貴子は、ちょっと驚いた様子で短髪の端を揺らしつつ、手元を見やった。
何の変哲もない竹。少しばかり色褪せた部分もあるが、弾力でいなやかさに富み、それ故に
杖にはなりえない。
(…………)

32 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:34:37 ID:fBsrClQI0
斗貴子はそこで目を伏せると、立つのをやめた。
「さァどうする。命乞いでもするかァ?」
気配を察したのか、浜崎の声には勝利者特有の傲慢さが満ち満ちてきた。
「もっとも貴様のような化け物殺しの化け物など、我らの仲間には到底なりえん。せいぜい
人間のままダルマにでもなり、慰み者にでもなるんだなァ〜!!」
「一つ聞く」
ボソっとした声に、何かの敗北宣言を期待したのか、浜崎はますますはずみを帯びた。
「勝機のなさを悟ったかァ? 冥土の土産とやらが欲しいのかァ〜?」
「貴様のその姿、例の『もう一つの調整体』か?」
「違うなァ。恩恵にあやかっているのは現在のところ逆向様ただ一人! その彼ですら未完成
の物を行使している。もし完成版が我らの集中におちれば貴様らなどたちどころに」
「そうか。分かった」
斗貴子はすくりと立ち上がると
「居直っても無駄よなァ、この、馬ァ・鹿ァ・めェェェェ! 知ったところで今更貴様に何ができる」
「私を舐めるな」
手にした核鉄を発動させた。
そう、先ほどまで武装錬金を発動させていたにも関わらず……
「長話をしてくれたおかげで回復の時間が稼げた」
「フン。見えはしないが大方、武装錬金を解除し、核鉄で回復したという所か。だが時間からし
てそれは微々たるもの」
「ああ。そうだな。だが、貴様をバラバラにするだけの体力は戻った!」
すぅっと吐いた呼吸を打ち消すように爆音が轟き斗貴子は天へと弾丸のように放たれた!
彼女の体は笹に刻まれながらもゆうゆうとそこを脱し、竹林が三メートルほど眼下に見渡せる
ほどの高度に達した。
彼女はバルキリースカートを再発動させると同時に地面を叩いていた。
それも処刑鎌が折れそうなほどに曲がるぐらいの勢いで。
これは先ほどの竹から得た着想だ。
しなった竹を一気に跳ね上がらせるように、処刑鎌を金物定規よろしく強引に曲げて、その
ストレスが一気に爆発させるコトで跳躍力を得た。
「馬鹿が! 俺のいる場所を忘れたかァ!」
浜崎のいるのは竹藪の中心部。広場の部分。だから斗貴子の影も遠く小さいながらに丸見えだ。

33 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:36:58 ID:FX0NXpG90
「遠距離なら俺の方がはるかに優勢! もう一度雷と風の餌食にしてくれるわァァア!」
「させるかぁ!!」
その時である。
羽の角度を変えた浜崎の頭上から、恐るべきものが降り注いだのは。
それは先ほど貴信の鎖が絡んだ部分。
斗貴子を崖に叩きつけるために使った支点力点作用点の密集地帯。
強度がやや脆くなっているから、わずかな力でも崩壊する。
故に。
それは稲妻よりも風よりも早い一条の閃光だった。
「な、に……」
浜崎は唖然とした。
彼の頭、つまり蝶の胴体部分に刺さっていたのは……バルキリースカート。
直接見たワケではないが、重さやその重心から大体の長さが分かり、正体も分かった。
処刑鎌のうちの一本。
(馬鹿な! 奴の武装錬金は接近戦専用のはず! それが、何故、何故ぇぇぇぇぇぇ!!)
意外すぎる一撃に一瞬彼は肉体のあらゆる操作を忘れた。
いや、忘れていなくとも被った打撃のせいで物理的に伝達は不可だったのかも知れない。
「私の武装錬金は少々耐久性に難があってな」
すぐ近くに何かが着地する軽やかに気配がした。
「あの馬鹿力のホムンクルスのせいで、可動肢(マニュピレーター)にだいぶダメージが蓄積
していたんだ。だからちぎって、投げさせて貰ったぞ」
(今は夜だぞ! それなのにあれだけの距離から正確に……)
バルキリースカートを狙った部分に投げつけるのなど、生体電流で処刑鎌を高速機動させる
コトに比べれば造作もないのだ。空間に対する鋭敏な感覚さえあれば。
「ようやく近づけたな。……ホムンクルスは全て斃す!」
輝く蝶の頭からすうっと処刑鎌が抜かれた。
斗貴子の大腿部では残る三本が仲間との再会に歓喜するよう、鎌首をもたげた。

「切り裂け! バルキリースカート!!」

ハスキーな声に連動して蒼い颶風(ぐふう)が巻き起こる。
光り狂った断線が真・蝶・成体を幾千幾億那由多の限り蹂躙する。

34 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:37:58 ID:FX0NXpG90
そこかしこで羽のパネルが割り砕け、再び剣風乱刃の中で崩壊する。
もはやこれは人間とホムンクルスの戦いですらない。
工場設備だ。
工場設備と生産品の関係だ。
右斜め下に斬り下げられた処刑鎌は一厘一毛刹那の作業ロスも挟まず、精密に向きを変
えて次の『作業』に移っている。可動肢もただもくもくと角度調節と微妙なスライドを繰り返す
のみ。
斗貴子はそして。
らんらんと金に濁った憎悪の目を見開いた。
口の端から漏れる血すらぬぐわず、下目で浜崎をギラリと一瞥すると、手にした処刑鎌でず
いぶんと色褪せた蝶の胴体を殴りつけた。
荒れ狂う精密さとは裏腹にこちらはまるで刃筋が立っていない。
鈍い音がした。オレンジ色の体表がつぶれ同色の体液がじわりと漏れた。
「敵は全て斃す!」
もう一撃。
「そうだ! 貴様らがいるから! 貴様らがいるから……カズキは!!」
さらにもう一撃。振り上げた処刑鎌が他に荒れ狂う精密な物とかち合い、手の裡に鈍い衝撃
をもたらしたが、些細な問題だ。
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
ホムンクルスは、全て斃す!!」
包囲する切断網は、狂気とわずかばかりの物悲しさが混じった叫びのビブラートに比例する
ように収束していき。
(こんな筈では! 計画は完璧だったはず。手負いの相手と、ムーンフェイス様から頂いた
真・蝶・成体。相ぶつかって負ける道理など、負ける道理などぉぉぉぉぉぉぉっ!!)

「臓物(ハラワタ)を、ブチ撒けろ!!」

やがてホムンクルス浜崎の、真・蝶・成体の、無数の破片が地面に散らばった。

35 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:38:58 ID:FX0NXpG90
ニコニコ動画は楽しい。けど楽しいだけで何か技術が蓄積されるワケでもなく……
やはり自ら何事かをせねば物事は変わらんのでしょうなぁ。いろいろ辛くはありますが。
ようやく今回分を執筆。じっくり向き合えば二時間弱でこれだけは描けるのに、向き合う
コトそのものを放棄している自分がちょっと情けなくもあり面白くもあり。
てなワケでニコニコ動画を見に行こう。いずれは何か作ってあちらにもうpしますよー

前スレ>>247さん
いやはや、本編ではヒロインなのに「どうすれば残虐にできるか」という一念ばかりで描いて
おりました。ともかくゲームの最終面を何回かやりつつ、自分ならではの要素を。今回一番
好きなのは、浜崎を観察してあーだこーだ考える場面。冷静な部分もけっこうある人なので。


>>前スレ248さん
ですよねェ。見境なしで容赦なし。そこが燃え的にもネタ的にも素敵です。カズキカズキいい
だした再殺編以降はそこが甘かったので残念。剛太vs根来に割り込んで根来を血みどろに
するぐらいして欲しかった。あと、復活早々ペースダウンして申し訳なく……

>>前スレ249さん
脇役も大好きですよもちろん。ただホラ、カズキや斗貴子さんは本編で十分に描写されてる
ので自分が描くと蛇足? って感じで脇役ばかり描いております。
香美はお馬鹿ですけど、末永く友好を結べるタイプですね。あと、生臭そうワロタw

前スレ>>383さん
まひろは描きたくて仕方ないのですが、どうも戦闘パートになると出番が激減orz
彼女が反応したのは「行け! ゴッドマン」という歌でして、らき☆すたで中の人が
壊れ気味に歌っていたのでその繋がり。これで平野彩さんのファンになりましたね。

前スレ>>384さん
いやはや、ジョジョや横山作品に比べたらまだまだですよ。ただ、なるべくは「なんか気合い
入れたら一撃で勝てた!」とか「みんなの力が集まってきてそれですごい攻撃が出た!」とか
は避けたいですね。知恵と能力で勝つべくして勝つ! てな筋道だけは確保したいのです。

36 :永遠の扉:2007/08/12(日) 15:39:59 ID:FX0NXpG90
前スレ>>385さん
ままま、その辺りのフォローは後ほどというコトでw 序盤の終盤は彼らなくして展開できない
よう構想を練ってますし。うん。大丈夫なはず。たぶん。

前スレ>>386さん
眼科の待ち時間は異常ですよね。まさか本読んで時間潰すワケにもいかず……
ムーンフェイスはゲームのおかげで、いろいろ目的とか切り札とかが判明しましたのでその
辺りを逐次投入したいと。ただ、小説版の彼の思考、時系列的にちょっと矛盾があったり。(そっちはブログで)

>ハロイさん」
>「場所ですよ、南方くん。本人の方を探す必要なんかまるでないんだよ。なぜなら……奴はすぐ近くで僕たちを観察している」
>「──え!?」
ここがジョジョっぽくて良かったですw この後の敵襲来と危機感もまた素晴らしい。十和子と
ラウンダバウトのやり取りもいい。劇的決断をさらりとやる十和子燃え。そして能力披露に逆
転に次ぐ逆転。ああ。ジョジョ信者としては痺れるあこがれるゥ! 本体捉えるところのセリフ回しカッコよすぎ!

サドキャラはいいですね。ふだんの高圧的な部分と、それがちょっとぐらりとゆらいでしまったりとか。
厳しい上官とか先生タイプが取り乱すところは素晴らしい。
チワワもいいですよね。ちいさくてふるふる震えている所が大好き。猫とはまた違った良さが。

37 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/08/12(日) 15:42:41 ID:FX0NXpG90
>ふら〜りさん
黒沢がクウガになるとは…… ワムウの前のジョセフ状態。発想のスケールで負けた。
強大な力を得ても本編どおりの小市民的なのが彼らしいw 博望坡の戦いのくだりとか寄生
獣のくだりは絶対挿絵が入りますね。妙に画力の高いアレが。

飼い猫が苦しむって辛いですからねぇ…… にしても熱血漢は描いてて気持ちいい。
香美はそこに全幅の信頼を寄せている筈なんですが、恋愛に発展するかはちと微妙。
やはり貴信にはお相手を用意しなくば。それも「あんたかい!」てな奴を。

空間把握力につきましては、修練に修練を重ねて習得したのだと思います。
努力とか日々の成果で得た、「地味だけど実情に即した見事な能力」を行使できる所に人間
のいい部分があると思うのですよ。それで「超」や「異」がつく類の能力を破ったりしてこそ王道。

>銀杏丸さん(塗装…… あぁ、バーザム将軍に手をつけて二年ぐらい放置してる……)
ボンボン版とコミックワールドはなかなか展開が違いまして、そこを見つけるたびニヤニヤ
してました。本作も同じくですね。「お、ここにこういうアレンジが!」という。武者はけっこう
省略された場面が多いので、行間が埋めやすいですよね。あと、司馬懿サザビー最高。

38 :作者の都合により名無しです:2007/08/12(日) 23:14:12 ID:X2ubZlKW0
スターダストさんお久しぶりです!
斗貴子サンはピンチの時こそ輝くと思うんで
追い詰められたのは結構よかったです。
最後は決め台詞も出ましたね♪


39 :作者の都合により名無しです:2007/08/13(月) 02:25:27 ID:zaywq4yzO
スゲェ、斗貴子さん戦部のレコード塗替えそうな勢いだw
猿渡の部下といい蝶成体といい何匹殺してんだか

40 :作者の都合により名無しです:2007/08/13(月) 02:26:32 ID:JixzADqF0
乙ですスターダスト氏
バトル編がずっと長いですが一戦一戦趣向を凝らしているので楽しめます
トキコはある意味王道のバトル展開でしたね
そろそろコメディ風味も見てみたいですが、凛々しいトキコも捨てがたいな


41 :永遠の扉:2007/08/13(月) 18:01:24 ID:sg0A/Zjg0
爪のような形をした大きな緑色の物体が闇に規則正しく並んでいる。
横に十列、縦にはおおよそ三十列。廊下の奥に向かってずらりと居る。
それは椅子の背もたれの部分で、椅子はここを訪れる者たちが待ち時間を過ごすために
設置されている。
というのは千歳がいる場所を踏まえれば別段考える必要もないコトなのだが、職業柄いち
いちそういう観察をしてしまう。
ここは聖サンジェルマン病院の一階。
一般人にも開放されているごくごく普通の待合室の最後尾で、一連の戦いを終えてからまだ
十分と立っていない。
その間に地下からここまで登り、手短に根来ともども報告してから、二人して治療を待って
いる。
ちなみに二人の間に特に会話らしい会話はない。ゆらいこの二人は雑談に不向きというか、
互いが互いにそういう話題をふられた所であまり喜ばないというコトを、自らの性格から逆算
して黙っているフシがある。だいたい、相手を喜ばしたいかと問われれば二人して「別に」と
答える素っ気なさがある。両方とも任務の中でお互いに便宜を図らんとする一種の奇妙な
戦友意識こそ持っているが、つまりはそこ止まりで、例えば象牙細工の職人が顧客の人生
相談までには乗らないように、黙々と互いの本分だけを果たしている。
とはいえ仲が険悪かといえばそうでもなく、今でも待合室の最後尾で座席一つ分開けて並ん
で座っている。
特に理由はない。根来が座った二つ横に千歳がなんとなく座って、別に文句も出なかったの
でそのままそうしている。
でも会話はしない。
正確にいうと、根来がぽつりと呟くまではしなかった。
「先ほどのはどうやった」
先ほどの、というのはむろん無銘の武装錬金の特性破りのコトである。
千歳はてっきりすでに根来も見抜いていると思っていたので、少し意外そうな顔をしたが、
元来、索敵という「他者が知りえぬ情報」の提供を生業とする千歳なので、すぐ淡々と報告
を始めた。

同刻。
竹藪の中で斗貴子はバルキリスカート片手に足を引きずりながら、ようやく無銘の前にた
どり着いていた。

42 :永遠の扉:2007/08/13(月) 18:02:26 ID:sg0A/Zjg0
目当ては例の割符だ。
そもそも今晩の戦い自体、例の『もう一つの調整体』の起動に必要な割符のための物。
回収を忘れては何の意味もない。
そして無銘は戦闘開始直後、懐にしまうのを見せていた。
「まだ息があるようだな。もっとも戦闘不能だ。何か反撃を仕掛けようと、この距離なら私の
バルキリースカートの方が早い」
ぐったりしたダルマ状態の無銘の懐を、処刑鎌で切り裂くと、果たして三センチメートル程の
長方形の金属片が黒い土の上に転がり落ちた。
(……おかしい。あの総角とかいう男、どうしてこいつや割符を回収していない?)
かすかな疑問も生じたが、どうせ自信ゆえの過失だろう。
余裕ぶった総角の顔に唾棄するような、溜飲が下がるような心持ちで割符を拾い上げると
「さぁ、あとはさっさと連中の情報を吐け。さすれば楽に殺し──…いや」
舌打ちとともにバルキリスカートの鎌首をもたげた。
「今は戦力を減らすのが最優先だ。……死ね」

そして斗貴子と無銘の間に、蒼く禍々しい光が去来した。

病院。
「一連の異変は、ヘルメスドライブが彼の攻撃を受けてから起こり始めた。だから攻撃の痕
を、あなたが戦っている間に調べてみたの。するとこんなモノを見つけたわ」
と千歳が差しだしたのはラミジップ(小型のチャック付きポリ袋)だ。
いったいいつ採取したのか。
ラミジップの中では二ミリメートルほどの、半透明をした魚鱗のような物体が、うねうねと体を
ひんまげ、蠢いている。
そう、恐るべき事にそれらは、自律の意思を持っているのだ!
「調べてみないと断定はできないけど、これは恐らく彼の武装錬金の一部で、一連の敵襲の
原因。だから」
千歳はそれを駆除すべく、あろうことか、ヘルメスドライブを亜空間に投げいれた!
その瞬間、ヘルメスドライブに巣くっていた魚鱗みたいな物体が排除されたのもむべなるかな。
二ミリメートルという微小さゆえになすすべなく、レーダーの内部を駆け巡る稲光に、すべてこ
とごく焼ききられた!

43 :永遠の扉:2007/08/13(月) 18:03:38 ID:sg0A/Zjg0
いうなれば千歳は、マザーボードやハードディスクに高圧電流を流す事で、物理的にスパイ
ウェアを破壊したのである!
荒唐無稽というなかれ。行きづまった状況を打開するのにはむしろ荒業が功を奏す事もま
まある。──
「ただ、あなたが最初、亜空間に退避した時は弾き飛ばされなかったのは分らないわね。生
体電流が流れている時だけ創造者のDNAに擬態するのかしら? それとも──…」
考え込む千歳の横で、根来はやや驚きを声にはらんだようにつぶやいた。
「しかし、かような使い方をするとは」
千歳は小首をかわいらしくひねった。
「かような使い方」を想定していないなら、根来が無銘と戦い出したとき、何のためにマフラー
を預けたのか?
それがあったから千歳は根来が特性に気付いているとばかり思っていたのだが。
「そして武装錬金の特性だけど。おそらく。──」

伏兵の気配はそれまでまったくなかった。
せいぜい見かけたのはチワワぐらいだが、それ以外の邪悪な気配はなかった。
そして無銘が何を仕掛けようと、正面から斬って捨てるだけの自負が斗貴子にあった。
だが。
「な……?」
斗貴子はきりりと引き締まった眼を最大限に見開いた。
滴っている。
攻撃を仕掛けたはずの斗貴子の体から、血が幾筋も地面に滴っている。
右の上腕がざくりと斬られている。
ふくらはぎには刺さったそれは、ともすれば脛へ貫通しそうだ。
脇腹に重い刃が斜め上から掠って、セーラー服の白い生地に血を吸わせている。
痛みを頼りにそれらを把握した斗貴子は、かつてないほどの動転に見舞われた。
ありえない。
それは絶対にありえない。
なぜならば、斗貴子に攻撃を仕掛けたモノ。
それは──…
「バルキリースカート!?」
見慣れた刃が自分に向かい、創傷を与えている。

44 :永遠の扉:2007/08/13(月) 18:05:05 ID:sg0A/Zjg0
「手元が狂った……? いや、違う! 狂うなんてコトはありえない。今まで一度たりとも私は」
「敵対」
「何!?」
ぼそっと呟く声は足元からした。
手足のないダルマ状態の黒装束。鳩尾無銘の口元から。
「敵対特性。それこそが我が無銘の真なる特性……」
斗貴子はその瞬間、無銘の言葉の意味を理解してはいなかった。
疲労。憎悪。鬱屈。動転。
入り混じる感情の赴くまま、手動でバルキリースカートを払いのけ、まったくいつものように
バルキリースカートを無銘に差し向けようとした。
結果。
跳ね上がった処刑鎌が掌を斬り上げ血しぶきを降らした。
「我が無銘の一撃が及んでより三分が経過すれば、いかな武装錬金の特性とて創造主に手
向かう。…… 師父より聞き及んでいる。汝の武装錬金の特性は、『高速・精密なる斬撃』。
下拙ゆえにや」
自分に向かって鎌首をもたげる武装錬金を、斗貴子はまったく理解できないという顔で見る
しかできなかった。
あとはもはや一方的な惨状が起こった。
バルキリスカートは創造者たる津村斗貴子に向かって、皮肉にもいっさいのブレのない高速
精密動作を以て、無慈悲な斬撃を降らした。
「汝の武装錬金なれば特性ことごとくさし向けナマスと刻み。──」

「ヘルメスドライブなら『索敵』という特性を敵対させる。久世夜襲、防人君、それに鳩尾無銘」
「記録されていた人物をアトランダムに選出、貴殿を襲うために具現化したという訳か。成程。
シークレットトレイルの亜空間がねじ曲がり、私を襲撃した理由もそれで合点がいく。シーク
レットトレイルの特性は斬りつけたものへの亜空間形成。敵対すればああもなるだろう」
「そして原因はこれ」
と指したのは先ほどの半透明をした魚鱗。無銘の武装錬金の一部。
「たとえるならコンピューターウィルス。いえ、スパイウェアに近いかしら」
パソコンに侵入したスパイウェアが、いかがわしいサイトをお気に入りに登録したりするよう
に、無銘は攻撃した箇所から、魚鱗のような物体を武装錬金に潜り込ませ、その特性を狂
わせるのだ!

45 :永遠の扉:2007/08/13(月) 18:07:00 ID:89a6Jp0S0
おお、そういえば津村斗貴子のバルキリースカートも、無銘の攻撃を受けてはいなかったか!
よって彼女のふるう刃も逆(さかしま)に向かい、美しい肢体もいまや全身朱にぬれている!
ホムンクルスの幼体は、寄生した宿主の脳髄に向かい、自我を破壊するという。おそらく無
銘の武装錬金もそれと似た機能を備えているのではないか?

「舐め……るなァッ! 要は特性を用いなければいいだけのコトッ!」
手にしているのは残る一本のバルキリースカート。
これは先ほど大腿部からもぎ取った奴だ。
だから普通の武器と同じだ。特性とは無関係。
斗貴子は無銘の額、ついで胸を貫いた。
両方ともホムンクルスの急所たる章印がある場所だ。
「いかな武装錬金の使い手であろうと、創造者さえ斃せば!!」

根来はしばしの沈黙の後、こういうコトをいいだした。
「私もひとつ気づいたコトがある」
「なに?」
「奴は武装錬金を偽っている」
「忍六具だったわね。火渡君からだいたいの形状は聞いているわ。確か──…

編笠、鉤縄、三尺手拭、忍犬、打竹、薬

ね」
「矢立だ」
「え?」
「本来の忍六具は、編笠、鉤縄、三尺手拭、矢立、打竹、薬の六つ。忍犬などは含まれない」
「考えてみればそうね…… 他は道具なのに、それだけ生物……」

斗貴子は気づいていない。
彼女の後ろに先ほど弾き飛ばした忍犬の自動人形(オートマトン)が転がっているのを。

「ならばなぜ、奴の忍六具に忍犬が入っているのか」
「誤認識という線は?」

46 :永遠の扉:2007/08/13(月) 18:09:16 ID:89a6Jp0S0
「それもあるだろう。武装錬金は人の精神より出ずるモノ。元となった知識が間違っていれば
本来の武器形状と異なるコトも十分にありうる。が、忍びを名乗り、山田風太郎先生の考案
された忍法を縦横に駆使するような男が忍六具の構成を誤ろうはずがない」
(どうしてそこだけ敬語?)
「おそらく奴は、自らの武装錬金を偽っている。忍六具ですらないだろうな。恐らく」

忍犬の自動人形はふしぎなコトに、腹部に断裂が生じている。
攻撃による断裂の類ではない。例えば蝉の抜け殻。中から何かが出て行ったような……

「私のにらむところ、奴の武装錬金は奴の正体に直結している」

斗貴子は茫然と無銘を見た。それは死骸になっている筈なのに。
(章印に攻撃を叩き込んだのに、消滅する気配がない)
「……古人に云う」
黒装束の口からはなおも声が漏れる。
「J9って知ってるかい?」
「フ、フザけるな!」
瞳に蛍みたいな石火を散らし、斗貴子は狂ったような手つきで黒装束を殴る。
が、死ぬ気配がない。
「昔、太陽系で粋に暴れ回ってたっていうぜ」
全身血でずぶぬれになりがら攻撃を仕掛ける斗貴子の背後。
彼女に向かって、一匹のチワワが歩いてきた。
「今も世ン中荒れ放題」
かつて総角が拾い、無銘の足元にじゃれつき、浜崎に噛みついたりしていたチワワが。
「ぼやぼやしてると後ろからバッサリだ。どっちもどっちも。どっちも! どっちも!」

「結論からいう。武装錬金は黒装束の男の方」

チワワが斗貴子に飛びかかった。
そして、外見からは想像もつかない鋭い牙を彼女の首に突き立てた。

「本体は犬だ。それが常に同伴しても怪しまれぬよう、忍六具に偽装している」

47 :永遠の扉:2007/08/13(月) 18:12:27 ID:89a6Jp0S0
「そうね。武装錬金の一部だと吹聴してさえおけば、近くにいても怪しまれない」
「そして本当の武装錬金の種類は自動人形(オートマトン)。形状は……たとえば偕老同穴
(かいろうどうけつ)」
「偕老同穴?」
「本来は、カイロウドウケツ科の海綿類の一種を指す。が、私のいっているのは人形の一種。
なお、出典は忍法忠臣ぐ」
「その他、人間の形になりそうな武装錬金といえば」
話を遮られ、根来は鷹のような目つきをいよいよするどくした。
「影武者、変わり身……それから」

「兵馬俑(ヘイバヨウ)」

竹藪はただ静かにその光景をとりまいていた。
「総ての機構を歪める……それこそが我が兵馬俑の武装錬金・無銘なり」
瞳から光が消えて倒れ伏す斗貴子を、チワワ……いや、真の鳩尾無銘は悠然と見下ろした。
「形状ならびに特性を思わば、正々堂々・所詮は望むべくもなく……我、偽りたり」

以下あとがき。
というコトで敗北です…… 実際問題彼女を負けにするのはいろいろ抵抗もありましたが
展開上仕方なく。ただ、

剛太とタッグを組んで香美と戦う → ホムンクルスを56体ばかり斃す → 貴信に苦戦し
ながらも実質的には勝利 → 無銘戦 → 真・蝶・成体戦 → 今回の流れ

な連戦で、メンタル面がボロボロでもないとたぶんヴィクターとバスターバロン以外には負け
ない人と思うのです。
このバトルパートは次回で一段落。てか何気に明日が連載一周年……

てかしまった。ちょっと補足。
>>42 13行目 舌打ちとともに今夜の様々な横槍を思い出し、バルキリスカートの鎌首をもたげた 

>>46  1行目 「他の者なら」を文頭に追加。

48 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/08/13(月) 18:13:38 ID:89a6Jp0S0

>>38さん
あ、最後のアレはもともとの決め台詞でもありますが、ゲームでのゲージ6つ以上の必殺技
の台詞でもあります。「私を舐めるな」も確か体力0からの復活で、「はああ〜斃す」はヒート
アップ時、「切り裂け〜」はゲージ5つ未満の必殺技。真・蝶・成体が相手なのでゲームを意識しておりますw

>>39さん
本当に塗り替えそうw 実際ゲームでは戦部の10倍ぐらいは軽く倒してそうですし。
このやりたい放題っぷりはゲームの影響かも。やっぱあのゲームじゃ最強。真・蝶・
成体だって風と無敵時間さえなければ楽勝ですしねぇ…… 

>>40さん
ありがとうございます。能力モノはなかなか手ごわくもあり手ごたえもあり
描いてて飽きるコトはないですね。辛くなるコトはありますが。今年入って
からずっとバトルしてたような気もしますが次々回から日常パートに戻ります。

49 :作者の都合により名無しです:2007/08/13(月) 22:57:48 ID:IuhGtCEK0
スターダスト氏、2日連続乙!
いつも斗貴子たちの活躍楽しみにしてますよ!!
将来的にエンバーミング(だっけ?)も書いてくれるのかな?


50 :作者の都合により名無しです:2007/08/14(火) 00:56:06 ID:zD7XshFq0
スターダストさん頑張るなあ

斗貴子のような直情径行なお方は
策士には確かに弱そうだ
心理戦にも意外と弱そうだし
頭脳戦にはもっと弱そうだw

51 :作者の都合により名無しです:2007/08/14(火) 16:02:43 ID:kblsSvRf0
斗貴子さん負けたか。
原作でも最後の方は戦闘力上位ではなくなってましたからね。
スターダストさんGJです!

52 :作者の都合により名無しです:2007/08/14(火) 21:59:17 ID:VJXPRUKt0
スターダストさんの錬金キャラは活きているな
オリキャラも錬金の世界にすんなりと馴染んでいるし
トキコは負けても華のあるキャラだから無問題

53 :『絶対、大丈夫』:2007/08/15(水) 12:39:01 ID:H8xca3tJ0
        第四話<そして、外れていく日常・3>



 秀一は、時空管理局の万能戦闘母艦、ハガネの廊下を歩いていた。
 向かう先は、館長室。オフィスと、自分の寝室を兼ねた部屋だ。
 最近は、事件ばっかりでほとんど休めていないので、ちょっとの間、艦を部下に任せて休も
う、というわけだ。それと、部屋にあるコンピュータで、個人的な知り合いにも連絡をとる、
というのもある。
「…………頭が、痛い……」
 徹夜のせいだろうか、と思いながら秀一は頭をぶんぶん振る。よけいに頭痛はひどくなった。
 なんとか途中で倒れたりせずに部屋に到着する。冷蔵庫から冷たいミルクコーヒーの缶を取
り出し、パソコン台の前に置かれた椅子に座る。そして、コーヒーを飲み始めた。
 その片手間にコンピュータの電源を入れ、異世界間通信用のソフトを立ち上げ、通信先のア
ドレスを入力した。
 しばらくの間が空いて、それから通信が繋がる。コンピュータの画面に、その相手の顔が映
し出された。
『おっひさしぶりー!なにやってたのよ秀一!』
 と、久しぶりに聞く、やかましい声が聞こえてきた。
「……いや、最近仕事が忙しくてな……ああ、本当に久しぶりだ、リナ=インバース」


54 :『絶対、大丈夫』:2007/08/15(水) 12:40:12 ID:H8xca3tJ0
 リナ、と呼ばれた少女は、栗色の長い髪の、とにかく端正な顔をしている。ちょっと小柄な
体に、管理局の制服を着た、秀一の元同僚だ。
 その、単純な破壊能力だけならSSS+ランク、総合戦闘能力はSS+に及ぶほどの圧倒的
な力を持っているとは思えないほどの満面の笑みで、リナは言った。
『いや〜。そっちの方はどうもややっこしいことになってるみたいね……』
「……まぁ、な。戦力の補充はできそうだが、それでもまだ忙しいだろうな……管理局も、もっ
と人員を割いてくれればいいのだが」
『単純な物療作戦が「あいつら」に通用しないのはわかってるでしょ?』
「……まぁ、そうだが……それでも、物量がなければできることもできん」
 と、秀一は飲み干したコーヒーを、背後にあるゴミ箱のに、見もせずに放り投げた。
 小気味のいい音からすこし間を空けて、リナは言う。
『まぁ、今度私らもそっち手伝えそうだから、安心して大船に乗ったつもりでいなさい!』
「……ああ」
 それをいうなら『泥舟』では?という突っ込みは言わない秀一であった。口はわざわいの元
である。
「……ゼルガディスやガウリィ、アメリアにもよろしく言っておいてくれ」
『はいはーい!』
 と、リナの元気のいい声を最後に、通信は切れた。
 秀一は、しばらく背もたれによりかかるようにして座っていたが、しゅばっと背筋を伸ばす
と、さっさとコンピュータの電源を落とし、そしてベッドにばたんきゅーした。



55 :『絶対、大丈夫』:2007/08/15(水) 12:41:57 ID:H8xca3tJ0



 哀川潤。
 人類最強の請負人という愛称を持つ彼女は、その名に違わぬ圧倒的な力を所有している。
 裏の世界に存在する、殺し名や呪い名なども、彼女に関わることを禁忌とするほどのもので、
とにかく彼女はどこまでも最強である。

 そんな彼女は、野比家にいた。

「いや、ドラえもん。いいかんじにぶっ壊されてんじゃねぇか」
「……大…夫…す(大丈夫です)」
「どこら辺が大丈夫なんだよ……」
 と、シニカルに笑いながら、壊れたドラえもんの頭を開き、どこが損傷しているか、損傷の
具合はどんなもんかを見ている。
 のび太が、潤に聞いた。
「あの、ドラえもん……直せますか?」
「うーん……ちょっち道具がねぇとさすがのあたしでも無理だな……多分ミニドラでも、これ
ほどの損傷を単体で直すのは無理だろうし……」
 それを聞いたのび太たちの顔は、曇っていった。あの謎の敵に狙われているというのに、頼
みの綱であるドラえもんが使えないのは、かなり致命的だ。

56 :『絶対、大丈夫』:2007/08/15(水) 12:44:23 ID:H8xca3tJ0
「まったく、あいつは一体なんなんだよ!」
 と悪態をついたのは、ジャイアンだった。眉間に皺をよせ、かなり怒っている様子である。
 それに答えたのは、潤だった。その顔には、相変わらずシニカルな笑みが浮かんでいる。
「……あいつが何なのかはあたしにもわからないが……でも、どうにかできる奴らは知ってい
るぜ」
「本当ですか?」
 と、静香。
「……ああ。あいつらが何者かはわからんが、それでも、何と関わりを持っているか、くらい
ならよくわかる。……なるほど、タイムパトロールが最近おかしな動きをしてると思ったら、
そういう事だったんだな……時空管理局関係じゃ、仕方が無いか」
「時空管理局?」
 ととぼけた声を発するのは、スネ夫である。
「ああ、お前らは知らないのか……あー。説明するの面倒臭い。百聞は一見にしかず、だ。ちょっ
とついてきてもらうぜ。ドラえもんの修理もあそこならできるしな」
 と、立ち上がりながら潤は、一〇〇キロ以上の重さを持つドラえもんを、軽く片手で担いで
そして笑いながら言う。

「さて、面白くなってきやがった────」


 この、潤にとってのちょっとした気紛れで、大きく全世界の運命が変わったのは、まだ誰も
知らない。

57 :白書 ◆FUFvFSoDeM :2007/08/15(水) 12:46:48 ID:H8xca3tJ0
皆様、お久しぶりです。始めましての方は始めまして。
かなり前回と間が空いた、白書です。

しばらくの間、とあるところに入り浸っており、こちらに来ることがほとんど
できませんでした。

どうせ面白いと思ってくれる人もいないであろう駄文ですが、自己満足と、ケ
ジメくらいはつけたい、という感情だけで書き続けます。

では、また皆様と会える日を心待ちにして。

58 :作者の都合により名無しです:2007/08/15(水) 12:50:33 ID:Dr210A310
お久しぶりです白書さん。
ご復活うれしいです。
正直、随分あいてしまっているので
内容も少し忘れてしまいましたが
もう一度読み返すつもりです。
のんびりと更新して下さいね。
一応、これまでの物語を張っときますね。

http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/85.html

59 :作者の都合により名無しです:2007/08/15(水) 14:03:32 ID:a6kWG0xu0
白書氏おひさし。
そんな自分を卑下せず気楽に頑張って下され。
応援してます。

60 :永遠の扉:2007/08/15(水) 14:55:00 ID:/Yw16V0e0
解説:兵馬俑について

出典:百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B5%E9%A6%AC%E4%BF%91 より。

>兵馬俑(へいばよう)は、本来は古代中国で死者を埋葬する際に副葬された俑のうち、兵
>士及び馬をかたどったものを指す。秦九代目の王穆公が死去した際に177名の家臣たち
>が殉死することになり、殉死を防ぐために兵馬俑が作られることになった。

「割符は奪還したな。そして──…」
無銘がくわえてきた物をつまみあげると、総角は微苦笑を漏らした。
「こらこら無銘。核鉄まで持ってくる必要はなかったんだがな。俺たちの手にこういう希少な品
が渡ると、戦団の連中は血眼になって俺らを追ってくるぞ」
手にあるのはシリアルナンバーIVIV(44)の核鉄。斗貴子の物であるのはいうまでもない。
「……失策」
「いやいい」
女性のようにすき透った頬に楽しげな笑みを浮かべた総角は、チワワの両脇に両手を入れ
て、肩のあたりまで持ち上げた。
「安心しろ。こっちは解決済みだ。どうせこの武装錬金で潜伏している限り、俺たちが追撃を
受けるコトはまずない。なぁ貴信。香美。負けた上によく考えもせず核鉄を奪ってきた熱血飼
い主とアホ猫。まぁなんだ。そうそう。勝敗は兵家の常だから気にするな。お前たちはむしろよ
く戦った方だ。もっとも負けたのは頂けないがな。あぁ、俺は悲しいなぁ〜」
えらく楽しげにからかう総角に、名を呼ばれた二人──実質一体だが──は座りながら必
死に抗弁する。
「う……。でもあんた、核鉄の収集とか趣味じゃん」
『ははは!! それを思ったからこそ僕は取ってきた!! それが不都合あればあらかじめ
いっておけばいいのでは!?』
いま表にいるのは香美で、衣服はボロボロ。タンクトップの肩が派手に破けて、もともと良く
見える胸元がなかなか危なげに見えている。ハーフパンツもしかりで、破れた個所から膝小
僧とか太ももの健康的な瑞々しさが覗いている。交番に駆け込んでそれらしいコトをでっち
あげれば、とある犯罪の被害者として記録してもらえるだろう。

61 :永遠の扉:2007/08/15(水) 14:57:16 ID:/Yw16V0e0
むろん傷は癒えていない。さっきのセリフだって本当は総角を見上げていいたかったが、振
動で首とか足とか取れて傷口が開きそうなのでやめている。
ただジト目で不機嫌そうに壁をにらんで、「助けてくれたのはうれしいけどさ、もっといいかた
ってもんがあるでしょーが!」と、ふーふー唸っている。
「まー、それもそうだな。でも、俺の部下なら少しは機微も考えて欲しいがな」
「無理。あたしはね、いわれたコトすらできるかどーかわかんないし!」
「やれやれ。俺は永遠に猫派になれそうもないな。どちらかといえば犬派」
無銘を高い高いしながら総角は上機嫌だ。
「師父。我に対するこの扱いは好みにそぐわず」
柔らかな三角の顔が迷惑そうに歪み、じたばたともがいた。
「フ。犬派の道も断たれたか。まぁいい。どうせ本命はロバ派だしな」
つれないチワワは地面は置かれると、ちょこんとお座りをしてうるんだ瞳を総角めがけて持
ち上げる。可愛くはあるが、どこか神妙だ。
「閑話休題。先ほどの戦士、特に手当せず放置しましたが、不都合は如何に? 核鉄を奪う
コトが火種なれば、戦士の殺害はそれ以上に甚大。されど何ゆえ放置を命ぜられた?」
黒豆のような瞳を見る総角は、実に心地よさそうだ。
「さすがお前は物分かりがいいな。香美。お前も少しは無銘を見習え」
「……うぅ。考えとくけどさ、あのおっかないの放置してていいの?」
『はーっはっは! ひどく怯えてるくせに心配はするんだな!!』
「だってさ。いきものが死ぬのって、すごくやなのよあたし。でもアイツはこわいケド」
といいながら香美は瞳孔を見開いてがくがくがくがく震えている。斗貴子が怖いのだろう。
「鐶(たまき)だ」
へ? という気の抜けた声が総角以外の三人から同時に漏れて、ヒンヤリとした地下道に
木霊した。その中で無銘だけは、ちょっと歯を剥いて軽く唸った。
「……彼奴? 彼奴が近くにいる? なれば一秒でも早く合流の是非をお教え頂きたい。合
流するのであれはさっさと退散する所存。彼奴などと同座同席するは死にも並ぶ苦痛……!」
「フ。そう露骨に嫌そうな顔をするな無銘。事後処理はあいつに任せておけばまず問題はな
いぞ。少なくてもお前たち三人が出ていくよりは話もこじれない」

62 :永遠の扉:2007/08/15(水) 14:59:11 ID:/Yw16V0e0
「そだけどさ。あたしはあのコ苦手。話続かないもん」
『僕は尊敬している!! 彼女ほど強く機転の利くホムンクルスはそうはいないからな! 
それに熱い歌を崇拝しているのがいい!!』
「あ、それから無銘」
「合流の是非は如何に!」
意気込む無銘に総角はくすくすと笑いをこぼし、告げた。
「少しだけだが合流するぞあいつ。良かったな」
無銘が地下道の果てまで突っ走ったのは余談として書き留めておく。

さきほどの真・蝶・成体の土台がぱくりと割れ、中から名状しがたい物体が漏れた。
基本的な形状はホムンクルスの胎児のようだが、背中のあたりからヘビのような尾が五十
センチばかり伸びており、長い体をくねらせながら地面を疾駆しはじめた。

向かうのは……血みどろで倒れている斗貴子。

レウコクロリディウム。
これは寄生虫の一種だ。主な宿主の一つは鳥。ただし寄生する手段が少々変わっている。
まずカタツムリの触覚に寄生する。寄生してから触覚をたとえば緑一色などのカラフルな模
様に変化させる。するとそれを目印に鳥がカタツムリを見つけやすくなり、捕食する。
捕食すればレウコクロリディウムはめでたく鳥に寄生できるという寸法だ。
更には鳥の糞にも彼らはおり、食べたカタツムリにまた寄生する。

結論から書く。

ホムンクルス浜崎は生きていた。
(俺はレウコクロリディウムのホムンクルス! この『本体』を寄生させた生物を操る能力の
持ち主よ! そして『本体』さえ無事なら依代が破壊されようと痛痒なし! 以前は大損壊を
受け、真・蝶・成体に寄生してその回復力を頼らざるを得なかったがなァ!)
浜崎は斗貴子のすぐ近くに到達した。物言わぬ斗貴子は、そのスレンダーな肢体をまったく
無防備なままに投げ出している。
スカートから伸びるすらりとした白い足は、傷を少々帯びてはいるが、それだけに一種の男
性的衝動をかきたてる何かがある。

63 :永遠の扉:2007/08/15(水) 15:00:35 ID:/Yw16V0e0
(よくも真・蝶・成体を破壊してくれたなァ。まぁいい。次は貴様だァ。貴様の体さえ乗っ取れ
ばこちらは核鉄を得るより戦力を得るだろう! そしてそれはァッ!)
ヘビのように長い体が、斗貴子のふくらはぎの下を潜り抜け、緩やかに巻きついた。
ぬらりとした感覚に嫌悪を催したのか、斗貴子の寝顔から軽い呻きが漏れる。
(ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズの連中が引いた今ァ、た・や・す・いコト!)
「などというモノローグの元、浜崎どのはセーラー服美少女戦士どのの足を登っていくので
あります。その動きはらせん状、じわじわと確実に蝕まんとする意志に溢れております。あぁ、
その目をご覧ください。この血走りは果たして復讐心のみに起因するのでしょーか! ややも
すると、えぇと、その……なんでしょう。こほん。実況人として意を決して申し上げますれば、
淫靡! その一言に尽きまする。……その、どこへ侵入なさるおつもりか…… 聞きたくはあ
りますが、どうにも気恥しく……不肖はしばし口ごもるしだい……いやはや……」
立て板に水な声に、浜崎の頭が反射的にそちらを見た。
八メートルほど先、広場と竹藪の境目にいるのはシルクハットの小柄な少女。
頬に紅差し、口をもにゅもにゅした波線にしている。
「小札零かァァ〜! この戦士を斃しに来たのかァ? それとも介抱かァ〜?」
「いえいえ不肖は任務を終えてたまたまこちらを通りすぎたという次第。何の任務かは秘中の
秘ゆえ伏せたく存じますが……ただ」
小札は目を細めると、カマボコみたいな口でえへへーとはにかんだ。
「結果は大・成・功! もりもりさんも喜んでくれるコト受け合い!」
「……話にならんなァ」
「そう思われるのであれば、そうであるかも知れませぬ。されど浜崎どの!」
小さな手からロッドが現われ、浜崎をびしぃっと指し示した。
「不肖の話、実は囮だとすればそこに話の種は生まれるのではないでしょーかっ!?」
分類すれば短剣だろう。銀色の刃が斗貴子の足のそばに突き立ったのを合図に、浜崎は
素早くその場から跳躍した。同時に手近な竹(へし折られて節穴を露にしてる奴)へ潜り込
んだ。

64 :永遠の扉:2007/08/15(水) 15:02:15 ID:/Yw16V0e0
「おお。さすが! 寄生の条件はすなわち穴への侵入なのでありますね! ……そしてっ! 
セーラー服美少女戦士どのへの寄生はとても恥ずかしいお話ですので割愛!!!!」
竹が変貌を遂げた。丸い形から六角形の柱と化し、青々とした肌は幾何学的な装甲へ。
そして穴から浜崎の顔(人間形態だったころの岩のような)がろくろ首みたいににゅらりと
覗き、小札に濁った眼光をふりまいた。
「今、短剣を投げた奴は誰だァァァ〜!!」
「私、です」
斗貴子の足の間から短剣を拾い上げた影がある。ひどく奇襲に慣れているらしく、拾う前も
拾った瞬間も拾った後も同じ速度で走り、呆れるほどの手早さで浜崎との距離を詰めると
彼の顔めがけて銀光をほとばしらせた。
浜崎は首を引っ込めすんでのところで回避した。影は返す刃で残り短い竹を逆袈裟に切り
捨てた。それが地面にせり上がった根に当たって「からん」と乾いた音が一瞬響いたのを最
後に辺りは静まり返り、月も雲にさっとけぶって無音無明の緊張に満ち満ちた。
「リーダーからの伝達事項その三。間隙を縫う者は必ず現れる。予想通り、です」
止まった影は小札よりはやや大きい。声は十代半ばだから、年齢がそれ通りとすればほぼ標
準通りの身長か。
暗がりのせいで正確な姿は分らないが、後ろ髪をリボンでくくって下に垂らしているのは分った。
「むむ。やはり鐶副長が仰せせつかっておりましたか。ならば不肖は手だしせずとも大丈夫!」
「ええ」
小札を振り返り言葉身近に応答した鐶。
その背後をしなった竹が襲った。
「なァ……?」
呆気の声を漏らしたのは、攻撃を仕掛けた方。浜崎だ。
鐶は振り返りもせず短剣で竹を二股に切り裂き、しかも鐶から見て七時方向の竹の一本へ
短剣を投げていた。
そこは浜崎の『本体』がある場所の近く。
彼は筒の中で頭上を見上げ慄然とした。短剣が突き刺さっている。避けてこうなったならま
だ良かった。しかし彼は投擲自体に気づいておらず、頭上の物音を反射的に見て事態に気
付いたにすぎない。
つまり、鐶の失敗によって命を救われた形になる。
「……遙かな大空に、光の矢を…………放ってみました。でも一撃必殺は無理でした……」

65 :永遠の扉:2007/08/15(水) 15:03:17 ID:/Yw16V0e0
浜崎は大声を張り上げたかったが、自らの所在をバラす愚行なので必死に耐えた。
耐えて竹の茎や根の中を移動しながら(一体化しているので可能)も、恐慌をきたしはじめて
いた。
なぜ自分の本体の位置を悟られたか。
声か? いや、声を漏らしたのは短剣を投げられた後だからそれはない。
(まぁいい。分はこちらにある。奴は武器を手放したァ。しかも竹は)
「……竹は……地下でつながってます。だから一本の竹に寄生すれば……その一帯の竹す
べて、あなたの味方。囲まれて、いますね……」
影の周囲にはいうまでもなく竹が充満している。
「……あなたが私に求めているのは絶望、でしょうか。星さえ見えないほど深い、絶望……」
口調は淡々としてまったく焦燥をはらんでいない。むしろ一言も発していない浜崎が、その
無言の理由からして追い詰められているようでますます惨めだ。
彼は激高した。
寄生した竹をすべて一気に操作し、鐶めがけて撃ち放った。
尖った根が鐶の腹部を。しなった竹が頬を。刃と化した幾枚もの笹の葉が到るところを。
それぞれ狙い打つ。
筈だった。
根が縮んだ。しなった竹も同じく。
奇異なるコトに笹の葉は……飛ばなかった。
刃が入り組んだような紫の物体と化している。
「さて皆様ご存じでしょーか!! 実をいいますれば竹にも花は咲くのです!」
いつの間にやら学校の会議室にあるような長い椅子とか椅子を取り出して、小札はロッドを
マイク代わりに解説を始めた。もちろん机上には「特別解説っ! 小札零!」と下手な字が
書かれた白い紙製の三角錐。
「一般には数十年から数百年に一度の割合で咲くのであります! 地下でつながってますか
ら、咲くときは竹藪一帯これ総てお花満開!」
彼女のいうとおり、頭上では前述の紫の花がひしめきあい、自重ゆえに心持ち垂れさがって
先ほどより夜空を多く露出している。

66 :永遠の扉:2007/08/15(水) 15:04:23 ID:/Yw16V0e0
「おお、見えざる花咲かおじーさんが来訪したかのとごくでありますね! ちなみに開花後は
実をつけて枯れますゆえに不吉な現象といいますが、しかし人間の人生とて長い目で見れば
そんな感じではないでしょーか! 漢の高祖とか豊臣秀吉とか一花咲かせてからもう一花咲
かせた方は歴史上ちょっとおりません。後はもう枯れ、時には老害とのそしりを受けたりも。
つまりは大成を秘めた人生とは不吉に近いものなのでしょーか? それはさておき浜崎ど
の。この開花は浜崎どのにとっても不吉な予感で死兆星! さぁ、さぁさぁ、退却のご用意を!
ここで引くなら鐶副長も引きますよーぉ!」
「引きません。このままごーごー。ただひたむきに……」
「え!?」
「リーダーからの伝達事項その二。禍根を残すべからず。残念ですが彼の死は……決定稿」
「むむ……もりもりさんがそうおっしゃるなら不肖には口出しのしようも……なーむー」」
(どういうコトだァッ!)
浜崎は竹の中で震えだした。彼のいる竹までもが徐々に縮み、狭くなりだしている。
(奴はふれもせず、いったいどうやって!!)
「短剣…… 別に本体へ当たらなくても良かったのです。あなたの体の一部にさえ当たって
しまえば……もうすでに私の武装錬金の特性の餌食。運命に戸惑う嘆きのロザリオ……」
影が淡々と呟いた。飛んだ。
「……所詮あなたはレウコクロリディウム。エサの気配は簡単に察知できます」
手を巨大な翼と化し、竹藪を機械的に切断しながら一直線に。
五十メートルは滑空したか。彼女の通った後の竹はことごとくなぎ払われた。
「鳥型ホムンクルスの私の敵では……ありません。『特異体質』を使うまでも、ありません」
(ああ、確かに敵ではないなァ)
影のあとをとことこ付いてきた小札は「ぬおっ!」と寄生を漏らした。
鐶の耳元に、ホムンクルスの幼態へ長い尾ひれをつけたような特異な物体が張り付いている。
浜崎だ。いつの間にやら飛んでいた彼は耳の穴から今まさに侵入しようとしている。
彼は叫ぶ。恐怖からの解放を喜び、ひきつりながら。
「油断したなァ! 倒せずとも元の生態を思わば寄生するコトこそ本懐よ! あの女戦士など
もはやどうでもいい! 貴様はおそらく奴以上の強者ァァ! おとなしく我らに!」

67 :永遠の扉:2007/08/15(水) 15:07:16 ID:ZSD+cD0+0
「あ、無駄です。ぶいあいしーてぃおーあーるわいてぃ、すりーつーわんぜろ無銘くん……♪」
鐶の声が脳内に伝達するより早く、浜崎の体一面とボコボコと膨れ上がり、弾かれるように
彼女から離れた。
(〜〜〜〜〜!!!)
意図したものではない。体が勝手に動いている。地面をのたくっている。
随意筋な意味でも不随意筋な意味でも。細かな手足がてんでばらばらな方向へとじたばたし、
しかも内側から新たな肢体を無責任に量産している。腹からは新たな口が発生し、不規則で
不細工な鋭い牙を幾重にも伸ばしながら大口をガチガチ打ち鳴らして異臭まみれの粘液を
地面に降らす。尾ひれ一面は鱗が生えては剥がれおち、生々しい肉の赤肌が異常な熱と痛み
を放ち、眼窩ときたらそれこそレウコクロリディウムに寄生されたカタツムリのようにカラフルに
肥大して、床屋さんにある回転灯のように赤とオレンジの色をぐるぐる螺旋させている。
「どうなっている! ど・う・なっているゥゥゥゥゥゥゥ〜!」
「無駄、です。あなたはすでに無銘くんの攻撃を……受けています」
影は浜崎など顧みず、先ほど刺した短剣を回収しにいった。
「彼の敵対特性は…………武装錬金だけでなくホムンクルスに及びます」
(何をいっているコイツはァ! 奴の武装錬金の発動条件は俺だって聞いている! 攻撃
を受けるコトだァァァ! が、俺はあの黒装束の人形や忍六具の攻撃などは……!)
無茶苦茶な狂騒に持って行かれそうな状態で、彼は一つの事実を思い出した。
(まて、あの時まさか。あの時、まさかァァァァ!!)
斗貴子が黒装束の自動人形を倒した直後だ。
不意打ちと共に姿を現した浜崎はチワワに遭遇した。

>その足もとにやわらかい感触が走った。
>見ればチワワがまとわりつき、浜崎の足元を噛んだりひっかいたりして遊んでいる。

チワワは無銘の本体。鳩尾無銘そのもの。
(あの時!  噛まれた時!  奴はまさかァ自動人形の一部を口に含んでいた、か!!)
「あの時……噛まれた時……彼はちゃんと自動人形の一部を口に含んでいました……
具体的にはあの鱗のような物体……です。それが足の傷から入って……こうなりました」

68 :永遠の扉:2007/08/15(水) 15:08:42 ID:ZSD+cD0+0
無慈悲な足音が浜崎の近くでした。同時に銀の刃が彼を貫いた。
「少し……可哀想な斃し方をこれからします…… だから最後に一つだけ……」
刃が突き立った浜崎はどういうワケか縮んでいく。
どころか肌の質感も若くなり、異常をきたしていた体も、元のように戻っていく。
彼はその現象に確信した。
サッカーボール大で留まったまま仮死状態になっていた幼体ども。
これだけの実力を持つ鐶が、敢えてホムンクルスを殺さずに留め置いた理由。
「お前の能力は……目論見はァァァァ!」
「私の武装錬金は──…」
叫ぶ幼体から引き抜かれた短剣の形状を記す。
全長は約三十センチ。刀身はその内二十センチメートル。
鍔はその両端を刃先に向かって小さく直角に折れ曲がっている。
特筆すべきはその直下。柄の先端部分。
小さな球状の物体が二つ、柄の両側についている。
名の由来がとかく淫靡な武器である。なぜなら二つの球と一つの柄を「男性器」に見立てて
いるのだ。そしてついた名前がボロック(睾丸)ナイフ。
別名。
「キドニーダガー。名はクロム クレイドル トゥ グレイブ。特性は年齢のやり取り……です」
影はずいぶんと小さくなった浜崎を踏みつぶし、ぐしゃぐしゃと事務的に地面へなすりつけた。
「リーダーからの伝達事項その一。殺す者には親切に…… キドニーは『親切』なので……」

この晩の戦いはひとまずこれによって幕を閉じた。

あとがき。

風の噂で聞きましたが、平野綾さんと谷山紀章さんが付き合ってるとか。
これが本当ならまひろの中の人と秋水の中の人が付き合ってるワケで、何とも面白い。
あ、また長い。うぅ。原因は小札だ。だいたいにして、彼女の登場自体、プロットには
なかったりします。ええ。でもついつい出してしまった。
で、彼女が出てくるとついつい横道なセリフを書き連ねてしまうので長くなる。かといって何も
しゃべらん彼女は味気ないので、これでいいかも。……オリキャラばかりだけど。
にしても、連載一周年の翌日っていう節目に出てこない主役って一体……w

69 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/08/15(水) 15:10:53 ID:ZSD+cD0+0

>>49さん。
んー、エンバーミングは内容次第ですね。今、興味があるのは再筆るろうに。あのキャラ設定
で一から話をやったらすごく面白そうw 今回はオリキャラばかりになっちゃいましたが、次回
以降は原作メンバーに重点を当てますのでお楽しみに。まずは秋水とブラボー。次はヴィクトリア。

>>50さん
いろいろ怠けてしまったので、せめてお盆ぐらいは頑張らないと…… 斗貴子さんはなんというか
「敵が目の前にいる時にチンタラ物を考えていられるか! ブチ撒ければ済むコトだ!」と心
理戦も頭脳戦も放棄しちゃいそうですね。ダービー戦とか無理ですよ。猫と干し肉の段階でダービーの首刎ねてる。

>>51さん
実力はかなりあると思うのですが、やはり終盤での見せ場の少なさはいなめませんね。終盤
にいくにつれ強くなる成長タイプに非ずですから。その主因はバルスカの特性。伸びしろなさ
すぎ。ま、和月作品の設定は、将来性よりはその場のノリでいくので仕方ない。

>>52さん
キャラは生き物。その呼吸を大事にしたいというのがけっこうありますね。小札なんかでも
割と好き勝手に喋らせております。あとは秋水とまひろがうまくまとまってくれるかどうか。
斗貴子さんはヴィクターを除けば初めて負けたかも。もっとも万全の状態なら勝てたとは思います。

70 :作者の都合により名無しです:2007/08/15(水) 22:48:26 ID:Dr210A310
絶好調ですねスターダストさん
お盆でこれまでの不在を一気に取り戻した感じです
前回までと打って変わって今回はコメディですね
相変わらず小札(どうしてもこふだと読んでしまうw)や
香美がいい味出してますね
もっとも、一番いい味は転がって意識のないトキコだけどw

71 :作者の都合により名無しです:2007/08/16(木) 08:26:50 ID:B0pYG+FD0
激闘編が終わってコメディ編にまた突入かな?


72 :作者の都合により名無しです:2007/08/16(木) 12:49:10 ID:moZgBy480
お疲れですスターダストさん。

前回の斗貴子敗北のシーンから今回はそのシリアスさを引きずらずに
明るい雰囲気になりましたね。
あんまりハードな感じだと痛々しくなるんでこんな感じがいいとおもいます。

73 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/16(木) 21:08:51 ID:V47746Yc0
>>20
夜。寝静まった街の上空を、人型の影が舞っていた。大きく旋回しながら鼻を鳴らして、
何やら匂いを嗅いでいるような。やがて何かを探り当てたらしく真っ直ぐに飛んで、
高度を落とした。行き着いたのは三階の窓。警察病院の、ある病室の窓だ。
影はその窓に取り付いた。施錠はされてなかったので、静かに窓を開け室内に降り立つ。
一つだけあるベッドには大柄な男が寝ている。枕もとのプレートには『山崎ひろみ』と
書かれているが、影は日本語が読めない。代わりに、また鼻を鳴らして確認した。
「グムング・ゼラゾジャダダジャヅバ」 
(グムンが、ヘマをやった奴か)
闇の中、笑みを浮かべた影の口に、白く鋭い牙が光る。耳元まで避けたその口が
大きく開かれて、寝入っているひろみの首へ……
「誰っ!?」
ドアが開かれ、部屋の明かりが点けられた。明るくなった室内にいるのは、眠っている
ひろみとドアから入ってきた野明と、そしてベッドのそばに立つ異形の怪物。
全体的には人型であるが巨大な耳と口、鋭い牙、緑色の肌、そして両腕全体から
垂れ下がるコウモリのような羽。どこからどう見ても人間ではない。
「! 未確認生命体……第3号!?」
「ガ、ガゥアアァァッッ」
コウモリ男は頭上から煌々と照りつける蛍光灯の光に苦しみ、両手で頭を抱えて
逃げ出した。開けっ放しだった窓から飛び出し羽ばたき夜空へと、
「逃がすもんかああああぁぁぁぁっ!」
野明が追いかけた。躊躇いなく窓枠を蹴って跳び出し、コウモリ男の背に掴まる。
バランスが崩れて、コウモリ男の高度が下がった。ここぞとばかりに野明は左腕で
コウモリ男の首を締め上げながら、右手で後頭部を殴りつける。
「この、この、この、このっ!」
「ジャ、ジャレゾ!」
(や、やめろ!)
傾き、回転し、コウモリ男と野明は絡み合うようにしながら落下。路上に停まっていた
ワゴン車の屋根に落ちて跳ね、二人分かれて着地した。

74 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/16(木) 21:10:29 ID:V47746Yc0
「リントグ……!」
(人間が……!)
怒りを露わにしたコウモリ男が野明に襲い掛かる。転がりながらかわした野明のすぐ脇で、
コウモリ男の爪がワゴン車を真っ二つに切り裂いた。
間近で直に見る未確認生命体の力に、野明が息を飲む。だがそれで立ち尽くす
ヒマなど与えられず、コウモリ男は自ら切り裂いた車体を掴んで、そのまま振り回した。
野明は全身を丸ごと殴打され、実際に走行中の車に撥ねられたのと同様に吹っ飛ぶ。
もちろん野明は受身などとれずに地面に叩きつけられ、呼吸を潰される。そこへ
ワゴン車を投げ捨てたコウモリ男が、大口を開けて襲いかかってきた。
野明は動けない。と、野明の背後から駆けて来た男がコウモリ男を殴りつけた。僅かに
怯んだコウモリ男の前へ、駆けて来た男が進み出る。野明を背に庇って立つその男は、
「く、黒沢さん!?」
「逃げろ、早く! ……あ、言っとくけどこんなタイミングで出てきたからって、オレは
あんたをストーカーしてたわけじゃないぞ! あんたのことが心配で警察病院へ様子を
見に来て、でもどうしようか迷って今までウロウロしてて、そしたら窓から突然、」
などという弁明など野明は聞かずに黒沢を押しのけて、
「黒沢さんこそ逃げて下さいっ! これは、あたしたち警察の仕事です!」
黒沢が心配した通り、コウモリ男へ向かってまっすぐ走った。すると当然、
「リントゾロ・ボソグ!」
(人間ども、殺す!)
たった今、ワゴン車を一撃で切断した爪が高く降りかざされて野明に……
「ええぇぇぇいっくそおおおぉぉっ!」
黒沢ジャンプ! 既にその瞬間には黒沢のものではなくなっていた脚、人外の脚力は
野明の頭上を軽々と越えた。同じく人外の腕力でコウモリ男に空中から抱きつき、
押し倒し、地面に転がる。つかみ合いながらゴロゴロしている間に、腕と脚に続いて
胸、腹、頭、顔面、黒沢の全身がみるみる変化していく。
黒沢は勢いを利用して何とか上を取り、コウモリ男を押さえつけて馬乗りになった。
そこからマウントパンチを叩き込む、その姿はもう完全に人間ではなかった。白い
プロテクターに身を包んだ異形、野明は知っている。というかもうテレビで流されている。

75 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/16(木) 21:12:05 ID:V47746Yc0
「未確認生命体第2号!? く、黒沢さんが……?」
突然出現した第2号と第3号の戦いを前に野明は呆然。やがて、第3号ことコウモリ男が
反撃に出た。殴られながら第2号、こと黒沢の右の内腿に噛みついたのだ。草むらに
仕掛けて猛獣を獲る、ベアトラップさながらの凶悪な牙が肉に食い込み、まるで
トマトの汁のように鮮血が溢れ出る。
「ぃでええええぇぇぇぇっっ!」
黒沢は悲鳴を上げて転がった。コウモリ男は立ち上がり、舌なめずりをしている。
どうやらマウントパンチもさほどダメージを与えられなかったらしい。やはりこの白い姿は、
不完全バージョンということなのか?
腿の激痛に耐えて黒沢は立ち上がるが、立つだけで精一杯だ。とても戦えそうにない。
それを見てとったコウモリ男が余裕たっぷりに一歩踏み出す。だがその時、戦いに集中
するあまりコウモリ男も黒沢もそして野明も、気付かなかった。
病院からの通報を受け、サイレンを鳴らして集まってきたパトカーの群れを。
「未確認生命体第3号を確認! あ、第2号もいます!」
「ようし、二匹とも逃がすな!」
杉田警部の指揮の下、二十人近い警察官たちがパトカーから降り、ドアを盾にして
銃を構えた。赤い回転灯の光が周囲を染めて照らして、ズラリと並んだ銃口から
重苦しい殺気が匂い立つ。
正面にいるコウモリ男を牽制し、背に野明を庇い、右脚を血に染め、銃を構えた警官隊に
包囲されて……黒沢は、動けなくなった。
そして、
「泉巡査!? そんなところで何してる、早く逃げろ! そいつがそのケガで動けない内に!」
動けない黒沢を突き抜けて、背後の野明へと杉田警部の声が飛ぶ。
「逃げろと言ってるんだ! 聞こえないのか泉巡査! これは命令だぞ!」
冷たく暗い銃口の向こうから、怒号の弾丸が野明を射抜いた。

76 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/08/16(木) 21:15:20 ID:V47746Yc0
黒沢の匂いの描写。リキんではみたものの、やはり難しい。私自身、キャラ単独で見れば
『クウガ』の一条さんよりも『刑事物語』の片山さんの方が好きなぐらいなんですけどねぇ。
♪人がおるんよね……人がそこに、おるんよね……(汽笛、波飛沫、遠ざかっていく港……♪
男性キャラにしか出せぬ魅力、すなわち言葉通りの「男らしさ」。描きたい、されど困難也。

>>スターダストさん(一周年おつ華麗さま。主役は出ずとも私の最萌えロバさんが久々嬉し♪)
ここまで徹底して、被せに被せないと倒れない斗貴子。原作準拠でもありましょうが、やはり
スターダストさんの愛なんでしょね。状況のみならず状態の描写もリキ入ってましたよ。で、
>自らの性格から逆算 して黙っているフシがある。
だーかーら、そういうのを以心伝心の仲といい、誰とでも育める関係ではないという自覚を……

>>白書さん(お久しぶりです! 書くのも大変ですけど、書いていないと書きたくなりますよね)
リリリリナですかぃ! あの子が組織に属して働いてる、制服着て通信してるって……何か、
もの凄い。で、他のメンバーも参戦するかも、と? こりゃまた楽しみ。ドラが壊れるというのは
原作でも時々ありましたが、修理作業の様子はあまりなかったですよね。ちょっと痛々しい。 

77 :作者の都合により名無しです:2007/08/16(木) 21:47:29 ID:B0pYG+FD0
ふらーりさん健筆ですな
知らないキャラが出てくるのもふらーりさんのSSを読んでいるという気がするw

78 :作者の都合により名無しです:2007/08/17(金) 08:28:56 ID:37PTpNf40
パトレイバーって聞いたことあるけど面白いのかな?
黒沢がらしい活躍で頑張ってますね。決してヒーローにはなれない感じで素敵。


79 :作者の都合により名無しです:2007/08/17(金) 16:05:40 ID:juYTw+Zk0
刑事物語って武田鉄也か?
ふら〜りさん、いくらなんでも年がバレまっせw


80 :作者の都合により名無しです:2007/08/18(土) 12:09:16 ID:K14Z8wVB0
ふらーりさんの連載が終わったら・・
実質稼動してるのは永遠の扉だけか・・
みんな帰ってこないかなあ

81 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/08/19(日) 08:04:11 ID:Tda1x4u/0
《EPISODE12:When the man comes around》

「ウオオオオオオオオ!!」

防人の咆哮と共に、一撃必倒の威力を誇る拳の弾幕がシャムロックを打ち抜いた。
拳の衝撃がシャムロックのボディで弾ける度に、派手な重い金属音がエントランスホールに響き渡る。
だが、この三種の生物を組み合わせた異形の合成獣(キメラ)は一歩、二歩後ずさりをするだけで
ダメージを受けた様子は無い。
現に“蟹”の甲殻にはヒビひとつ入らず、歪みすら見当たらない。
野性を思わせる動きで鋏と“蟷螂”の鎌から成る四本の腕を振るい、“蜘蛛”の糸を尻の辺りから
垂らしている。
そして胸部に浮き出た人間の顔は、相変わらず唇の無い口で眼前に立つ錬金の戦士の名を不気味に
呟くだけである。

「CAPTAIN BRAVO…」

先程からこの繰り返しだ。
防人の攻撃はシャムロックの堅固な甲殻に阻まれる。
しかし、シャムロックの二本の鋏と二本の鎌もまた防人のシルバースキンに遮られる。
お互いがお互いに決定的どころか蚊が刺した程のダメージも与えられずにいた。
「くっ……! 何て頑丈な奴だ……」
既に五百発は下らない打撃をシャムロックに打ち込んでいる防人。
完全防御を特性としているシルバースキンに身を包んでいる為、攻撃を受けてのダメージは一切無い。
だが、常に全力を振るっての攻撃のせいか、徐々に肉体に疲労が蓄積されていく。
荒くなり始めた呼吸はその数を増やし、自身の攻撃運動による負荷で破壊された筋繊維は熱を持っている。

“完全防御 VS 完全防御”

ならば、そんなゴールの無い持久戦(マラソンマッチ)を征するものは――
“人間”の生命力か、“ホムンクルス”の生命力か。答えは考えるに及ばないだろう。

82 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/08/19(日) 08:05:56 ID:Tda1x4u/0
ここまで防人の攻撃を真正面から耐え抜いたホムンクルスはかつて存在しない。
無敵と思われたシルバースキンと防人衛の数少ない弱点が遂に表面化してしまった。

だが――

「駄目だ、こんなものじゃ駄目だ。奴の装甲はこんなものじゃ……」
戦士としては若手ながらこれまで幾つもの死線をくぐり抜けさせてくれた己の拳を、そして己の武装錬金を、
防人は信じている。
その防人が考える事は“何故、倒せないのか”ではない。
“どうやったら倒せるか”である。
防人は目の前の難敵を凝視する。
脳内を渦巻く思考と確固たる信念を乗せた視線は、シャムロックの身体のある一部分に注がれた。

人間部分である顔、それも額に浮かぶ“三つ葉を模した複合章印”

やがて、防人は章印から視線を外し、顔を伏せて己の両掌を穴が開く程に見つめた。
そうしているうちにもシャムロックは腕を振り上げた攻撃態勢のまま、ジリジリと距離を詰めてくる。
しばらくの間、両掌を睨み続けていた防人は大きく息を吐き、拳を力強く握り締めた。

「……よし!」

再び眼を上げた防人は素早くバックステップを踏み、シャムロックからかなりの距離を取った。
それは近接打撃の間合いではない。飛び道具の間合いと言っていい。
更に、極端に腰を落とし、前傾姿勢に構える。
今までの空手や八極拳を自己流にアレンジした構えではない。まるで短距離走者(スプリンター)の
クラウチングスタートに近いものがある。
そして、アキレスを狙うパリスの矢の如く、自らの関節可動域の限界までギリギリと右の拳を弓引いた。
ガードは捨てているのだろうか。左腕はブラリと垂れ下がり、床に向けられている。
「強く……。もっと、強く!」
自らの肉体に言い聞かせる最も単純明快な言葉を叫ぶと、防人は全身をバネと化して床を蹴り、
シャムロックに向かって弾かれたように突進を開始した。

83 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/08/19(日) 08:08:22 ID:Tda1x4u/0
スタートダッシュによって踏み抜かれた床のタイルは大きく剥がれ、粉々に砕け散り、防人の
背後を舞い飾る。

「そして――」

一条の弾丸となった防人が選んだものは――
正拳でも、
肘打ちでも、
靠撃でも、
蹴りでもない。

「鋭く!!」

異能の握力によって固められた拳は瞬時にして解放され、防人の四本の指は鋭い手刀に形作られた。
その四指は文字通り、磨き抜かれた“刃”を髣髴とさせる。
突進する防人に何かを感じたのか、シャムロックは初めて防御の態勢を取った。
四本の腕は幾重にも交差され、ボディを死守する堅牢な城門に早変わりする。
そう、彼(シャムロック)は城門を閉じてしまった。剣と矛と戟が打ち交わされる戦の最中だというのに。

「貫けェエエエエエエエエ!!!!」

破と覇を込めた戦人(イクサビト)の雄叫びと共に、“破壊槌”と化した貫手が“城門”に向かって撃ち込まれた。
凄まじい衝撃音がフロア全体を駆け抜け、ビルそのものを激しく振るわせる。
一本、二本とシャムロックの腕が砕け散り、音を立てて床に散らばり落ちた。

だが、止まった。
止まってしまった。
防人の貫手は残り二本の腕を砕く事無く、その勢いを殺された。
シャムロックは防御を固めたままの姿勢でその場に立っている。
「届かない、か……?」
防人は歯噛みしてシャムロックの反撃に備えようとするも、全力で撃ち込んだ貫手は彼の太い腕に
食い込んで離れない。

84 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/08/19(日) 08:11:13 ID:Tda1x4u/0
焦る防人とは対照的にシャムロックがユラリと身体を動かした。
と同時に――
シャムロックを守っていた残りの腕が千切れ落ちた。
防人の眼に飛び込んできた光景は章印に貫手を突き立てられたシャムロックの顔。
ホムンクルスの唯一の弱点、額の章印に防人の四指が第二関節辺りまで刺し込まれていた。
「や、やった……!」
防人が指を引き抜くと、シャムロックは無言でフラフラと数歩、後によろめいた。
やがて、細かい震えと同時に、その異形の身体のいたる所に無数のヒビ割れが走る。
ヒビ割れは急速に進んで全身を包み、肉体は末端各部から塵と帰り始めていった。
ホムンクルスとしての死が、崩壊が始まっているのだ。
自身の身体に何事が起きているのかもわからないのか、未だシャムロックは感情の無い眼で
防人を見つめていた。

「CAP...TAIN......B......RA......」

最期まで敵の名を呼びながら仁王立ちのまま、その身体は崩れ滅びようとしている。
敵ながらあっぱれ、と言いたいところだが、彼はこれまでの常識を覆す強引さで造り上げられた
ホムンクルスだ。
人間としての意思や理性や情念など一欠けらも残っておらず、ホムンクルスとしての食人衝動も
強制的に制御され、ただ単に“標的を殺せ”という信号に肉体を突き動かされているマシーンなのだ。
決して地に倒れようとしないのも彼のプライドなどではなく、創造主(サムナー)の意志(プログラム)が
安らかな最期を否定させ、戦いを続けさせようとしているのだろう。
今の防人には彼の創造主や生い立ちなど知る由も無かったが。

防人は、ズッシリと圧し掛かる疲労と思い出したかのように襲ってきた大腿部の痛みを撥ね退け、
周囲を見回した。
この一階のどこかで危険に晒されているジュリアンの救援に向かわねばならない。
目の前で二度目の死を迎えているシャムロックはほとんど原型を留めない程に崩壊している。
死力を尽くした戦いを繰り広げた、この強敵の最後を見届けてやりたい気持ちもあったが、
今はそんな余裕も無い。
「B...BRA......VO...」
無感情な声を上げながらシャムロックの身体は完全に消滅し、僅かな塵が舞うばかりとなった。

85 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/08/19(日) 08:12:46 ID:Tda1x4u/0

その塵の、
その塵の向こう側の、
その塵の向こう側の通路から奇妙な音が聞こえてきた。
何かを引きずる音と、男のくぐもった声。
照明の落ちた通路の奥に蠢く影が見える。はっきりと見える訳ではないが、何者かの人影が。
両手で何か大きなものを引きずる人影はゆっくりとこちらに近づいてくる。
「誰だ!」
防人は声を掛けた。ジュリアンかもしれないし、テロリストかもしれない。
返事は無い。
再び戦闘態勢に入ろうとする防人に、人影が答えた。聞き馴染みのある声で。

「ブラボーサン」

「ジュリアン!? 良かった、無事だったのか!」
エントランスホールの大照明に生還したジュリアンが照らし出される。
「ジュリアン……?」
確かに彼だった。姿形は、確かに。
だが、奇妙だったのは彼が手にしている“もの”だった。
両手で二人の男の顔面を鷲摑みにして引きずっていたのだ。おそらく生き残りのテロリストだろう。
一人は失神しているらしくグッタリと動かないが、一人はくぐもった声を上げながら必死に
抵抗している。
ジュリアンは無傷だったが、身を包んでいたブラックスーツは破け、上半身はほぼ剥き出しの状態だ。
そして、その裸の胸には、防人が考えもしていなかった物が鮮明に浮かび上がっていた。
「ジュ、ジュリアン……。まさか、嘘だ……。嘘だと言ってくれ……」

それはホムンクルスの章印だった。

86 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2007/08/19(日) 08:23:57 ID:Tda1x4u/0
どうも、お久し振りです。
ながらく中断してしまい、真に申し訳ありません。
やっと連載再開できました。あまり良い出来ではないですが。
多少、スローペースになりますがこれからも頑張って続けていきたいと思います。
見捨てずに応援して下さっている皆様、本当にありがとうございます。
では今日はここまでということで。
あじゅじゅしたー(.=ω=)

87 :作者の都合により名無しです:2007/08/19(日) 10:53:46 ID:Hbb2fNk/0
さいさんお久しぶりですー
サイトの方もちょっと更新が途切れてたんで心配してましたが
お元気なようですね。何よりです。

究極の盾同士の戦いですが、やはり体力的に凌がれてしまいますな
人間ミサイルで特攻して勝った防人カッコいいです。
お忙しいと思いますが、これからも時々掲載して楽しませて下さい。




88 :のび太と雲の王国:2007/08/19(日) 16:28:49 ID:4crpXnm40
「ドラえもーん! 財布の中身が50円しかないよー!」
「はい、バイバインー」
 ドラえもんはのび太の50円玉にバイバインをふりかけた。50円玉は倍額の100円
玉になった。
「やっほー!」
 のび太は大喜びでコンビニに行った。店長のオヤジがニコニコ笑っている。
「おじさーん! ムーゴーおくれー!」
 ムーゴーと100円玉をレジ台に置いた。100円玉は倍額の200円玉になっていた。
オヤジの笑顔が悪魔の形相に変わった。
「こんなお金は使えませんアンド子供にムーゴーは売れませーん!」
 のび太はオヤジの機銃掃射をかいくぐって、命からがら家に帰ってきた。

89 :のび太と雲の王国:2007/08/19(日) 16:30:27 ID:4crpXnm40
「でや!」
 のび太の投げた200円玉はドラえもんの眉間を貫通した。ドラえもんは爆発した。
「なけなしの50円まで使えなくなったじゃないか! ドラえもんのバカ!」
「どれどれ」
 ドラえもんは柱に刺さった200円玉を抜いた。200円玉は倍額の400円玉になって
いた。
「こりゃすごいね。明日になったら一体いくらの硬貨になってんだろうねえ」
「爆発はどうした」
「50円ぽっちでガタガタぬかすなよのび太くん。ほら、どら焼きあげるから」
 ドラえもんはのび太の質問に全く興味を示さず、のび太にどら焼きを差し出した。
のび太はドラえもんの手をはねのけて、どら焼きを窓の外に飛ばした。どら焼きは
空中で爆発した。
「爆発したー!」
「どら焼きのクセにー!」
 ドラえもんとのび太は二人で仲良く笑い転げた。そして笑いの収まったのび太は
ドラえもんの首ねっこをつかまえて力いっぱい締め上げた。
「爆発はもういい! やいドラえもん、ボクの50円玉をかえせ!」
「それは不可能です」
「少しは検討しろよ! 次のお小遣い日まで金もない、ムーゴーも買えないなんて
エムジーだ!」
「エムジー?」
「まるでギャグだ!」
「ああ、Marude Gyaguね」
 ドラえもんは納得して、少し考えてから言い足した。
「ムーゴーもエムジーだよね」
「えーと、Mu-Go-か。ホントだエムジーが二つになっちゃった!」
「相変わらずそそっかしいなあ、のび太くんは」
「ごめんごめーん」
 のび太とドラえもんは仲直りをした。そしてママを連れて三人でムーゴーを買い
に行った。

90 :のび太と雲の王国:2007/08/19(日) 16:32:16 ID:4crpXnm40
「あらのび太。いちばん小さいサイズのムーゴーしか置いてないわよ」
 コンビニの棚を見て、ママは困ったように言った。のび太は輪をかけて困った。
「そんなー! アナコンダを捕獲できるサイズじゃなきゃ使えないよー!」
「まあまあ。そんな時こそコイツの出番だよ」
 ドラえもんはムーゴーにバイバインをかけた。ムーゴーは倍のサイズになった。
「すっごいやドラえもん! 時間がたてば、ボクにもジャストフィットのムーゴー
に早変わりだ!」
「よかったわねえのび太。隙間漏れも置き忘れも、これで全部解決じゃない」
 ママも喜んでくれている。のび太はムーゴーをポケットにしまって、コンビニを
飛び出した。
「破れるまで使うぞー! ジーワイだー!」
「のび太くん、ジーワイって?」
「がぜんやる気ー!」
 のび太は地平線の彼方に消えた。そして時は流れた。

 のび太の部屋の窓から、大きく膨らんだムーゴーが入ってきた。中にはのび太が
入っている。ドラえもんは、ムーゴーの中で土下座をしているのび太に聞いた。
「のび太くん、ムーゴーは役に立った?」
 のび太はうつむいたまま、フルフルと首を横にふった。
「使う相手がいなかったんだよね。でも夏だから見栄を張りたかったんだよね」
 のび太は小さくうなずいた。
「えい」
 ドラえもんはムーゴーを指で押した。ムーゴーは再び窓の外に出て、上昇気流に
乗って上空へのぼっていった。ムーゴーはどんどん膨らんで、雲の高さぐらいのと
ころで爆発した。小さくのび太の声が聞こえた。
「ドラえもーん! ディーエスーですー!」
「どーもすみませんだねー!」
「はーい! そしてケーエスですー!」
「それはなにー?」
 こりゃ、死ぬわ。

91 :作者の都合により名無しです:2007/08/19(日) 16:34:24 ID:4crpXnm40
完。

92 :作者の都合により名無しです:2007/08/19(日) 17:13:27 ID:4crpXnm40
あ、あとバイバインの本当の効き目とかは意外とどーでもいいです。

93 :作者の都合により名無しです:2007/08/19(日) 17:49:01 ID:+jaFAliB0
>さいさん
おひさしぶりです。ふっかつ嬉しいです。
防人思いの外苦戦しましたね。楽しかったです。
でも、まだ文体から本調子じゃない感じですな。
筆に迷いが無くなってからが本格復活かな?

>名無しさん(VSさん?)
バイバインネタって結構ありますがこの作品も秀逸ですな
ドラとのびのおバカな感じがよろしいです
ところでムーゴーって何?


94 :DIOの奇妙な放浪記 ◆HY8PJcqPrY :2007/08/19(日) 21:52:17 ID:fMuvR1EX0
198X年 ○月×日
私は目覚めた。
こう書くとおかしいかも知れないが私の場合は別だ。
100年に及ぶ眠りから目覚めたのだ。
人間で言うならば引越しして新しい生活を始めたのと同じと思っていい。
当面の私の目的は世界征服だ。
その為には部下や手下を集めなければいけない。
そう思った矢先、私はエンヤと名乗る老女と出会った。
彼女は私の考えに共感を示し、一組の弓矢を取り出した。
何でもこの弓矢に指された者は「スタンド能力」と呼ばれる特殊能力を得る事が出来るそうだ。
当初、私は相手を疑った。
そんな御伽噺に騙されたくは無いと思っていた。
当然、私は断った。
するとエンヤ婆が突然、私の腕に弓矢を刺した。
矢の威力自体は私の腕にかすり傷をつけるのがやっとだった。
直後、コケオドシだと思った私の目に自分の体から出て来る異様なモノが映った。
これは…腕?
奇妙な光景だった。
私の腕から別の腕が出てくる。
おまけに私が心の中で「引っ込め!」と念じたら腕の中に戻った。
「お前ッ、この私に何をしたッ!?」
私は大声で叫んだ。

95 :DIOの奇妙な放浪記 ◆HY8PJcqPrY :2007/08/19(日) 21:55:03 ID:fMuvR1EX0
「DIO様、それが“スタンド”というモノですじゃ。」
エンヤ婆が物静かに答えた。
私はエンヤ婆からスタンドの説明を聞いた。
「成る程…スタンド毎に能力は違うわけか…私のスタンドの能力とは何なんだろうな?」
「念じればいいのですじゃ。技を使う、と。」
言われて私は念じた。
直後、全ての音が止んだ。
窓の外の鳥も風も全てが止まっている。
(まるで時間が止まっているようだ…否、これはまるでではなく本当に時が止まっているッ!?)
試しに私は机から本を落としてみた。
すると本は空中で静止した。
成る程。
人は皆一度は誰でも時を止める事が出来たならと思う。
それをこんな簡単な形で現実化出来るとは…。
パタン。
本が床に落ちた。
「礼を言おう。エンヤ婆。お陰でこの世界を征服する事が出来た様だ。だが、もっと人数を増やさねばな。私は旅にでるよ。仲間を探す旅にね。」
そう言うと私はエジプトを発つ準備をした。


198X年 ○月■日
私はジョナサン=ジョースターが使った波紋に興味があった。
一体どこで発祥しているのかが気がかりなのだ。
真っ先に殲滅しなくてはならない標的に定めたまでは良かった。
が。
到着のアナウンスが流れた時私は血の気が引いた。
「本機はまもなくナリタ空港に着陸します。」
何と私は中国と日本を間違えてしまったのだ。
一度落胆したが私はその内逆に日本で遊ぼうと考える様になった。

96 :DIOの奇妙な放浪記 ◆HY8PJcqPrY :2007/08/19(日) 21:56:52 ID:fMuvR1EX0
空港から出て数時間後、私は街中を歩いていた。
自分が生きていた時代には存在しなかったネオンや高層ビルを見ると私は不意に自分が年老いた気分になった。
当たり前か。
人間で言うなら私の年齢は120代だ。
当てもなくブラブラと歩いていた頃、私は人だかりを見つけた。
人垣の向こうにあるのは喧嘩。
空手家らしい男とチンピラ。
チンピラが相手を威嚇する様な言葉を吐き、殴りかかった。
空手家らしき男はそれを腕で軽くガードし相手の後頭部を蹴った。
チンピラが膝から前のメリに倒れた。
一撃必殺というヤツだなのか。
私は彼を尾けてみる事にした。


街から離れて十数分歩いた場所で彼は私に気づいた。
「そろそろかな?」
そう言うと彼は持っていた白い寝袋を地面に置いた。
「君の名は何なんだね?先程の戦闘を見るに君の格闘能力は優れているようだ。」
「何の用だ?」
「組まないか。」
単刀直入に言うと彼は身構えた。
どうやら警戒されているらしい。
「巻き込まれるのはゴメンだよ。あっちに行ってくれ。」
「面倒だな。これを見たまえ。」
私は手刀を傍にあった木に当てた。
その結果、木は中心部分から斜めに両断された。
二人の間にズンと木が倒れて彼はファイティングポーズを取った。
「俺の名はリュウ。お前は?」
「私の名はDIO。覚えておいてくれ。」
私の言葉を終わる前に彼は蹴ってきた。
前進も兼ねた右ローキック。

97 :DIOの奇妙な放浪記 ◆HY8PJcqPrY :2007/08/19(日) 21:57:56 ID:fMuvR1EX0
だが私には通じない。
吸血鬼になった時点で私の体は人間に比べて遥かに頑丈なのだ。
反撃しようとイギリスの貧民街育ちのジャブを放とうとしたら顔面にゴウと音を立てて何かが迫ってきた。
回避の為に一歩後ろへ下がるとそれが見えた。
右足だ。
この男は吸血鬼の動体視力を持ってすらも見えにくい程の速さで右ローから右ハイのコンボを繋げて見せたのだ。
「もう俺の事を追い回すな。さもないと君もあのチンピラの様に地面に這う事になるぞ。」
「君が欲しい物は何だ?」
彼はきょとんとした。会話が噛みあっていないと思ったのだろうか。
「俺がなりたいものは真の格闘家だ。そしてそれはお前からは得られない。そして人から与えられるモノでは無い!」
「ほおう…真の格闘家か。それは通り名では無いのか?」
私が言うとリュウは呆れた顔をした。
「これ以上君と話しても無駄な様だ。さようなら。組む相手なら別を当たってくれ。」
彼は私に背を向けて前方へと歩き出した。
当然、私は彼を追いかけた。
吸血鬼のダッシュをしてまるでテレポートしたかの様に彼の前に移動した。
「真の格闘家を目指す割には臆病だね。」
「なんだと。」
リュウは感情的になって私に向かってきた。
先程の技巧が毛頭無い程の力任せのパンチとキック。
その攻撃を私はある時は避け、ある時は手だけで防いだ。
「フェイント無しがこの程度だとしたら君は不意打ちでしか相手を倒せないんじゃないか?真の格闘家というのは不意打ち専門なのかな?」
私の言葉にリュウは溜息を付いた。
「今のはあえてやってみた。あの程度が俺の全てだと思われては困る。」
「全力でやっていると思っていたがね。」
リュウの次の攻撃が来た。
今度は力よりも手数を優先した攻撃。
フェイントでは無く様々な攻撃が織り交ざっていた。

98 :DIOの奇妙な放浪記 ◆HY8PJcqPrY :2007/08/19(日) 21:59:17 ID:fMuvR1EX0
それ等は全て私の顔面を狙って来る。
私はそれらを全て腕で防いだ。
まるで相手のジャブとストレートがほぼ同時にくるぐらいの数だった。
それらにまるで力が入っておらず囮である事がミエミエだった。
私は彼の本命を心待ちにしていた。
正直先程は彼の本命を小技のカウンターで切って落とす作戦を考えていた。
が、彼の攻撃を見るに考え直した。
技巧を持つ相手に小技で返す事は失礼では無いのか。
こちらも本命で返した方がいいのでは無いのか。
私は決断した。スタンドを一切使わずに相手を倒す。
それが私の勝利条件。
破ればその場で私は敗北となる。
突然、リュウのコンボが止んだ。
対峙している者同士にしかわからない程の僅かな時間。私が彼の本命に供えるのに充分な時間だった。
彼の拳が私の顎に向かってくるのが見え、私がその手首を握り潰そうとした次の瞬間、僅かな匂いが私の鼻を付いた。
それは100年程前に嗅いだ匂い。
私の脳と意識に刻み付けられた匂い、ジョナサンが発した波紋、そして自分の敗北の匂い。
その時、初めて私は彼を、リュウを“敵”と見なした。
生きる為に私は即座に判断した。
−−−−時よとまれ
私は全力で念じた。そして全ては静止した。
安堵と共に私は失望していた。
スタンドを使わないというルールを自分で破ってしまった事に。そしてスタンドを使わなければ波紋使いから逃げられない自分に。
それにしても意外だった。
波紋の使い手がこんな所にもいるとは。ましてやそれが格闘家だとは。
殺しておくべきか?否、騒がれると不味い。
不本意だが今は目立つのを避けなくてはならない。
去り際に私は彼を見た。
エネルギーを手に集めている。青白い光が手から漏れている。
さようなら。リュウ。いつの日か会おう。
そう心の中で呟くと私はその場から走り去った。

99 :作者の都合により名無しです:2007/08/20(月) 08:39:31 ID:KAcrG3F30
どなたか知らないけどディオとリュウの取り合わせは凄いな。
楽しみにしてます!

100 :作者の都合により名無しです:2007/08/20(月) 14:14:26 ID:CShqykeo0
>WHEN THE MAN COMES AROUND
さいさん復活おつかれさんです。
私生活で良い事悪い事色々あったみたいですな。
作品、たぶん最終局面突入ですね。
この作品の収束ともども婦警さんの話も期待してます。

>のび太と雲の王国
ちょっとVS氏ちっくだけど多分違うお方ですね。
のびたとドラえもんよりママの懐の深さがイカすw
400円玉とか800円玉とかいつまでたっても使えんなw
どなたか知らないけどまたの登場をお待ちしてます。

>DIOの奇妙な放浪記
トリップ付という事は、以前に書いてた方?
なんにせよ新規投稿お疲れ様です。でもちょっとディオ性格違うw
リュウは結構そのまんまですな。波紋と波動は確かにエネルギー似てるかもw
これは連載かな?読み切りのようにも読める。連載なら嬉しいな。

101 :作者の都合により名無しです:2007/08/20(月) 15:56:57 ID:q38lrAaD0
DIO作者さん乙華麗です。
日記形式でこのまま続いてくれるといいなあ、と思いますが
やっぱり最後のヒキからして単発かな?
リュウとの絡みをもっみてみたいですね。


のび太と雲の王国、よい感じのナンセンスギャグですね。
VSさんやサナダムシさんが少しご無沙汰だから、ぜひちょくちょく
書いて頂きたいのですが。また、楽しみに投稿待っておりますよ。

102 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/20(月) 20:58:24 ID:jS2OxMPD0
>>75
『ぐっ……や、やっぱりそうかよ……オレは未確認生命体第2号……そりゃ、こんなナリで
こんなバケモノと五分にケンカしてりゃあ、そう見えるのが自然っ……当然っ……! で、
こうして銃口を向けられることはむしろ必然っ……解ってた、解ってたけど……っ!』
と黒沢が歯軋りしてる内にコウモリ男はというと、回転灯とヘッドランプの光に苦しみ、
大きく羽ばたいて高く高く飛翔。あっけなく逃げてしまった。
何人かの警察官が発砲するが、数秒とかからずコウモリ男の姿は夜空の彼方へと消える。
「もういい、3号はほっとけ! それより2号だ!」
「了解!」
改めて、全員の銃口が黒沢に向けられた。慌てて野明が、
「待って下さい! この人は……」
「まだガタガタ言ってるのか! さっさと逃げろっ!」
杉田警部が苛立ち紛れに叫ぶが、野明は逃げない。
「違うんです、話を聞いて下さい! 今、3号に襲われていたあたしを助けてくれたのが、」
「バケモノ同士の仲間割れだ!」
「ですから、2号は違っ……」
「聞け、泉巡査!」
有無を言わさぬ杉田警部の気迫が、野明を抑え込んだ。
「今のそいつや3号、1号はそうやってバケモノ然としているからまだいい! だが、
もしそいつらが人間の言葉を覚え、人間に化けて、人間社会に潜り込んだりしたら
どうなる! どれだけの犠牲者が出るか、考えてみろ! それに、」
杉田警部の鋭い視線が、未確認生命体第2号・黒沢に突き刺さる。
「そいつと1号が暴れた日、何があったか忘れたわけではあるまい! あの場にいた
作業員たちを逃がす為に、俺たちの仲間が……多くの警察官が……もう、二度と、
あんな悲劇を繰り返させるわけにはいかん! 未確認どもは俺たち警察が根絶せねば、
市民の安全はない! それが死んでいった奴らへの供養であり、仇討ちでもある!」
「……っ」

103 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/20(月) 20:59:27 ID:jS2OxMPD0
「解ったらそこをどけ、泉巡査!」
圧倒されて何も言えなくなり、しかしそれでも野明は逃げない。どころか、黒沢の前に
出て大きく両腕を広げ、杉田たちに向かって立ちはだかった。壁に、盾になる格好だ。
この時、杉田が部下の桜井に小声で指示したのを、変身の効果で感覚が
超人化していた黒沢の耳に届いていた。
【仕方ない。俺が合図したら、一斉に撃て。既に3号を逃がしてしまった以上、ここで2号
まで逃がすわけにはいかん。全責任は俺が負うから、絶対に躊躇するなと皆に伝えろ】
『……っ! こ、こいつら、この子ごと俺を殺す気か……っ! ……いや、確かに、オレが
1号や3号となんら変わらない、殺人鬼バケモノなら……逃がすわけにはいかないって
のは正論っ……まして、この子は警察官であって一般市民じゃない……となりゃあ、
2号を撃つ為に犠牲になるのも……第一、今この子は、そのバケモノ2号の味方を
してるという……端から見りゃあ、撃たれても仕方のないことをしてるわけで……!』
黒沢の体に、絶望的な悪寒が走った。
まごまごしてたら、自分だけではない。何の罪もない(自分もないのだが)野明が巻き添え
になって撃ち殺される。無論、今のこの力で警察官たち相手に戦うわけにはいかないし、
といって慌てて背を向けて逃げ出したら、やはり一斉射撃で野明が巻き込まれるだろう。
そして、今そういう状況であることを、おそらく警察官である野明も自覚している。自分が
撃たれる可能性があることを、承知の上だろう。それでもズラリと並ぶ銃口の前に一人、
立っているのだ。自分が撃たれることさえ厭わず、黒沢を護ろうとして。
こうして後ろから見れば、頼りない小さな背中。それが今、銃弾の盾になろうとしている。
ほんの数日前まで何の関係もなかった、あえて言うならこっちが勝手に一目惚れ
しただけの女の子が、だ。
『ぐっ……な、なんてこった……っ! ガキの頃から、ろくに女の子と会話したことも
なかったのに……告白も失恋も手作り弁当も手編みのマフラーも三角関係の修羅場も、
何もかもすっ飛ばしていきなりこんな……こんな……状況かよ……っ! オレなんかの
為に、こんなオヤジの為に、しかもバケモノ化してる奴の為に命を張って……っ……!』

104 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/20(月) 21:00:22 ID:jS2OxMPD0
もう、黒沢に迷いはなかった。嗚咽で籠もった声を、野明の背中にかけていく。
「い、いぃ、泉……野明、ちゃん……だったよな……オレ、この名前を忘れない。
あんたの顔も、声も、言葉も、してくれたことも、全部……絶対忘れない……っ」
「えっ?」
「あの世に行ったら……三途の川で、鬼たちに自慢する。もし天国にいけたら、天使にも
神様にも自慢しまくってやる。オレは、こんな素晴らしい女の子に会えたんだぞって……」
「く、黒沢さん? 何を言ってるんです?」
野明が黒沢の方に振り向く。杉田が叫んだ。
「泉巡査! これが最後だ、そこをどけっ!」
野明が向き直って、叫び返す。
「嫌ですっ! だってこの人は黒さ……いえ、その、未確認生命体ですけど、
でも彼は違います! 2号はあたしたちの味方で、」
もはや野明を説得するのは無理かと諦めた杉田の手が、上がりかける。黒沢が言った。
「……さよならだ」
野明の体が綿毛のように軽々と持ち上げられて、紙飛行機のように投げつけ
られた。真正面にいる警察官たちに向かって、黒沢の手で。
数名の警察官が慌てて銃を捨て、野明を受け止める。と同時に、
「今だ撃て! 撃ち殺せええええええええぇぇぇぇっ!」
絶え間ないノズルフラッシュが、辺りを昼間のように照らしだす。
膨大な硝煙が、まるで煙幕のように周囲に立ち込める。
轟き響く無数の銃声が、野明の悲鳴をかき消した。

105 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/08/20(月) 21:03:11 ID:jS2OxMPD0
もし一条さんが女性だったら、こんな雰囲気にもなったのかなと妄想。でもあれだけ美人揃い
の女性陣に囲まれて、脇目もふらずに「大丈夫です、一条さん!」だったからなぁ五代君。まぁ
おかげで観てる側としては、そうか公式なのかと遠慮なくいろいろ……いやその。
あと、原作ご存知の方へ。白は赤の半分の性能ということですので、耐久力や回復力なども
それに準拠するということでご理解下さい。

>>さいさん(HPで、少しずつ元気回復してくの見てました。祝復活! 饅頭一万個!)
難敵を前に、どうやったら倒せるのか冷静に考え……出た結論がそれかっ、と突っ込もうと
したら見事勝利。立場的に熱血格闘バカの諌め役っぽいのに、戦闘スタイルは熱血格闘。
面白い人です。そんな、肉体も精神も強固な彼が次回どうする? 拳や脚ではどうにも……

>>雲の王国さん
全ひみつ道具の中でも屈指のネタ道具バイバイン。倍々に増えていくブツをどうするかって
のがこの道具の物語のキモでしょうに、その根本の根本をネタにしてしまうとは……凄い。
コンビニで売ってるが子供にゃ売れない謎の物体ムーゴーの正体は、永遠に謎なんでしょね。

>>奇妙な放浪記さん
原作準拠のシリアスかと思ったら、いきなりナリタのお茶目っぷり。そして戦い始めると原作
に負けぬ魅力を披露。ルールを定めるとこ、男らしいカッコよさとDIOらしい自信家・ナルシー
っぷりが出てますね。波動と波紋ってのも思いきり予想外でしたし、ぜひ続きor別短編をば!

>>79
今更〜♪ 「ハンガー!」「はいっ」(バキッ!)「違〜う! 木のやつ!」……大好きです。

106 :作者の都合により名無しです:2007/08/20(月) 21:45:22 ID:ZrJCNO4e0
そりゃ、バケモノですしねぇ
おっさん頑張れ
頑張れおっさん

……しかし黒沢さん青春がリアルすぎです…

107 :作者の都合により名無しです:2007/08/20(月) 23:20:16 ID:et9AA87P0
ふらーりさん乙
ふらーりさんの書く黒沢は原作より可愛いな

雲の王国はVSさんらしい。本格復活だとうれしいな

ディオの人、続き書いてほしいな。結構面白かった

108 :作者の都合により名無しです:2007/08/21(火) 08:38:21 ID:rS7+BiBE0
もうすぐ終わり、ふら〜りさんの黒沢も?
ノアとの絡み好きだなあ。

109 :作者の都合により名無しです:2007/08/21(火) 12:31:59 ID:GWXgYNi60
バキスレ持ち直してきたな。良かった。
ふらーりさんの作品が終わりそうだけど・・

110 :作者の都合により名無しです:2007/08/21(火) 15:18:17 ID:7SoxBmLh0
白書氏、スターダスト氏、さい氏、VS氏と戻ってきてくれたからな
サマサ氏、ハイデッカ氏やミドリさん、サナダムシ氏も帰ってこないかな

111 :作者の都合により名無しです:2007/08/21(火) 22:56:18 ID:dGp3Lp1O0
うみにんさん結局こなかったな前スレ

112 :作者の都合により名無しです:2007/08/22(水) 17:56:36 ID:zCK5g4Aj0
復活ブームが起きるといいな
ハロイさんとエニアさんもファンだから復活して欲しい

113 :作者の都合により名無しです:2007/08/22(水) 23:55:17 ID:lw+tKLf90
銀杏丸も最近見ないね

114 :作者の都合により名無しです:2007/08/23(木) 18:24:56 ID:9ibeEhH90
週末、また沢山来るといいな

115 :作者の都合により名無しです:2007/08/24(金) 08:29:23 ID:ItulyUNj0
NBさんやネウロの人も来ないなあ

116 :作者の都合により名無しです:2007/08/24(金) 23:14:35 ID:Z6NdzS0Z0
1ヶ月くらいかけないかも・・

117 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/08/26(日) 08:04:46 ID:K+BIO1Uz0
ご無沙汰してます。
誠に勝手ながら、しばらくお休みをいただきます。

えー、実はこことは別に同人ノベルゲー制作に参加しているのですが、そっちのほうの尻に火が付きました。
ことここに至り、二足の草鞋は無理じゃね?ということで、申し訳ないですが締め切りの存在しないこちらを後回しにすることにしました。
アホの分際で好き勝手書き散らした挙句、中途半端な状況で一時中断する羽目に陥ってしまい、慙愧の至りであります。

そういうわけですので、「ヴィクティム・レッド」「シュガーハート&ヴァニラソウル」「脳噛ネウロは間違えない」は
テンプレから外していただいても構いません。
なるべく早く戻ってくるよう努力しますので、気長に待っていただけるとありがたいです。
目標は年内の復帰です。

本っっ当、尻軽ですみません。

118 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/26(日) 13:11:32 ID:oBYr9vfA0
>>104
《その後、重症を負いながらも現場から逃走した未確認生命体第2号の行方は掴めて
おりません。第1号と第3号も手がかりが全くなく、更なる被害拡大が予想されます。
警察では事態を重く……》
そんなニュースがテレビで雑誌で新聞で流されている中、当の警察では未確認生命体事件
が広域指定されていた。医学や考古学など各方面の識者から広く協力を仰いで、事態の
解明・事件の解決へと向かう為である。
未確認生命体と数多く接触して生き延びた野明も、事件を直接経験した貴重な警察官
として対策本部に組み込まれた。のだが、
「未確認生命体第2号は、駆除対象から除外すべきです!」
警視庁、対策本部の会議室。まず野明が主張したのがこれだった。
会議室最奥、中央に陣取る松倉本部長が報告書を手に渋い顔で応える。
「杉田君からも話は聞いたが……」
「第2号は、第3号に襲われていたあたしを助けてくれました! 第1号の時だって
そうです! 彼はあたしたち人間の為にたった一人で戦って、」
「落ち着いてくれ泉巡査。杉田君も言ったはずだぞ、それは単に奴ら同士の仲間割れ
だと。第2号が人間の味方だなどと、そんなことをどうやって証明する気だ」
証明、と言われて野明は詰まる。正体が黒沢さんなんです、とバラすのは簡単だが今それを
やったら黒沢がどうなるかわからない。というか多分、いや間違いなく、実験材料にされる。
松倉は野明をなだめて、会議を進めた。
「泉巡査、とにかく座ってくれ。……諸君、未確認生命体は今のところ、遺跡調査隊の
ビデオに映っていた奴を便宜的に第零号とし、第1号から第3号まで計四体確認された。
だが遺跡付近に集団の墓地のようなものが発見され、零号以外はそこから出てきたと
推測されている。とすると奴らの総数は少なく見ても二百に達し……」
松倉を中心に、各県警から選抜されたメンバーが少ない情報を元に対策を練っていく。
もう普通の拳銃では太刀打ちできないことが確定しているので、更なる重火器や新開発の
化学兵器なども投入し、とにかく一刻も早く未確認生命体どもを根絶すべしという方針だ。
もちろんその中には未確認生命体第2号、黒沢も含まれている。
『……早く、早く何とかしないと、黒沢さんが……』
野明は焦る。が、ここまで事件が大きくなってしまうと、一巡査である彼女には
どうすることもできなかった。

119 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/26(日) 13:13:44 ID:oBYr9vfA0
町外れにある廃工場の奥。真昼間だが薄暗く、人気のないこの場所で黒沢は倒れていた。
横たわっていた、とか寝転がっていた、ではない。痛みと疲労に包まれて倒れ伏していた。
『しかし……それにしても……生きて、るんだなオレは……普通、死ぬだろ……何十発
なのか数えてねえが、ヘタすりゃ百発以上の銃弾を浴びて……でも、自力で逃げ切って……
今、ここでこうしてる……はぁ……やっぱり、バケモノになっちまったんだな……』
ゴロリと仰向けになって、高くて汚い天井を見た。視力も意識もはっきりしている。全身に
痛みが残ってはいるものの、本来ならハチの巣になってるはずの体が弾痕型のアザだらけと
いう程度で済んでいるのだから、我がことながら驚異で脅威だ。第3号に噛みつかれた
跡だけは血が滲んでいるが、それとてどんどん治癒していくのが感じられる。
あのベルトによって与えられた生命力か。これが人外の、未確認生命体第2号様の力か。
『そのおかげで殺されかけて、そのおかげで助かって……ってことか。ふざけた話だ……』
昨夜は生まれて初めて、事情はどうあれ自分の存在を女の子に強く意識された。が、
それは自分もその子も死にかけた現場。そして自分自身が、もう完全に人間では
なくなったと銃弾で思い知らされた事件。
生涯、最初で最後だろう。あんな可愛い子に真剣に名を呼ばれ、庇われて……だが、
もしまた会えば、また同じような事態を招きかねない。それだけは絶対にダメだ。
『♪もうこれで帰れない……さすらいの旅路だけ……この安らぎのこころ……
知った今では……ってか……』
黒沢の口から力なく、諦めきった声で歌が漏れる。
『そうだな……旅に出よう。そしてどこかで野垂れ死のう……それしかねぇ……』
そんなことを考えている間にも、肉体は精神を無視してどんどん回復していく。多分、
日が沈む頃には全快しているだろう。そしたらどこか遠くへ行こう。うん。そうしよう。
今や職場の仲間にも、もちろん野明にも、お別れを告げに行くことはできない。だから
その代わりに、思い出の場所でも拝んでおくか……とか。
黒沢は、そんなことをぼんやりと考えていた。

120 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/26(日) 13:14:52 ID:oBYr9vfA0
日が沈む頃。警視庁では未確認生命体の対策会議が一段落していた。各員の配置が
定まり、配備される兵器の説明や、各種研究開発を行う科警研との打ち合わせなども
終えて、とりあえず解散。皆それぞれに一息ついていた。
野明はというと結局何もできず、がっくりと肩を落として会議室を出た。そこで面会
希望者が来ていると連絡を受け、まさか黒沢さんが? と慌てて喫茶室へ向かう。
そこにいたのは、
「テレビや新聞で2号が撃たれたって……僕、もうどうしていいか……相談できるお巡りさん
なんていないし、もしかしたら、あなたなら何とかしてくれるかもって、それで……」
ぐしぐし泣きながらアイスコーヒーをかき混ぜている、浅井だった。
「あの、えっと、泉さんは昨日、2号を庇ったそうですよね。自分を助けてくれたからって。
ニュースで聞きました。じゃあ2号の味方をしてくれるかも、って思って」
『あ……そういえばこの人も、1号が暴れた時に、2号に助けられてる。しかも黒沢さんの
同僚。ということは、もしかしてこの人も知ってる……?』
野明は一つ深呼吸をしてから向かいの席に着き、慎重に言葉を選んで浅井に語りかけた。
「仰る通りです。あたしは昨日、2号を庇いました。1号の時と昨日の3号と、二度も
助けられているんですから。それに何より、あたしは2号のことを知っています」
「えっ?」
「今、黒沢さんはどこにおられます? ひどい怪我で寝込んでおられるとか……」
「! やっぱり知ってるんですね、泉さん!」
大声を上げて立ち上がった浅井が、周囲の注目を浴びる。口を押さえて座り直した浅井に、
今度は野明が立ち上がって身を乗り出し、囁いた。
「見たんです。昨日、あたしが3号に襲われた時に。黒沢さんが助けにきてくれて、
あたしの目の前で……」
「またベルトの力で、2号になったんですね」
「ベルト?」
「ああ、そこは知らないんですか。じゃあ全部説明します。泉さんと会ったあの日……」
浅井は順を追って説明した。1号に警察官たちが惨殺され、イングラムも破壊された時、
野明が襲われかけて黒沢が叫んで1号がやってきてベルトを着け2号に変身したこと。そして
昨夜、2号が警察の包囲から逃走した事件以来、黒沢がアパートに帰っていないことを。

121 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/26(日) 13:16:55 ID:oBYr9vfA0
「……そんな……」
黒沢が未確認生命体第2号になった経緯と現状を知り、たたでさえ色濃く疲労を浮かべて
いた野明の顔から、更にみるみる血の気が引いていく。
「あ、あ、あたしのせいだ……あの時、あたしを1号から護る為に……昨日だって、逃げろと
言ってくれたのをあたしが踏み止まって、そのせいで黒沢さんはあの場で変身することに
なって……通報されて、包囲されて、撃たれた……何もかも全部、あたしのせい……」
「あ、あの、泉さん?」
紙のように白くなった顔、焦点の合わぬ瞳でブツブツ言っている野明の前で、浅井が
手を振ってみる。が野明にはそれが見えていない。
「そういえば……黒沢さんは1号とも3号とも戦って、両方まだ生きてる……もし、
その二匹が黒沢さんを見つけたら……二匹がかりで襲われたら……!」
一対一でも劣勢だったのだ。二対一では勝ち目はない。しかもその戦いの場に警察が
駆けつけたりしたら、二匹がかりで傷つけられたところにまた一斉射撃を喰らうことになる。
そうなったらもう、確実に黒沢は死ぬ。殺される。
野明の脳裏に、あの日の惨劇が蘇った。あの日、大勢の人が殺された現場で何も
できなかった野明。そして今また、野明を護る為に己が身を捨てて戦ってくれた黒沢が、

『オレ、あんたのこと忘れない。あんたの顔も、声も、言葉も、してくれたことも、全部。
絶対忘れない……さよならだ』

「だ、だめ……やめて、そんなの……」
力なく震える野明が、力いっぱい両の拳を握った。
こうなったら1号・3号や警察より先に何とかするしかない。しかしどちらも説得は不可能。
となれば残された道は実力行使のみ。無論、警察組織の力は借りられない。自分一人でだ。
「……浅井さん。もし黒沢さんに連絡がついたら、伝えておいて下さい。もう二度と、
未確認生命体とは戦わないようにと。そしてあたしが、こう言っていたと」
お礼の言葉で足りることではない。謝って許して貰えるような事態ではない。けど、せめて。
「ありがとう……ごめんなさい、と」
浅井の返事を待たず、野明は踵を返して走り去った。

122 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/08/26(日) 13:23:18 ID:oBYr9vfA0
野明も黒沢さんも、落ち込むときはとことん落ち込む人。でもそこから立ち上がれる人。
「泣くのは構わない、だが前へ歩きながら泣け」。某ラノベの仙女の言葉です。

>>ハロイさん
残念ですが、左様な事態なれば致し方なきこと。復帰の日をお待ち申しておりまする。


123 :作者の都合により名無しです:2007/08/26(日) 17:36:09 ID:ik4io09d0
ふらーりさん乙。
でもなんかもうすぐ終わりそうだな・・


ハロイさん、なるべく早く帰ってきてね。
でもネウロもハロイさんだったのか!

124 :作者の都合により名無しです:2007/08/26(日) 22:02:38 ID:pQnXGRM+0
>ハロイさん
正直ショックだなあ。三本とも好きだったんで。
なるべく早く戻ってきてね。
戻るって言って戻らない人が結構いるからちょっと心配…


>ふら〜りさん
お疲れ様です。野明の前で男前の黒沢、見せますね。
震えながら男を見せる黒沢は原作譲りだなあ。
でもこの作品ももうすぐ終わりそう。バキスレどうなっちゃうんだろ。

125 :作者の都合により名無しです:2007/08/27(月) 05:29:20 ID:Jpa+B9ng0
ちょっと通りますよ

【30代以上】居酒屋「オトナ家」【全板SSスレ住人】
http://bubble6.2ch.net/test/read.cgi/nendai/1188158092/

126 :作者の都合により名無しです:2007/08/27(月) 15:22:08 ID:2vBk+Qwo0
ふらーりさん乙です。
パトレイバー世界に黒沢は正直無理かと思ってましたが
ふらーりさんお得意のコラボで上手くまとまってますね。
あと2、3話くらいで終わってしまうのかな?



あとハロイさん、お暇な時にでも書いてくれると嬉しいです。

127 :作者の都合により名無しです:2007/08/27(月) 17:07:57 ID:84ouHchc0
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1184419565/

128 :作者の都合により名無しです:2007/08/28(火) 13:20:44 ID:BX022eKw0
9月からはサマサさんも復活するみたいだし
銀杏丸さんも復帰しそうだしハイデッカさんも現スレには
書いてくれるらしいし、大丈夫でしょ

129 :作者の都合により名無しです:2007/08/28(火) 23:49:38 ID:LkOFshL20
復活するとか言って
しない人のほうが多いからなあ・・

130 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 21:50:13 ID:Cny8+vaT0

「大将軍だとぉお!」

歓喜の声を上げたのは、覇道武者魔殺駆(はどうむしゃまざく)だ。
十五年前の大戦においては当時の闇の化身・闇帝王のもと、新生闇軍団を指揮し、
天宮を壊滅寸前にまで追い込んだテロリストであり、その鎧姿から真紅の闇将軍と呼ばれた男である。
彼が今までこうして乱を起こしてきたのは、闇帝王の命令・ぷろぐらむがあったからでもあるが、
なによりも彼は闘うことを至上の喜びとして生きてきた事が大きい。
嘗ての大戦ではとうとう新生大将軍と干戈を交えることなく地下に潜伏したため、
その思いは尚更強くなっていた。
そう、闇魔神復活の触媒として用意された超呪導武者クラヤミを乗っ取り、
機動武者大鋼と対を成すほど巨大な武者へと身を変えることが出来るほどに!
その大鋼も、先ほどの闇の結界の影響からか、
登場したときと同じ形態へと変化したままじっと亀の用に魔殺駆の攻撃に耐えるばかりだ。
なるほど、確かに伝説のからくり師・火炎の駄舞留精太の逸品だ。
闇の力を得て遥かにパワーアップした魔殺駆の全力の一撃をもってしても、
倒れこそすれ、傷らしい傷を負っていない。
故に、魔殺駆の鬱屈は晴らされていない。


131 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 21:54:20 ID:Cny8+vaT0
そこに大将軍の誕生である。
魔殺駆は、歓喜に震えた。

「超将軍も、大鋼もワシの相手には力量不足!
 飛駆鳥大将軍!貴様こそワシの求めた宿敵よ!」

叫びながら飛駆鳥に踊りかかる魔殺駆だが、無論これが闇魔神の窮地を救う結果になることは理解していた。
しかし、魔殺駆の闘争本能はそういった理性を吹き飛ばしていた。
天宮最強の武者・大将軍と戦い、これを打倒す事。
只それだけが魔殺駆を塗りつぶしていた。

「魔殺駆!今は貴様と戦っている時じゃない!
 分からないのか!天の島が落下しているんだぞ!」

魔殺駆の袈裟懸けの一撃を、飛駆鳥大将軍は、避け際に蹴り飛ばすというおまけ付きで、
まるで木の葉が舞うようにしてかわした。
魔殺駆は歓喜した。
なんと言う身のこなしだ、これが先ほどの小童か?
これが先ほどまで自分の無力に泣いていた小童か?
流石は大将軍!流石は最強の武者!
力強い武者と合間見えることこそ、魔殺駆の本懐なのだ。

「天の島など知ったことか!小僧!
 ワシはただ最強の武者と戦うだけよ!」

若い飛駆鳥は、激怒した。

「…ッ!貴様ぁあああああああああ!
 そんな事のためだけに!」

132 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 21:58:25 ID:Cny8+vaT0
激情と共に魔殺駆を殴り飛ばす。
魔殺駆の反応速度を遥かに凌駕する、閃光そのもののような連続攻撃である。
もとより飛駆鳥は機動性に富んだ戦法を得意とする烈空頑駄無の弟子だ、
光の翼、真魔破閃光翼(しんまっはびーむうぃんぐ)をはためかせながらの連続攻撃を、
魔殺駆は成すがままに受けるしかなかった。

「そんな事のために、影舞乱夢に!赤流火穏に!」

彼は大将軍の息子として、影舞乱夢や赤流火穏の者をしっている。
炎の獅子王・阿修羅王や、後に影舞乱夢中興の祖といわれる白龍大帝とも面識がある。
十六年前、光と闇との地上最強の戦いで父と共に闘った同志であり、
国主としての責務に追われながらも、時間を作って天宮まで尋ねてくる彼らを飛駆鳥は好いていたし、
尊敬の念を抱いていた。

「天の島を落とし!民を苦しめたのか!この外道が!」

その彼らの国が焼かれ、そして今天宮もまた闇の軍勢の災禍に苛まれている。
父も、祖父も、自分も、弟も、皆天宮を愛している。
愛する天宮を弄ぶ理由が、只闘いたいからだという。
飛駆鳥の黄金の魂が怒りに燃えて煌いた。

「それこそがワシの存在意義だからだ!
 戦い!殺し!争い!屠る!戦闘こそが!戦争こそが!戦場こそが!
 それが!魔道に身を落としてまでも追求したこのワシの存在意義なのだよ!小僧!」


133 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 22:10:31 ID:Cny8+vaT0
抜き打ち一閃!
飛駆鳥大将軍奥義、金剛飛燕竜巻返しが魔殺駆の巨体を飲み込んでいた。

「知ッ・るッ・かぁああああああああああ!
 こぉのッ!分からず屋が!」

光の大将軍の最高の一撃は、容易く魔殺駆を屠っていた。
それが余りにもあっけなさ過ぎて、飛駆鳥は虚しくなった。

「こんなものがお前が生涯をかけて追求したものだったのか…」

呟きに答えが返ってきて、飛駆鳥ははっとした。
まだ息があったのかと、魔殺駆をみるが、その命は風前の灯火であると知る。

「そうとも…。
 ああ、満足だァ…。くくく、大将軍よ、お前は…強い。
 だが、もう天宮もお終いだ。
 天の島は、もう、止められん…」

満足気に笑みを浮かべながら魔殺駆は死んだ。
だが、魔殺駆が今わの際に見た幻影を現実のものとするわけにはいかないのだ!

「兄上!闇魔神が!」

弟、舞威丸の声に飛駆鳥は天を仰ぎ見た。
もはや肉眼ではっきりと見える天の島に向かって、闇魔神が昇って行くではないか!
確実に天の島を落とす為、天の島と一体化するつもりなのだ!

134 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 22:21:30 ID:Cny8+vaT0

「解った!行くぞ舞威丸!」

大輝煌鳳凰(まきしまむふぇにっくす)形態へと変型した飛駆鳥大将軍は、
再び機動武者形態となった大鋼を伴い天へと駆け上がっていく。

「はい!兄上!」

大鋼の巨体をほぼ牽引する形とはいえ、亜光速の最大速度を誇る飛駆鳥大将軍である。
先行する闇魔神に追いつくことなど容易い。
だが、闇魔神が天の島と一体化することのほうが僅かに速かったのだ!
その本質がエネルギー生命体である闇魔神だ。物質との融合など容易い。
遥かな太古、サイド3・ジオン公国が用いた悪夢の一撃を模したのは、
ヤミが持つ膨大な戦争記録の中で最もインパクトのある手段であったからだ。
ラグランジュポイントにあったそれは、闇魔神の力によって静止軌道を離れ、
魔殺駆に与えられた特殊プログラムによって十五年のときを経て、
影舞乱夢に、赤流火穏に、天宮に向かって突き進んだのだった。

「ぬぅはははははははははは!
 止めようとしても!無駄だ!重力の手に掴まれたぞ!」

天の島。それは、かつてスペースコロニーと呼ばれた建造物である。
地球連邦政府樹立と共に提唱された宇宙移民計画の旗頭であり、
ジオン独立戦争、俗に一年戦争と呼ばれた人類史上未曾有の大戦以降、何度とも無く戦乱の温床となった。
宇宙空間に飛び出した人類は、戦争を忘れることが出来なかったのだ。
そして、幾星霜。
人類が母なる星を離れ、その地上に新たな種が繁栄を築き上げる頃、
巨大な墓標としてラグランジュポイントに浮かぶそれは、
ジオンの大悪行コロニー落としになぞらえて、
天宮を打ち滅ぼす攻城槌として用いられたのである。


135 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 22:26:18 ID:Cny8+vaT0

「大将軍よ!かつてこの天の島には億という民が居た!」

千力を叩きのめした闇色の砲撃が無数に襲い掛かるが、
今の飛駆鳥には礫を払うようにして切り払う事ができた。

「これ一つだけではないぞ!無数に天の島はあったのだ!
 だが!愚かにも戦を起こして消え去った!
 それが本質なのだ!」

故に!という叫びと共に闇色の弾丸が飛駆鳥に向かって打ち出される。

「ワシは全てを零に戻すのよ!
 光も!闇も!何も無い原始の混沌へと帰すのだ!」

しかし、しかし、飛駆鳥はその声にも、雲霞のごとき攻撃の群れにも怯まず、屈せず、突き進む。
天の島そのものと化した闇魔神を倒すには、天の島ごと消滅させるより他に無い。

「何を愚かというのだ!
 生きることは戦いなんだ!
 肉体を持つことすら出来ないお前なんかに!命の本質そのものを愚弄されて━━」


136 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 22:37:01 ID:Cny8+vaT0
光の鳳凰へと変化した飛駆鳥は、光の翼をはためかせると、天の島に向かって突撃を敢行する。
直系三キロの巨大建造物だが、その巨大さゆえに機動性など皆無に等しく、
何より経年劣化した外壁に、亜光速の突撃を防ぐだけの耐久性などなかった。

「たぁまぁるぅううううかぁあああああああああ!」

荒唐無稽というのは、このような光景を言うのだろう。
ユニバーサルセンチュリーに生きていた者がこの光景を見ることが出来たら、
ただ呆然とするより他にないだろう。
スペースコロニーが唐竹割りにされる光景など、ありえるはずが無いのだから。

「あまいぞ小童!
 たとえ半減したとて、この質量だ!
 天宮を滅ぼすには十二分よ!」

二つに分かれた天の島のうち、ひとつは軌道を外れて飛んでいく。
だが、もう一つは未だ大気圏突入体勢を保ったままだ。

「甘いのはそっちだ!闇魔神!ここにいるのは俺一人じゃない!
 舞威丸ッ!」

舞威丸はあらかじめこの事態を予見していたのだろう、神童と呼ばれるだけのことはある。

「はい!兄上!
 大鋼!天宮を!天宮に生きる皆を救ってくれぇええええええええええええええ!」


137 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 22:43:22 ID:Cny8+vaT0
大鋼の肩部装甲が展開され、光る宝玉が現れる。
太陽鋼砲。
大鋼の前身となった発掘兵器である。
その名の通り、太陽の力を弾丸と化す超エネルギー兵器であり、大鋼そのものの動力源でもある。
先ほどまでの魔殺駆との死闘によってだいぶエネルギーは減っていたが、
それでも半減した天の島を消し飛ばすくらいはある。
舞威丸の絶叫と共に打ち出されたエネルギーの奔流は、天の島の片割れを見事にけし飛ばしたのだった。

「はははははは!この闇魔神の裏を書くとはやってくれたな!小童ども!
 その褒美に、貴様らの愛する天宮が滅びる様を特等席で見ているがいい!」

敵もさる者というべきか、見事してやられたというべきか、
軌道を外れたはずの片割れが再び軌道に戻ったのだ。
天の島そのものとなった闇魔神である、たとえ質量が半減したとて、闇魔神であることにかわりは無いのだ!
既に大気圏に突入し、赤熱している天の島である。
飛駆鳥の亜光速をもって突撃すれば、彼自身が燃え尽きてしまいかねない入射角になっていた。

「…舞威丸。天宮を頼んだぞ。
 父上に母上に、そして七人の超将軍たちには笑って死んでいったと伝えてくれ」

しかし、若い魂はその程度のことに臆したりはしない。

「兄上!駄目です!
 兄上は大将軍なんですよ!こんな所で死んではいけません!」

「黙れ!舞威丸!
 大将軍だからこそ、やらねばならぬのだ!」

138 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 22:47:00 ID:Cny8+vaT0
飛駆鳥の前に立ち塞がった大鋼を見て、飛駆鳥はそれが舞威丸の操作だと信じて疑わなかった。
しかし飛駆鳥は、それが大鋼自身の行動だと即座に理解した。
彼ら兄弟の魂の鼓動を感じ取った機動武者大鋼は、己の不甲斐無さに激怒していた。
何のためのこの巨躯か、何のための四肢か、何の為の機動武者かと…。
その怒りが、エネルギーの尽きかけた巨大武者を突き動かしていたのだ。

「大鋼?何を!」

胸部装甲板が展開され、そこから射出された舞威丸は飛駆鳥に抱きとめられる。
次に彼ら兄弟が見たのは、信じられないほどの加速で燃え盛る天の島へと突撃する大鋼の姿だった。
あっという間に天の島の先端に取り付くと、大鋼はその勢いのまま押し戻し始めたのだ。
だが、闇魔神と一体化した天の島である、大鋼の出力をもってしても押し戻すことは出来ず、
ただほんの少しばかり突入速度が緩やかに成っただけだった。

「ぬぅ、この木偶めが!」

闇魔神の悪態は、そのまま驚愕の叫び声へと変わった。
天の島を押し戻す形のまま、大鋼は太陽鋼砲発射形態へ移行したのだ。
零距離射撃。
気付いた闇魔神だったが、この状態では何も出来ない。
武器やエネルギーを打ち出しても大気との摩擦熱で消滅してしまうのだ。

赤熱する巨躯とて、無事ではすまない。
だが、若い命をすてでも天宮を護らんとする飛駆鳥と舞威丸の魂の熱が大鋼に宿っていた。
全エネルギーを開放した禁断のリミッターカットモードである。
この一瞬の為に火炎の駄舞留精太は己を巨人へと改造したに違いない、そう確信した大鋼の行動だった。


139 :七人の超将軍!!!:2007/08/29(水) 22:51:37 ID:Cny8+vaT0
━━━━━━━━━━━━━━そして━━━━━━━━━━━━━━

太陽鋼砲の煌きが天宮、影舞乱夢を、赤流火穏を照らした。
悪無覇域山にて敵残党をあらかた片付けた超将軍たちもその煌きを見た。
━━「おお!天の島がふっとんだ!」━━「舞威丸は…、飛駆鳥はどうなったんだ!」━━
混乱状態に陥りかけた彼らだったが、天地頑駄無があるものを指差した瞬間、それが安堵の声へと変わった。

「飛駆鳥だ!舞威丸も無事だぞ!」

鳳凰形態の背に舞威丸を乗せた飛駆鳥が悪無覇域山へと戻ってきたのだ。

「ありがとう…、大鋼。
 ありがとう…」
兄の背の上で、舞威丸は天に消えた大鋼に礼を言った。

悪無覇域山の地下深く古より頑駄無たちを見守り続けた大鋼。
今、大鋼は天空より天宮を見守る━━
七人の超将軍たち、飛駆鳥大将軍、そして舞威丸は再び新たな戦いに挑むだろう。
新たな時代を築き、守りぬくための戦いが━━

そして、その戦いをも大鋼は見届けるのだ。

頑強なる心を持ちて
悪を駄(の)せし輩を
無に帰せしめし者━━━

━━━━━即ち、頑駄無━━━━

七人の超将軍編、完

140 :作者の都合により名無しです:2007/08/29(水) 22:55:23 ID:NIzEj3KY0
銀杏丸さんお疲れ様。そしてお帰り。
でも、帰ってきていきなり終わってしまったかw
この武者ガンダムはよくわからないけど楽しめました。
もうひとつの連載も復活してね。

141 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/08/29(水) 22:56:40 ID:Cny8+vaT0
丸々一月もお休みして申し訳ないです。
色々ありましたが、つまるところ仕事してましたとしか言いようがなくて…

そんなこんなで七人の超将軍!完結でございます
予定じゃコロニーの中で飛駆鳥がドンパチしたりしましたが、
あまりにも容量がでかくなったので泣く泣く切ったりしました
リグシャッコーやサンスパインをたたっきる飛駆鳥なんてネタはさすがにやり過ぎだと銀杏丸自重しました
ちなみに、質量爆弾というのは結構洒落にならない威力がありまして
銀杏丸の心酔するガンダムセンチネルのラストでも、UCの新撰組ことニューディサイズが使っていたりします。

前スレ>>344さん
80年代後半から93年までのテレビシリーズがなかった時期、ガンダムそのものを支えたのが
この一連のSDガンダムであったりします
元祖SDとかBB戦士とか十代の方はもう知らないのかもしれませんねぇ…

前スレ>>352さん
いやもう、すみません…

前スレ>>354さん
21世紀のファーストガンダムことSDガンダムフォースの元ネタになっただけのことはあり
最終決戦ではみんなで集まってファイト!っていうのは伝統であったりします
決戦の後は大団円!っていうのは後味よくていいですよ

前スレ>>375さん
まだ勤め人ですよ


142 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/08/29(水) 22:58:25 ID:Cny8+vaT0
ハイデッカの旦那
僕がいえた義理じゃないですが、ご無事で何よりです
気長にまってます

スターダストさん(ようやく司馬慰サザビーゲットできました、なんだこの出来のよさは!)
すみません、結局八月も終わりというのに斗貴子さんを戦闘神話にだせませんでした…
やっぱり斗貴子さんは羅刹のようなツンがないと映えません、が、そこはスターダストさんの筆
見事に羅刹・斗貴子でこの銀杏丸とてもうれしいです
兵馬俑の武装連金、またネタというか特性がかぶりました、ごめんなさい
影武者の武装連金って、やっぱり使っちゃいますよね…

さいさん
シグルイは是非ともお勧めしたい漫画のひとつです
どうでもいいですが、アニメシグルイのキャッチコピーの「目覚めよ、日本人」ってのはナシじゃなかろうかと
あんなんが増えたら困ります、人の話聞かない連中ばっかで…
シグルイがアニメ化する前のことですが、シグルイスレにてもしアニメ化したら虎眼先生は誰が声を当てるんだろうか?
という話題ではみんなして若本御大だと推挙していたのが思い出深いです
朗読CDの若本版虎眼先生、原作とは違ったベクトルでおっかねぇっす
駿河城御前試合の作者の南條先生ってどんな人だったんだろう…

ふら〜りさん
長らくの不在、まことに失礼しました。
以前も言いましたが、ふら〜りさんの一言で連載を始めた身としては何とか復帰せねば、
と、思うばかりで空回りのここ半月でございました…
しかし、黒沢さんとクウガ。この組み合わせは広大なネットの海を探しても
ふら〜りさん以外には思いつかない組み合わせだろうと驚くこと仕切りであります、
ただ単純にスゲェ!

では、またお会いしましょう!

143 :作者の都合により名無しです:2007/08/30(木) 08:32:12 ID:99fbJcno0
おお銀ちゃんお帰り&お疲れ。
完結は残念だけど、最後まで書いてくれてありがとう
また戻ってきてくれ。

144 :作者の都合により名無しです:2007/08/30(木) 11:54:19 ID:rxklEgn/0
銀杏丸さんお疲れです。
この作品は終わってしまいましたが、戦闘神話もお待ちしております。

145 :作者の都合により名無しです:2007/08/30(木) 18:01:32 ID:Z4vlGWv30
銀杏丸やっと仕事やめてくれたか。
お疲れ様。頑張れ。

146 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/08/30(木) 21:15:20 ID:P5dmO4u00
act.3
想定外の事態に、紫龍は焦っていた。
一つ、敵の戦闘能力。
青銅レベルでここまでてこずるのならば、今の聖域にとっては十分に脅威たりえる。
多兵に戦術は必要ない。
聖闘士だろうとも、数は暴力たりえるのだ。
平均的な白銀聖闘士にとって、青銅聖闘士一人は脅威足り得ないが、
青銅聖闘士十人ならば戦力的脅威となり、三十人ともなれば敗北は免れない。
聖闘士対聖闘士という事態そのものが万が一以下の稀有な事態なのだが。
現在の聖域は、その白銀聖闘士ですら十名に満たぬ有様なのだ。
最高戦力にして最高幹部である黄金聖闘士にいたっては、経験不足の小僧僅か二名。
紫龍たち神聖闘士たちは最大五名だが、
星矢・一輝・氷河は聖域に常駐している訳ではないので、事実上二名。
第二次大戦以降、聖闘士の総数は減少傾向にあり、サガの乱によって大きくその数を減らしている為、
現時点の聖域は戦力不足の状態にある。
対する相手側・錬金戦団は、この程度の小競り合いで惜しげもなくこの数を投入してくるのだから、
今の未熟な白銀や青銅たちでは勝利するのは難しいといわざるを得ない。
二つ、麒星の突撃。
麒星が入れ込みやすい性質なのを紫龍はしっていたが、彼がここまで入れ込むとは想定外だった。
麒星を弟子にして一年半になるが、ここまで功に焦る性分だと想定出来なかった。
紫龍の未熟が招いた事態である。
三つ、瞬を別行動させたこと。
瞬は大気を操る。転じて、空間認識力とでもいうべきものが神聖闘士五人中トップである。
彼ならば、戦士たちが襲い掛かってきた瞬間、もっと効率よく倒せていたはずなのだ。
銀河戦争にて息一つ乱さずに邪武を倒したように。
これは希望的観点からの推測ではあるが、希望的過ぎるというわけではない。
この時点で紫龍は知らないことだが、瞬は円周防御を強いていた影の集団の人数すら察知していたのだから。

147 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/08/30(木) 21:18:52 ID:P5dmO4u00

一つだけならば、たいした事ではない。
だが、それが三つも重なると紫龍ひとりでは対処が難しい。
気が急く。
だが光速機動などしようものなら、敵もろとも麒星を粉砕してしまいかねない。
黄金十二宮を踏破した際の自分たちほどの耐久性は、麒星にはないのだ。
故に、焦る。
戦士を蹴り倒し、振り返った紫龍が見たのは、
ライトセイバーに袈裟懸けに切り裂かれ、仰向けに倒れる麒星だった。
紫龍は、切れた。
麒星を左手で抱き込むようにして体勢を入れ替えると、
今や紫龍の代名詞となった廬山昇龍覇を打ち込む。
掛け値なしの全力である。
アステリオンは紫龍の挙動に気を張っていたから避けられたものの、
荒れ狂う龍の一撃は、その場に残っていた錬金の戦士の躯すらも飲み干したのだった。
光速の龍の顎に噛み砕かれて無事ですむものは無い。
その場に残っているのは、紫龍、アステリオン、そして麒星だけだった。

そして、瞬は…。

148 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/08/30(木) 21:24:08 ID:P5dmO4u00

森の上へと出た彼は、すぐさま青銅色の龍を発見する幸運に恵まれる。
龍というよりは蛇だろう。長い蛇体をくねらせて森の中から伸び上がる、いや、跳ね上がる。
よく見れば蛇体にはワイヤーの付いた銛が突き刺さっている。
自分たちに襲い掛かってきたのは、このためだったのだろう。
時間稼ぎすら出来ずに無駄死にだったが。

今の瞬に、嘗てのような甘さは無い。
聖闘士が、己の全存在をかけて闘うべきときに、瞬は闘えなかった。
あまつさえ、ハーデスの依り代となりアテナや同士たる聖闘士たちを危機に晒すという醜態を見せた。
瞬はそんな自分を許せなかったのだ。
アテナが辛うじて勝利を治め、星矢もまた九死に一生を得た今だからこそ、
こうして聖闘士なぞ続けていられるが、本来ならば腹を切らねばならない立場だったし、
事実、瞬は自決を試みて失敗している。止めてくれたのは最愛のジュネだった。
物心付く前の幼い頃だった?
幼い兄は抗いきれなかった?
逃れられないサダメだった?
だからなんだというのだ。
全て、言い訳に過ぎない。
瞬は、その生涯を懸けて聖域とこの地上を護ることを決意した。
齢十三の少年が掲げるには余りにも過酷な決意だ。しかし、掲げた拳をおろすわけには行かない。
兄は、瞬の敬愛する兄は、その拳で如何なる敵も、如何なる神も殴りつけてきた。
自分は、その兄と同じ胎から生まれたのだ。何時までも兄という傘の下に居るわけには行かない。

故に、瞬は覚悟を完了した。
護る為に壊す覚悟を。

149 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/08/30(木) 21:28:43 ID:P5dmO4u00

文字通り空気を蹴って軌道を変えると、瞬は龍の前へと回り込む。
大気を掴むことは、ネビュラストームの入門であり、
瞬ほどになれば空中での複雑な三次元戦闘を可能とする。

彼自身、知らずに「ごめん」と呟いてしまう。
それが瞬が捨てきれない優しさ、人間性なのだが。

閃光が走るや否や、龍に打ち込まれていた銛(モリ)はことごとく切断され、
龍に並走する地上の錬金の戦士たちも、刈り取られる稲穂のように倒れていた。
ネビュラ・チェーンである。
今の瞬の手にかかれば、もはやそれは鎖の一薙ぎではなく、剣戟だ。
錬金の戦士は瞬く間すらなく無力化され、龍もまたネビュラ・チェーンに締め落とされていた。

「奇跡的に助かった、わけではありませんよ?
 質問をしたいから敢えて命までは取らなかったんですから」

瞬の声は冷たい。
うめき声をあげてひっくり返る錬金の戦士たちは、
先ほど紫龍たちを取り囲んだ連中と全く同じ装束・背格好をしている。
手近なところに転がっていた男の右膝頭を容赦なく踏み砕くと、
「僕らを襲った理由を教えてくださいませんか?」と丁寧に質問した。
英語・ドイツ語・フランス語・ポルトガル語・スペイン語と、ここ欧州で使用頻度の高そうな言語で丁寧に、
ゆっくりと他の錬金の戦士たちにも質問していく。

150 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/08/30(木) 21:31:38 ID:P5dmO4u00
勿論、その際に膝や足首などの致命傷にならず、
それでいて負傷すれば移動が困難になる部位を容赦なく踏み砕いていくオマケ付きでだ。
聖域では虫も殺さないような顔をしている奴ほどエゲツナイというのは、最早常識である。
アテナ・城戸沙織のエゲツナさは神話級、瞬のエゲツナさはハーデスも裸足で逃げ出す程。そんな噂が流れているほどだ。

だが、うめき声こそ上げるものの、仮面の戦士たちは決して声を出そうとはしない。
不審におもった瞬がその仮面に手を伸ばそうとすると…

「…ッ!何!」

仮面から白煙が零れた。
ぱん、という間の抜けた音と共に仮面の内側が弾け、それに続いて戦士たちの肉体が断続的に震える。
不ぞろいなダンスのようだったが、それが終ると仮面の戦士たちは腱の切れた操り人形のように弛緩した。
戦士の肉体からは濃密な血臭が漂ってきていた。

「自爆…ッ!
 そこまでの機密があるのか?彼らには…!」

やや呆然として瞬が呟くのと同時に、廬山昇竜覇の衝撃波と爆音が地を這うようにしてやってきていた。
無論、余波程度でどうにかなる瞬ではない。ばらばらと宙に舞う戦士の躯を浴びないように気をつけながら、
彼は龍を引きずりながら紫龍たちと合流すべく歩き出した。
この惨状では現場検証もままならないだろうと思いながら。

151 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/08/30(木) 21:39:38 ID:P5dmO4u00
昨年の八月中旬でしたか、ちょうどこうしてネットを眺めていたとき、鈴置氏逝去の訃報が駆け巡ったのは
あれから一年たってしまいました。
ただひたすらに惜しい。そう思えて仕方のない銀杏丸でございます

>>140さん
というわけで復活!
連載再開早々、紫龍が大慌てしてる横で瞬が横綱相撲というなんとも含みのある回でございます
さんざネタにされてる瞬の残虐性ですが、まぁ一輝の弟なんだし、覚悟してしまうとこうなるのだと思います

>>143さん
次はなるべく早めに投下します
と、言っても体力勝負なところ大きいのですがw

>>144さん
次くらいでようやく斗貴子さんをだせるかなぁ…
といった風情です
七人の超将軍に構いすぎました、申し訳ございません

>>145
HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA
だからやめてねぇって

では、またお会いしましょう!

152 :作者の都合により名無しです:2007/08/30(木) 21:55:57 ID:z7GG3mkY0
おお銀杏丸氏連投ですか。お疲れです。
でもなんか戦闘神話って作風変わってないかな?

153 :作者の都合により名無しです:2007/08/31(金) 08:47:00 ID:ytwVrIEW0
瞬ってこんなキャラだったっけ?
それ言ったら女神もそうだがw

154 :作者の都合により名無しです:2007/08/31(金) 16:20:18 ID:8xWfMw420
うーむ久しぶりで内容をだいぶ忘れてしまった・・
もう一度読み返してみます。
トキコさん出るのが楽しみ。

155 :作者の都合により名無しです:2007/08/31(金) 19:47:32 ID:CUXR9HOu0
地道に待ってました!待ってて良かった!!

156 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/31(金) 22:24:32 ID:WQhfi2u+0
>>121
夜も更けて。
事件の元凶というか発端の地は、多分あの日の朝にニュースでやってた遺跡だろう。
が、黒沢にとって全ての始まりはここ。1号に襲われた、山奥の工事現場だ。
もちろん誰もいない、真っ暗なこの場所に黒沢はやってきた。電車とバスとタクシーを
乗り継いで。こんな時間にこんな場所なので少し運転手に不審がられたが、もうそんな
ことは気にならない。
『今、世間を騒がせている未確認生命体第2号だと知ったら、ぶっ倒れるだろうな……』
そんなことを考えながらタクシーを降りて少し歩き、崖の上の現場に着いた。
耳が痛いくらいの静けさと、月明かりだけが頼りの暗さと、不気味なほどの広さと。
『初めてあの子に会ったのは、ここで弁当を食ってた時だったなぁ』
もう二度と会うことはないけど、と呟いて事務所兼宿舎のプレハブへ。ここは1号事件の
翌日、浅井が報道陣に囲まれてインタビューを受けていた場所だ。
中へ入る。暗い、がらんとした広い屋内にあるのは、机と椅子とテレビ。
何の気なしにテレビをつけてみた。青白い光が黒沢を照らす。
《こちらの映像がその銃、警視庁の特殊部隊SATが使用しているライフルです。そして
これがコルト357マグナムと、MP5サブマシンガン。一般の警察官にもこういった
重武装が為されることについて……》
ゴルゴ13かシティーハンターかってレベルの銃器が紹介されている。警察は、
市民の安全確保の為に随分と頑張っているらしい。
人々が未確認生命体に怯えて、その人々を警察が必死に守ろうとして戦って。黒沢には、
何だか遠い世界のできごとのように思える。本来なら今頃、自分も怯えて守って貰う
立場なんだよなぁ……でも今は……と、そこへ。聞きなれた筈だけど懐かしい声がした。
「黒沢さん、やっぱりここにいた!」
浅井だ。息を切らせて鼻水も拭かず、プレハブに駆け込んでくる。
「警察に囲まれて撃たれた、ってニュースで見ましたけど……」
「ああ。けど心配すんな。この通り、もう何ともない。未確認生命体様だからな、オレ」
「あ……あの、そのことなんですけど、僕、泉さんに会いに行きまして」
浅井は伝えた。野明の言葉を、そのまま。
黒沢は少し、ほんの少しだけ和らいだ表情を見せて、小さく息をついた。

157 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/31(金) 22:27:51 ID:WQhfi2u+0
「ほんと、オレのイメージ通りっていうか……第一印象が当たってたっていうか……
いい子だよな。謝ることじゃねえし、礼を言われるようなこともしてねえよ。オレが
勝手にやったことだ。悪ぃが伝えておいてくれ、気にするなと」
「え? それは黒沢さんが、直にあの子に会って言うべきですよ」
「オレがいたらあの子も、お前も巻き込まれかねねぇんだよ。ほれ」
黒沢はアゴをしゃくってテレビを指した。相変わらず未確認生命体の恐ろしさと、それに
立ち向かう警察の武装強化ぶりと……あと、遺族の悲惨さを延々と流している。
「だからオレはどこかに行く。行ってのたれ死ぬ。じゃあな」
黒沢はテレビを消した。辺りに暗闇と静寂が戻ってくる。
「そ、そんな、待って下さい黒沢さ……」
「? しっ! ちょっと黙れ」
黒沢は浅井を制して、耳を澄ました。何か聞こえる。
窓に駆け寄って大きく開け、身を乗り出して目を閉じる。超人化した聴覚を研ぎ澄まして、
静かな山の中に混じる微かな異音を探っていく。川の水音や獣の声、蟲の羽音ではない
音。どうやらこれは、人間の声。女の声だ。
「…………! あ、あの子……だ!」

少し時間を戻して。
黒沢たちがいる現場の崖下を流れる川、その真っ直ぐ上流の方角。といっても川そのもの
は途中で折れているので、ここにはもう流れていない。代わりに広い岩場と岩山と、
その岩山のふもとにぽっかり開いた洞窟がある。
その洞窟の前で、大きなリュックを下ろした野明が汗を拭っていた。
『ここからあいつらはやって来た……か』
遺跡調査隊が『何か』を発掘した時、そこから出現した未確認生命体第零号。その手で
調査隊が惨殺される様子は、現場に転がっていたビデオカメラが記録していた。
そして現れた、未確認生命体たち。その総数は二百を越えると推測されているが、
今のところ姿を見せているのは第3号までだ(2号は黒沢だが)。
奴らが何者なのか、目的は何か、それはわからない。だが、今自分がやるべきことは一つ。

158 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/31(金) 22:29:14 ID:WQhfi2u+0
野明はリュックの中から道具を取り出し、準備を始めた。防刃装備を身に付け、
ホルスターに銃とナイフを差し、頭にはヘルメット、爪先と踵に鉛を仕込んだブーツ、
その他の道具も整えて……最後に、道中で拾った木切れを組み合わせてガソリンを
かけて着火、焚き火とした。暗い山の中に、油の臭いをさせながら煌々と炎が揺らめく。
そのそばに立って、
「出て来おおおぉぉい、1号と3号! あんたたちが揃いも揃って殺し損なった獲物が、
ここにいるぞおおおおぉぉぉぉっ!」
野明は叫んだ。山彦を聞きながら一晩中でも待つつもりだったが、ものの数分と経たずに
満月に影が落ちる。そしてその影が、音もなく滑空してきた。
不気味な緑色の肌と大きな牙の並ぶ口、鋭い爪を備えた手、両腕から垂れ下がる翼。
「3号!」
野明はすぐさま拳銃を乱射するが、3号は弾丸を受けながら平然と襲ってくる。
3号の爪が振り上げられ、そして振り下ろされる寸前、野明は足元に置いておいた瓶を
拾って焚き火の中に突っ込み、そして3号に投げつけた。3号は着地して易々と叩き割る。
その瓶は中にガソリンを満たし、火をつけた布で栓をしたモロゾフ・カクテル、通称火炎瓶。
「ガアッ!?」
飛び散ったガソリンを浴び、そこに火が着き、3号は火だるまになった。容赦せず野明は
二つめ、三つめと火炎瓶を次々にぶつけて砕く。ガソリンが辺りに飛び散り、無数の
篝火が生まれ、その中央で燃え盛る火柱=3号が苦しみもがく。
すると3号は、炎の塊となったまま大きく羽ばたいて上昇、あっという間に数十メートル
上空へと飛び上がり、そこから一気に急降下した。
風圧で炎もガソリンも吹き飛び、焦げた素肌が露わになる。怒りの形相も露わになる。


159 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/31(金) 22:31:27 ID:WQhfi2u+0
「グオアアアアアァァァァッ!」
3号の一撃を野明は辛うじてかわす。が、爪の先端が僅かに肩を掠めて防刃チョッキが
切り裂かれ、まるで走行中の列車に触れたかのような衝撃に体を弾かれた。コマのように
横回転しながら何度も岩場に叩きつけられ跳ね飛んで、野明は危うく意識を失いかける。
着地した3号は、よろよろと立ち上がる野明に声と視線で殺気を突き刺した。
「ボソギデジャス……!」
(殺してやる……!)
飛ばされた衝撃で銃を落としてしまった野明は、今度は装備しておいたナイフ二本を
抜いて両手に構え、口の中の血をペッと吐き出して答える。
「OKっ……考えてみれば、あんたに飛んで逃げられでもしたら、あたしが困るもんね。
今のは戦法としてマズかったわ。ってことで、ここからは格闘で相手してあげる」
刃物を持った野明を見て意図を察したのか、3号が今度は喜びに顔を歪めた。
野明は覚悟を決めて、3号を睨み返す。
「その代わり、とことん付き合って貰うからね。あたしが、あんたの最後の相手……
これ以上、誰も殺させない。誰一人として傷つけさせない。そして何より、」
「ギベ!」
(死ね!)
野明の言葉など聞くつもりはない3号が向かってきた。野明はナイフを構えて応じ、
「このあたしが盾だっ! 黒沢さんには、もう絶対に指一本触れさせないっっ!」

160 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/08/31(金) 22:33:07 ID:WQhfi2u+0
イングラムが使えない状況で本気でブヂ切れたら、これぐらいはしでかすかなと。でも野明に
ここまでさせる男性がなぁ……黒沢と違う意味で、色恋に縁なき子ですゆえ。で今回は秘か
に一作目の『プレデター』なんぞをイメージしてみたのですが、描けましたかどうか。

>>銀杏丸さん(お久しぶりにして干天の慈雨! ありがたやですっっ!)
・七人の超将軍!!!
ラス戦がバトルではなく、大規模非常事態ってパターン。銀杏丸さんの、キャラに感情移入
するというより俯瞰で観る文体にはよく合ってますね。危機も生還も幕引きも、雄大でした!
・戦闘神話
瞬も紫龍も風格ある成長を遂げつつも、私の知る彼ららしさを残してて嬉しい。説得力が
あって自然で嫌味にならない「強過ぎ」も良い感じ。錬金側もこのレベルで魅せてくれるか?

161 :作者の都合により名無しです:2007/08/31(金) 22:46:55 ID:9/mRT/yE0
ふらーりさんおつです。
原作で野明って誰とひっついたんだっけ?
野明にここまでさせる黒沢もさすがですな

162 :作者の都合により名無しです:2007/09/01(土) 02:10:42 ID:off+zCBI0
なんというか、グロンギ語を書けるふら〜りさんに感動した!

163 :作者の都合により名無しです:2007/09/01(土) 02:28:00 ID:IFCq6Zx90
間違いない、この野明は体は女でも心は漢だ! GJ!

164 :作者の都合により名無しです:2007/09/01(土) 08:52:08 ID:5KJnBx6w0
ふらーりさんがいる限りバキスレは大丈夫だな、と思う

165 :作者の都合により名無しです:2007/09/01(土) 23:51:54 ID:DXMPwIYd0
週末、誰か復帰して驚かせてほしいもんだが

166 :作者の都合により名無しです:2007/09/02(日) 17:30:58 ID:UvpNMGPV0
ハロイさんがやめちゃったのは痛いな。
戻ってきてくれると良いが

167 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 08:45:29 ID:mcP6XpYF0
週末来なかったか・・

168 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 17:57:11 ID:ye9yC3DI0
慶応4年(1868)、睦月(旧暦正月)の頃のことである。
京都より些か南に下った山崎のあたりに広がる、百姓どもの耕す畑の傍らに立つ大きな楡の木の枝に、
一人の少年が吊るされていた。

私刑である。

この少年はこの辺りの百姓の家に忍び込み、食い物を漁るなどの盗みを働いていたのだ。
少年を捕らえた百姓どもは、激しく少年を折檻し、見せしめに木から吊るした。
司法警察制度が、現代に比べて整ってはいなかった江戸時代においては、
このようなことは別に変ったことでは無い。

吊るされている少年は薄汚いボロボロの格好をしており、年のほどは十二、三であろうか。
変わったことに、そのまだあどけない外見に係わらず、まるで老人のような白髪頭であった。
少年はその足を縛っている縄より抜け出そうと必死に足掻いており、少年が足掻くたびに、
少年の体はまるで風に揺られる蓑虫のように、ぶらん、ぶらんと左右に揺れた。

そんな少年に近づく一人の男がいた。着流しのような着物に身を包み、腰に二本を差しおり、
その顔は深編笠でよくは窺えない。男は少年のすぐ傍らまで来ると、その姿をじっと眺めた。
少年もまたその身を揺らすのをやめて男を見返す。折檻されたためか、
血と泥で汚く汚れた少年の顔は凄まじいものがあったが、それ以上に凄まじいのは少年の目であった。
血に汚れた顔から覗くその二つの瞳の中では、まるでこの世の全てを呪うかのような、
ありとあらゆる負の感情、憎、恨、怒、忌、呪、滅、殺、怨・・・凄まじい妄執が充ち溢れ、
渦を巻いていた。それを見て、深編笠の男は薄く笑った。その時であった。


169 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 17:59:10 ID:ye9yC3DI0

ひゅふ

ちぃん

奇妙な風切り音と、軽い金属音が響いた。
そして、金属音が鳴ったすぐ後に、少年を吊るしていた縄が切れ、少年がふわりと落ちてきた。
深編笠の男は少年を受け止める。
少年は男の手より離れようとしたが、百姓どもの折檻、空腹、疲労などで、すでに体力は限界であり、
それは叶わなかった。
 深編笠の男は、今までの光景を呆然と眺めていた百姓の一人の方を向き、言った。

「この餓鬼、いらぬなら貰うぞ」

深編笠の内から覗く、まるで鷹ごとき鋭い視線に気おされて、
その百姓はひぃと情けない声を上げながら肯いた。
男は、少年を抱いたまま、何処ぞへと消えた。

それから十年後

明治11年、夏、川越(かわごえ)。
かつて、酒井、松平などの譜代の城下町として栄え、小江戸と呼ばれたこの街の一角に、
江戸の初めごろから続く古い剣術道場がある。名を雲竜館(うんりゅうかん)、
伝えし流派は、「金岡虎眼流」という。

その道場屋敷の一室に、一人の初老の男がいた。
年の程、五十の半ほど。長身痩躯。灰色の総髪は肩にかかるほどで、
顔は青白く、頬はこけ、鼻、高く尖っており、目つきは切れ長で鋭く、ある種の猛禽を思わせた。
この男、名を高野鷹堂といい、金岡虎眼流の現継承者である。
鷹堂は行燈の薄い光の灯った薄暗い部屋で、じっと正座をしている。

170 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 18:01:00 ID:ye9yC3DI0
そこに、ふすまを開けて二人の男が入ってきた。
一人は“ざんぎりあたま”の書生風の格好をした優男であり、この道場の厳格な雰囲気には些か似つかわしくない男である。
もう一人はまるで坊主のように頭を短く剃りこんだ大男で、何所となく鯨を思わせる顔立ちをしている。
この男は隻腕であり、右腕の肘より先が無かった。
「巌元(いわもと)、鯨波・・・・・」
「「はっ」」
鷹堂の言葉に、二人が畏まった。
「縁が抜けよった・・・・」
鷹堂はおもむろに言った。
「・・・!」
「昨日より姿が見えぬと思うてはおりましたが・・・」
鷹堂の言葉に二人は驚いたような様子を浮かべる。
「きゃつめ・・・・ついに昔のシガラミを断ち切れなんだ。恐らく、昔の仇を討ちに行ったのだろう」
「いかがいたされますか・・・・」
「奴は、“大目録術許し”でござりましょう・・・」
二人が鷹堂を仰ぎ見て言う。
「恐らく・・・奴は東京へと向かいおった。お前たちはきゃつを追え。連れ戻すことが叶わぬのなら・・・」
鷹堂の両目がかっと見開かれ、瞳孔が猫科動物の如く拡大した。
「斬り捨てても構わん」
「「ははっ、かしこまりました」」
「明朝には出立せよ」
「「ははっ」」
二人は深く頭を下げた。

            

171 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 18:04:29 ID:ye9yC3DI0
           月夜を一人の男が駆けていた。
         
         顔は若いが、頭はまるで老人の如く白い。

       幼き日より変わらぬ妄執渦巻く目で暗闇を見据え、

           夜の道を獣の如く駆け抜ける姿は、

            正に幽鬼のそのもであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作者です。初投下させていただきました。本作のタイトルは

るろうに剣心ー死狂い編ー」です。

タイトルのごとく、るろ剣とシグルイのクロスになっております。
なお、シグルイ以外にも、原作の「駿河城御前試合」や、「闇の土鬼」や
「血笑鴉」といった横山光輝作品のネタも使っていきたいと思っています。
よろしくお願いします。

172 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 18:43:34 ID:mcP6XpYF0
最初のレス読んだ時にシグルイかと思いましたが
ベースはるろうにですか。
とにもかくにも新連載ありがとうございます!
シグルイ風味の剣心、期待しております!

173 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 19:28:32 ID:T7Kd1fpO0
虎眼流を裏切った金岡雲竜斎が虎眼流の継承者か…

174 :作者の都合により名無しです:2007/09/03(月) 22:33:05 ID:lXVcnvp70
虎眼先生と剣心の師匠が戦ったらどっちが勝つんだろう・・
ともかくグッジョブ!
久しぶりに胸躍る新連載で嬉しいよ。
完結目指して頑張ってください!

175 :作者の都合により名無しです:2007/09/04(火) 00:32:43 ID:EOrRi9ny0
まだまだどうなるかわからないけど、
久々の新作だし雰囲気もいいので期待してる。
でもシグルイ原作は知らないな。
知らない人でも楽しめるようにひとつ。

176 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/04(火) 01:40:25 ID:XYZ1chkt0

無言の笑みを浮かべるジュリアン。驚愕に喉が詰まり、それ以上の言葉が出てこない防人。
その奇妙な粘度を持つ空気を破った者は、ジュリアンの左掌で顔面を包まれたテロリストだった。
「畜生! いい加減、離しやがれ!!」
暴れもがくテロリストはくぐもった声で罵声を吐くと、ジュリアンの頬にアーマライトの銃口を
強く押しつけ、引き金を引いた。
火花と銃声がエントランスホールに響き渡ると同時に、ジュリアンの顔に300発以上の銃弾が
連続して撃ち込まれる。
しかし、弾丸は薄皮一枚も破らず、すべてあらぬ方向へ弾かれていく。
やがてアーマライトがこれ以上吐き出すものが無いとばかりに沈黙すると、左頬から薄い煙を
上げるジュリアンは自分の掌中にあるテロリストにニッコリと微笑んだ。
「……もう、痛いじゃないですか」
その笑顔とは裏腹に、テロリストの顔面を掴む指に力が込められた。
腕にはその幼い顔に似つかわしくない筋肉が不自然に盛り上がり、手の甲には醜悪な蚯蚓のような
血管が浮き出る。
「がッ……あガガが……ギいッ……イイいいいヒィイイイいいい……!」
ホムンクルスの尋常ならざる怪力が、万力の如くテロリストの側頭部を締め上げた。
その噛み締められた歯の間から、素人のデタラメなバイオリン演奏を思わせる耳障りな悲鳴が漏れ出る。
こめかみに指先がギリギリと食い込み、そこから血が噴き出し始めている。
もう既に自分の意志ではないのだろう。テロリストは不随意に何のリズムも無く四肢をバタつかせて
いるだけである。
ただ純粋に他者に苦痛を与え、他者から苦痛を与えられる。
そこに何の意味も無い、世にもおぞましい光景だ。
「フフ……。ウフフフ、アハハハハハハハハ!」
ジュリアンは心底、楽しそうな笑い声を周囲に撒き散らすと、両腕をグイと伸ばしてテロリスト二名を
高々と吊り上げた。
一方は完全に気絶しているのか微動だにしない。もう一方は混濁した意識の中、定まらぬ調子で
全身を痙攣させている。

「見て下さい! 見て下さいブラボーサン! 僕、こんなに強くなりましたよ! アハハハハハハハハハハ!!」


177 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/04(火) 01:43:04 ID:XYZ1chkt0

ジュリアンが防人に対して喜色満面で呼びかけたその時、ジュリアンの両腕が細かく震えるや否や、
奇怪な炸裂音を上げながらテロリスト二名の姿が消えてしまった。一瞬にして。
後に残っているのは彼らの衣服と銃器だけである。
チラリと見えたジュリアンの手掌の中央には小さく穴が開いている。
これが人間型ホムンクルスの“捕食”だ。
野生生物の如く大きく開けた口で獰猛に獲物を食い千切る動物型ホムンクルスとは違い、
人間型ホムンクルスはその“第二の口”とも言うべき手掌の小さい穴から獲物の全存在を
吸い尽くすのだ。

友が異形の化物に、憎むべき敵に成り果ててしまっている。
眼を覆いたくなる。耳を塞ぎたくなる。眼前で展開されたこの光景のすべてを否定したい。
防人の胸に去来するものは絶望感、それだけだ。
「ジュリアン……。そ、そんな……」
「僕はもう今までの僕じゃない。僕は生まれ変わったんです。サムナー戦士長のくれた“武器”で」
「サムナー戦士長が!? な、何故……?」
ジュリアンは防人の問いには答えず、己の両掌を眼前に掲げ、陶酔した瞳でウットリと眺めている。
最早、その表情にはあの年齢不相応なあどけないジュリアンの面影は無い。
自らの圧倒的戦力に酔う暴君(タイラント)の顔だ。
「錬金戦団が今まで忌むべきものとして退治してきたホムンクルスが、こんなに素晴らしい
ものだなんて……!」
ジュリアンは手を下ろすと、眼が覚めたように防人の方を急ぎ見遣る。
「僕らはホムンクルスに対する認識を改めるべきです! 使い方によっては錬金戦団の大きな
戦力にだってなる!
全てのホムンクルスを“邪悪”と決めつけるのは間違っているんですよ!
ねえ、そう思いませんか? ブラボーサン」
一体、何の発見なのだろうか。ジュリアンは防人に、まるで言い聞かせるように世紀の大発見を伝える。
“これ”は本当にジュリアンなのだろうか。
大戦士長となるべき男に拾われ育てられ、不向きながらも戦士としての訓練を受け、長じて戦団
情報部門のエージェントとして働いてきた青年の口から、禍々しい言葉が吐き出されていく。


178 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/04(火) 01:45:17 ID:XYZ1chkt0
錬金戦団の一員なれば口が裂けても言ってはならない言葉だというのに。
「……」
防人は眼を伏せ、ガックリとうな垂れてしまった。拳を固く握り締めたまま。
何も言えない。何も言葉が出てこない。
ジュリアンは、そんな防人にはお構い無しに、愛くるしい笑顔を作りながら口を開いた。
「お願いがあるんです、ブラボーサン」
彼の投げかける言葉には何も答えず、無言で床を見つめたままの防人。
そして、次の一言は確実に防人を打ちのめした。
「ブラボーサンの核鉄、くれませんか?」
「!?」
防人は驚愕の表情で顔を上げるのが精一杯だ。
ジュリアンは、防人の思いなどには無頓着に言葉を続ける。
「これだけの強い身体に武装錬金が加われば、僕はどんな敵にだって立ち向かえます!
そうすれば……。そうすれば、僕を馬鹿にした奴らを見返せる……!」
己の得た力に、そしてそこから湧き出る着想に、興奮を隠せないのだろう。
喜びを抑えきれない様子で独り言のように呟く。
「サムナーの奴になんか絶対負けない……。ううん、ジョンにだって……。僕が、僕が大戦士長に
なる事だって簡単だ!」
「それがお前の望みなのか? それが、お前の選択なのか……? そんなものが……」
その言葉を聞いた途端、ジュリアンの顔いっぱいに険しさが広がった。
防人にはジュリアンの顔がまったくの他人、いや、まったく別の生物にすら見えた。

「……あなたに何がわかるって言うんだ。みんな……みんな、僕を馬鹿にした」

ジュリアンの、憎しみを込めた視線が、防人を貫くように凝視する。

「何も出来ない僕を……。弱い僕を……。みんな、みんな……」

ジュリアンの、畸形に大きく発達した犬歯が剥き出しになり、怒りを以って噛み締められる。

179 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/04(火) 01:47:07 ID:XYZ1chkt0

「サムナーだけじゃない、他の戦団員も……。ジョンだって……」

ジュリアンの、殺意によって握り締められた拳が、拷問道具のように変形していく。

しかし、ここに至って防人には確信を持って、彼に言える事があった。
感動とも羨望ともいえるものを胸に抱かせてくれたウィンストン大戦士長の言葉。それを聞いたが故に。
「何を言ってるんだ! ウィンストン大戦士長はお前を本当の弟のように、息子のように
思っているんだぞ!」
「うるさい! 黙れ! あなただって僕を馬鹿にしていたんだろう!? 何も持っていない僕を!!」
空しいだけである。
防人の心からの呼びかけも、ジュリアンの感情の反発を生んだだけであった。
大きく感情を吐き出したジュリアンは、やがて顔を背けてしまった。
その時、防人は見た。
フッと防人から視線を外したジュリアンの表情は一瞬、ほんの一瞬、泣きベソをかく子供の
ものとなったのを。
「僕には何も無い。あなたが持っているような“力”も、火渡サンのような“友達”も、
千歳サンのような“大切な女性(ヒト)”も……。僕には、何も、無い……」
「ジュリアン、お前……」
駆け寄りそうになった。泣いている子供を放っておく者がどこにいる。
彼はわからないのだ。自分のしている事も、自分の言っている事も。
ただ悲しくて、どうしたらよいのかわからずに、一人で泣いている子供なのだ。

「だから……」
ボソリと言うが早いか、ジュリアンは喉の奥から絞り出すように叫んだ。
「僕は見返してやるんだ! サムナーを! ジョンを! ブラボーサンを! 僕を馬鹿にした
すべての“人間共”を!!」


180 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/04(火) 01:50:30 ID:XYZ1chkt0

『人間共』

駆け寄ろうとした脚が硬直した。
この言葉が耳に飛び込んできた時、防人は悟った。悟ってしまったのだ。
泣いている子供などではない。
目の前にいるのはただの“化物”なのだと。もう、あの愛すべき好青年ではないのだと。
あの幼さを感じさせる邪気の無い笑顔は、もう見られないのだと。

また、あの時のように、“何か”が自分の中で冷えていく。
“もうあんな思いはしたくない……。もう誰にもあんな思いはさせたくない……”
そう誓ったはずなのに。
また、“あの時”のように、心が冷えていく。

「さあ、核鉄を下さい……!」
ジュリアンは、身を硬くしたまま凝然と立ち尽くす防人に向かって、歪みに満ちた笑みを
浮かべて歩み寄る。
否、それは最早、笑みなどではない。
攻撃直前の猛獣が闘争本能を昂ぶらせるままに起こす、ただの顔面筋の筋収縮だ。
それだけなのだ。

「核鉄を、核鉄を寄越せェエエエ!!」



[続]

181 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/04(火) 01:51:54 ID:XYZ1chkt0
どもども、また少し間が空いてしまいましたが、何とか続きが書けました。
自分で思ってる以上に話の進行が遅いですが。
感想レスを書いて下さった皆さん、本当にありがとうございます。力になってますわ。
お返事を書くのはもう少し余裕が出来てからにさせて下さい。本当に申し訳ありません。
しかしながら、次の投稿はいつになるやら。早く神父も書きたいですな。
でわでわ、おやすみなさい。
あと、シグルイ買ったら面白かった。
あと、リップたんの声は真綾たんだ(゚∀゚)アヒャヒャ。

182 :作者の都合により名無しです:2007/09/04(火) 08:23:56 ID:dyHr9jdy0
仕事も忙しいでしょうにいつもお疲れ様です。
ジュリアンの慟哭が悲しいですな。
猛獣化しましたが、多少救いをあげてほしいという気もする。

183 :作者の都合により名無しです:2007/09/04(火) 10:38:53 ID:eudOoWqI0
前回に比べ調子が戻ってきましたね!
さいさんの持ち味であるスピード感とドロドロした感じがいいです。
物語りも終局に近づいてきましたねえ・・

184 :作者の都合により名無しです:2007/09/04(火) 12:59:38 ID:nQmlDVRU0
さいさんって結婚されるみたいね、サイト見ると。連載大丈夫かな?

この作品も佳境でジュリアン大ハジケだけど
次の婦警とまっぴーも青少年コードギリギリでずっと頑張ってほしいね

185 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/04(火) 21:46:04 ID:j/N+SvJD0
>>159
「……オレは……何をやってたんだ……」
「黒沢さん?」
暗いプレハブの中。浅井には何も聞こえていないが、超人化した黒沢の耳はしっかりと
聞き取っていた。遥か遠くの戦いの様子を。
猛々しい3号の咆哮を、無数の炎が燃え上がる音を、そして野明の決死の叫びを。
『あんな子が……あんなバケモノとサシで殺りあってる……このオレを護る為にって……』
黒沢の胸に、死んでも忘れないと誓った野明の顔、声、姿が蘇ってきた。
『あの子は……そりゃあ今は立派な婦警さんだろうが……どう見たって、つい最近まで
学校に通ってたんだぞ……学生カバン持ってセーラー服着て……体育の時間となりゃあ、
ブルマでスク水で……(44歳の男的な時代超越妄想)……あぁメチャクチャよく似合う……
って、そうじゃなくてだな……つまりそんな女の子が、命捨てて戦ってるって時に……
このオレは何……? 何をしてる……? 何を考えてる……? どこか遠くへ旅に出よう
とか……そして野たれ死のうとか……………………って……』
黒沢の、全力で握り締められた拳が、
「寝ぼけてんじゃねぇぞこの腰ヌケ野郎おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!」
自分の横っ面を殴りつけた。頬を腫らし、顎から脳を揺らして黒沢がぶっ倒れる。
何が起こったのかと浅井が慌てて駆け寄るが、黒沢はすぐ跳ね起きるとプレハブを出て、
崖の上の道を上流に向かって一目散に駆けていった。
「く、黒沢さん? 急に耳澄ましてブツブツ言ってニヤけて悶えて苦悩して自分殴りつけて
走り出して、一体何が?」
浅井が何か言ってるが、そんなのは無視。今の黒沢は聴覚のみならず、視覚も常人のそれ
ではないので暗い山中も問題ない。筋力も同様なので風のように疾駆できる。
『オレは……オレは……オレは……オレは……っ!』

186 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/04(火) 21:47:46 ID:j/N+SvJD0
逆手に持ったナイフを、野明は渾身の力を込めて3号の心臓に向かって振り下ろし、
突き刺そうとする。が3号は片手でその刃を掴み取って止めた。
そして握り締め、砕く。バランスを崩した野明の心臓の辺りを、爪で撫で上げてやると、
「ぅあぐっっ!」
野明は殴り飛ばされたように呻き倒される。撫でられた部分の防刃チョッキは裂けて
血が滲んでいるが、それももう何十個目の傷か数えていない。肩も腕も胸も腹も脚も、
あちこち切り裂かれて赤く濡れている。
「ログ・ガドグボギンギボヂザバ……」
(もう、あと少しの命だな……)
野明は間合いを取ってまた立ち上がり、一本だけになったナイフを構えた。が、
切れ切れになった弱い呼吸にはもう精気がない。目に闘気だけはある。だがそれだけだ。
「負けるもんか……あんたたちなんかに、絶対……負けない……」
3号は自分の爪についた血を舐め取ると、満足げな笑みを野明に向けた。そして、
「ギブグギギ・ドゾレザァァッ!」
(死ぬがいい。とどめだぁぁっ!)
大口を開けて牙を剥き、野明の細い首筋に向かって……突然、止まった。
野明の背後。切り立った高い崖。そこから跳び下りてくる人影。見覚えはある。が、
思い出す前にそいつは、全体重を乗せた落下ラリアートを3号の顔面にぶちかます!
「ガゥッッ!」
吹っ飛ぶ3号、着地した人影。辺り一帯で燃えている炎に照らされ立つその男を、
野明はもちろん知っている。
「く、黒沢さん!? そんな、どうしてここに……あ、ダメですよ! もう戦っちゃダメです! 
浅井さんに聞きましたけど、例のベルトが何なのかとか、全然解ってないんでしょう?」
「ああ」
「だったら! これ以上戦ったら、黒沢さんの体に何が起こるか……それに黒沢さん、
警察にだって追われて」
「んなことは重々承知だ! だがそんなのどうでもいいっ! どうでも……いいんだ……っ」
振り向いた黒沢の目から、ボロ……ボロ……と涙がこぼれている。
気迫に押されて、野明は黙り込む。

187 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/04(火) 21:50:00 ID:j/N+SvJD0
「本来なら……あんっっまりにも当たり前すぎて言うまでもないことを……オレは忘れて
しまっていた……オレは……オレは男だ……そして男ってのは……あの頃、目を輝かせて
彼らに憧れた……自分もいつか、と夢見てた……オレも、近所の悪ガキ仲間も一緒に……」

♪俺もお前も 名もない花を 踏みつけられない男に なるのさ……♪
♪男だもんな 強さだもんな こころの握手を 信じるもんな……♪
♪男の意地は 伊達じゃない 護り抜くんだ 君の笑顔を……♪

「男ってのは……男ってのはみんな、『成長した男の子』なんだ……『男の子』がいろんな
事件を経て傷つきながらも、強く大きくパワーアップした姿……それが『男』……当たり前
だ……こんなの、当たり前すぎることなのに……いつの間にか忘れてしまっていた……」
ならば、あの頃よりも後退してどうする? あの頃よりも強きく大きくなったのなら、
前進せずにどうする? あの頃には無力さゆえに届かなかった夢の自分へ、
パワーアップした今なら届く、届くはず、手を伸ばしさえすれば必ず……そう、夢見て憧れ
を抱くだけの『男の子』ではない。パワーアップし、クラスチェンジした最強形態『男』
ならばできる……オレが新たに創る伝説、オレの、オレによる、オレだけの英雄伝説!
「だから……だから見ててくれ! オレのっ! 変身っっ!」
黒沢の呼び声に応じて、その腰に古代のベルト、『アークル』が姿を現した。中央に輝く
霊石『アマダム』に、これまでになかった紅い光が灯っている。
「リントグッ!」
(人間がっ!)
3号が向かってきた。薙ぎ払われた最初の一撃を黒沢はかわして、左、右と拳を打ち込む。
少しよろめいた3号が組み付いてきたのを、真っ向から受けて黒沢も組む。
両腕両脚を踏ん張って力を込めると、アークルから放たれた紅い光が四肢に巻きついて、
輝きながら実体化する。そしてそれが全身へと広がっていき、
「ぬぅおおおおぉぉぉぉ……っ、りゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
黒沢は力に任せて、3号を頭上に持ち上げブン投げた。
岩場に叩きつけられた3号が、立ち上がって振り向く。その時、そこに黒沢はいなかった。
いたのは、真紅の生体装甲に身を包み、黄金の刃のような一対の角を備えた雄々しい戦士。

188 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/04(火) 21:51:41 ID:j/N+SvJD0
3号……殺戮民族グロンギの怪人、ズ・ゴオマ・グはこの戦士を知っている。太古の昔、
たった一人で自分たちに戦いを挑み、その身を犠牲にして封印の鍵となった男だ。
だが、あの戦士はもう死んだはず。もういないはず。もう二度と遭遇しないはず。なのに?
「ビガラ・バゼ……」
(貴様、なぜ……)
ゴオマは、驚愕と困惑と憤怒と怨恨に震える手で黒沢を指さし、叫んだ。
「クウガ……クウガッッ!」
「……クウガ? そうか、クウガか!」
「ボ・ボソグ! ボソギデジャス! クウガッッ!」
(こ、殺す! 殺してやる! クウガっっ!)
これまでにない怒気殺気を撒き散らしながら、ゴオマが黒沢に向かってきた。だが今度は、
黒沢は身をかわすまでもなく自分から真っ直ぐに踏み込み、低く落とした右拳に力を込めて、
「どっせええええぇぇぇぇいっ!」
天に届けとばかりにゴオマの顎をブチ上げた。瞬間、まるで空中に巨大な波紋が広がった
ような……後ろにいる野明には、そんな幻影が見えた。それほどの一撃だった。
黒沢渾身のアッパーカットをまともに受けたゴオマは、自分の身長分ほど打ち上げられて
から、何とか体勢を整えて着地した。だがその口の両端から、だらだらと血が流れている。
『力』。黒沢も野明も知らないが、変身ベルト『アークル』に刻まれた古代文字。今、正に
それが黒沢の全身に宿っていた。
「なるほど……赤い戦士クウガ、これが完全版ってわけか……これなら勝てそうだ!」
白い姿の時とは比較にならぬほどの力。かつてグロンギの魔手から人々を救った伝説の
戦士の力が、時を越えて蘇ったのだ。熱く燃え盛る紅蓮の炎のような、赤い体の戦士。
その名は、
「クウガアアアアァァァァッ!」
「ぃよぉ〜し! 来やがれバケモノ野郎! いや、こっちからいくぞおおぉぉっ!」

【邪悪なるもの あらば 希望の霊石を身に着け 炎の如く 邪悪を打ち倒す 戦士あり】

189 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/09/04(火) 21:57:57 ID:j/N+SvJD0
♪夢にかける人もいる 愛に生きる二人もいる だけど 私 正義が恋人そして 青春……♪
『野明のバラード』より。
「女の子」が強く大きくパワーアップした姿が「女」でありますれば。こういう気持ちに、
老若男女の区別なし。私はそういう人が大好きですし、自身もそうありたいと思っています。
つーかまぁヒーロー燃えのヒロイン萌えの基本根本土台といいますか(以下膨大な量につき略)。

>>シグルイさん(可能なれば御名前を)
お待ちしてましたの新連載! 冒頭数行で文体の迫力&歴史への造詣の深さを感じて
ましたが、馴染んだ剣心がベースとは嬉しい限り。この雰囲気で渋い演出の剣戟、楽しみ
にしてます。とはいえ、いきなり鯨波とはまた渋すぎるチョイス……次は誰が来るのやら?

>>さいさん
ジュリアンは、まあ、随分前から、十中八九こうなるのであろうと予測はしてましたが。それを
千歳や防人が阻止、とは多分なるまいと思ってましたが。いざ目にするとなかなかキますね。
コンプレックスが高じて歪んで暴走。よくある話、よくある罠。それだけ誰もが落ちる闇、か。

190 :作者の都合により名無しです:2007/09/04(火) 22:43:53 ID:EOrRi9ny0
>さい氏
ジュリアンの暴走が痛々しいけど、この作品らしくもある個の爆発ぶりだな。
さい氏も筆がノッてきたみたいなので、ラストまでこのテンションでいけるかな?

>ふらーりさん
前回、割合にシリアスだったのに今回はふらーりさんの作品らしいノリだなw
黒沢が結構調子にノッてるので、またコケそうな感じで怖いw

191 :作者の都合により名無しです:2007/09/05(水) 08:42:19 ID:o1MRnKXS0
ふら〜りさんの黒沢は熱血だな・・
原作では愛はなかったけど、これではあるね!

192 :作者の都合により名無しです:2007/09/05(水) 13:18:01 ID:M2joRQI30
もうちょい続きそうだね、ふらーりさんの作品。

193 :作者の都合により名無しです:2007/09/06(木) 13:49:14 ID:/FzqMCr60
今月はサマサ氏復活するよね?
NBさんも。ミドリさんは無理だろうが・・

194 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:02:58 ID:0vxm97Pm0
part.4
act.1
聖域情報部の調査結果どおり、錬金戦団自体の歴史は意外と新しい。
錬金戦団のルーツでもある、現在はジュリアン・ソロが総帥を務める錬金術師組合の始まりが
古代にまで遡るのと異なり、錬金戦団は十八世紀中後半、
その錬金術師組合中の急進派十人の錬金術師によって結成されたとされている。
彼ら十人の中の三人は、当時彼らに親和的であった錬金術師組合員の手引きで、
チベット山中で発見された不思議な材質の鎧らしきものの一部を解析し、
賢者の石の第一歩として核金のプロトタイプを作ることに成功する。
この時点で各々の闘争本能に応じて独自の武器となる、自己再生能力がある、
といった核金の骨子は出来上がっていたらしい。
他の七人は、人以上の存在を目ざしホムンクルスの研究に専念し、
核金のプロトタイプの完成と時を同じくして開発に成功する。
当時の彼らにはまだ理性があったのか、万が一ホムンクルスが暴走した可能性の対策の為、
核金にアンチホムンクルスの因子を組み込んでいるのだが、
これが後世、ホムンクルスを葬り去る唯一の手段となるのだから、世の中どう転ぶかわからない。
以後、半世紀にわたってホムンクルス研究と核金研究は二人三脚で発展していった。
そして、今から約百五十年前、核金は完成したのだが、
ここで思わぬ理由によって核金量産の必要に迫られる。
ホムンクルス技術の外部流出である。

195 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:07:32 ID:0vxm97Pm0
東方より来たと自称する一人の男によって欧州全域に拡散してしまった為、
隠蔽の必要に迫られ、核金を使ってホムンクルスを滅ぼす戦士が誕生した。
さて、この最初の戦士たちであるが、上層部が期待したほどの効果をあげることが出来なかった。
理由は幾つかあげられるが、最大の理由は初期の戦士が錬金戦団とは何のゆかりも無い、
ゴロツキ同然のやからが多くを占めていたことだろう。
当時既に錬金戦団は大英帝国に本拠を置いていたのだが、英国は貧富の差が激しい国柄である。
上流階級がその主要メンバーであった当時の錬金戦団に、
直接命のやり取りをするほど気概のある者は極少数であり、
結果として、死んだとしても彼らの痛点とならないゴロツキや労働階級の人間が選ばれたのだ。
当然、彼らの士気は限りなく低かった。
マトモに活動する者は極僅か、厭々ながらも活動すれば良い方、
挙句の果てにはホムンクルス側に寝返る等という者まで現れた。
予断だが、一部戦士の裏切りの結果、
人間型ホムンクルスは核金を運用可能というという事実が明らかになる
この憂慮すべき事態に、錬金戦団の上層部は大英帝国を裏から取り仕切る集団「円卓会議」と渡りを付け、
極秘裏の支援体制を確立する事に成功する。
この時点で彼らは自らの組織を現在の名称である「錬金戦団」として再編した。
長く醜い闘争の幕を自らの手で開けたのである。

それから約半世紀後、錬金戦団は核金開発のノウハウも、生産プラントも永久に喪った。

元錬金の戦士であり、当時の錬金戦団最強を謳われた戦士・ヴィクターの妻でもあるアレキサンドリア博士は、
錬金戦団核金研究開発部門の中核メンバーであり、核金のノウハウの権威でもあった。
機密保持のために一箇所に纏められていた核金研究開発施設の壊滅、
主力研究者の死亡という事態が拍車をかけ、錬金戦団は核金を増産する事が出来なくなったのである。
湖水地方に存在する古城を、研究所として使えと「円卓会議」から譲渡され、要塞化したまでは良かった、が。
洋の東西を問わず、要塞の内部は脆い。

196 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:10:11 ID:0vxm97Pm0
黒い核金を得て暴走したヴィクターの力によって研究所は完全に崩壊。
当時本部に一時帰還していた「軍医」の武装錬金をもつ戦士によって、
アレキサンドリア他数名が辛うじて命を取り留めた頃、
ヴィクターは錬金の魔人として追撃される立場となっていた。
尚、ヴィクター事件は今もなお錬金戦団に暗い影を落としており、
対ヴィクターの兵器開発の為に人体実験を行っている節があるという。
徹底的に隠蔽・改ざんされたこの事件は、辛うじて「円卓会議」から直接制裁を逃れることこそ出来たものの、
彼らから見放される結果となる。
「円卓会議」としては、彼らの研究成果が大英帝国と女王の為になるだろうという打算があったのだが、
その結果は、裏切り者を出した挙句に、こちらの提供した施設の壊滅という、
恩をあだで返されるが如き結果となったのである。
以来、彼らは付かず離れずの関係を保っている。
支援体制こそ続いているものの、嘗てのような密なものではなくなっていたのがその証拠である。
だが、二十年ほど前に別口の支援を得たらしく、特に此処最近は行動が活発化している。
その支援者こそが、現在聖域が最も危険視している組織「トゥーレ協会」なのだという。
そして、今年に入ってから錬金戦団局長が変わった。
局長の名は、ディードリッヒ・エッカルト。ドイツ出身の女性である。
思えば、彼女が錬金戦団内部で台頭して以来、世界的な錬金術への傾倒が始まっている。
無関係ではないのかもしれない。そう締めくくられた報告が、
城戸沙織がアテナとして受け取った現状報告の全てである。
そして、同じ調査結果は居場所の知れている神聖闘士四人と、黄金聖闘士二人にも知らされる事になる。

彼女が錬金戦団の調査続行を命じた理由は、今城戸邸に滞在している一人の少女によるところが非常に大きい。

197 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:15:15 ID:0vxm97Pm0

「お気にに召しませんでしたか?
 私の好物なんですのよ、このケーキ」

城戸沙織は、紅茶で僅かに表情に滲んでいた苦悩を飲み下すと、
テーブルの向こう側に仏頂面で座っている小柄な少女に微笑みかけた。
少女は、紅茶もお茶請けのケーキにも手をつけていない。

「いらないわ、食欲無いもの」

少女が城戸邸に滞在というか、半ば強引に引き取られてきてから二月目に入る。

「もしかして、お嫌いでした?」

この事態を招いたきっかけは、城戸沙織がニュートンアップル学院入学前の事前調査にまで遡る。

「食欲が無いだけよ、甘いものは嫌いじゃないわ」

欧州の影の歴史として畏怖される聖域ではあるが、聖戦以外では基本的に内向的な組織でもある。
オカルト関連の事件対処以外では、極力国家間の事件には関わらないようにしているのだ。
無論、最低限度の渉外活動は行っているが。
錬金戦団、核金、ホムンクルスといった言葉の意味こそ知っていたが、それ以上踏み込むことはしなかった。
礼儀ある無関心とでもいうべきか、あまり深く立ち入らないというのも、
強大な力を持つ組織には重要である。余計なプレッシャーは摩擦を招くだけだ。
故に、聖域が「ヴィクター」を知ったのは極最近なのである。


198 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:17:03 ID:0vxm97Pm0
×ディードリッヒ・エッカルト
○デートリンデ・エッカルト
です、失礼しました

199 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:20:14 ID:0vxm97Pm0

「よかった…。
 甘いものがお嫌いでしたらどうしようかと思いましたわ」

そう言って胸の前で掌を合わせて微笑む城戸沙織に対して、
ふん、と、小ばかにしたかのような小さな笑いが、少女の答えだった。
そして、ケーキを口に運ぶ。
そんな彼女の様子をまるで気まぐれな猫のようだ、と、城戸沙織は思う。

「食べたわよ、これでいいんでしょ?」

元から、夕食後のお茶の誘いだったのだ。

「紅茶も冷めない内にどうぞ」

微笑みの仮面の下で、城戸沙織は考える。
ホムンクルスと太古の女神、彼女と自分、何が違うのだろうと。
アテナと同時に、城戸沙織でもある。アテナとしての意思も、力も、城戸沙織にとっては恐怖でしかない。
神話の昔からの膨大な経験と、記憶は、
僅か十三歳の少女にとって受け止めるには余りにも強大すぎる代物だった。
辰巳からその事実を知らされたとき、
城戸沙織は自分の中で何かおおきな歯車ががちりと嵌り、動き出したのを実感した。
刻一刻と、日一日と、自分が自分でありながら自分以外の何かへと「戻っていく」感触など、
城戸家頭首にしてグラード財団総帥という立場でしかない少女にとっては、荷が勝ち過ぎた。
だから、アテナという存在へ逃げたのだ。
自分自身を何度ともなく死にさらすような真似をしたのは、つまりは逃避だ。


200 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:25:13 ID:0vxm97Pm0
「…熱いのよ」

きっと、この少女もそうだったのだろう。
人外化生へと自分が造り変わる恐怖、だが、彼女はそれでも人間性を喪っていないし、逃げ出しても居ない。
ただ、淡々とその事実を認め、ホムンクルスという自分自身を消化している。

「それは…、ごめんなさい。
 ヴィクトリアさん」

ホムンクルスへと変えられながらも、
「人間であること」を喪っていない、「人間」を辞めていないのだ。
城戸沙織はそんな彼女が少しだけ眩しい。
強大な聖闘士たちが自分をアテナと拝め奉る。
今や神聖闘士となった四人もだ。
だからこそ、ただ一人、彼女を只の一人の少女としか見ていない彼の存在が暖かい。
どんな理不尽でも、どんな運命でも、どんな逆境でも、彼は跳ね除ける。
そんな彼だから、彼女は彼の前でだけ一人の少女で居られた。
城戸沙織としての自分が、どうしようもない位に彼・
星矢に惹かれているのを自覚したのは何時だったのだろう。

「なんで謝るのよ?」

そこで少しだけ、毎日彼女を見ていなければ分からないくらいに、ほんの少しだけ、
彼女、ヴィクトリア・パワードは笑みを思い出した。
胸中を見透かされたように思った城戸沙織は、そこで少しだけ微笑みを増した。

201 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:28:23 ID:0vxm97Pm0
「館の主としてゲストの好みを把握できなかったのですもの。
 謝らなければなりませんわ」

やわらかい笑み。
だがそれは哀しい仮面だ。
ヴィクトリアのこの外見に反して余りにも怜悧な顔と同じく、
グラード財団総帥としての、アテナとしての仮面だ。
この笑みの向こう側の感情を読みとった者は居ないし、読み取れるほど易いものでもないが、
ヴィクトリアは仮面であることには気が付いたらしい。

「そう…」

その、吐息にまぎれて消えてしまいそうな声には、確かに共感が含まれていた。

城戸沙織とヴィクトリアの出会いは、この年の四月になる。
何のことは無い、聖域が調べ上げた情報を元に、城戸沙織自身が会いに行ったのだ。

202 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/07(金) 18:32:55 ID:0vxm97Pm0
当然、護衛についていたジュネや聖域の人間を驚愕させた。
後で事実を知った星矢からもしかられた。
普段余り使わない空間転移までして叱りに来たのだから、
星矢もだいぶ驚き焦って心配したのだろう。
だが、会って置くべき人物であることも事実だった。
敵対する可能性が高い組織の暗部を知るものから情報を引き出し、
願わくば協力を、という聖域上層部の思惑があったことは事実だが、
そんな思惑など知ったこっちゃなしに動くのが城戸沙織である。
良くも悪くもマイペースな彼女に、ヴィクトリアが振り回され、結果として津村斗貴子との接触の後に、
ヴィクトリアは「母」と共に城戸邸に引っ越す羽目になったのである。

「話はそれだけ?
 だったら私は失礼させてもらうわ」

素っ気無い態度で席を立ったヴィクトリアに、沙織は含みのある笑顔を向ける。

「戦団に、すこし変化がありました」

振り返ったヴィクトリアが見た城戸沙織の顔は、アテナのものだった。


203 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/07(金) 18:48:14 ID:0vxm97Pm0
個人的に、声優変わる前の沙織さんのほうが好きです。
というわけで、パート4でした。いよいよきな臭さが濃くなって参りました!
星矢劇中で、アテナがもう少し理性的な行動してたら損害少なかっただろうにって件が結構あるので
その理由付けにこう解釈してみましたが、かえって酷くなったような…
立場には責任が伴う…、重いですねぇ

>>152さん
幾分間が空いたせいかもしれません、自覚できてないだけ尚のこと悪いのかも
気をつけてみたのですが、いかがでしょうか?

>>153さん
瞬はある理由でちょっと固くなってます、それはまぁおいおい…
今回アテナ書きましたが、やっぱり彼女は書きづらいです

>>154さん
粗が見つかりそうで怖いっすw
斗貴子さんはまだ先になります、武装錬金で一番好きな女性キャラなのに
まだ出せないこのもどかしさ、どうしてくれよう…

>>155さん
面目しだいもございません。お待たせしてしまって申し訳ないです
次回もあまり間を空けないように気をつけます


204 :作者の都合により名無しです:2007/09/07(金) 18:56:36 ID:JQtKMD36O
胡座

205 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/07(金) 19:02:58 ID:0vxm97Pm0
>>168さん
虎眼流の幕末風味っていうのは妄想したことありますが
対飛天御剣流となるとどちらに軍配があがるのか、ドキドキしております
剣士凡て斃るで直系の虎眼流は潰えているので、どうなってるんでしょうね
期待大です

さいさん
ちなみに、OVAハーデス編のパンドラも真綾タソです。冥界編だと沙織さんは婦警でゴザマス
銀杏丸版ヴィクトリアはちょっと老成して落ち着いています、こんなのヴィクトリアじゃネーとか
いわれそうで怖い…

ふら〜りさん
錬金チームは元照星隊の大人たち、斗貴子さんたち少年少女と
キッチリ分けて書いていきたいと思っております
でもまだまだ先になりそうで、鬼が笑いそう…

では、またお会いしましょう!


206 :作者の都合により名無しです:2007/09/08(土) 00:55:20 ID:5S49VKqP0
キン肉マン二世
ローゼンメイデンおいておきますね
http://alicewrestling.nomaki.jp/index.html


207 :作者の都合により名無しです:2007/09/08(土) 08:31:22 ID:Jf/l/hua0
お疲れ様です銀杏丸さん。
城戸沙織って猪のようなイメージがあるけど
ヴィクトリアを見守る姿はやはり深層の令嬢って感じですな
最近ペースがいいので期待してます。

208 :作者の都合により名無しです:2007/09/08(土) 10:34:20 ID:Tz/QlV1o0
この話もようやく核心へとちかづいてきたな。
ここまで長かったけど・・w
銀杏丸さんおつかれ。

209 :作者の都合により名無しです:2007/09/08(土) 13:26:21 ID:E4FBpOID0
このスレは本当に錬金好きが多いなw
俺もだけど。

210 :作者の都合により名無しです:2007/09/08(土) 16:10:10 ID:ex9BGTC50
スターダスト氏、さい氏、銀杏丸氏。
今や錬金同好会がこのスレを支えている。

錬金も大好きなんだけど、やはり色んな作品ベースのSSも読みたいな。

211 :作者の都合により名無しです:2007/09/08(土) 19:13:08 ID:mYoUxHrV0
いや、もう他はいらない

212 :作者の都合により名無しです:2007/09/09(日) 00:39:04 ID:dZk8r7L4O
ぶっちゃけて言わせてもらう。

最近はバキ成分が足りない!

213 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/09(日) 06:16:12 ID:8TG+jFD60

獅子の如き牙と猛禽類の如き爪を剥き出して、ジュリアンは防人に突進した。
一方の防人はまるで戦意を喪失してしまったかのように佇立している。
「ジュリアン、お前はもう化物なんだ……。もう、大戦士長の愛したジュリアンじゃない……。
もう、俺達と笑い合ったジュリアンじゃない……」
「喰らえェエエエ!!」
眼を伏せうつむく防人の頭部に、研ぎ澄まされた爪を搭載した腕が振り下ろされた。
爪は金属音を立てて弾き返される。当然と言えば当然だが防人は何のダメージも受けていない。
一定量以上の衝撃を与えるとシルバースキンを構成するヘキサゴンパネルが飛び散る筈だが、
それも見られない。
防人自身どころか、装備品であるシルバースキンにすらダメージを与えられずにいる。
しかし、それは何一つ不思議な事ではないのだろう。
ジュリアンは生まれたばかりの赤子のようなホムンクルスだ。そして防人はそのホムンクルスの
殲滅を任務とする錬金の戦士。
要するにこの二人には、尻尾が取れたばかりの赤子の“蛙”と“蛇”ほどの力量差があるのだ。

「このッ! このッ! この野郎ォオオオ!!」
ただひたすらに無駄な攻撃を加え続けるジュリアンの様は、駄々っ子のような滑稽さすら感じさせる。
「お前は化物なんだ……。そうだ、化物なんだ……」
防人は先程からずっと呟き続けている。
ジュリアンに言い聞かせるように。自分自身に言い聞かせるように。
そうしなければ精神と感情の均衡を保っていられない。
そして、そうしなければ“これ以上”前に進めない。互いを待ち受ける、ごく近い、数秒後の“未来”へと。
延々と続く打撃と呟きの渦の中、口を真一文字に結んだ防人が顔を上げた。

防人の右腕が一瞬揺らめいた――
「……!?」
――とジュリアンが認識した時には、既にその拳は章印が浮かぶ左胸を貫いていた。

「かはッ……!」

214 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/09(日) 06:18:33 ID:8TG+jFD60

無表情の防人は一度腕を捻ると、グイと引き抜いた。
片や恐怖と驚愕の色に満ちた表情のジュリアンは、自分の左胸に空いた大穴と防人の顔を
ゆっくりと交互に、何度も見比べた。
我が身に起こった事が信じられない、いや信じたくないという様子だ。
「ば、馬鹿な……」
己の力がまったく通用せず、易々と急所である章印を打ち抜かれた。
章印の破壊が意味するところは、言うまでもなく“死”。それ以外は無い。
無敵の力を手に入れたと思い込んでいるジュリアンにとってはまさしく悪夢そのものなのであろう。

慌てふためくジュリアンをジッと見つめているうちに、冷淡とも言える防人の無表情が徐々に
歪んでいった。
悲しみによるものではない。
怒りだ。錬金戦団とウィンストン、そして自分を裏切ったジュリアンへの怒り。
表情にも、声にも、意識下のすべてに怒りを充満させるしかなかった。
今にも瞼を曇らせようとする悲しみを覆い隠さんが為に。
あえてそうするしか他に方法が無いのだ。
「お前は錬金戦団の一員なんだ! なのに……それなのに……。ホムンクルスを倒すべき者が
ホムンクルスになるなんて!!」
大声を張り上げてジュリアンを罵倒する。
「ウィンストン大戦士長はお前を愛していたんだぞ! どうしてそれを信じられなかった!!」
だが、その罵倒の声も長くは続かない。
「大戦士長だけじゃない……。俺だって……」

「うぅ……か、身体が……」
四肢の末端から力が抜けていく。
麻痺し、弛緩していくのかと思えば、そうではない。
「崩れて……」
胸の穴や指先、足先から石膏像のように硬化し、ボロボロと崩れ落ちていく。
先程のシャムロックと同じく、ホムンクルスとしての死が緩慢に始まっているのだ。
「う、嘘だ……そんな……。僕は……力を、手に入れたんだ……」

215 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/09(日) 06:19:48 ID:8TG+jFD60
防人に背を向けてよろめきながらも歩き出そうと踏み出したが、脚はまったく言う事を聞かない。
やがて自らの体重を支えきれず、両脚が粉々に砕け、ジュリアンは床に倒れ伏した。
更にはその衝撃によって、両腕も肘から先が大きく砕け散る。
「嫌だ……嫌だよ……。こんな、筈じゃ……。こんな……」
すぐに胴体は胸の穴から二分され、腰や肩口も崩壊に向かっていった。
そして、顔にも一筋の亀裂が走る。
彼の瞳はもう潤いを失い、眼窩に収まっているだけの無機質な球体と化した。
無論、視力は失われている。耳も聞こえているかどうか。
防人は眉根を寄せ、きつく眼を閉じた。

感覚も意識も思考も記憶も、すべてが漆黒と静寂の彼方に消え去る刹那、ジュリアンは白昼夢を見ていた。
現在と過去は混じり合い、忘却の果てに押し流されていた筈の温もりが戻ってくる。
すべてを失ったジュリアンは助けを求め、古ぼけた温もりにすがり付いていた。
いつも手を離さないでいてくれた。しかし、己の過ちでその手を振り払ってしまった。
「ジョン、ごめんなさい……。僕、もうイタズラなんかしないよ……。いい子になるよ……。
だから、助けて……」
その声を聞くと防人は、糸が切れたように両膝を突き、嗚咽を洩らし始めた。
これ以上、怒りを築き上げて自分を偽る事は出来なかった。
悲しみ、後悔、失意、喪失感。それらが一緒くたとなった津波は、防人の自制心を押し流してしまった。
「ジュリアン……。許してくれ、俺が悪いんだ。お前をわかってやれなかった俺が……。
俺が……!」
頭部は亀裂に沿って半分以上が消滅している。胴体などは最早無いも同然だ。
それでも尚、ジュリアンの“存在”は人の生きるこの世にしがみついていた。
あの頃にもう一度帰りたい。あの温もりにもう一度包まれたい。
そんな念だけがジュリアンを存在させた。
「た、助け、て……ジョ……ン……」

216 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/09(日) 06:21:23 ID:8TG+jFD60

ひび割れていく唇から、最期の言葉が押し出されようとしている。
この世界を動かす不可解な何かにずっと阻まれ続けてきた、彼の人生で一度も使う事の無かった言葉。

「お父さん(ダディ)……」



無造作に点在する楢の木の間を走る一本の小道。
はしゃぐ少年を肩車した青年が歩いている。
道の向こうにはあまり手入れの行き届いていないイチゴ畑。

『ねえ、ジョン。知ってる? カブトムシは歌を歌うんだよ』

『そいつァ知らなかったな。ホントか?』

『うん! “ビートルズ”さ!』

『ハハッ! ハハハハハハハハ! 違えねえや!』

『イェーイ! アハハハハハハハ!』

『よし、ジュード。今から俺の部屋に行くぞ。カブトムシのアルバムをいっぱい聴かせてやるよ』

『やったぁ!』

笑顔。少年と青年の笑顔。そして、それを照らす木々の緑とイチゴの赤。
すべては遥か北の方で、塵と消えてしまった。灰と化してしまった。

217 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/09(日) 06:27:43 ID:8TG+jFD60



「……」
“友”が掴む事すら出来ぬ塵に還っても、防人は眼を閉じ、しゃがみ込んだまま、動けずにいた。
『何故?』
それだけが彼の頭の中を駆け巡っていた。
何故? 何故? 何故? 何故? 何故?
防人は眼を開け、拳を握り締めた。
「うわあああああああああああああああ!!!!」
喉を破らんばかりの咆哮がエントランスホールを奮わせる。
やがて、防人は未だ涙に濡れる眼で上階へと続く階段を睨んだ。










ども、さいです。
あ、「北の方」は「きたのかた」とお読み下さい。
錬金物が続いてしまい申し訳無いとは思うのですが、書いたからには投稿しなくては。
辛気臭い展開は嫌ですねー、何か。書いてても気が滅入る。
でも次回からはあのお方が大暴れの予定なのでアッパーなテンションで行けそう。
また書きまーす。
他の職人さん方から元気とやる気を頂いてますんで。
バキスレに多数の職人さんと多様なSSが来られる事を祈りつつ、でわでわ(゚∀゚)ノシ

218 :作者の都合により名無しです:2007/09/09(日) 12:28:39 ID:Eq0J998E0
お疲れ様ですさいさん。
錬金は好きなので、とうぜんさいさんの作品も楽しみにしておりますよ
いろいろありましたが、これも一つの幸福な終わり方なのか。。な?

あと10回くらいの投稿でエンディングかな?
ラストスパート頑張って下さい。


219 :作者の都合により名無しです:2007/09/09(日) 19:25:50 ID:TlkhuC090
早朝からさいさん乙!
ビートルズネタ入れたのはさいさんらしくていいですね。
ジュリアンは綺麗な消滅の仕方だったな。
防人の睨んだ先にはまだまだ苦難がありそうですね。
最終回近そうな気もするけど、出来るだけ続いてほしいな。


220 :るろうに剣心ー死狂い編ー byこがん☆:2007/09/09(日) 20:40:19 ID:7qQXMbfu0
第一話「予兆」

 金岡虎眼流の起源は江戸初期にまでさかのぼり、その源流は、慶長以来、「濃尾無双」と謳われた無双虎眼流である。
無双虎眼流とは、かの柳生新陰流の達人にして総帥、柳生宗矩すら凌駕すると恐れられた、剣豪岩本虎眼が、
遠江の国、掛川に道場を開いて創始した流派である。
金岡虎眼流は、この岩本虎眼の弟子の一人であった金岡雲竜斎が、免許皆伝し独り立ちして建てた流派であり、
明治の世まで伝わったのは、こちらのみである。と、言うのも、本家虎眼流は、頭首岩本虎眼が斬死し、
その後継も尽く絶えたからである。岩本虎眼の死に関しては、現在では記録が少ないためどうもはっきりしない点が多く、
一説によると破門した当道者(盲目の人間)に斬られたと言うが、定かでは無い。
また、彼の血縁者、中目録以上の優秀な弟子たちは、後の世で残酷無残と称せられたあの駿河城御前試合に関わり、
尽く横死している。大目録術許しであり、尚且つ御前試合以降も生存していたのは(すくなくとも記録に残っている上では)金岡雲竜斎ただ一人であった。
彼が、虎眼流宗家を襲った惨劇より何故ただ一人生き延びたのかは、それが単なる偶然なのか、
それとも何か他に要因があったのかは杳として知れない。
ただ、雲竜館に代々伝わる「金岡相伝書」では、岩本虎眼の名は何故か“宮本”虎眼となっており、
単なる間違いの可能性もあるが、虎眼流宗家との繋がりを曖昧にしたいという、
何らかの意図があったとも考えられそうではあった。

しかし、宗家との関係性はどうあれ、金岡の伝えた虎眼流の業(ワザ)は、決して宗家には引けを取ることは無い。
事実・・・・・・・


221 :るろうに剣心ー死狂い編ー byこがん☆:2007/09/09(日) 20:41:21 ID:7qQXMbfu0
「死んだ・・・・だと」
「へぇ、何でも、例の蜂須賀以外、その場にいたそいつの取り巻き八人が全部・・・」
牛鍋屋「赤べこ」の席上で、一緒に鍋を囲んでいた舎弟の修の切り出した話の、
その血生臭い内容に、元「喧嘩 屋斬左」こと相楽左之助は顔をしかめた。
修の話に依れば、このあたりの若い不逞の輩の集まりであった「菱卍愚連隊」の頭目、
蜂須賀と、喧嘩の腕の立つその取り巻き八人が、何者かに殺されたというのである。
「そいつぁ、いつの話だ?」
「へぇ、昨日の夜あたりだって、話ですけど・・・」
「あいつらは見境無く暴れてやがったからな・・・・ヤクザにでもやられたのか?」
「いえ・・・・それが・・・・どうも、行き摺りの男にやられたらしくて・・・」
「何だそりゃ・・・」
左之助が再び顔をしかめた。「赤べこ」で下働きをしている、神谷活心流(唯一の)門下生、
明神弥彦も、仕事の手を止めて、修の話に耳を傾けた。
「生き残った蜂須賀が言ったらしいんですけど、白髪頭の素浪人風の男に喧嘩売って返り討ちにあったらしいんすよ」
「白髪頭の素浪人・・・ねぇ・・・・」
「しかもやられた連中は全員が殴り殺されたらしくて・・・顎がそぎ落とされてたり、
顔が文字通り潰されてたりと、どいつもこいつもろくでもない死に方してたみたいすっ・・・」
「そりゃまた・・・」
「蜂須賀もあばらをへし折られて、半殺しだって話です・・・」
修はおっかない、といった感じに、身震いしながら言った。


222 :るろうに剣心ー死狂い編ー byこがん☆:2007/09/09(日) 20:42:59 ID:7qQXMbfu0
左之助達が「赤べこ」で鍋を囲んで話し込んでいた日の、先日の夜。人気のない河原。

「ひぃっ・・・・・・ひぃっ・・・・・・・・」
年若い不逞の輩どもの群れである「菱卍愚連隊」の頭領、蜂須賀は、喉からかすれた悲鳴を上げた。
彼の眼に前にはつい先ほどまで彼と群れていた彼の舎弟どもの物言わぬ躯が転がっている。
何れも、体の何所かを原型を留めぬまでに破壊されている。
あるものは下顎を削ぎ飛ばされ、顔面を破壊され、頚椎をへし折られ、胸部を陥没させ、死んでいた。
そんな躯どもの真ん中に、一人の年若い男が立っていた。
奇妙なことに、彼の頭は、まるで老人の様に白い。
そして、男の右手には、今しがた彼が殺したごろつきどもの歯が幾つも突き刺さっていた。
何故、こんな事になったのか。
蜂須賀は、既に恐怖で機能停止寸前の己の脳みそを何とか動かして考えた。
彼らが、この白髪男に絡んだのには別に深い意味はない。ただ、その若白髪が目に付いただけである。
そして、男が大事そうに背負った、太刀袋のようなものが気にかかっただけのことであった。
適当にいたぶって、身包みはがして置き捨てる積りであった。それが・・・・・
「ひぃぃ・・・・ひぃぃ・・・・」
恐怖のため、呼吸がうまく出来ない。汗が滝のようにあふれだす。太腿の辺りが生暖かい。
蜂須賀は既に失禁していた。
「・・・・・・・」
男がこちらを向く
「・・・・・・・」
男がかすかに動いた、と蜂須賀が認識した瞬間。右胸部に凄まじい衝撃を感じ、
蜂須賀は意識を手放した。


223 :るろうに剣心ー死狂い編ー byこがん☆:2007/09/09(日) 20:44:30 ID:7qQXMbfu0
金岡虎眼流大目録術許し、雪代縁は、自分の右手に刺さった歯を引っこ抜いた。
彼が、彼らの喧嘩に応じたのは別に深い意図があってのことでは無い。
ただ、彼の仇どもと死合う前の準備運動ぐらいにはなるかと思っただけの話である。
実際には、こんな野良犬、否、蛆虫ども相手には、表道具はおろか、裏の道具もほとんどつかうまでもなかったのだが。
「・・・・・・・」
今しがた右胸の肋骨を砕いた男はまだ生きている。
別に縁が仕損じた訳では無い。
皆殺しにせず一人残すのは、言わば癖のようなものであり、
「生き残った者を虎眼流の剣名を世に広めるための生き証人とする」という、宗家がまだあったころからの伝統であった。
 
男、蜂須賀の肋骨を砕いたのは、「虎拳」という手首を用いた当て技である。
虎眼流大目録術許し、すなわち三尺七寸の太刀を神速にて操る剣客の腕ならば、
たとえ無刀であっても、容易に人体を破壊しうるのだ。

左之助は、「赤べこ」を出て(無論、勘定は払わない)真っ直ぐ普段から入り浸っている神谷道場へと向かった。
修の話を聞いて左之助の考えたこと、それはこの話を、緋村剣心に話すことである。
相手はたかがごろつきどもとはいえ、九人同時に相手にして、それを易々屠る男である。
なんとも得体が知れず、警戒をしておくに越したことは無いと考えたからだ。
いまだ「赤べこ」にいる弥彦もまた同じことを考えていた。

彼らはまだ知らない。その白髪頭の男が、自分たちを探してこの東京までやって来ていたことに。



224 :るろうに剣心ー死狂い編ー byこがん☆:2007/09/09(日) 20:47:11 ID:7qQXMbfu0
どうも、こがん☆です。前回、感想を下さった方、ありがとうございます。
とりあえず第一話です。まだ剣心出てきてませんねwww
次あたりにはたぶん出ます。それでは

225 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 21:38:47 ID:I4Rimw3U0
第六話「追憶・1」

それは、とある雨の日の夜。
彼とその娘、そして彼女たちは、出会った。

土砂降りの雨の中、野良猫くらいしか寄り付かない薄汚れた路地裏に、その四人はいた。
そのうちの三人は子供。少女が二人と、一人の少年。そして、彼らをそっと抱きしめる女性―――
外見は、まだ二十そこそこの若い女だ。人形のように冷たくも整った顔立ち。粗末な服装が印象を貶めてはいるが、
それでもなお美しいといえるだろう。
果たして何があったのか、その身のあちらこちらが傷だらけだ。
その人形のような女は、子供たちをいたわるように。温もりを分け与えるように。それはまるで、母親のように。
三人の子供を、優しく、しっかりと抱きしめていた。
だがその子供たちの体からは、次第に力が失われていく。
―――当然だ。三人とも、女の怪我など比較にならない、一目で致命傷と分かる傷を負っているのだから。
「…お母…さん…」
長い髪の大人しそうな少女が、息も絶え絶えに呟いた。女は唇を噛み締め、少女の髪をそっと撫でてやった。
「…痛いのですか」
「…ううん…痛く…ない…だから…大丈夫…」
大丈夫な訳がない。痛みがないというのは、ただ単に―――痛みも感じられないほどに、終わっているだけだ。
そんなことは、女には分かり切っていた。けれど、それでも女は笑った。悲しくて、泣きたくて仕方ないのに。
子供たちを少しでも安心させるために、笑ってあげた。
「そうか…ならきっと、大丈夫でしょう」
「うん…そうだよ、ね…」
答えたのは、短い髪の少女。
「あたいたち…まだ…これからだもんね…これから…あたいたち…幸せに暮らせる場所…探すんだもんね…」
「…………」

226 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 21:40:31 ID:I4Rimw3U0
「どこかに…あるよね…そんな場所…」
「ええ…きっとそこに、いつかは、辿り着けるでしょう」
そんなわけ、ないのに。きっとこの世界には―――自分たちを受け入れてくれる場所なんて、ないのに。
「お母さん…暖かい…気持ちいい…」
少年が女にしがみつく。その温もりを求めるように。重傷の上に冷たい雨に打たれ、その身は冷え切っていた。
「眠いんだ…眠っても…いいかな…」
「そうだね…疲れたろう。ゆっくりおやすみ」
言って、女もまた目を閉じた。
不意に、思い返していた。
これまでの、己の人生を―――

―――そこは、とある研究所だった。
どういう目的で設立されたのか、何の研究をしていたのか、今となっては知る由もなく、知ったところで意味はない。
そこで、彼女は産み出された。
どういう研究の過程で産まれたのかは分からないが、ともかく―――
彼女はこの世に、産み落とされた。

227 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 21:41:35 ID:I4Rimw3U0
「な、なんだ…何なのだ、これは!?」
―――彼女がその意識を覚醒させた時、目の前には一人の白衣の男がいた。
彼女は産まれた瞬間には、既に高い知性と膨大な知識を持っていた。そして、自分が人工的に造られた存在であること、
目の前にいる男が、己の創造主であることを理解していた。
ただ、自分がどういった存在なのか、何を目的として造られたのか―――それだけは、分からなかった。
だから、彼女は尋ねた。
「私を造ったのはあなた…私は何?私は何をすればいい?」
答えはない。男は恐怖と嫌悪に顔を歪め、苦々しく呟くだけだ。
「なんということだ…こんなことが!」
「私を産み出せし者…創造主よ、お教えください。私は何なのです?何をするために造られたのです?お教え…」
「黙れ!私は…お前のようなモノなど、造るつもりなどなかった!」
男は激昂し、叫んだ。彼女は己の親であるはずの人間の冷たい拒絶の言葉に、二の句が継げなくなる。
「お前は、存在そのものが間違いだ…!」
「間違い…私は…間違い…?」
「そうだ!お前はただの間違い―――とんだ失敗作だ!」
よろよろと後ずさりながら、男は彼女を指差し、口汚く罵った。
「…お前はただの間違いだ。存在そのものが過ちなのだ!お前は―――デュミナスなのだ!」
―――それが何を意味する言葉なのか。何を思い、創造主は彼女をそう呼んだのか。彼女―――デュミナスには、もう
分からない。だがそれからのことは、はっきりと覚えている。
まずは目の前にいた創造主を、デュミナスは殺した。拳による一撃で、頭を吹っ飛ばしたのだ。デュミナスは、自分が
どうやら人外の力の持ち主であるらしいことを知った。知って―――躊躇うことなくそれを振るった。
施設を堂々と練り歩き、出くわす研究者や警備員、あるいは特に機密に関わっている風でもない、単なる作業員と思しき
者に至るまで―――全てを殺意の赴くままに、単なる肉塊に変えていった。
―――そして、最後に。デュミナスは、三人の子供たちに出会った。

228 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 21:42:35 ID:I4Rimw3U0
二人の少女に、一人の少年。
その子供たちは―――檻の中に閉じ込められていた。
閉じ込められ、白衣の研究者たちに管理され、監視されていた。
その子らの前で、デュミナスは先程までと変わらず、殺戮の限りを尽くした。
だが子供たちは怯えるでもなく、悲鳴を上げるでもなく。
ただ、デュミナスを見つめていた。その様子に、デュミナスは興味を引かれた。
流石にこんな子供たちまで殺す気はなかったが、別段優しくしてやるつもりもなかったのに。
何故だか急に―――放ってはおけなくなった。
似ていたからかも、しれない。
産まれた瞬間に全てを否定された自分と、檻に閉ざされた子供たち。
「怖く―――ないのですか」
デュミナスは子供たちに尋ねた。
「あなたが」
少年はそれには答えず、逆に尋ねてきた。
「あなたが…僕らの、お母さんなんですか?」
「…お母さん…?」
余りにも予想外の答えに、思わず絶句した。
「私たちは、この檻の中でずっと、それだけを願っていました」
少女の片割れ、長い髪をしたその子は語った。
「いつかお母さんが、私たちを助けに来てくれるんだって…この檻の中から、外へと連れていってくれるんだって…」
「…………」
そんなことを言われてもデュミナスには答えようもない。檻の中、追い詰められた子供たちは、そんな幻想に逃げ込む
他なかったのかもしれない。哀れとは思うが、自分にはどうこうしてやる義理もなかった。
「あんた、あいつらをやっつけてくれたじゃない。あいつら、あたいたちに嫌なことばっかするんだ。あたいたちだけ
じゃない。あたいたちの他にも、たくさんの子供がいたんだ。でも皆死んじゃった…あたいたちも、いずれそうなって
たと思う。ここは…嫌だ。外に、出たいよ。外に出て―――幸せに暮らせる場所を、探したいよ」
短い髪の少女が言い募る。突如現れ、閉ざされた世界を打ち壊してみせたデュミナスに対し、縋り付きたいという思い
があったのかもしれない。
デュミナスはどうすべきか考えた。考えた末―――言った。

229 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 21:43:36 ID:I4Rimw3U0
「残念ながら、私はお前たちのお母さんではありません。お前たちのお母さんというものが、今どうしているかも知り
ません。私は今からこの研究所を出ます。後は勝手になさい」
三人の瞳に、見る見る内に絶望が広がる。やっと巡り合えたと思った希望が、あっさりと消え失せたのだから、それも
当然だろう。だがデュミナスは言葉とは裏腹に、立ち去ることはなかった。檻に手をかけ、そのまま力を込める。鉄格子
がひしゃげ、子供たちが通れるほどの隙間ができた。三人はどうしていいのか分からず、顔を見合わせる。
「つまり―――お前たちが私についてくるのも勝手ですし、お母さんと呼ぶのも勝手です。面倒くさいなりに―――
面倒を見てあげましょう」
三人はわっと歓声を上げて、デュミナスに子犬のようにじゃれついた。お母さん、お母さんと連呼されるのは、どうにも
こそばゆいものがあったが、不快ではなかった。
しばらくされるがままになっていたところで、デュミナスは訊いた。
「…お前たち、名前はあるのですか?」
「名前…?ないよ、そんなの。ここに連れてこられたのはまだ物心つく前だったし…ここに来てからは、あいつらは
あたいたちのことを、わけ分かんない番号で呼んでた」
「そうか」
この子たちは―――名前すら、与えられなかったのか。ならば、せめて。
「ならば私が、名付けてあげましょう」
子供たちはきょとんとした顔で、デュミナスを見つめる。デュミナスは笑って言った。

230 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 21:57:59 ID:I4Rimw3U0
「仮とはいえ、親ならば、子供に名前を与えるものでしょう―――あなたは、ラリアー」
「ラリアー…?」
三人の中で唯一の男の子は、戸惑ったように反芻する。
「あなたは…デスピニス」
「デスピニス…私の名前…」
長い髪の少女は、感慨深そうに胸に手を当てた。
「そして、あなたはティス」
「ティス…へへ、あたい、ティスだってさ」
短い髪の少女は、素直に嬉しそうな顔をした。
「気に入ってくれたのなら、なによりです。では…共に探しましょうか」

「私たちが、幸せに暮らせる場所を」

―――その日から、彼女たちの逃走と、闘争の日々は始まった。
デュミナスが生まれ、子供たちが囚われていた研究所は確かに完膚なきまでに破壊されたが、それで全て終わりとは
いかなかった。
どんなことであれ、情報とは漏れてしまうものである。その結果、危険な存在であるデュミナスを始末しようとする
もの、或いはその存在に興味を持ち、生け捕りにしようと企むもの…各々の思惑を持った連中が、少なからず現れた。
デュミナスはそういった輩が仕向けてきた刺客を―――全て返り討ちにした。
戦闘においてはハッキリ言って足枷でしかない子供たちを連れていながら、そんなことはまるで関係なく。
自分も、そして三人も、決して傷つけることなく。
それだけの力が、デュミナスにはあった。だが、それも―――限界があった。
明日はどこへいくともしれない当てもない旅。そしてそんなことはお構いなしに、自分たちを狙いやってくる刺客。
夜中、子供たちが眠っている間も、デュミナスは敵からの襲撃に備え常に神経を張り詰めていた。それはデュミナス
自身が自覚している以上に、彼女に負担をかける。それが積もり重なれば、どこかに隙は必ず出来てしまう。
その上、彼女が敵を倒せば倒すほど、その情報も伝わり―――結果、更に上手の相手がやってくる。
そして、とある雨の夜。ついに彼女は、子供たちを守りきることが出来なかった。
ただでさえ、相手が悪かった。三人組の、奇妙な<殺し屋>。男二人に、女が一人。それぞれ太刀、薙刀、そして
弓矢と、時代錯誤も甚だしい得物を手にしていた―――そんな珍妙な連中ではあったが、一人一人が今までの相手
とは別格の手練であり、それ以上に恐るべき、完全な連携を実現していた。

231 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 21:59:00 ID:I4Rimw3U0
今の状態では勝てない―――そう判断し、デュミナスは逃げることに専念した。
こちらからの攻撃は一切捨てて。逃げ足と、相手の攻撃から自分たちを守ることだけに神経を集中させる。
だが、ほんの少し―――ほんの少しだけ油断したその時、血飛沫が舞った。太刀の一閃が、デュミナスの背を斬り
裂く。深い傷ではなかったが、一瞬動きが止まる。そこに放たれた二の太刀。
「…母さんっ!」
だがそれは、デュミナスではなく―――ラリアーを斬り伏せた。彼はデュミナスが斬られた瞬間、咄嗟に彼女を
庇ってその身を太刀の前に投げ出したのだ。彼は母親を―――庇ったのだ。
そして深々と、彼の身体は抉られた。ラリアーは大きく目を見開き、地面に崩れ落ちる。
「…ラリアー!」
自分の怪我も忘れ、狼狽するデュミナス。そこに襲い掛かる、薙刀。
「やめて!」
斬られる寸前―――デュミナスは誰かに突き飛ばされた。その勢いで地面に倒れながらデュミナスが見たのは、
ティスの姿だった。
彼女は身体ごとデュミナスにぶつかって、薙刀の軌道からデュミナスの身体を逸らさせたのだ。つまり―――
ティスが、薙刀の攻撃に晒されるということ!
彼女の胸から腹にかけてぱっくりと裂けて―――鮮血が自分の顔に降り注ぐ。
「そんな…」
何故―――こんな無茶を!こんな―――
一瞬の放心状態。視界の端で何かが自分に向けて放たれるのが見えたが、動けない。
「駄目!」
デスピニスが大きく手を広げ、デュミナスを守るようにその身を晒した。一瞬後―――その胸の真ん中を、何かが
射抜いた。それは、一本の矢。
デュミナスが見たのは、デスピニスが血反吐を撒き散らしながら、地に倒れ付す姿だった。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!」
デュミナスは力の限り叫んだ。
怒り、悲しみ、自嘲、悔恨、憎しみ―――あらゆる負の感情が、彼女の中で荒れ狂っていた―――

232 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 22:00:09 ID:I4Rimw3U0
―――其処から先は、どうやって切り抜けたのか覚えていない。
気が付けば路地裏で、瀕死の子供たちを抱きしめている自分がいた。
「もっと…私が強ければ…お前たちをこんな目に合わせずにすんだのに…許しておくれ…」
「いいんだよ…母さん」
ティスが笑った。きっとそれが、この世で最期の笑顔。
「あたいたち…母さんがいてくれて、幸せだった」
「…………」
「生まれ変わったらさ…あたい、ボインで色っぽいお姉ちゃんになれたらいいな…なんてね…」
「私は…」
デスピニスがそれに応えるように、死の淵の震える声で言った。
「健康な身体と…心が欲しい」
「僕は…みんなを…守れるくらい…強い力が欲しいな…」
ラリアーもそう言って、微笑んだ。
「…………」
デュミナスは何も言わない。何も言わず、子供たちを抱きしめ続けた。
―――私はこの世に生れ落ちて、何が出来たのだろう。
自分を慕い、愛してくれた三人を、守ることも出来ず―――どころか、最後には逆に守られた。
―――創造主が言ったとおり、私は、ただの間違いだったのだろうか。
この腕は悲しい程に短く、何にも届きはしない。差し出した手を握り返してくれる存在など、どこにもない。
―――私が―――この子たちが幸せに暮らせる場所など、結局は、どこにも―――
「お父様!大変なの!こっち、こっち!」
闇に沈みかけたデュミナスの意識は、その声で呼び起こされた。目の前には傘を差した見知らぬ女の子が一人。
ティスたちよりは、少し年上のようだ。
女の子は盛んに手を振り、<お父様>とやらに呼びかけ続けていた。そして、一人の男が姿を見せる。
特にハンサムでもない、パッとしない中年男性だったが、自分を呼んでいた女の子に向ける顔は優しく、穏やか
だった。

233 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 22:01:22 ID:I4Rimw3U0
「テラ!どうしたんだ、こんな所に連れてきて…」
「猫ちゃん追いかけてたら、この人たちがいたの。酷い怪我してるの。助けてあげて!」
男はデュミナスたちを見遣り、はっと驚いたようだった。
「そんな…お前は…メガ…?」
「…?」
デュミナスは困惑した。この二人が何者か分からない上に、男の発したメガ、という言葉が何を示しているのか、よく
分からなかったからだ。
「いや…違う。メガは…死んだんだ…おっと、そんなことを言ってる場合じゃないな。確かに、酷い怪我だ…」
「…あなたは」
デュミナスは問うた。不思議なことに、この二人に対して警戒心はなかった。
「あなた方は…何者ですか」
「あ、ああ。すまん。この子はテラ。わしの娘だ。そしてわしは、山田博士という。ギガゾンビなんてよく分からん
あだ名で呼ぶ奴も多いがな」
「…あまりにもありふれ過ぎて、逆に印象に残る名前ですね。ギガゾンビの方が、まだパンチが利いています」
「初対面だというに、酷い言い様だな…」
「申し訳ない…それよりも、この子たちは…?この子たちは、助かるのですか?」
その問いに、男は難しい顔になった。
「…まともな医療では、ハッキリ言って助からん。この子らは肉体的には、ほぼ死んでしまっているからな。ただ…
幸いと言っていいかは分からんが、頭部―――つまり、脳は無事なようだ。それならば…やりようはある。かなり問題
のある方法ではあるがな」
「…それでも…」

234 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/09/09(日) 22:02:48 ID:I4Rimw3U0
デュミナスは言った。
「助けられるのならば…どうか、助けて欲しい。私は、この子たちに―――生きていて、ほしい」
「分かった…やれる限りのことはしよう」
男は頷き、そしてふと思い出したかのように、聞いた。
「そう言えば―――君の名前を聞いていなかったな」
「名前…私の、名前…」
そんなものを訊かれたのは―――この子たちと出会った時以来だ。それから出会った者たちは、そんなものを聞いては
こなかった。
当然だ。彼らはみんな、敵なのだ。わざわざ名を尋ねてくる必要などない。彼らにとってデュミナスなど殺すか、又は
生け捕りにする対象でしかない。
―――ならばこの男は、自分たちにとってどういう存在たりえるのか。
「私は…」
デュミナスはゆっくりと、己が名を、告げた。

「私は…デュミナス…」

―――それが、苛酷な日々の中で探し求めたものだとは、デュミナスはまだ気付いていない。
男―――ギガゾンビにとっても、デュミナスたち四人がこれから先、己の生き方すら大きく変えるほどの存在になる
など、今は知る由もなかった。
いつのまにか夜が空け、朝日が世界を照らしていた。
雨の中で出会った四人と二人。
<家族>となった、特別な朝―――


235 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2007/09/09(日) 22:11:11 ID:I4Rimw3U0
投下完了。
こがん☆さん、続けての投下、失礼しました。

いやー、前回から数ヶ月も開いちまったよ。全く!サマサという奴は、全く!
バキスレ職人はSSを書くのが仕事と自分で言っといてこれです。
とにもかくにも、復帰しましたので、温かい目で見ていただければ。
しかし今回、ドラえもんのタイトルなのに、ドラキャラがギガゾンビしか出てねーぞ…。

デュミナス。スパロボRのラスボス。やった人なら分かってると思いますが、こいつは顔グラはよく
分からん目玉なんですが、このSSでは女性です。まあ設定改変ということで…。
しかしRの敵連中がOGsに登場するとは思わんかった。嬉しい誤算だったり。

最近ハマったもの、サ○ンドホラ○ズン。
今回投下分にも、微妙に使わせてもらったり。
<家族となった、特別な朝>とか、まんまです。

236 :作者の都合により名無しです:2007/09/09(日) 23:55:46 ID:QHh1Yg5o0
なんか盛ってきたー!

さいさん、いつも楽しませて頂いてありがとうございます。
今回はいつもと変わって切ない感じでしたね。

こがんさん、プロローグから楽しみにしておりました。
この雰囲気にいずれ出る剣心がどう絡むか楽しみです。

そしてサマサさん、お帰りなさい!
俺はミスターバキスレというとサナダムシさんとあなたが思い浮かぶので
とっても嬉しいです!

237 :作者の都合により名無しです:2007/09/10(月) 01:00:52 ID:Avxgpg9E0
>こがん☆さん
新連載2回目ですね。お疲れ様です。
佐の助の斬馬刀もシグルイキャラには通用しそうにないな。
なんかカマセになりそう。無明逆流れ(だっけ?)と天翔龍閃の
ぶつかり合いはあるのかな?

>サマサさん
お久しぶりです。ご復帰嬉しいです。
久しぶりですけど濃いですね。いきなりハードというか、かなしげというか。
デュミナスというキャラはしりませんが、やはりラスボスに近いキャラでしょうか?
ギガゾンビと縁も深そうですし。



238 :作者の都合により名無しです:2007/09/10(月) 10:25:32 ID:8l+jG7PF0
サマサさん復活したか!



239 :作者の都合により名無しです:2007/09/10(月) 16:43:30 ID:NTezw8wZ0
こがんs氏、新連載ということで期待しております。
シグルイとるろうには時代がちょっと違いますがw
そんな些細な事より、剣心がどう主役を勤めるかが見物です。


サマサ氏はお久しぶりですね。
正直このまま来ないかとも心配しておりました。
桃太郎とドラの世界の中でスパロボキャラはちょっと異端ですが
今回も情状描写がキレイだったので期待できます。

240 :作者の都合により名無しです:2007/09/11(火) 12:15:46 ID:Hdn3t2Ew0
この調子で平日にも安定して来てほしいものだ

241 :作者の都合により名無しです:2007/09/12(水) 08:51:45 ID:aAq5cs0u0
>>188
戦士クウガの力を完全に覚醒させた黒沢が、溢れる力を持て余すかのように拳を
振りかぶってゴオマに向かった。そして必殺パンチ! のつもりが、突然後ろから
その拳を引っ張られて急ブレーキ、後方へとつんのめってしまった。
「な、何だっ!?」
振り向いて自分の手を見れば、白く太い糸が絡み付いていた。遥か向こう、岩場を
越えて森の奥から伸びている糸。そしてその糸を強く引っ張って、まるでゴム仕掛けの
ように森から跳んで来たのは、クモの頭部を持つ土色の肌の怪人。
「い、1号か!」
「ジガギヅシザバ・クウガ! ゴラゲゾボソギデバゾガゲデジャス! ズ・グムン・バザ!」
(久しぶりだな、クウガ! お前を殺して名を上げてやる! ズ・グムン・バだ!)
クモ男、グムンは跳んで来た勢いそのままに黒沢を蹴り倒した。そして倒れた黒沢を、
また糸を引っ張ってムリヤリ立たせて、
「させるかっ!」
次の一撃が来る前に、黒沢は手に絡まった糸を外してグムンから離れた。が、すかさず
後ろからゴオマに羽交い絞めにされ、
「ジュスガバギ・クウガ!」
(許さない、クウガ!)
ゴオマの牙が、黒沢の肩に食い込んだ。生体装甲の隙間をぬって、強化皮膚を突き破って。
変身したとはいえ常人と何ら変わらない、黒沢の赤い血が吹き出す。
黒沢は激痛の脂汗を浮かべながら足掻いてもがいてじたばたするが、ゴオマは離れない。
そうこうしてる間に正面からはグムンが来る。そして背後からは、
「3号おおぉぉっ!」
野明が来た。拾った拳銃二丁を両手に持って、左右からゴオマの耳に押し当てて撃つ! が、
確かに銃弾が耳から頭蓋に撃ち込まれたというのに、それでもゴオマは平然としている。
黒沢を羽交い絞めにしている力を全く緩めることなく、牙だけ抜いて、ニヤリと笑って
振り向いて、ゴオマは野明に自慢げに言い放った。
「ボンバロボ・ゴセビパヅグジョグギバ……」
(こんなもの、俺には通用しな……)
「と自慢するタイプよね、あんたは! 黒沢さん、前向いたまま目を瞑ってっ!」

242 :作者の都合により名無しです:2007/09/12(水) 08:54:15 ID:aAq5cs0u0
え、と黒沢が聞き返すより早く、野明はポケットからあるものを取り出した。
3号=ゴオマに逃げられてはまずいと火炎瓶の時に悟って、奴の弱点だとは知りつつ
使えなかった武器だ。
先日、病院から出て黒沢と戦った時、パトカーのライトに苦しんで逃げたゴオマ。コウモリ男
な外見に違わぬ弱点を備えているらしい。
そう思って、野明が用意してきたもの。ピンを抜いて、すぐさま自分で自分に目隠しして、
「喰らえっ! あたしたち警察官が知る、この世でイチバン強烈な光!」
ゴオマの眼前で、スタングレネードが炸裂した。常人ならばたちどころに視力を奪われ、
それにより判断力を失って反射的に体を丸めてしまう閃光弾である。
それを、通常の日光や蛍光灯すら苦手とするコウモリ種怪人・ゴオマが浴びたのだから……
「ギィィアアアアアアアアァァァァァッ!」
この世のものとも思えぬ悲鳴を上げて、ゴオマは黒沢を突き放した。空中を引っ掻きまくって
もがき苦しみ、暴れ、そして羽ばたき舞い上がる。
少しずつ明けつつある東の夜空に背を向けて、森の方へと逃げ出した。しかも、
「ボシャブバ……ッ!」
(小癪な……っ!)
ゴオマに羽交い絞めにされていた黒沢を挟んで、野明と相対する形になっていたグムン
も目を焼かれたようだ。ゴオマほど苦しんではいないし常人のように丸まってはいないが、
やはり視力は完全でないらしく、黒沢への攻撃ができないでいる。
もちろん、その黒沢は野明に背を向けていたので、
「よっしゃああああぁぁっ、勝機!」
ゴオマ相手には不発に終わった渾身のパンチを、グムンの顔面に叩き込む。頭蓋が
陥没したんじゃないかって手応えだったが流石にそんなことはなく、苦しみながらも
グムンは倒れない。どころか、もう視力が回復しつつあるのか果敢に殴り返してくる。
白い姿の時より大幅に強くなったとはいえ、黒沢自身がまだクウガの力を使いこなせては
いない。ゴオマに深々と喰らいつかれた肩の傷も痛むので思うように戦えず、グムンの
拳を、脚を、爪を、次々と受けてしまう。
何とかしないと、何かないか、と黒沢が念じたその時、足……特に右足が、急に熱くなった。


243 :作者の都合により名無しです:2007/09/12(水) 08:58:11 ID:aAq5cs0u0
「! これかっ!」
右の中段回し蹴りがグムンに命中! 息を詰まらせたのか、グムンの動きが止まる。
すかさず左の前蹴りを打つ、が、
「ボンバベシ!」
(こんな蹴り!)
グムンはその足をキャッチした。両手でしっかりと握って放さず、
「よぉし放すなっ!」
黒沢は左足をグムンに持たせたまま、右脚一本で大地を蹴って跳躍。見上げるグムンを
見下ろして、その胸板へと豪槍の如き右の蹴り……一瞬、その足に炎が灯った……を、
叩き込む! 
「おおおおぉぉりゃああああああああぁぁぁぁっ!」
爆音が響き、たまらずグムンは黒沢の足を離して吹っ飛び倒れ、黒沢は右足から
煙を立てて着地する。
荒い呼吸の黒沢と不安な面持ちの野明の目の前で、グムンは苦しそうに立ち上がった。
その胸、黒沢が蹴り込んだ辺りに、何か紋章のようなものが象られ……炎で描かれている。
それをグムンは両手で押さえ、だが押さえきれないらしく、
「ボソグ……ジャデデジャス……ボ……ボ・ボソグ! ジャデデジャス……!」
(殺す……やってやる……こ……こ、殺す! やってやる……!)
紋章の炎が胸から全身へと走り広がる。グムンは顔を上げ呪詛の視線を黒沢に放ち、
「クウウゥゥガアアアアァァァァッッ!」
断末摩の叫びを上げ、火柱と化し爆発! 多くの人命を奪った邪悪の肉体が今、四散した。
その、強大なる邪悪を倒した戦士はというと、
「……か…………かっ……た? 終わっ…………た……んだよ…………な」
体の色が赤から白へ、そして人間・黒沢へと変化していく。自身の意識の喪失と共に。
「黒沢さんっ!」
野明が駆け寄って抱きとめようとしたが間に合わず、黒沢は大地に倒れ伏した。

244 :ふら〜り:2007/09/12(水) 08:59:22 ID:aAq5cs0u0
さいさんと銀杏丸さんが頑張って下さり、こがん☆ さんによる待望の新連載、
サマサさんの復活、スターダストさんもおそらく遠くない……良かった、もう大丈夫! 
ってところで私は次回完結。またいずれ、よろしくです。

>>銀杏丸さん
原作の沙織はあまり好きではないのですが、銀杏丸さんやミドリさんの沙織は気品の高さが
良い意味でのお嬢様らしさになってて好きです。そういや星矢側は、女性の戦士って白銀
止まり。沙織は軽々に戦えないし(白銀に殺されかけた人だし)、その辺も錬金との差かな。

>>さいさん
前回とは対照的に、今回は少々予想外でした。ジュリアンが徹底的に助からなかったこと、
そのことについて防人の躊躇が短かったこと。倒すべき相手を前にしたら躊躇わない、でも
戦い終えた後で……が防人という男なのかも。次に彼が拳を握る時は、激昂か冷徹か。

>>こがん☆ さん(内容の凄惨さに反して、かわゆらしい名ですね)
拳で折る・潰すならともかく、手刀で斬る・刺すならまだしも、素手で「削ぐ」ってのはスゴい
ですな。原作縁も素手格闘できましたけど、ここまでは……一人残す理由といい、狂気も
強さも原作より上かも。そういや流派も違うわけですし、戦闘スタイルも違ってくるのかな?

>>サマサさん(燃えて萌える大所帯マスター、お帰りなさいませっっ!)
アザミもそうでしたけど、こういう過去があると……しかも女・子供のセットとなると、容易
にブチのめして終わり、にはできませんよね。ちょっと息が詰まりました。だからこそ、どんな
ドラマが待っているのかと期待がふくらみます。ドラたちとの触れ合い、その前に戦い、か。

(只今アクセス規制中……ですので、職場で隙を見て書き込みました。うぅ辛い)

245 :作者の都合により名無しです:2007/09/12(水) 11:35:26 ID:zRTJTNvF0
ふらーりさん次回簡潔か。
淋しいな・・。

246 :作者の都合により名無しです:2007/09/12(水) 12:23:15 ID:tosdTrOj0
原作通り、黒沢死亡エンドか?
ノアとラブラブエンドがいいな。

247 :戦闘神話:2007/09/12(水) 17:39:55 ID:Minp5IdP0
すみません>>197ですが
×半ば強引に引き取られてきてから二月目に入る。
○半ば強引に引き取られてきてから半月になる。
です、重ね重ね申し訳ございません


248 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 17:46:14 ID:Minp5IdP0
part.4
act2

「さぁて、星矢!檄!これからオニイサンと一緒に夜遊びと…」

「却下!」

「右に同じ!」

悪所に誘うのはいつも風間虎太郎なのだが、
さそうに相手が若すぎるのというのも理解の上だから性質が悪い。
だが、星矢にも檄にも通用しない。
なんだかんだ言って城戸沙織ことアテナに操を立てている不器用な星矢と、
年齢からくる気後れでそういった大人の階段を上れない檄なのだ。

「まったく、マジメだねぇ〜。
 特に檄!お前さん毎日のおべんきょーでストレス溜めてんだろ?
 だったら、こう、オネエサンの中でこう、プワァーっ…」

ごん、と虎太郎の頭に星矢の鉄拳突っ込みが入る。

「下品!」

つまりはそういう事だ。
清廉潔白などとは言わないし、冥府に乗り込んだ際に強烈な屁をぶちかました星矢であるが、
苛烈とは言え魔鈴の弟子として育ったのだ。
そういった人品は「躾け」られているのである。

249 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 17:49:57 ID:Minp5IdP0

「まぁったく、つまらねぇなぁ、オマイさん達。
 若いうちからそんなんじゃ色々つまらないぞ?」

まだ言い足りなさそうな気配を見せる虎太郎だが、星矢がごきりと掌を鳴らした事で退くことにした。
星矢の裏事情を詳しく知らない事になっている「風間虎太郎」とはいえ、共に過ごす中で、
星矢の尋常ならざる立ち居振る舞いに気が付かぬほど愚鈍では無い。

渋々といった風を見せて星矢たちと虎太郎は別かれた。
そして、十分星矢とは間を取ったと判断した後、
虎太郎はもう一つの顔のために星矢の後を追って隠密行動を開始する。
彼が風間虎太郎を名乗り、星矢と同じ職場に居るのは、決して偶然などではない。
虎太郎の本来の主の命令により、星矢とその家族を護衛するためなのである。
星矢は地上最強の一人だ。どんなに油断し、隙だらけにみえても、その実、常在戦場の人。
いきなり襲い掛かったところで刺客のほうが返り討ちに会うだけだ。
だが、その姉星華はそうとはいえない。
普通よりバイタリティと体力のあるだけの人間だ、隙を突いて害をなす事など、容易いといえよう。
そのため、星矢のみならず姉にもこうした護衛が付いているのだ。
彼が星矢の護衛についている理由は、星矢にくる刺客の戦闘力の問題である。
言うまでもないが、星矢は神すら倒し得る神聖闘士だ、自然その刺客も強い。
その刺客に対して、戦力として数えられる者はわずか二人しか居ないため、この選択は当然といえる。
でも、護衛するならやっぱり綺麗なお嬢さんのほうが、と思ってしまうから星矢の護衛にまわされたのかもしれない。
彼の主はあれで中々嫉妬深い。
頭に矢をぶち込まれる程度ではすまないかもしれない。

250 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 17:53:10 ID:Minp5IdP0
「やぁー、仮面に鎧のオニィサン。
 こんな綺麗な月夜になんの御用かね?」

そうしているうちに、星矢につきまとうように、一人の戦士が現れた。
星矢を付けねらう勢力のうち、最も執拗な勢力の一人だ。
幸い、こちらに気がついては居ない。そのため、彼が布いた結界にまんまと入り込む結果になっていた。
だからといって先制攻撃などしないのがこの男だ。
その戦士の行く手を阻むため、「風間虎太郎」の顔を捨て去る。
三つの宝石のついたベルトを腰から抜き放ち、一振りすると、それは棍へと姿を変えた。

「邪魔だ」

彼の姿を認めた戦士は、掌に銀の槍を生むと、躊躇無く放つ。

「俺としても、邪魔といわれてハイソウデスかと引き下がれんのさ」

飄々とした風で銀槍を打ち払うと、そのまま戦士に飛び掛る、が戦士はこれを易々とかわす。
しかし追撃の横薙ぎは、彼の手の中で毒蛇のように伸びると、猛禽の鋭さをもって戦士のわき腹に抉りこまれる。
まるで生物のように変幻自在に戦士のガードの間隙を縫ってさらに一撃、鳩尾に叩きこまれた。

「オイオイ、名乗りくらいしてくれよ?
 …、ま、俺もそういわれたら困るがね」

腸をこねくり回されるような凄まじい痛みに一瞬とまった戦士を、彼は容赦なく叩き臥せる。
正中線に五連続の突き、右肩に一撃、左太ももに一撃、こめかみ、顎先、脾臓、
相手を無力化するという点にのみ絞られた攻撃に、戦士はなすすべも無く地を舐めた。
普段の飄々とした姿がうそのように、強い。
棍をまるで手足の延長のように扱うその姿は、夜空に輝く一つの星座を想起させた。

251 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 17:59:15 ID:Minp5IdP0
「なんせ、ホラ。」いうと、棍で月を示し、

「俺が惚れた女が、見てるんだからさ」無様に蹴り転がされ、うめき声を上げる戦士の胸板を踏みしめる。

「昔はそりゃあいろいろやったもんさ。
 巡り巡ったから変節漢だの言われたさ」

潮焼けした肌、精悍な相貌、力強い黒瞳。逞しい体躯。

「だが、それでも好いた女の為にこの命すててやったもん、さ」

その身を包むのは、薄汚れたツナギではなく、いつの間にか現れた月のように輝く鎧だ。
男は、哂う。
それは戦士にではない、戦士の主に向けたものだ。
夜の海に浮かぶ月のような、静謐でありながら力強い小宇宙が夜気を震わせる。

「残ー念、無ー念〜♪
 お天とサンは、決して月にゃあ出会えねぇ〜んだって伝えときな!オマイさんの主にな!」

棍を今は見えぬ太陽へ向かって突き上げるその姿、それは
神話に謳われた狩人、オリオンそのものである。

嘗て、天帝アポロンの策略によって命を落とした彼だったが、その死の瞬間、エイトセンシズに覚醒し、
亡者としての呪縛から辛うじて逃れることが出来た。
しかし、その代償は易くは無かった。
海皇子として授かった恵まれた小宇宙は、肉体の消失による存在維持のために、
また一から鍛えなおさねば成らなくなり、戦士としての再起は想像を絶するほどの時間を要した。
だが、諦めの悪さは海皇一族のお家芸。神話が過ぎ去り、英雄たちが消え果ても、オリオンは諦めなかった。
その忍耐は実を結び、西暦紀元後にこうして再生なったのである。

252 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 18:06:45 ID:Minp5IdP0
海皇ポセイドンの子として生まれ、流れてアテナの下で聖闘士として戦い、
さらに流れて月の女神の陣営にある彼は、
世にも珍しいことに三陣営からそれぞれ称号を得ている。
海皇の息子、最初の海将軍の一人、シードラゴン・オリオン。
その武名による最初の聖闘士の一人、聖闘士オリオン。
そして、彼が愛するものを護るためにたどり着いた道、月闘士(イエーガー)オリオン。

「調子にッ、乗るなッ!」

怒りをこめて胸の上の脚を払いのけると、戦士は銀槍をオリオンに向かって投げつける。
牽制と見ぬいたオリオンは、なんとその銀槍を引っつかんで戦士の肩に突き刺し、大地に彼を縫いとめた。
呻るような声を漏らすが、叫びはしないあたり、流石は戦士だ。

「しかしまぁ、オニィさんもしつこいねぇ…。
 いつもだった…ッ!
 しまった!」

そこでオリオンが振り返るのと、地上から無数の流星が夜空に駆け上がるのは同時だった。
今の今まで星矢に向けられた刺客は彼だけだったのだ、追い払っても二日三日もすれば再び現れる。
事前情報では、彼の勢力の持つ手勢は二名。
一人は度々星華をねらって彼の仲間と闘っていた、もう一人は目の前の戦士だ。
そう、三人目がいたのだ。
切り札たる三人目が。

「やっべぇ…、バレた!」

精悍な顔がさっと青ざめていた、彼の主の命令は、あくまでも秘密裏に星華星矢姉弟を護衛することである。

「いや、だいぶ前から気付いてたぜ?」

253 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 18:11:46 ID:Minp5IdP0
その声に振り返ると、星矢が立っていた。
最強のはずの敵を鎧袖一触といった風情の強さ、明らかにほかの神聖闘士とは一線を画していた。
なるほど、アポロンが危険視するわけだ。

「い、いよぉ!星矢!散歩か?
 お、それとも…」

みれば、いつの間にか血痕だけ残して戦士は逃亡していた。

「虎太郎さん、とぼけるはやめよう」

星矢の態度は友人に向けるものではない、大気が静かに震えていた。
戦闘態勢の星矢だった。
戦士一人を打倒した直後だけあって、少々気が立っている。
数秒にらみ合うと、虎太郎の顔に戻ったオリオンは、ふぅーっと長いため息を吐いた。

「とりあえず、場所移そうや、星矢。洗いざらい全部吐くから」







254 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 18:17:03 ID:Minp5IdP0







アポロンが星矢たち神聖闘士を敵視している。中でもハーデスに傷を与えた星矢を特に。
神は絶対であるからこそ神である。
故に、タナトスとヒュプノスを打倒した神聖闘士はその根幹を揺るがす存在として、
半減したオリンポスの神々の議題にアポロンが取り上げたのだ。
しかし、竈(かまど)の女神ヘスティアや、月と狩の女神アルテミスのとりなしもあり、
アポロンは大々的な行動に出れないで居た。
しかし、アポロンはそれでも彼女たちに隠れてこうした刺客を放っていた。
本来なら、こうした行動はオリンポス十二神次席である海皇ポセイドンが禁じねばならないのだが、
聖戦によって神としての力の大部分を封じられてしまった為、事実上野放しになっているのだという。
妹であるアルテミスや、位階がアポロンよりも低いヘスティアに止める術はなく、
そして地上に顕現したが故に、オリンポス宮殿から遠ざかったアテナはアポロンの行動を知る由も無い。
神と神とが争う場合、自陣営の人間を使って戦わせ、その結果をもって良しとせねば成らない。
それを破るような行動は、天帝の座にあり、オリンポス神の事実上の盟主として相応しからざる行動である。
故に、アルテミスはオリオンとリュカオンに命じてその妨害に当たらせたのだ。
それが彼女に出来る最大であった。

「と、ここまでが神々の大いなるシモ事情。
 で、こっからが人間たちの裏事情」

と、茶化した風にオリオンは言う。

星矢が聖闘士であり、聖域の中枢人物であるというのは、銀河戦争の一件もあり知られており、
各国の裏から注目を浴びていた。

255 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/12(水) 18:22:27 ID:Minp5IdP0
だが、直接手出しは出来ないことは巨大な組織ほど十二分に理解している。
過去、前々聖戦終戦後のことだ、
聖域にちょっかいをかけた魔術師協会が壊滅したという事実があるからだ。
魔術師協会上層部が互いに殺しあい、協会に登録されていた魔術師全員がすべて変死したこの恐るべき事件は、
教皇シオンの名を裏で一躍有名した一件である。この一件以降、この世界から本物の魔術師は絶滅した。
聖域に入った者が聖域から出るには、聖闘士になるか死体になるかしかない、その恐怖伝説の始まりであった。
そして、現代ではイーグルサム(米国)と聖域には手を出すなというのは不文律となっている。

「だが、その不文律を破る者が昨今現れている。
 そういった連中からも星華星矢姉弟を護るようにも言われてんのさ、俺ぁ」

難しい顔で黙り込んだ星矢に、オリオンは虎太郎の調子に戻ると。

「それになぁ、知ってるか?神話の英雄ってのは平穏な死を迎えた奴なんて居ねぇ。
 ヘラクレスの大将、ベレロフォン、そして俺…。みんな非業の最期さ…。
 今の今まで女神の為に闘って英雄になったお前さんが、ようやく手にした平穏。
 それを護ってやりたいなって言うのが、ま、俺が護衛してる最大の理由だよ」

そう言って、朗らかに笑った。

「…すまん、虎太郎さん。俺、虎太郎さんの事誤解してたみたいだ」

「誤解したまんまでいいさ、俺ぁオマイさんみたいな奴が好きでな。
 一緒に馬鹿やんのも中々良いもんさ」

潮焼けした顔で満面の笑みを浮かべるオリオンに、星矢も釣られるようにして笑う。
「これが開戦の狼煙になるのだろう」という思いを胸に秘めて。

256 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/12(水) 18:26:13 ID:Minp5IdP0
今回正体を現した風間虎太郎ことオリオンですが、
海皇ポセイドンの子の中じゃ唯一と言っていい花形だったりします
大抵の神話だと、ヘラクレスなりゼウスの息子たちのカマセ扱いのポセイドンの息子たちの中で
燦然と輝く伊達男・オリオン
その履歴は本宮ひろ志の「俺の空」を地で行く破天荒ぶり
女神アルテミスとの悲恋譚はけっこう有名かとおもいます
アポロンが天帝なのは「皇・帝・王・覇」の席次にならったからであり
皇が一番位が高く、帝がその次、その下に王、そして覇者という位置づけです
オリンポス神に対して適用したのは、銀杏丸独自設定であります

LCアルデバランが斃れました…
毎回毎回ファンを唸らせてくれるLC、シジフォスやらアスミタやら
名前にも小ネタが利いてて実に良いです
デュラハンのキューブが結構強かったり、フログのゼーロスがやっぱり下衆だったり
ワームのライミやディープのニオベやらファン冥利に尽きまする
手代木先生がこんだけハイペースでいい仕事してらっしゃると、
この銀杏丸もがんばらねばと思う次第であります
それにしても、風魔の小次郎がドラマ化…
企画を通した人間の英断をたたえる次第でございます
…黒歴史化したミュージカル星矢にも日の目みせてやりゃいいのにw

257 :作者の都合により名無しです:2007/09/12(水) 18:27:32 ID:zRTJTNvF0
やっぱり銀杏丸さんは星矢を書いている時が一番面白いな。

258 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/12(水) 18:31:26 ID:Minp5IdP0
>>207さん
猪とはまさにそのとおりですね、たいていの困難も聖闘士のパワーで力ずくで…
冥界に乗り込んでもそのままハーデスにとっつかまったりと
ロクな事してない印象の彼女ですが、少しでもマシな風に解釈してみたい次第です

>>208さん
>ここまで長かったけど・・w
スィマセェン
ギリシア神話の安田一平ことオリオン登場でございます
正直、アテナ一柱だけじゃラスボスの相手はつらすぎるのです
敵はギリシア神話最悪の魔神ですので

>>209さん
和月作品が好きなのです
剣心連載開始してからもう十三年もたつんですねぇ…

>>210さん
リクエストにお答えするかたちでも少ししたらなんか書きます

>>212さん
スィマセェン…

259 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/12(水) 18:35:36 ID:Minp5IdP0
>>257さん
そんなこと言われると、照れると同時に自分の力不足を痛感します、精進せねば…

>さいさん
被害者が転じて加害者になった型の悪役ってのは倒しても救われても後味の悪いものですが
ジュリアンの場合はパピヨンほどポジけてないだけになお更に後味悪いですねぇ
さすがさいさん、でも個人的にもうちょっと邪悪にふってもよかったと思いますw

>こがん☆さん
ついに牙剥く虎眼流、なんか佐ノ助が宗像、弥彦が涼の介ポジションになりそうで怖いですが
果たして彼の復讐行はどこまで行ってしまうのか?残酷無惨の幕があがり、否が応でもテンションあがります!
十年くらい放浪してた計算になるんですかね?縁、適度に野生化してそうでおっかねぇです

>サマサさん
押忍!復活おめでとうございます!
やっぱりサマサさんがいないとバキスレって感じがしませんね、次回もまってます!

>ふら〜りさん
押忍!早朝からお疲れさまです!
沙織さん、実は数えるほどしかいない星矢の女性キャラの中で一番ニガテだったります
どこが知恵と戦と学問の女神じゃコラといいたくなるような行動が多いです
特に冥王編はあんな紛らわしい方法で冥府へ乗り込んだり、
ホイホイハーデスにつれられてエリシオン行ったりあんた何がしたいのよ!と言いたいほど…、
そこらへんLCだとアテナ・サーシャがいい子なんで
そんなフラストレーション溜まらないでよかったりするんですがw
戦闘神話だとそこら辺の理由付けしつつ、ちゃんとバトルヒロインとして書けたらいいと思う次第です

では、またお会いしましょう!

260 :作者の都合により名無しです:2007/09/12(水) 20:54:32 ID:7Pt/2pzI0
むう。星矢好きなんだけど映画やアニメまでは詳しくないから
どこまでが公式設定なのかわからん・・。
オニオンは銀杏丸さんのオリジナルだろうね。

楽しめたよ。銀杏丸さん乙。
星矢LCは次は蟹さんだからどう笑わせてくれるか楽しみだ。

261 :作者の都合により名無しです:2007/09/13(木) 08:39:57 ID:ZlXxy2YH0
面白かったけど虎太郎ってなんとなく星矢キャラの名前っぽくないな

262 :作者の都合により名無しです:2007/09/14(金) 08:21:18 ID:OUCLuZ7k0
銀杏丸が好調になってきたのに
ふらーりさんが次回で終わりか。
上手くいかんもんだの。

263 :作者の都合により名無しです:2007/09/14(金) 16:25:30 ID:+NPz0Xvl0
サマサさんに続いてサナダさんやNBさんも帰ってきてほしいな
ハイデッカさんも書くといってた割にはさっぱりだし

264 :作者の都合により名無しです:2007/09/14(金) 22:12:49 ID:VLMLahkZO
ウプレカスだな

265 :六十四話「愛を取り戻せ!中編」:2007/09/15(土) 18:49:43 ID:RoqB1Gar0
悲鳴に続けて爆音が響き渡る、人々の逃げ惑う足音が地面を震わせる。
コートを着た男が立ち上がり、埃を払いながら逃げる準備を始める。
「物騒な街だな。さっさと立ち退くとするか。」
ギターケースを背負い込み、男は店を後にした。

何があったのか確かめなくては。
足を動かすが、重い、自分の体か疑ってしまうほどに。
立ち上がると奇妙な感覚に襲われる。
地面が揺れているのか、自分が揺れているのかも分からない。
体温はウォームアップが必要無い程に高まっているが、体がこれでは意味がない。

「それでは戦えませんね、酒が抜けたら頼みますよ。」
槍を手に、周囲を警戒しながら爆発音が聞こえた方へと走る。
嫌な予感がする、前にも同じような経験をした。

トキに秘功を突かれ、病魔に侵された肉体でラオウに挑むのを見送った。
今の自分と来たらどうだ。たかが酒如きに肉体の自由を奪われてしまった。
「くっ・・・指が震えて秘功が突けん。自然に抜けるのを待つしかないのか・・・。」
思わず壁に寄りかかる自分に、店主が水を差しだしてきた。
何故、逃げないのだろうか?

「命が欲しければ海に飛び込めば済む、防波堤に魔物用の仕掛けもあるから
港にまでモンスターは寄らないのさ。」
爆音と同時に地面に衝撃が走り、店内を揺らす。
並べてあるグラスや酒樽が地面に落ち、転がっていく。

「さっき何故、海賊を続けるのか聞いてたな。あんたには無いのか?」
「・・・何?」
「人生も命もつぎ込んで、やりたいと思うことさ。」

266 :六十四話「愛を取り戻せ!中編」:2007/09/15(土) 18:51:56 ID:RoqB1Gar0
「乱世を生きる弱き人々を守るのが俺の・・・。」
店主の問いに答えながら、グラスを受け取ろうと手を伸ばした。
バシャッ、冷たい、一瞬何が起こったのか分からなかった。
空になったグラスから水滴が床へと落ちている。
「残念、不正解。アンタの目、今一瞬だが泳いだぞ。」

グラスに水を注ぎなおし、今度はかけずに渡してきた。
「さぁ、頭を冷やした所で答えてくれ。ヒントをやるよ。アンタ自分の我儘や理屈で行動する人じゃない。
民を守るのはアンタが『やるべき事』、聞いてるのはアンタの『やりたい事』だ。」

やりたい事、俺が望むもの、人々が平穏な暮らしを送れるようにしたい。
そう思っている、心の底からだ。だが、「分からない」。
何故だ、何故、俺は人々の平穏を思うようになったのだ。
いや、平和を望むのは当然の筈だ。何故こんな疑問を抱く。
俺は、何を見失っているのだ?

「・・・アンタの目は哀しみに満ちている、
その哀しみはどうやったら満たせるか。
考えてみな。」

店主が寂しそうに言った、彼の目にも哀しみが宿っていた。
そう、誰も哀しむことのない世界、だから争いを消そうとしていた。
そして、俺の哀しみは消えないのだ。
最愛の人を失っている俺は消す事は未来永劫できないのだ。
だが、ユリアが死して俺の胸に哀しみを刻んだのは無駄ではない筈だ!

「そうか、哀しみを忘れなければ死ぬ瞬間まで争いを憎んでいられる・・・。
答えが出たぞ、『乱世を生きる弱き人々の哀しみを少しでも減らすこと』
これが俺の生きる目的だ。」

267 :六十四話「愛を取り戻せ!中編」:2007/09/15(土) 18:55:45 ID:RoqB1Gar0
「言ってる事はあんまり変わらねぇな。だが目の色が『哀しみ』から『決意』に変わった。
今のアンタが言うのなら、それが答えだ。ほら、水飲んでさっさと行け。」
そういって今度はしっかりと手にグラスを渡してくれた。

一気に飲み干すとフラフラと店の外へと向かう。
「おい、まだ酒は抜けてないだろう。何しに行く気だ?」
大きく呼吸し、発達した胸筋へと指を打ち込む。
ふら付いていた足は、先程までの頼りないものでは無くなっていた。

「安驀孔、俺の体は元々毒素に強い抵抗を持っている。
秘孔を突いてそれを強化すれば酒程度なら、どうという事はない。」
テーブルに今朝釣り上げた魚を置き、店を後にする。

「礼だ、足りるか分からんが高く売れると聞いた。」
爆音の鳴る方へと走って行くケンシロウを見送る店主。
テーブルに置かれた金色に輝く魚を手に取る。

「あいつ・・・これの価値わかってんのかね。
だが面白い男を見つけた、エメラルド!」

店主がそう叫ぶと奥からローブを纏った妙齢の女性が現れた。
身なりからすると魔術師と思われる。
「彼、かなりの『力』を秘めていたわ。彼に受け継がせるの?」
「いいや、まだ決めてはいない。俺が一緒について直に見てみる。」

「そうね、先帝は万能だったけど最も得意としたのは『剣』なんだし彼に託すのは早計ね。」
店主が転がった酒樽を蹴り壊すと、中からは巨大な鎧が出現した。

「それじゃ、私はジェイムズ達の所に戻る事にするわね。
・・・でもあの3人に加えてあなたが入ったらバランス悪くない?ベア。」
ベアと呼ばれた男は巨大な鎧を難なく着こなし、巨大な盾と細身の剣を手にして突き進んでいた。

268 :六十四話「愛を取り戻せ!中編」:2007/09/15(土) 18:57:21 ID:RoqB1Gar0
〜市街地・中心〜
「まずいですね、警備兵が押されています。まぁあの魔物では仕方ないでしょう。」
ゲラ=ハが冷静に状況を判断する、空から火球を放つ魔物、空中の帝王リオレウス。
その背に一人の男を乗せて殺意の爆炎を町に放ち続けている。
「はーはっはぁ!逃げろ逃げろ、運よく生き延びれた奴は木人形にしてやるぞぉ!」

竜騎士の血族は伝説だけだと思っていた、武器も手綱もなしに飛竜を操るとは得体のしれない男だ。
それにしても兵の統率が滅茶苦茶である、バリスタの発射も遅すぎる。
もし破壊されていたらどう飛竜を仕留める気だろうか。
とりあえず少しでも投槍が当たる様に高地を確保しなくてはならない。
「フゥ・・・キャプテンに教えるべきではありませんでしたね。」

不在のホークの助けをただ、待っていたら町中火の海である。
ここは一つ時間を稼いでみるとしよう。
下段から弓を撃ち続けている警備兵に気が向いているリオレウス。
今のうちにメルビル市街の2階へ屋根伝いに移動する。
階段は火球で破壊されていたが、爬虫類であるゲッコ族なら平らな壁にも多少の踏ん張りがきく。

苦もなく2階へと上り詰めると兵士が一人も高地へと移動していない事に気づく。
「・・・飛龍戦では高度の確保も重要な筈、なるほど指揮官が無能な様ですね。」
半ば呆れながらも状況を確認するため広場を見まわす。
兵士の死体がゴロゴロと転がっている、これはチャンスかもしれない。
相手の力を削いだ今、一気に片付けに来る可能性が高い。
あの竜騎士のような男の残虐性を考えれば、ほぼ100%である。

「よし、降りていいぞ・・・俺が直々に出向いてやる!」
うすら笑いを浮かべながら竜に指示を出す男、やるなら着地の瞬間。
翼を畳み込み完全に硬直する瞬間を狙うしかない。

翼を動かすたびに暴風が周囲の民家、商店を吹き飛ばし死体をゴミの様に転がす。
そして、着陸の瞬間が訪れた。

269 :邪神・ジョースタ…あ、センス無(ry:2007/09/15(土) 19:03:24 ID:RoqB1Gar0
ハーイ、またもや休んでいた邪神です。( 0M0)ノ
何故休んでいたのか?
        ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       バイトから帰ったら『親が勝手にプロバイダー解約してた』
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    クッキーだとかPROXYだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

しかもよォ・・・ジョジョ全巻一気に購入したら『人気の商品なので2〜3週間お待ちください』だとぉ?
ナメやがってこのサイトォ、超イラつくぜぇ〜〜〜〜〜ッ!
2〜3週間も経ったら、休みが終わってジョジョ読む暇が無くなっちまうじゃあねーか!
読めるもんなら読んでみやがれってんだチクショーーッ。
どういう事だ!どういう事だよ!クソッ!
お待ち下さいって、どういう事だッ!ナメやがってクソッ!クソッ!」


270 :邪神・ジョースタ…あ、センス無(ry:2007/09/15(土) 19:09:00 ID:RoqB1Gar0
〜講座?ああ、あったねそんな企画〜

安驀孔 毒への抵抗を高める秘孔、Kンシロウさんは生まれつき毒に強いとか。
    でもHンター×HンターのKルア君みたいに幼い頃から特訓しないと厳しい気がする。
    (何らかの諸事情により伏字にしてみました、申し訳ありません。)

メルビル市街 説明してなかったが、なんと町の分際で2階建になっているのだ。
       1階には市民や店、2階には城、神殿、図書館、そして店。
       なんかやたら広いのに2階までしかないデパートみたいな感じ。

〜前スレの人への感謝の言葉〜

ふら〜り氏 力的レベルは最初からMAX。そんな彼の成長とは心なのです。
      某北斗ゲーム紹介サイトでも北斗はメンタルバトルだと語ってました。
      ラオウだって格下のフドウに後れを取ったのは心の弱さ故。
      プロシュートの兄貴も成長しろと仰ってます。
      頑張れケンシロウ!荒木先生がどっかのインタビューで言ってたみたいに、
      俺の頭の中で勝手に戦って勝手に強くなって勝手にストーリー進めてくれ!
      出来れば勝手にキーボード叩いてくれケンシロウ!

404氏 ネタ切れですよ、ええネタ切れですとも。魔物の中ではっていうか魚最強クラス。
     普通に出てくる雑魚では強い方ってだけですかね。

405氏 トカゲの分際で立派だなんてトカゲを甘く見すぎですぜ。
     コモドドラゴンなんて人を食った事があるとウィキペディアにも。稀らしいけど。

406氏 何をおっしゃる、情けないほどカッコいいんです。
     飲茶とか天津飯とかカッコいいでしょう?

271 :作者の都合により名無しです:2007/09/16(日) 06:15:12 ID:lpyN6SYz0
……

272 :作者の都合により名無しです:2007/09/16(日) 08:38:04 ID:yCtrypGk0
お疲れ様です。
クダ撒いて酒で弱くなるケンシロウは新鮮だけど見たくはなかったなあw

273 :作者の都合により名無しです:2007/09/16(日) 12:26:23 ID:e+PqdDsA0
邪神さん好調か不調かわかんないなw
とりあえず主役のはずのホークたちが活躍しそうで安心
やっぱりケンシロウたちより知名度低いし
テイルズチームと比べてルックス悪いから
なんか作中で影が薄いからな

274 :NBです:2007/09/16(日) 20:36:31 ID:qKVKgNXU0
ああ、ようやくパソに触れた……(挨拶)
待ってる皆さん、済みません。実はもうしばらくかかります。
俺も霞食って生きられればこんな事にはならないのですが…人間立場と金で生きてるものですから。
やばい、本当に仕事に掛かりっきりで一行も書けてません。
どこかに仕事辞めても食っていける様な大金が落ちてねえかな――…などと夢想しておりますが…
さもしいな、俺。
兎に角都合つけて書くつもりではいますので、「マダー?」と焦れてる皆さん、すいませんがもうしばらく
お願いします。

でもまあ、凄ぇ人達がいっぱい居るから別にいいかな? ―――…などとは考えてませんよ?
いや、ホントに!
と言う事で、言い訳は此処まで、ではまた。

275 :作者の都合により名無しです:2007/09/16(日) 22:00:27 ID:eNPtw5zB0
なんかバキスレは社会人が多いからかみんな色々抱えているなあw
邪神さんは大学生だったっけか。

NBさん、ご復活を待っておりますよ。
ふら〜りさんを除けば、今一番前から書いてるのは
サマサさんと並んでNBさんだったっけ?



276 :作者の都合により名無しです:2007/09/17(月) 05:31:02 ID:chAzEBmG0
NB氏が帰ってくるとまた賑やかになるね。

277 :作者の都合により名無しです:2007/09/17(月) 15:42:41 ID:pPOYmMM20
文章の上手さは素晴らしいからな
原作の黒猫知らんけど・・。

278 :作者の都合により名無しです:2007/09/17(月) 17:45:15 ID:uTWVpJzC0
知らんがいい、それが幸せ
俺は好きだけど、NBさんの黒猫とは全くの別物

279 :作者の都合により名無しです:2007/09/17(月) 22:13:10 ID:abQqbHfn0
原作を超えちゃってる数少ないSS

280 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/17(月) 23:12:57 ID:iYBICTPj0
「一体、ジュリアン君に何をしたの……!?」
喉を強く絞めつけられながらも、千歳はサムナーに尋ねた。
防人の事、そしてジュリアンの事。サムナーが発した不吉な言葉が頭から離れない。
「さっきも言っただろう。彼が望んでいる“力”を与えただけだ。そう、ホムンクルスとしての
力をね……。シャムロックとパウエルの二人掛かりならば、戦士・ブラボーを抹殺する事も容易いだろう。
おっと、正確には四人掛かりかな? フハハハハハハ!」
不安が絶望へと変わった。ジュリアンはホムンクルスに変えられてしまったのだ。
ならば防人の苦悩も、そして防人が取る行動も自ずと明白になってくる。
それは最悪の結末だ。あの赤銅島の光景が、否が応でも頭をよぎる。
「あ、あなたはどこまで腐ってるの……? イギリスもキリスト教も錬金戦団も裏切って、テロリストや
私達を利用して、ジュリアン君まで……。あなたの部下でしょう!?」
サムナーは「もう、ウンザリだ」とばかりに首を振り、溜息を吐く。
「君達はオムレツを作るのに卵を割らないのかね? 大いなる目的の為には犠牲も死も付き物だ。
強者が行動を起こし、弱者はその土台となる。そして、為政者は兵士を統率し、兵士は為政者の為に
命を捧げる。何の疑問も抱かずにな……。
太古の昔から繰り返されてきた、これらすべては人間の必然なのだよ……!」
「そんな事、絶対に許される筈が無いわ!」
余裕の笑みを浮かべていたサムナーの顔が強張る。
彼は努めて冷静を装いながら、より一層の力で千歳の首を締め上げ、耳元で囁いた。
「いいか、もう一度言うぞ? これは“必然”だ」
「御託はその辺にしておけよ、糞野郎……!」
火渡がゆっくりと歩を進め始めた。その歩調からもう脚を止めるつもりは無い事がわかる。
額や首筋に血管を浮かべながら、怒りに燃える火渡はゆっくりと、実にゆっくりと全身する。
「おぉーっとォ! それ以上、こちらへ来るんじゃあない。この女を殺されたいか?」
サムナーはジリジリと後退りしながら、ビットの射出口を千歳に向けた。
だが、火渡は見抜いている。
サムナーの「この唯一の人質を殺せば、次は自分が殺される」という自覚を。
そして、目の前の皮肉屋戦士長には及ばないまでも、この任務に着いて以来最高とも思える
皮肉が火渡の口を突いて出た。
「俺達がこっちに寄越されたのも頷けるぜ。テメエみてえに性根の腐った野郎が戦士長を
やってるんじゃあな。イギリス支部の奴らに同情するぜ……」

281 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/17(月) 23:14:01 ID:iYBICTPj0

「私は評議会の連中や他の戦団員とは違う。奴らは牙を抜かれた只の腑抜け共だ。
私のような優秀な人間の頭脳からしか、大英帝国支部を救うこの作戦は出てくる筈も無い」
突然、台本を読み上げるように、無感情で抑揚の無い言葉がサムナーの口から飛び出した。
今までの気障な、芝居掛かった態度からは考えられない豹変振りだ。
「……?」
サムナーは自身の異変に、身体を硬直させた。
「わ、私は今、何と言った……?」
震える手で口元や頬を撫で回すと、再び火渡に向かって口を開いた。
「この作戦は、だ、大英帝国支部再生のこの作戦は、IRAを利用する事も、イスラム圏に
ホムンクルスをバラ撒く事も、は、発案、実行、す、すべては私一人がしている事だ!」
顔の表情も、口の動きも、声も、すべてがアンバランスだ。前衛芸術を思い起こさせる。
「まさか、そんな馬鹿な……。この私までも……。この私すらも……!?」
口元に置かれていた手は、やがて“頭”を強く摑み、ガリガリと乱暴に引っ掻き回す。
息は荒く、パニックに陥っているのは明らかだ。
「……?」
火渡はその様子に疑問を抱きつつ、尚も歩を止めない。
「と、止まれェ! コイツを殺されたいのか!?」
サムナーは焦燥にまみれた足取りで、後退を続ける。
あと数メートルで廊下は左に折れ、その先には非常階段へ通じるドアがある。
そこまで行けば。そこに行きさえすれば。
サムナーの焦りをよそに、千歳は大きく深呼吸をし、強い眼差しで火渡を見据えた。
「火渡君……もういいわ……。私に構わないで……!」
「よく言ったぜ、千歳」
火渡は千歳の覚悟を受け取った。任務と正義が“己”を超越した者のみが持つ覚悟を。
その重さは火渡の拳を硬く握らせ、唇を血が出る程に噛み締めさせる。
「来るな! 来るんじゃあない!」
既に曲がり角までは到達出来た。
だが、だがこの若造は、私の言う事を聞きやしない。平戦士の分際で。黄色い猿の分際で。
「来るなと言ってんだろうが! この糞餓鬼がァ!!」

282 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/17(月) 23:15:48 ID:iYBICTPj0
「おお、怖え怖え。地が出てんぜ? 戦士長サマよ」
“気障”も“芝居っ気”も失った威嚇の言葉は、火渡に軽くいなされた。
顔を横に向ければ、もう非常階段への扉が見える。
扉は開いている。好都合だ。
ここが正念場だ。ここで判断を誤れば、大英帝国支部の未来は無い。もちろん、自身の命も。
「くっ……!」

この北の地で演じられる、正義と狂気の三文歌劇が最高潮(クライマックス)に達したその時。
眼前の“戦士”達に圧倒されていたサムナーは気づかなかった。
鋭い光芒を発する何かが自分に迫っている事を。

「ぐごッ!」
まるで棍棒で殴りつけられたような衝撃がサムナーの首を走った。
何が起こったのか。首が動かせない。
懸命に眼球運動だけで自分を襲った物の正体を探ろうとするサムナー。
認識出来たのは、首から伸びる、太い柄を持つ奇妙な形状の片刃の剣。
反対側からはその切っ先が飛び出している。
「千歳!」
火渡の声に弾かれたように、千歳はサムナーの手を振り払った。
そして、倒れ込みながらもヘルメスドライブを無音無動作発動させると、素早くペンを繰る。
ヘルメスドライブの特性、瞬間移動で手元に現れた千歳を、火渡はしっかと抱きとめた。
二人が移した視線の先には、“銃剣”に首を貫かれたサムナーが顔面蒼白で立ち尽くしている。
しかし、サムナーは致命傷を負わされた絶望的なこの状況の中、冷静に様々な思考を巡らせていた。
ウィンストンと時には衝突し、時には笑い、お互いの肩を叩き合った、純粋な“戦士”でいられた、
あの昔のように。

(これは銃剣(バヨネット)……。“奴”の攻撃か!)

(呼吸も出来る、手も足も動かせる。気道と脊髄は無事か……!)

(行動を起こさなくては……! よし、レーザー乱射で反撃と撹乱を兼ねる。そして……)

283 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/17(月) 23:17:00 ID:iYBICTPj0

(ここからは一時離脱だ。出血量が行動範囲を狭める前に、外の車を使って……それから……)

だが、すべては遅すぎたのだ。
銃剣の柄が小さな火花を散らすと同時に、強烈な爆発がサムナーの首元で巻き起こった。
「うおおッ!」
「きゃあ!」
おそらく柄に爆薬(エクスプロシブ)が仕込まれていたのだろう。
廊下は漆黒の爆煙に包まれ、火渡達の視界を大きく遮った。
サムナーの頭蓋からこぼれ落ちた“錬金戦団”のエンブレムが刻印された回路(IC)も見えない程に。
「クソッ!」
火渡は悪態を吐きながらも、自らの身体を盾にして炎と煙から千歳を守っている。
そのうちに時間が経つにつれて、徐々に煙が晴れていくその中にサムナーが立っていた。
ただし、首の上に乗っているべき頭部はどこにも見当たらない。
格下の者を見下していた威圧感に満ちた眼も。出世の材料をひとつも聞き逃すまいとしていた耳も。
評議員への追従の世辞や部下への恫喝を吐いていた口も。その何もかもが失われていた。
頭部を吹き飛ばされたサムナーの身体はやがて、婦女子の如くヘナヘナとその場にへたり込んだ。
生前の傲慢かつ尊大な態度とは対照的な、戦士らしからぬ情け無い死に様に映るのは仕方の無い事
だろうか。皮肉屋の彼らしい皮肉に満ちた最期とも言えるが。

「サ、サムナー戦士長……」
千歳はあまりにも突然のサムナーの死に我を失い、茫然自失としていた。
不思議なものだ。散々自分を痛めつけた、許し難き裏切り者を知らず知らずのうちに敬称で呼んでいる。
千歳の持って生まれた性格なのか、戦士として刷り込まれた礼節なのか、どちらかはわからない。
だが、今はわからなくていい。わかろうとしている時でもない。
千歳の身体を抱いている火渡の顔が、歓喜の笑みに歪んでいるからだ。
それは“邪悪”と紙一重であると言っても過言ではない。
闘争の喜びにおいてその強さを発揮する者は、人間の持つ暗黒面に捕われの身になる寸前まで、
限り無く近づかなければならない。
深遠を覗き込む者が深遠に心を覗き込まれぬように。

284 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/17(月) 23:18:37 ID:iYBICTPj0

「待ってたぜ……」

火渡達からは確認出来ない、左に曲がる廊下の先から、とてつもない殺気がほとばしり始めた。
その殺気はまるで空間が捻じ曲がるような錯覚を覚えさせる。あらゆる音が吸い込まれて飲み込まれて
不気味な静寂に変わっていくようだ。
テレビのノイズのように見ている風景が乱れる。すべての色調が赤やモノトーンに映ってしまう。
汗が止まらない。四肢が震える。肌が粟立つ。口中が渇く。心臓が早鐘と化していく。

「な、何なの……? コレって……」

千歳にはあの“銃剣”でこれから襲来する者の正体はわかっていた。
だが、この恐怖は何なのだろうか。この問答無用と形容したくなる、五感と精神に迫り来る
圧倒的な恐怖は。
あの車上の戦いの時に感じた以上、いや、そんなものでは済まされない。
世界中の闘争と殺戮に見舞われている人間の恐怖をこの場所に凝縮させた、と言ってもまだ
足りるかどうか。

怯える千歳を、火渡が急に抱き上げた。
そして“殺気”と“恐怖”の発生源に背を向け、歩き出した。
「火渡君……?」
火渡はややしばらくの距離を歩くと、千歳を優しく下ろし、壁にもたれ掛けさせた。
その所作は悠々たるものだ。この極限の殺気を物ともしていない。と言うよりも“それ”に
同化しているようである。
火炎同化した火渡が業火を苦にせず、むしろ自身のエネルギーとするかのように。
「ここで大人しくしてろ。いいな……」
それだけ言うと火渡は立ち上がり、振り返ると再び殺気の暴風に向かって前進した。
「さあ、来いよ……!」

285 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/17(月) 23:21:50 ID:iYBICTPj0

「アァアアハァハハアアアア……」
笑いとも吐息とも知れない、地をうねらせるが如き声が響く。
その途端にこの空間の持つ重苦しさが倍増した。
カツン、カツンと金属質の足音が聞こえる。静寂の中、やけに高くハッキリと聞こえる。
“彼”が非常階段を下りてくる音だ。
やがて、それはキュッと床を踏み締める靴音が交じった、廊下を打つ足音に変わった。
こちらに近づいてくる。
そして、程無く、曲がり角の先から、“彼”が、姿を現した。

視線のその先に立つ“彼”の前に、千歳は身動きひとつ取れない。火渡でさえも立ち止まった。
世界中の迷える人々は同じような感覚を味わうのだろう。
嗚呼、あの時には。
主が降臨される時には(When the man comes around)。

「我らは神の代理人。神罰の地上代行者。
我らが使命は我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること――」

声と共に“彼”の銃剣は大きく十字に構えられ、激しく打ち鳴らされる。
その刀身から飛び散る細かな火花が、狂信者の形相を青白く照らし出した。

「AAAAAAAAAAAMENNNNN!!!!」







次回――
激突。炎。再生者。虚無。戦う理由。
《EPISODE13:Will you partake of that last offered cup or disappear into the potter's ground》

286 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2007/09/17(月) 23:23:33 ID:iYBICTPj0
ども。EP12終了です。今回は長くて申し訳ありません。
次回から、やっとこさ最終局面になりそうです。
そういえば来月でバキスレに連載を開始して一年になりますわ。我ながらよく続いてるもんだなぁと。
これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます。
でも最初の予定では今頃、『まっぴー×婦警』を書いてる筈なのに……。
一所懸命、頑張ります(゚∀゚;)ノシ

287 :作者の都合により名無しです:2007/09/18(火) 00:47:19 ID:F4euqCiA0
お疲れ様です。
最終局面前の衝撃、良かったです。
火渡が男前ですね。
それとちょっと早いけど連載1年、おめでとうございます。
最終決戦も期待しております。


288 :六十五話「愛を取り戻せ!中編2」:2007/09/18(火) 08:42:20 ID:FweH7Om00
重い体を太く、逞しい両足で支えるようにしてずっしりと地面に降り立つ。
滞空にはかなりの労力を使う、滑空は風を利用して周囲を飛び回っていられる。
だが翼だけでその場に滞空するには、かなりの筋量を必要とするのだ。
リオレウスが滞空からの攻撃後は、ほぼ確実に着陸に移行するのはこのためである。

2階から飛び降り、左翼へと狙いをつける。
「ぬうんっ!」
翼膜を引き裂き、周囲に血が飛び散る。
飛竜種は共通して翼膜が柔らかいものだ。
飛行時に風のコントロールをする箇所なのでとても重要でもある。
ただ再生力が異様に高く、戦闘しながらでも回復してしまう。
基本的にダメージも少ないので足止めにしかならない。

「ぬうっ、何故トカゲの化物がこんな所に居る!
俺は貴様達の崇拝するサルーインの意思で動いているのだぞ!」
突然の奇襲に激昂するアミバ、リオレウスも翼を傷つけられたのが気に喰わないのか、
唸り声を上げ巨大な炎をゲラ=ハに向けて吐きつける。
かなり高速で吐き出されたが、雄の火竜は地上で連続でブレスを吐く事は滅多にない。
喉が雌に比べて弱いため、自分の炎で焼けてしまうのだ。
落ち着いて左右へかわせば反撃へ移れる。
素早くかわしてリオレウスへと突撃を仕掛ける。

背後で爆音が響く、それとほぼ同時に槍を顔面に向けて突き立てる。
硬い、かなり鱗の強度が発達している。
「むううっ!」
抉る様にして突いた状態から振り抜く。
鱗を何枚か引っぺがしたが、肉には到達していない。

「チッ、裏切り者のトカゲめ。放って置いても滅びそうな部族だがいいだろう。
俺がお前を使ってゲッコ族の秘孔を解明してやる!」
闘気を集中させ、掌から波動が噴き出す。北斗剛掌波、使用者の闘気をそのまま破壊力にして打ち出す。

289 :六十五話「愛を取り戻せ!中編2」:2007/09/18(火) 08:44:28 ID:FweH7Om00
威力はリオレウスの火球には及ばないがその分、更に速く突っ込んでくる。
かわす事に成功したが体制が崩れてしまった。
すかさず追い打ちをかけるリオレウス、巨体に似合わぬ速さで尻尾を振り回してくる。

巨大で鋭い棘のついたハンマーを鞭のようにして相手に叩きつける。
しかもその担い手は人知の及ばない怪力を持つ竜である。
当然、受け止める事もままならず紙屑の様に軽々と吹き飛ばされる。

衝撃が体中を走り抜ける、体の自由が利かず空中で姿勢制御がとれない。
「終わりだ、北斗千手殺!」
リオレウスの背を離れ、空中に放り出されたゲラ=ハを追撃する。
(ここまでかもしれませんね・・・。)

「北斗飛衛拳!」
突然、アミバの腹部へと強烈な蹴りが突き刺さり、空中で吹き飛びそのまま地面へと激突する。
一子相伝の最強にして非情なる暗殺拳、北斗神拳伝承者ケンシロウ。

「どうして生きているかは知らんが、まぁいい。
貴様が生きている限り何度でも言ってやる。」
地べたからムクリと起き上がるアミバへ情けを欠片も見せず言い放つ。
眼の色を腐ったドブ川にも劣る薄汚い色に濁らせながらケンシロウを睨みつける。
火竜も己に撤退を余儀なくさせた宿敵に、闘志を滾らせ口から火が溢れだす。
「アミバ、お前は長く生き過ぎた。」

「ケンシロウ・・・会いたかったぞ、今度こそ、この天才の真の実力を思い知らせてやる!」
「そうか、化物に頼らなければ実力を発揮できないのか。通りで2度も死ぬ訳だ。」
頭部に不自然な筋が浮かび上がり、眼は益々強い濁りと怒りを顕わにしている。
火竜の口からケンシロウ目掛けて炎が噴き出す。

290 :六十五話「愛を取り戻せ!中編2」:2007/09/18(火) 08:47:01 ID:FweH7Om00
〜メルビル港〜
「なあっ、俺は物心ついた時から海賊続けて来たんだがよ。
今までアンタみたいな女には出会った事がねぇ。シェリル、アンタにはマジなんだよ。」
海の様に青いボロ服を身につけ、炎の様に情熱的な眼差しを持った男が、
海を見つめる女性へと執拗に話しかけている。
女性は暗い色をした服で身を包み、顔の下半分もマスクで覆っている。

「貴方を見ていると、悲しい話を思い出すわ。」
一瞬だけこちらを見る、星一つない夜空の様に全てを闇に飲み込みそうな瞳。
色は黒ではなく、紫なのに闇そのものに見えるのは輝きの無さがそうさせるのか。

「過去にとても凶悪な海賊がいたわ、海という海を駆け廻り、
人の死なんて少しも気に留めず殺戮を続けたの。
でも、歳を取り海賊を止めると過去を後悔するようになったわ。
そして償いの為に自分が殺してきた者達の子供を引き取ったの。
彼は実の子の様に、分け隔てなく大切に育てたわ。
でも子供達は知ってしまったの、自分の親が名の知れた海賊である事を。」

決して小さな声で喋っている訳でもないのに、妙に静かな気がする。
周りの音を吸い込んでいるかのような錯覚に惑わされる。
波の音も耳に入らず彼女の声に耳を傾け続けた。

「彼は殺されたわ、自分が育てた子供たちに。自分がやったように無慈悲に、残虐にね。」
話を終えるとホークに背を向け、街の出口へと歩いて行ってしまった。

彼女を引きとめようと手を伸ばした次の瞬間、街に爆音が響き渡る。
「なっ、なんだぁ!?」
中央の広場の方を振り返ると煙が上がっており空中に竜の姿があった。
行かなくては、そうは思っても気持ちはシェリルの方へと向いていた。
だが、彼女の姿はもう消えていた。
「クソっ、また進展なしかよ・・・まぁ怒りの矛先は決まってるがな。」

291 :六十五話「愛を取り戻せ!中編2」:2007/09/18(火) 08:50:20 ID:FweH7Om00
リオレウスは動かずに、アミバを支援する大砲の様にして火球を放ち続けている。
炎の吐き過ぎで体内の器官を傷つけぬ様、休憩をとりつつ狙いを定める。
炎をかわしながらアミバを相手にするケンシロウ。
お互いに南斗、北斗を知りえているので、激しい攻防の中で手の内を読み合っている。
これは戦闘経験の多いケンシロウの方が上手だが、援護のあるアミバが絶対的に有利となる。

リオレウスの火球を避ける事も考えなくてはならないケンシロウは、集中力の途切れる瞬間が生まれる。
アミバは読み合いに負けても、後ろに下がれば援護の火球がケンシロウを遮り追撃を逃れられる。
アミバが読み合いに勝てば、秘孔に気が入るのを防ぐ事が出来ても、
衝撃や苦痛による硬直を火球に焼かれてしまう。
この深刻な状況を一刻も早く打破するため、一人の戦士が立ち上がろうとしていた

(身体の自由が戻ってきましたね、今なら生命の水も唱えられそうです。)
体の傷を術法で癒すため魔力を集中する、術師ではないので大怪我は治せないが楽にはなる。
だが、魔力の集中には己の体内の魔力だけではなく、空中に四散している魔力を使う物である。
その使い分けは魔法使いでなければ難しく、場の空気に敏感な生物には気づかれてしまう。
空気の変化を感じ取ったリオレウスは、再起不能にした筈の相手へ目を向け、異変に気づく。
「グゥオオオオオ!」
叫び声と共に轟音が鳴り渡り、地獄の業火にも匹敵しかねない爆炎が噴き出す。
二人の男は激しく拳を撃ち合っていたが、片方がその炎の先にいる人物へつい目を向けてしまった。
もう一人の男はこの隙を逃そうとする筈もなく、冷徹な死の拳が放たれた。

「うおりゃあああああ!」
「空っ!圧っ!波ぁ!」
回転する斧がアミバの鼻先すれすれに舞う。
大気の歪みが滅びの業火を消し飛ばす。
「なんだぁ!?今のは誰だ!」

斧を飛ばしたホークが空中に現れた歪みに反応する。
歪みの直線状には男が居た、全身に鎧を纏った屈強な男が。
「ある時は酒場のマスター。ある時は鎧に身を包んだ謎の剣士。
その正体は、アバロン帝国重装歩兵部隊隊長。俺の名はベア、よろしくな。」

292 :邪神?:2007/09/18(火) 08:52:45 ID:FweH7Om00
こんにちわ、邪神です。( 0w0)ノ
タイトル半端な感じで申し訳ありません・・・
今回でケンシロウになんらかのフラグ立たせる気だったのにw
ちなみにシェリルの話はうろ覚えなので正確ではないです。

話は変わってダイの大冒険、最後の方しか見た事無いけどスターダスト氏の動画は熱いですな。
自分も技術があればやってみたいんですがね、ああいうの。
ビッグブリッジのししとう辺りの名曲とか、適当に思いついた替え歌とか。
〜魔法中年吉影 二人でクソ☆カス MAXシアーハートアタック「コッチヲ見ロォォ」〜
とかネタはあるんですけどねぇ、技術のある人が羨ましいですな。
まぁ講座いきましょ。

〜前回名前でてたけど誰かベアに気づいてくれただろうか?講座〜

ベア アバロン帝国軍重装歩兵、体力が高く、基本装備の全身鎧も高い防御力を誇る。
   そして斬・打等、物理攻撃への耐性も持ち合わせており、何より評価すべきは、
   長剣技「パリィ」である。彼のパリィに掛かれば、ありとあらゆる物理攻撃は無効化される。
   陣形、インペリアルクロスで先頭に立つ彼の雄姿はSagaファンの心を捉えて離さない。
   ロマサガ2が好き=ベア(重装歩兵)が好き と解釈して99%間違いはないだろう。

エメラルド 名前が出たのは前回だがベアと同期なので紹介。
      帝国魔術師であり火の術を使いこなす。早期から術を鍛えると楽になるが、
      いかんせん面倒なので後回しにし、後半死地に陥るのは初心者に有りがちだ。
      ちなみに、キャラじゃなくシステムの紹介になってるのはこれといって特徴がないからである。

空圧波 ロマサガ版のグラビデ。グラビデなのでHPの高い敵に重宝する。
    その名の通り剣を振って出来た空気の圧力を飛ばす技。だった気がする・・・。

北斗飛衛拳 拳とあるが蹴りである。シンの獄屠拳と撃ち合ったあの蹴りである。
      名前は格ゲーで出た。シンの獄屠拳と同時に出すと相殺するあたり成長がみられる。

293 :作者の都合により名無しです:2007/09/18(火) 09:11:17 ID:MCsHZleJ0
>さいさん
最終局面に向けて愛憎入り乱れて暑いですな。
サイトでノリノリになった、と書かれてましたけど
文面に表れてます。千歳は「彼」の生贄ですかw

>邪神さん
トカゲに秘功ってあるんだろうかw
リオレウスってのは元ネタ知らないからどうしても
アミバが気になってしまうw
ケンシロウの成長のカマセだろうなあw

294 :邪神?:2007/09/18(火) 09:11:18 ID:FweH7Om00
〜感謝の言葉〜

>>271氏 な、なんだァーッ!その沈黙はァーッ!
   「またはしゃいでるよこの池沼( ノ∀`)アチャー」っていう沈黙か!?仕方ないんだ!
    ジョジョがこないうちはギアッチョしてストレスを大気に発散するしかないんだ!
    ニコ厨な俺はジョジョの原曲シリーズのキラー・クイーンでメロメロにされてしまった・・・。
    洋楽って言葉じゃ無く心で理解するものなんだね・・・プロシュートの兄貴。

>>272氏 人は誰しも何かしら弱みを持っている物。
    でも本来弱みである愛とか優しさを力にするのがケンシロウ。
    きっと酒も何らかの形で力に・・・。

>>273氏 >>テイルズチームと比べてルックス悪いから
    活躍は少ないけどルックスは互角以上の筈!
    でも影は確かに薄いなぁ・・・。
    ホーク達は長めにやってきます・・・。

>>275氏 正確には専門学生です。日々勉強ですよ、忙しい忙しい(0w0)y−~~
    しかし社会人な人に比べれば全然暇なのは当然。
    PC復帰したし頑張ってみます。

295 :作者の都合により名無しです:2007/09/18(火) 13:37:21 ID:zIj5v44b0
>邪心さん
アミバは確かケンと戦えるレベルになかったような気がするけど
サルーインとかの影響で強くなってる感じですな
相手が雑魚なので、ケンにはもっと大物といずれ戦ってほしいな

>さいさん
サムナーの見事な悪役っぷりがいいな。たとえのオムレツも意味わかんねえw
千歳が正統派ヒロインっぽいから余計に際立ちますな
混沌とした状態に神父が投入されるとさらに混沌とするからステキだ。

296 :作者の都合により名無しです:2007/09/18(火) 16:53:02 ID:zdVbBF/q0
さいさんはノリノリみたいだし
邪神さんもうぷ回数増えてきたし
ようやくバキスレスランプ脱したかな?

あと2人くらいコンスタントに
うぷしてくれる方がいると安心なんだけどな

297 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/18(火) 21:57:35 ID:TTzpcCSG0
>>243
天国なのか地獄なのか。川の流れる音が聞こえるし、背中に当たってるのは河原の石
らしい。じゃあ三途の川か。それにしちゃ、妙に寝心地がいいような……などと寝ぼけた
黒沢が、ぐったりとした自分の体を重く感じながら瞼だけ動かし開けてみると、
「……あ」
真上から見下ろしている野明と目が合った。体勢から考えると、後頭部に感じる温かさは
どうやら野明の腿。つまり、いわゆる膝枕をされているらしい。
黒沢にとっては憧れも憧れ、本来ならこれだけで鼻血を出しててもおかしくない状況だ。が、
流石に今はそれどころではない。
ゴオマに咬まれた肩も、痛みはあるが出血は止まっている。相変わらずバケモノ級の治癒力、
非人間的肉体だ。
それを自分の目で見ているからだろう、野明の口からはこういう時の
社交辞令級定番セリフである「大丈夫ですか?」が出てこない。
「……ま……そういうことだ」
未確認生命体への変身、人外の力を発揮しての戦い。その全てを目撃した野明に、
黒沢は言った。
「オレはもう、人間じゃなくなった……未確認生命体第2号……いや、赤い方は4号って
勘定になるか……多分、オレはまた、奴らと戦うことになる……つまり変身する……
バケモノの姿にな……そしたら、また警察が……物騒なものを持って駆けつける……」
語りながら黒沢は、そして聞きながら野明も、思い出していた。二人一緒に
警官隊に銃を向けられ、包囲されたことを。
「だから、もう……オレには近づかないでくれ……オレのせいで、またあんなことになったら
……オレのせいで、関係ないあんたまで巻き込んじまったら……オレは……オレは……っ」
ボロ……ボロ……と涙をこぼし始めた黒沢。野明はそんな黒沢に、
「黒沢さん。今の黒沢さんは、あんっっまりにも当たり前すぎて、本来言うまでもないことを
忘れてしまっていますよ」
優しく諭すように応えた。
「思い出して下さい。正義のヒーローが、正体を隠して戦うのは当たり前じゃないですか」
「……え」

298 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/18(火) 21:59:38 ID:TTzpcCSG0
「あたしもそういうのに憧れて、警察官になりました。イングラムが空を飛べないって
知ったのは第二小隊に配属される直前のことでしてね。そりゃあがっかりさせられ
ましたよ。そんなあたしですから、知ってます。ヒーローたちは人知れず戦うものだって。
その正体が、どこの誰なのかは秘密にして。それと、」
野明は変わらず優しく、けど少しだけ語調を強めて言った。
「『関係ないあんた』なんて……言わないで下さい。あたしは、ただ逃げるだけの一般人A
とか囚われのお姫様とかをやる気はありませんよ。断固として、ヒーローと一緒に戦います」
「? ちょ、ちょっと、まて、戦うって、その」
「言ったでしょう。あたしはそういうのに憧れて警察官になりましたって。……なのに、」
野明の声が沈んだ。黒沢から目を逸らす。
「今度の事件で、あたしは何もできなかった。たくさんの人が目の前で殺されたのに。
黒沢さんの体だって、あたしが最初に1号を倒してさえいれば……こんなことには……」
今度は野明がボロ……ボロ……と涙を溢れさせたところで、黒沢の指が持ち上がった。
野明の頬に触れ、熱い雫を受け止める。擦り傷だらけの野明の頬に、涙が染みたのと
同時だった。
「ぅ……っく……黒沢さん……」
野明が黒沢に視線を戻す。再び二人の目が合った。
黒沢は緊張して、少々もごもご口ごもって。それから意を決して、言葉を紡いでいった。
「なあ。最初に会ったのは事件の聞き込みだったな。ピシッと敬礼して、お堅い顔してた。
で、その後はもう、いつ会っても怒ってたり、泣いてたり、悔しがってたり、歯を食い縛って
たりで。オレ、まだ自分の妄想の中でしか見たことないんだよな。あんたの笑顔をさ」
「……えっ…………が、お?」
黒沢は、ほりほりと頭を掻きながら、野明を見上げて言う。
「浅井からあんたの伝言は聞いたけど、オレに謝ることなんてないぜ。オレが勝手にやった
ことだから。けど、礼を言ってくれるんなら聞かせてほしいな。さっき、お姫様は嫌だって
言ったけど……その……オレの中では……あ〜……結構、お姫様……してるんだ、実は。
だから今だけ、ちょっとだけ、ヒーローに助けられたお姫様、してくれると……嬉しいな、
なんて……思ったりして…………だな、その……」
しどろもどろ、赤面しながら語る黒沢。年齢半分以下の小娘を相手に、汗かきまくりで。
言われた野明は、


299 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/18(火) 22:00:39 ID:TTzpcCSG0
『……ぷっ』
言われるまでもなく、いや、言われたからこそ、笑顔を見せた。
もう溢れてこない涙を拭いて。膝枕している黒沢の頬を両手でそっと包み込んで。
黒沢の目を見つめて、心からの感謝を込めて言った。
「……黒沢さん……ありがとう」
差し込み始めた朝日が照らす、実はまだ少し涙が残っていた野明の笑顔。
それは、負傷と疲労に埋もれた黒沢の心身を優しさ暖かさで包み……というより何より、
とにかく可愛かった。黒沢の妄想の中で描かれていたそれより、何百万倍も可愛かった。
黒沢は、そんな野明の笑顔が眩しすぎて正視できないのと、永遠に心に焼き付けたい
という思いとで、静かに目を閉じた。
そして、思った。
『…………一生の…………殊勲だ……』

300 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/09/18(火) 22:03:34 ID:TTzpcCSG0
この後。人間社会に紛れ込んだ未確認生命体たちは、仲間内でルールを定めて
ゲームを開始した。殺害人数を丁寧にカウントし、その得点を競い合うというもの。
警察の必死の捜査にも関わらず、その警察官たちをも含めて、増加の一途を辿る
犠牲者数。それをテレビや新聞で見て、誰が何人殺せたと語り合い、勝負を楽しむ
未確認たち。毒を注入され内臓が腐敗した男、大型トラックで何往復も轢き潰された女、
予告殺人の恐怖に追い詰められ自殺してしまった子、何もできずに泣き叫ぶ家族……。

「だぁかぁらぁ、ただのゲームだ。それ以外に意味はない」
「君たちが苦しむほど……楽しいから(自殺された分は得点にならないんだよなぁ)」
「私は、どうでもいい殺しはさっさと終わらせたい……っと。で『送信』をクリックね」

だがそんな中で、赤い体の『未確認生命体第4号』が傷つきながらも他の未確認たち
を次々と撃破していった。自身が、未確認生命体として警察に危険視されながらも。

「せんせい! 4号はミカクニンタイセイメイだけど、いいやつなんだよね? 
ママがよんでた本にね、かいてあったの!」
「……娘が言ってたんだ。パパを助けてくれたんだから、4号は絶対いい人だよ、って。
俺はあいつに……4号に銃を向けちまった……」

やがてそれが、第2号と同一個体であるということも判明。時が経つにつれて
世間の、マスコミの、そして警察の、彼を見る目が少しずつ変わっていく。
殺人ゲームの犠牲者数が三桁から四桁に達し、警察と未確認生命体との
熾烈を極める戦場(街中)にて、上層部の疑念をよそに現場の刑事たちが……

「! まて、撃つな! あれは4号だ!」
「4号が戦ってる……………………援護だ! 援護しろおおおおぉぉっ!」

現代に蘇った伝説の戦士・二代目クウガの戦いを語るのは、また別の機会に
譲ることとする。↓
ttp://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/furari/kobusi/01.htm

301 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/09/18(火) 22:04:53 ID:TTzpcCSG0
以上です。ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました! 野明も黒沢さんも既に原型
留めてませんが、「私ぁこういうシチュが大っっ好きなんだ文句あるかっ!」ってことでご勘弁。
……ふと、クウガのED曲を『黒沢』ラストシーンに流したらシャレにならんなということに
気づいてみる。まぁ実はクウガも、『黒沢』と同じオチだという解釈もできるんですけどね。
最終回で少しだけ映ったアレは、外国=地上のどこかを旅している五代君ではなく……
ダグバ(ラスボス)と相討ちの後、あのまま二度と目を開けることのなかった五代君が……
今は天国で幸せに暮らしている姿……うぅ何度妄想しても涙が(←リアルタイム実話)っっ。
♪君がくれた笑顔だけ ポケットにしまって 僕は 僕は 青空に  な る…………♪

>>銀杏丸さん
>聖闘士になるか死体になるかしかない
怖すぎるっつーんだ聖域! 武威を示さにゃならん立場なのは解るし、正義の味方の基地
(?)たるもの、本来はそれぐらいしなきゃダメなんでしょうけど……。で星矢、や〜っぱり
紫龍や瞬とは違いますね。彼らほどには変わってない。けどちゃんと最強認定、か。流石。

>>邪神? さん
おぉベア、か〜な〜りカッコいい! ケンシロウへの語りかけの深さに於いて、私ランキング
でシュウ級と認定。そういや剣心も、技は極めても心が未熟なせいで〜と叱られてましたね。
天才キャラらしくその辺が脆いと。で武器といえば確かヌンチャクは使ってたはず。本作では?

>>さいさん(一周年おめでとう&おつ華麗さま! )
いやはや。カッコ良くはないとはいえ、今まで権謀術数で物語を引っ掻き回してくれたサムナー
の存在を、その最期を、豪快に吹き飛ばす主人公(だなぁやっぱり)の大・登場! 銃剣から
アーメンまでの引っ張りっぷりがまた、足音だけ聞こえて〜靴だけ画面に映り〜って感じでもぅ。

>>NBさん
凄ぇ人たちはいますが、今は「いっぱい」というほどではなく。ゆえに、「凄ぇ人」の一人
であるNBさんの早期ご帰還をお待ち申しておりまする!

アクセス規制という理由があったとはいえ、手元で感想を書いてからバキスレに
書き込むまでの間に当該作品の新作が登場、よって感想書き直し……ができた
のは幸せ嬉し。復調好調、ありがたや。

302 :作者の都合により名無しです:2007/09/18(火) 22:31:08 ID:vGYjs4Og0
ふらーりさんお疲れ様でした!
また感想だけでなく、次のふらーりワールドを期待してます。
ノアが可愛くて、黒沢がかっこいくて良かったです!

303 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/09/19(水) 00:20:52 ID:uuD0+ygu0
第020話 「環境の変化(前編)」

ヴィクトリアはまひろが嫌いだ。
もっともこの気難しい少女にかかれば地上にあるモノはほとんど嫌いなモノになってしまうが
まひろについてはとりわけ別格なのである。
錬金の戦士、ホムンクルス、核鉄、武装錬金といった錬金術の産物に次ぐかも知れない。
まひろは、非常に馴れ馴れしい。
平気で自分の領域に踏み込んできて、取り繕っているペースを乱してくる。
いつも幸せそうにニコニコ笑っているのも気に入らない。
彼女は陽の存在だ。
近くに居るだけでその霊性の光がさぁっと自分の本性を照らし出し、陰々滅々とした本性を
暴いてきそうで嫌なのだ。
また、カズキの妹という点も嫌悪の対象だ。
それも、よく心の流れを知覚してみると、「ヴィクトリアの父・ヴィクターを月に追放した戦士の
妹」としてではなく、「月に消えた戦士の妹」として嫌悪している。
(いいわね気楽で。あなたにとって家族って結局それだけのモノなの?)
兄を失っていながら、なぜ朗らかに笑っていられるのか。
100年ずっと母親を守り父親を想ってきたヴィクトリアだから、家族を軽んじる者は好かない。
「違う。彼女も表に出さないが、悲しんではいる」
秋水に一度何気なくこぼすと彼はフォローに回ったが、それも気に入らない。
ちなみにヴィクトリアは寄宿舎に来て以来、しばしば秋水と会話をしている。
上記の会話も秋水の自室で行っており、ヴィクトリアの来歴を考えるとなかなか稀有な物と
いえよう。
地下に百年籠っていたホムンクルスが他者に招かれ、猫も被らず本音を漏らしている。
「あっそ。別にどうだっていいわよそんなコト。ベソベソ泣かれたって鬱陶しいだけ」
その時は冷たい眼差しで秋水を一瞥して部屋を出たが、厳密に分析すればそれは関係を
断絶するサインとして取ったのではなく、何らかの期待を裏切られたいいようのない苛立ちを
ブツけたにすぎず、ごく普通のコミュニケーションの域は出ていない。
再び呼ばれれば渋々ながら応じていきそうな余地がどこかにある。
そんな秋水に対する微妙な感情が芽生えつつあるのだが、今はヴィクトリア、まったくまひろ
という少女への嫌悪感ばかりに目を向けている。


304 :永遠の扉:2007/09/19(水) 00:22:00 ID:uuD0+ygu0
地上で笑みを繕っている自分に対する違和感が、日ましに大きくなっている。
錆びる鉄だ。
地上の空気に触れると勝手に、愛想という名の薄膜が意識へべっとりまとわりつく。
そんな化学反応にも似た変質を、一般人にあうたびに繰り返している。
はにかみ、笑い、驚き、安堵し、見た目相応の「情動のような物」を頬に浮かべている。
ヴィクトリア自身、それは演技だと信じている。
頬を崩しながらも相手の言動を冷やかに見ていて、いかな「情動のような物」を使えば相手
が喜ぶか──ポーカーでどの札を変えればいい役が出るかを考えるように──闇の意識が
指示している筈なのだ。
という前提であるべき一つの論拠を、ヴィクトリアは持っている。

人間社会への、人間としての最低限の幸福への未練はけして持ってはならない。

と。
持てば必ずホムンクルスとしての側面が災いをもたらす。
ヴィクトリアは錬金術の産物を総て嫌悪している。
ホムンクルスなどという人喰いを好む一介の怪物にその身を貶めたくはない。
百年もの長きに渡って母親のクローンの「出来損ない」の部分だけを食べ続け、生きた人間
には一切手を出してこなかったのもその表れ。
よって薄膜にくるまれた自分の意識が本心から笑っていてはならないのだ。
と思いながらも彼女は寄宿舎にいて、普通に暮らしている。
千里に母の面影を見出して以来、影を縫われたように留まっている。
つまるところ、未練なのだろう。
生涯の総てをかけて守り続け、天命を果たす最期の瞬間までを見届けた大事な存在。
それの残影を、ヴィクトリアは千里に見出してしまう。
そして千里はまひろの友人だから、かろうじてまひろへの嫌悪感を表出さずに(上辺だけで
も)友人として振る舞っている。

時は九月二日。
一連の戦いから三日が経過した頃の話である。

その間の戦士たちの動きは、秋水を通じて断片的にではあるが聞き及んでいる。

305 :永遠の扉:2007/09/19(水) 00:23:42 ID:uuD0+ygu0
反応は決まりきっていて、嫌いな街が燃えるのを対岸で見物するような顔をしてから蜂蜜よ
り甘い声で呟くのだ。
「大変そうね。私には関係ないけど」
秋水たち錬金戦団がどうなろうと知ったコトではない。
戦団は百年前にヴィクトリアの家庭を崩壊させた上に、ヴィクトリアをホムンクルスにした。
その組織がいま、逆風に立たされていたとして少々小気味よさを感じるぐらいだ。
かといって敵対しているホムンクルス連中に喝采を送るつもりにもならず、いっそ共斃れで
戦士もホムンクルスもこの街から、いや全世界から消滅してしまえばいいと気だるく思って
いる。

ともかく戦士たちの立たされている状況は悪い。

(戦士・斗貴子も戦士・剛太も傷が深い……しばらく入院せざるを得ない上に、核鉄も二つ
失われている)
かくいう自身も最近ようやく退院したという身なので、体の端々に重苦しい淀みが溜まっている。
例えば先ほどから数々の斬劇を見事な手つきで捌いてはいるが、絶対硬度のグローブの上
からの衝撃が骨に響いてかすかに痺れ、次の攻撃への応対が少しずつ遅くなっているのが
分かる。
とはいえそれは自分の肉体への慣れ親しみがあったればこその微妙な違和感らしく、マスク
の狭い隙間から見える相手は、けして楽な戦いに臨む表情ではない。
相手は秋水。こざっぱりとしたいつもの胴着姿だ。
対する防人はいつもの通りシルバースキンを装着済み。
場所は十五メートル四方の部屋で、白い壁や床はまだ真新しげな光をぴかぴか放っている。
基本的には何もない。
せいぜい目を引くのは部屋の片隅に設置された銀色眩しい鉄製のハシゴとぐらいだ。
上階にのみ向かっているそれのふもとには、空になったペットボトル数本やビニール袋入り
のバナナが無造作に置かれてはいるが、まぁ、それは休憩用という以外あまり特筆すべき
要素もない。
実をいうと、寄宿舎管理人室の地下に密かに設けたトレーニングルームだ。
ここで防人は秋水に稽古をつけてやっている。
今日だけではない。
八月二十八日、要するにザ・ブレーメンタウンミュージシャンが現れて以来、折を見つけては

306 :永遠の扉:2007/09/19(水) 00:25:01 ID:uuD0+ygu0
秋水とこういう模擬戦を繰り広げている。
とはいえ、今のところはまったく秋水の攻撃が通じたためしはない。
今も彼は踏み込み踏み込んでは、鋭い斬撃を間断なく繰り出している。
が、彼の武装錬金と防人の武装錬金はすこぶる相性が悪く、意味をなさない。
ソードサムライXという日本刀の武装錬金の特性は、エネルギー攻撃の吸収・放出。
攻撃において頼れるのは、本来の切れ味を除けば術者の技量のみなのだ。
対する防人の武装錬金、これはどこぞの国の防疫服よろしく頭からつま先までをすっぽり覆
う防護服(フルメタルジャケット)。
名はシルバースキンで特性は絶対防御。いかなる衝撃を受けようと瞬時に再生・硬化して
いかなる攻撃をも(例えば核も生物兵器も化学兵器ですら)防ぎきる鉄壁の、いや、鉄壁と
いう形容すら過小に霞む難攻不落の武装錬金だ。
よって秋水が何を繰り出そうと、通じない。
最も得意とする逆胴ですら、刀身がパキンとへし折られるぐらいだ。
(硬度だけならばヴィクターと同じ)
太平洋での一大決戦時、秋水はヴィクターと一戦交えたコトがある。
それはバスターバロンという切り札の回復時間を稼ぐためだったが、しかしまったくもって他
の戦士同様歯が立たなかった。
防人も同じくだ。
攻撃力についてはあくまで模擬戦ゆえに真価を伺い知るコトはできないが、防御力において
はまったく人間はおろかホムンクルスすら超越している。
攻撃は途絶えさせてはいない。
しかし通じない。
先ほどから細やかな白銀のヘキサゴンパネルが飛び散っては修復するばかり。
埒が明かない。
そんな表情を秋水に認めた防人は、攻撃を受けながら頬を緩めた。
焦っているにしろ打開策を考えているにしろ、軽い気脈の乱れを表しているのは頂けない。
若さゆえの露骨さというか。防人自身にもそういう露骨さで、怒りや悲しみ、それから千歳の
色香に対する頬の緩みを表した時代もあったが、今は違う。
さまざまな任務や別離が心を辛辣に冷え込ませ、情感よりも理性をすっかり優先するように
なっている。
いま、行方不明になっている照星もむかしは今の防人のような心情だったのかも知れない。

307 :永遠の扉:2007/09/19(水) 00:30:25 ID:uuD0+ygu0
と思い当たるあたり、自身の成長というか変化の証か。もはや若くもないなと苦笑しながら、
ややもするとかつてチームを組んでいた仲間のうち、一番若々しい理念を持っているのは
火渡かも知れないと考えを巡らせ、千歳の大規模な変化に心を痛ませ、最後に眼前の秋水
へと意識を戻した。
相変わらず表情は難しい。
さて、ココは笑ってたしなめるか、それとも焦りゆえの失点を敢えて喰らわし、気を引き締め
させるか。
言葉よりも痛覚に訴える方が伝わるコトもままある。
そんな論拠で後者に至るのは早かった。

力を込めて切っ先を捌く。
懐へ飛び込む。
肘打ちを繰り出す。

以上の動作を全く同時に行うと、思いのままになった肉体から爽快感が漲り、ワンテンポ遅
れて鈍く小さい痛みが拡散した。
(俺も現在はこの状態。本格的な戦線復帰は無理そうだ。戦士・根来もそれは同じ。最速でも
九月四日……明後日の退院という話。当初の予定から延びていないのが幸いといえば幸い
だが、即座に復帰できないというのは痛いな)
想像にふける視線の先では、肘が横向きの刀身で受け止められていた。
弾かれた勢いを利して咄嗟に手元へ引きつけたのだろう。
純粋に勝ちを狙うのならば、片手や両足で貫手なり蹴りなりを見舞うのもいいが、
(確か敵の首領は剣士というし──…)
こういう鍔迫り合いじみた現象に馴染ませていくのもいいだろう。
実際、防人は剣持真希士という大柄な野良犬のような風貌の男にそんな訓練を施したコトも
ある。もっとも彼には武装錬金の特性たる筋力増強が備わっていたから、鍔迫り合いはむし
ろ彼の領分だったもいえる。
秋水はといえば、刀の腹の中ほどに手を添えて、柄を握る手ともども防人の肘打ちを凌いで
いる。
こういう剣持との反応の違いが、教導する側としてはなかなか面白い。
部下の性格を、戦闘の性質や武装錬金の特性から推し量っていくのは会話と違った醍醐味
がある。

308 :永遠の扉:2007/09/19(水) 00:33:03 ID:uuD0+ygu0
記録によれば明治時代、齢十五にして白刃取り千本制覇を成し遂げた剣士がいたという。
その彼が十歳のころ呉某というマフィアのボディーガードと繰り広げた戦いが、今の秋水と
防人の状態に似ている。
引けば肘が入り、押し返すコトは難しく、そのままいれば武器破壊。
選択肢のない重心の奪い合いに互いの上体は押し引きの力の波にしばしうち震え、
「やはり君は確実に強くなっている。だが」
マスクの中で笑いかける防人が、ふわりと力を抜くと均衡は崩れた。
実際問題、絶対防御を誇る防人が鍔迫り合いに勝つ必要はないのだ。
負けたとしても攻撃は通じない。
言い換えれば秋水がいかに尽力して競り勝ったとしても、主導権を握るコトには繋がらない。
戦いには流れがあり、要点がある。それを踏まえず、例えば日露戦争時における日本軍の
ように旅順要塞を正面から突破しようと何度も試みるのは愚策であろう。
全力は相手の態勢を崩せる箇所に注ぎ込むべきなのだ。二〇三高地を攻めるように。
(そういう見極めがまだまだ甘いな)
秋水の上半身は肘を押していた刀身ごと保持すべき重心、理想的な軸をブラした。
いかに強い相手でも、態勢が崩れ、「強さ」を発揮する土俵そのものを失えば意味がない。
たとえそれがほんの数秒であっても、戦いにおいては十分すぎるのだ。
「まぁ、俺の手でこれ以上怪我人を増やすワケにもいかないから、加減はしておいてやろう。
ただし! 当たれば痛いしそれなりの打撲は覚悟しろ!」
粉砕・ブラボラッシュ。本来はコンクリートの壁ぐらい事もなく粉塵にできる技だ。
果断という言葉があれば、秋水の選択はそれだろう。
端正な顔に粛然とした青い光がぱっと射したと思う頃には、逆手に握り直した刀が背後から
前方にかけて弧を描き防人の脇腹に吸い込まれていた。
逆胴。
秋水の最も得意とする技である。
平生ならばシルバースキンに折られる筈だが。
双方ともに予想だにしない衝撃が巻き起こった。
ヘキサゴンパネルは暴風を受くる紙屑がごとく一掃され、防人の上半身を丸ごと露にした。
(この現象……!)
おののく防人の脇腹には刀身。シルバースキンの修復よりも早く呼び込まれていた。
何が起こったのか、彼は理解するのに少し時間を要した。

309 :永遠の扉:2007/09/19(水) 00:34:30 ID:uuD0+ygu0
紆余曲折を経てなんとか戻ってまいりました。
とはいえ次は真赤な誓いでアニメ武装錬金の総集編を作ってみたいという欲望もあり……
うぅ。ハロイさんやNBさんがやむなく不在のいま、微力ながらに力添えしたいのですが、どう
にもこうにも欲求との折り合いが難しい。パッと作ってパッと戻れたらいいのですが、生来
怠け者でグータラでダメ人間でニコニコ動画ばかり見てる自分には難しい。

>>70さん
ハタと気づけば連載一周年(に近い回)で、ほとんどオリキャラばかりという構成……
ま、まぁそれでも小札や香美に喜んで頂けたらいいんですが…… 唯一の原作キャラが気絶
して軽い貞操の危機を迎えて気づかぬうちに助かっているというのは連載一周年の回としていかがなものかw

>>71さん
なるべくコメディチックな展開はやりたいです。ただしそのあと、鬱っ気のあるのもやります。
和月先生はそういうのを嫌ってるんですが、しかしカタルシスのためなら鬱も谷もドン底も
やっておきたいのです。自分的には。

>>72さん
オリキャラは善悪問わずに前向きに! をモットーに作成してますので、ブレミュ勢が出てくると
なんとも楽な気分で筆が進んじゃいます。それが作劇上いいかどうかはわかりませんが、読
んでて楽しんで頂けるならばやはり幸いであります。……斗貴子さんは再登場したら荒んでそう。

310 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/09/19(水) 00:36:05 ID:uuD0+ygu0
ふら〜りさん(月並みですが、完結、おめでとうございます。最後にアレとリンクするとは……)
「強大な力と引き換えに日常から隔離される」というヒーロー物の王道に放り込まれた場合、
やっぱり逃げるのが彼らしい。それでも何かかけがえのない物があれば、涙で顔をぐしゃぐ
しゃにしながらも立つのが彼。野明のような一種毅然とした芯の強い女の子こそ、黒沢のよう
なダメ要素の多い(……いや、カッコいい時はとことんカッコいいですが)男とうまくやってい
けるのではないかと。ぜひ、こちらの根来千歳のごとくクウガベースの他作品にも登場させて
頂きたく……

>男ってのは……男ってのはみんな、『成長した男の子』なんだ
いろいろ思うところあり、このセリフにグッときました。端々の福本節のみならず、こういう立
ち方が黒沢らしいw

斗貴子につきましては、自分が一読者として永遠の扉を読んだ場合、「ポッと出のオリキャラ
にあっさり倒されたら納得いかない」感じがしたので、徹底してダメージを与えてみました。
そして例の二人は、あと五歳若ければ「良き同僚だった筈なのにある日突然意識しはじめて…」
という路線で行けるのでしょうが…… その当時だと根来(15)、千歳(21)という生徒と先生の
禁断めいた恋愛になっちゃいますがw うーん。根来がどうしても年下に見えない。

さいさん(タイトルの意味が明かされると、いよいよ終盤という感じでゾクゾクします)
文中にもあるように生まれたての一介のホムンクルスじゃシルバースキンの前ではあまりに
非力。いかに攻撃を加えようと、逆に拳が砕け牙が折れて酸鼻を晒すのみ。ならば一撃で
斃すのが慈悲とはいえ、彼の最後に切なさは禁じえなく……。サムナーも同じく。自らの意思で邁進して
いたと思いきや、結局は傀儡にすぎぬと思い知った上にほぼ一蹴状態で惨死とは……シビアです。

銀杏丸さん
>七人の超将軍
コミックワールドの展開を、本家ガンダムの世界観と絡めた演出、おみごとでした。
裂空の弟子という設定や白竜大帝・阿修羅王の存在が出てきたのにはニヤリとしました。
何しろ自分は小学生からずっと武者が好きですので。三国伝も色々出て欲しいですね。黄天ジオとか(無理)

311 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/09/19(水) 00:37:30 ID:uuD0+ygu0
>戦闘神話
ぬはwwww やはり使いたいネタは被っちゃいますねw 構想中の武装錬金に近い物があって
ビックリ。あ、お気になさらず。自分はただ原則をつきつめるのみ。そして戦団はやはりキナ
臭い感じですよね。ヴィクトリアは「ツン」が押し出ていて良かったです。アテナは弁護が難しいかもw

斗貴子さんですが、羅刹鬼畜ぶりを少しでも再現できていれば僥倖。とはいえ最近、少々や
りすぎているような気もしますが、かといって本来の優しさを向けるべき相手がいないという
のも事実。たまにはごく普通の副部長的な毅然さと優しさの人として描いてやりたくも。

こがん☆さん(はじめまして)
るろうにのみならず血笑鴉や闇の土鬼まで……! 自分のような人間にとっては垂涎モノです。
メインキャラの登場の仕方も、鬼平犯科帳のようなあっさり感があってツボですし、何より縁が
虎眼流を使うというクロスオーバーならではの脅威が今から楽しみ。何気に”虎”伏絶刀勢を
使ってた彼が虎眼流というこの符号も素晴らしい。しかも鯨波もいますし!

邪神さん
ありがとうございます。いずれはより熱いモノを作成いたしますので、そちらもご期待下さい。
武装錬金と真赤な誓いを扱う以上、持てる技量を総動員するはもはや義務!! それから
MADはまず完成させるコトが肝要であります。何作も作っているうちに、MADならではの感覚
が分かってきますので、そうすればしめたモノ。後は電撃的な発想の赴くまま作るのみです!

312 :作者の都合により名無しです:2007/09/19(水) 11:29:11 ID:JB0mu9IL0
すごいなスターダストさん。
SS職人でもありAA職人でもありMAD職人でもあるのかw

今回はまひろたちの活躍が見れて楽しかったです。
群像劇らしく、いろんなキャラの個性や戦いや生き方が
見れるのがいいですね。

群像劇はキャラが立ってないと面白くないけど
この作品は錬金元キャラもオリキャラも素敵だから良い。
どうしても群像劇は長くなりますけどねw

313 :作者の都合により名無しです:2007/09/19(水) 18:10:49 ID:aPFohT3Y0
戦闘パートの主役はやっぱり防人かな?
まひろと秋水が出てくると安心するな
激しいバトルが続いただけに

314 :作者の都合により名無しです:2007/09/19(水) 20:42:50 ID:nFRNR4Ps0
永遠の扉は今、どの位の進捗状況なんだろうw
今は6合目くらいかな?
でもまひろと秋水がまとまるとは思えないなキャラ的に。
もちろん、そういうエンドを期待してるけどね。


あとふら〜りさんお疲れ様でした。
他作品につながる終わり方は好きですね。
野明も黒沢も可愛くて楽しかったですよ。「

315 :作者の都合により名無しです:2007/09/20(木) 12:38:39 ID:0BHmCMVF0
あれよりすごいMADを作るのかw

316 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/09/20(木) 16:10:10 ID:lPGaZnws0
足音が聞こえる。それは彼女にとって馴染みの深いものだった。
 はるか深淵より響いてくる音。ゆっくりと、だが確実に近づいてくる。
 それはとても恐ろしいものだった。
 そいつに追いつかれてしまえば、どうなるか、本能的に知っていた。

 逃げなければ。逃げて、生きなければならない。
 死ぬのは恐ろしい。死ぬのはいやだ。死ぬのだけはごめんだ。

 彼女は立ち上がろうとしたが、できなかった。
 まったく力が入らない。まるで他人の身体のようだ。
 瞳だけは動かすことができた。
 だが、瞳にうつるのは、どこまでも広がる闇だけだった。
 吸血鬼である自分なら、真夜中でも、まるで昼間のように見えるというのに。
 いくら目を凝らしても、目の前の景色は変わらなかった。
 自分自身が闇になったかのようだ。

 そして、彼女は足音のする方角を見てしまった。
 そこには、まわりの景色よりもなお濃い闇があった。
 闇が隆起し、闇が形を成し、闇が名を得た。
 その闇に横一文字に亀裂が走り、端がきゅっと吊り上った。

 嗤っていた。
 嘲笑っていた。
 彼女のすべてを否定するかのように、ただただ声を張り上げ哄笑していた。

 彼女は動けなかった。恐怖が彼女の心臓を握り締めていた。
 歯がかたかたと音を鳴らし始める。いやな汗が全身から吹き出る。
 目を逸らそうとしても、できない。

 そして魔王(ザミエル)が、彼女の腕を掴んで――

317 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/09/20(木) 16:12:44 ID:lPGaZnws0
 悪夢はそこで終わった。彼女――リップヴァーンは、死の世界から帰還した。
 まず視界に飛び込んできたのは、白い天井だった。見知らぬ天井ではない。見覚えがある。すぐには思い出せなかった。
まるで靄がかかっているように、意識がはっきりしない。
 すぐ横に視線を走らせた。そこには、点滴が吊るされていた。真っ赤な液体で満たされている。吸血鬼用に濃度を調整された血液だった。
 赤い液体は一定のリズムで垂れ落ち、チューブからリップヴァーンの体内に流れ込んでくる。
 周囲を見回す。白い壁に白い床、何もかもが白い部屋だった。
 徐々に記憶がよみがえって来る。ここは最後の大隊の拠点、南米ジャブローの緊急治療棟の一室だ。そう、自分はニューヨークでの
任務の際、敵との戦闘で深い傷を負った。そして戦闘後、吸血鬼心棒者の手引きによって、無事南米に帰還した。そこまでは憶えている。
 しかし、いつここに搬入されたか、その記憶がない。
 
 ニューヨークを脱出してからすぐ、自分は深い眠りについてしまった。その眠りは、急激に血液が失われた際に起こる、吸血鬼独特の
習性だった。おそらくその眠りについている間に、治療を受けたのだろう。

「あ、気がついたみたいだね、中尉」

 ひどく幼い声がした。すぐ横に視線を移すと、ヒトラーユーゲントの制服が目に入った。
 背の丈がリップヴァーンの半分にも満たない、頭の上に生える猫の耳が印象的な子どもだった。時折ピコピコと動くのを見るに、作り物
ではないのだろう。無邪気な笑顔のままリップヴァーンの顔を覗き込んでいる。
「シュレディンガー准尉……」
「いやー、中尉が無事でよかったよかった。もしこのまま目が醒めなかったら、大変なことになっていたから」
 椅子から降り、ピンと指を立てる。 
「中尉が死んじゃったら、バトル・オブ・ブリテンも延期になっちゃうからね」

 バトル・オブ・ブリテン。最後の大隊の悲願であり、現状での最優先事項。半世紀の時を越え、今またゼーレヴェの群れが英国を蹂躙す
る。もっとも今回動員される兵士は人間ではなく、吸血鬼であったが。吸血鬼と化した怨念の徒が、倫敦を魔都に変え、英国を失墜させるの
だ。彼女はその作戦の重要なファクターだった。英軍の目を引き付け、倫敦へ攻め入る本隊から目を逸らさせるという重要な任務。最後の大
隊の中で、その役を任せられるのは、リップヴァーン以外にいなかった。彼女が落命していれば、英国侵攻の計画も、再検討せざるを得な
かっただろう。

318 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/09/20(木) 16:15:00 ID:lPGaZnws0
「中尉には、最後の大隊全員が期待しているんだから。このところみんな、怖い顔ばっかりしてる。もう我慢しきれないみたい。はやく
トミィを八つ裂きにしてやりたい、口から出るのはそればっかり。まあ、しょうがないか。半世紀もまったんですからね。そーとー鬱憤が
たまってるはず。それを晴らすのは、中尉以外にいませんよ」
 だから、とリップヴァーンの手を取る。
「はやくよくなってくださいね、中尉。みんなみんな、あなたの帰りを待っているんだ」

「その通りだ、准尉。私も中尉の帰還をとてもとても心待ちにしている」

「しょ、少佐殿!」

 シュレディンガーの背後から、小さな影が現れた。ひどい肥満体だった。頬のたるみ、顎のたるみ。腹部はだらしない稜線を描いている。
そのうえ背丈が低い小男だった。にやにやと笑う顔など、不快感さえこみ上げて来る。醜男といってよかった。
 しかし不思議な活力に満ちている男だった。決して目を逸らすことのできない魅力が、全身から発せられていた。
 彼は第三帝国の救世主だった。頭を潰され、烏合の衆と成り下がった武装親衛隊が今日まで存続していられるのは、すべて彼の手腕によ
る。オデッサ機関、ブラザーフッドに働きかけ、連合軍に狩り立てられる同胞を助け、彼らを纏め上げ、この南米に一大拠点を築きあげたの
はすべて彼一人の偉業だ。そのカリスマから、総統代行と呼ばれることも少なくない。
 リップヴァーンもまた、そのカリスマの虜だった。疲労が嘘のように消え失せている。少佐の瞳が彼女を射抜いているからだ。彼の瞳に
魅入られるだけで、戦意が高揚してくる。
「中尉、君が欲しがっているものをあげよう。君の価値を最も輝かせるものだ。そう、戦争、戦争だ。屍を積み上げ、業火で街角を焼き尽く
し、逃げ惑うトミィを串刺しにするんだ。そして思い知らせてやろう。この半世紀は、ただの小休止に過ぎなかったのだと。連中はとりわけ
自分達に都合の悪いことは忘れやすい。だから我々が教育してやらねばならない。生ける者も死せる者も飲み込む魔女の釜の中に、自分達は
引きずり戻されるのだと。世界がまた狂乱に沸く時代がやってくるぞ。君が、その口火を切るのだ。機は熟した。
――英国に飛びたまえ、中尉。そこが君の、新たな戦場だ」

 頭痛は、いつの間にか消えていた。徐々に、体に活力が戻ってきている。
 震えはもうない。また自分は戦える。死を殺すことができるのだ。

「Ja――Javohl(はい). 魔弾の射手<潟bプヴァーン・ウィンクル、英国へ進撃を開始します」

 リップヴァーンは――ナイフで切り裂いたような、頬の両端にまで広がる禍々しい笑みを浮かべながら、いった。

319 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/09/20(木) 16:16:37 ID:lPGaZnws0
 濃密な闇が敷き詰められている空……その中で一際強く輝く、光。
 夜天から地上を睥睨するその光の正体は、心の姿形を真似た月だった。
存在しないはずの夜でそれは、白く巨大な城を照らしあげる。奇妙にねじくれたその城は、城壁の一部が時折消滅しては、また現われると
いう現象を繰り返し、この存在しない世界の中心にそびえ立っていた。
 その不可思議な現象は、城主たるノーバディのように、存在の希薄さを示しているのかもしれなかった。だがその城は確かに存在し、そこ
に静かにたたずんでいるのである。

 白き城の一角、その月を最もよく眺める場所に、彼はいた。シグバールを救出し、ここまで運び込んだ者――サイクス。彼もまたシグバー
ルと同じく、上級ノーバディだった。彼は機関でも重要な位置におり、リーダーであるゼムナスを補佐し、機関の活動を円滑にする役割を担
っていた。彼は機関の実質的なナンバー2だった。
 今回のこともシグバールの欠員をよしとしなかったゼムナスに従い、彼の意向に添っただけ……サイクスにとってはそれ以上でもそれ以下
でもない。

「…………」

 今のサイクスの顔に、感情は一切窺えない。感情を模倣する十三機関の中において、彼はそれをしなかった。過去を顧みず、ただ今の自分
という存在を示している。
 すなわち、心を失ってしまった人間の末路を周囲に知らしめていた。彼は偽りの表情を作るのではなく、冷徹な光をたたえ、唇は巌のよう
に固く閉ざし、あらゆるものを拒絶していた――それが心がないということだ。サイクスは己の空虚さを隠そうとはしなかった。
 そのサイクスでも、こうして輝く月を見るとき、全身があわ立つのを覚える。哀れなノーバディを照らす月。同時にそれは、ノーバディす
べての希望の結晶だった。あの月を見るたび、かつて諦めたはずの、そして自分達が掴み取るべき未来が目に浮かぶ。
 ――再び、心を取り戻すことができる。

「お、やっぱここにいたか」
「……シグバールか」

 声のした方へ視線をやると、黒いコートに身を包んだ男が立っていた。
 ひらひらと手を振りながらサイクスに近づいてくる。失ったはずの右腕は、まるで冗談のように、そこにあった。
「無事再生は完了したようだな」
「おうよ。ルクソードさまさま、ってハナシだ」

320 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/09/20(木) 16:17:59 ID:lPGaZnws0
 機関に所属する十三人の上級ノーバディは、それぞれ固有の能力を持つ。火や水といった自然的なものから、空間、さらには時さえも支配
することができた。その稀少である時を操る能力が、シグバールの腕を再生した。トランプを弄ぶ伊達男――ルクソードは、シグバールの時
を、まだ右腕が存在した時にまで戻した。――これがマジックの種である。
 かくして傷の癒えたシグバール。本来なら任務に出ているはずだが、おそらくザルディンあたりに押し付けてきたのだろう。サボタージュ
――シグバールの悪癖。困ったものだとサイクスは思った。
 シグバールはサイクスの隣に立った。この男には珍しく、無粋なお喋りをする気配がない。ただ月を見上げていた。意外とセンチメンタル
な面があるのかもしれない、とサイクスは認識を改めた。
 しばし沈黙が続く。
「……少し、いいか」
 沈黙を破ったのは、サイクスだった。
 珍しい、あの口無しがお喋りとは。からかってやろうとしたが、やめた。奴から話しをふられるのも、一年に一度あるかないかだ。その貴
重な機会を握りつぶすのも気がひけた。だからシグバールは首肯して続きを促した。
 と同時に、さっと暗雲が月にかかった。近くに外灯はなかった。二人の周囲で闇が踊った。
「時々、思うことがある」
 月が翳ったいま、サイクスの横顔は窺えない。闇が彼の顔を覆い隠している。
「心を手に入れてまず、俺は、何をするのだろうかと」
 機関の中で誰よりも心を渇望しているのが、サイクスだ。その焦燥は己のみならず、あらゆるものを飲み込み焼き尽くさんほどだ。だが、
その先は? キングダムハーツが完成間近となり、心が取り戻すことが実感できるようになって初めて、サイクスはそう考えるようになっ
た。
「さあなあ、俺はお前じゃないからわかんねぇけどな」
「そう、俺以外、誰にも俺の心の内は分かるまい。だから、以前、心を持っていた時の記憶をもとに、考えてみた」
 サイクスの声音は、どこまでも虚ろなものだった。

「心を手に入れたとき、俺はお前たちを怨むのだろうか。人の心を研究し始め、ハートレスやノーバディを生み出したお前たちを。俺の心を
奪ったお前たちを。殺してやる、とさえ思うのかもしれない。……そんなことばかり、最近考える」

 過去は常に深淵より覗いている。罪は消えはしない。どこまでも付き纏い、いつか自分を破滅させる。シグバールは無言だった。彼の意識
は遥か昔、まだ人間だった頃に飛んでいた。心という、いまで手付かずの領域。その神秘の聖域を、自分達が解明する。若き研究者達は、そ
れに意欲を燃やしていた。その行為が破滅に繋がることを知りもせずに――
 これは、罰なのだ。心というものを軽んじて、他人の運命を弄んでしまった自分達への。

321 :作者の都合により名無しです:2007/09/20(木) 16:28:47 ID:JMLaPFBpO
 だから彼の怒りや悲しみは、自分達が背負わなければならない。ただその前に、せめてもの償いをしよう。キングダムハーツ。心無き者た
ちに、心を与える。それが贖罪になるかどうかは、シグバールにはわからなかった。

「……好きにしろよ」
「何?」
「心が戻ったときに、どうしたいかなんて、それぞれ自由にすればいいじゃねえか。心が決めたことは、誰にも止められないんだしな。ま、
お前が俺達を怨むってんなら、その時はその時だ。殺したきゃ殺せ。ま、おとなしくやられる気はないけどな。
それよりもまずは、アレだアレ」
 シグバールの親指が、頭上の月を指し示していた。
「キングダムハーツを無事完成させてから、考えればいいさ。取らぬナントカの皮算用にならないように、ってハナシだ」
「……そうだな」
 
 そして一言二言交わした後、二人は別れた。サイクスはゼムナスに計画の進行状況を伝えに、シグバールは任務へと戻った。
 月は変わらずそこで輝いていた。おそらくこれからも輝き続けるのだろう。
 罪科の炎が彼らの身を焼く、そのときまで。 

                                
Der Freischuts end



322 :作者の都合により名無しです:2007/09/20(木) 16:32:29 ID:0dyuz0ap0
おおー、お久しぶり、と思って読んでたら最終回か・・。
でもこの作品らしい終わり方かな。
どこか物悲しい余韻を残すような。
またなんか書いてくれると嬉しいな。

323 :ハシ ◆jOSYDLFQQE :2007/09/20(木) 16:32:51 ID:JMLaPFBpO
どうにも納得がいかなくて、書いては消し書いては消しを繰り返していたエピローグ。
一時は本編の半分ぐらいの分量にまで膨れ上がっていて――
崩壊するニューヨークを舞台に、キース・シルバーと最後の大隊の精鋭達(他作品から引っ張ってきたナチ軍人。吸血鬼に転化し
たクルト・シュタイナとかボー・ブランシェとかいた)の戦いが繰り広げられていました。でも主役たちを食いまくってるし、何よ
りこれエピローグじゃねぇ、という結論に至ったので没に。
そして最終的には、最後の投稿から四ヶ月――
……もうはじめまして的な気持ちです。すみませんでした。
ともあれ、魔弾、やっと終わりました。
次作は、その前にいくつか短編を書いてから、始めようと思います。
魔弾は血みどろーだったんで、短編はほのぼのを目指したいかな、と。
ではまた。


324 :作者の都合により名無しです:2007/09/20(木) 16:37:42 ID:0dyuz0ap0
おおまた書いてくれるんすか
ハシシさんの文体は好きですので嬉しい

325 :作者の都合により名無しです:2007/09/20(木) 18:07:55 ID:thlwoOgV0
>ハシさん
お疲れ様でした。そして完結おめでとう。
好きな作品だけに終わるのは残念だ。
原作まったく知らなかったけど
クールな雰囲気とその後ろの物悲しさが好きだった。

短編ではこの系統のものと、明るい作風のもの
両方見たいね。

326 :ふら〜り:2007/09/20(木) 19:33:41 ID:0BbF+WI50
>>スターダストさん(お帰りなさいませ。創造者魂がハデに燃えておられるご様子ですな)
こうしてみると、出番や活躍や燃え・萌え度においてはトップでないとはいえ、やはり秋水が
主役だな、と。戦闘力はもちろん、対女性・対敵の精神面についても「のびしろ」が多い。
いろんな相手と会話し易い人ですし、彼を中心にして他キャラにも変化を及ぼしていけそう。

>>ハシさん(お久しぶり&お疲れさま&次作待ってますぜぃ!)
あれほどの血みどろ超人バトルを繰り広げておきながら、今はむしろ弱々しく見える。恐怖も
痛みも絶望も希望も、常人以上に感じる超人……いつの間にか私の中で、リップの方が
主役になってたかも。豪快戦闘と繊細心情の描写、お見事でした。ほのぼの路線も期待!

327 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/20(木) 21:09:05 ID:hx73Y9Fg0
part.4
act.3
結論から言えば、風間虎太郎ことオリオンの同僚、月闘士リュカオンは星華を守り通している。
しかし、彼の主の秘密裏に行えという命令は全く果たされては居ない。
彼自身の弁を借りるのであれば、それをそうと認識していないので、ばれてはいないと成るのだろうが。

「それじゃ、私これであがります」

星華さん、お疲れ、といった挨拶を受けて彼女は職場を後にする。
児童養護施設・星の子学園。
東京都銀成市にあるカトリック系の児童養護施設であり、星華星矢姉弟もここの出である。
この姉弟の幼馴染であり、今年十七になる美穂は、だいぶ早い時期から手伝いなどしていたが、
このたび本格的に児童介護福祉について学ぶ為に進学を決意し、目下勉強中である。
貴鬼にオシャレが足りないなどといわれちゃいるが、勉強に年下の子供たちの世話と、
今の美穂にオシャレする間などないのだ。
そんな美穂の手伝いと、育ててくれた恩返しにとばかりに、星華はここ星の子学園で働いている。
四年前の世界的大洪水によって、親をなくした子は多いのだ。

「さぁ、帰るわよ?」

二・三年前から施設に住み着いている一頭の大型犬に声をかけて、星華は家路に着く。
星華が面倒をみているその犬は、犬というより狼に近い野性味溢れる外見に反して、意外なほどおとなしい。
子供たちが居る関係上、あまりこういった大型犬の存在は好ましくないのだが、
穏やかな気質なのか、子供たちがじゃれて来てもうなり声一つあげないので、
学園の大人たちは子供たちの情操教育の一環と、大目に見ている節がある。
巨大な体躯のその犬は、言うまでも無くリュカオンの変身体だ。

328 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/20(木) 21:13:36 ID:hx73Y9Fg0
正規の月闘士は、その出自をアルテミスの猟犬に求めることが出来る。
60頭の猟犬になぞらえて最大定数60人の戦士だが、数々の戦乱を経て、
今やリュカオンとオリオンの只二人だけである。
アテナの聖闘士やアポロンの天闘士、ポセイドンの海闘士やハーデスの冥闘士と異なり、
人間に対しての召集権限を持たないアルテミスは、自陣営の増強が出来ないのだ。
厳密に言うなら、地上管理権限を有するアテナ以外の神が自陣営の戦力増強・再編成を行うことは出来ないが、
ポセイドンもハーデスもオリンポス三貴神としての地上干渉権によってそれを可能としていた。
因みに複雑な履歴をもち、月闘士筆頭であるオリオンは、正確にはその60人には含まれないのだが、
もう二人しかいないのでどうでも良い。

「星矢…は、そういえば食べてくるって言ってたわよね…。
 ちょっと贅沢しちゃおっかな?」

星華の贅沢といっても、せいぜいがコンビニでのお菓子くらいなのだから、彼女ら姉弟は倹約家といえるだろう。
生涯の大半を国外、それも治安の余り宜しくないギリシアですごしたので、
自然とそういう風になったという面もあるのだが。
鼻歌交じりで家の近所のコンビニ、銀成駅前にある、に入る時、彼女は黒髪の少女とすれ違った。
小柄だが、武道かなにかをやっているのか、歩きひとつとっても体がブレていない。
凛とした相貌を横一文字に裂いた傷跡がその印象を強めていた。
星華に武道のたしなみは無いが、普段弟を見慣れているせいか、彼女はそういった点に妙に目ざとくなっている。
だからといってどうという事も無いのだが。
強烈な印象のある傷跡だが、星華にとってはたいしたものではない。
弟の本業はそれこそ、傷ついてナンボの戦士であるし、彼の肉体は「傷は漢の勲章」とばかりに傷が絶えない。
因みに、ふだんは頭髪で隠れているが、星華の右コメカミの上あたりには大きな傷跡が存在する。
言うまでもないが、星矢を探しにギリシアを歩き回った際に崖から落ちて負ったものだ。
姉弟そろって傷が絶えない生涯というのも、何か問題が在るような気がするのだが…。

329 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/20(木) 21:25:45 ID:hx73Y9Fg0
しかし、星華のような人間は全体的にみて少数派なのだろう。
少女とすれ違う人間は、おおっぴらに見ないものの、その傷跡に視線を飛ばす者が多かった。
無粋な連中だ、と星華は思った。
ちなみに、リュカオンは行儀良コンビニ出入り口脇にある公衆電話の下に座り込んでいた。
まるで忠犬である。

店内はこの時間にしてはまばら、
というよりは星華ともう一人、携帯電話で会話している金髪の少年だけだった。

その金髪の少年は、言うまでもないが、銀成市に潜伏中のエドワード・エルリックである。
戦士・千歳とやりあった後、ほうほうの態で銀成駅前のビジネスホテルに逃げ込んだのだ。
肉体的なダメージはたいした物ではなかったのだが、
エドワードにダメージを与えたのは女戦士から奪い取る形になった蝶野次郎の日記であった。
兄への愛憎入り混じった日記の内容は、
敗走という事実に暗鬱になっていたエドワードを更に消沈にさせた。
元の世界でドクターマルコーの研究内容やら、
狂愛の果てに国をも滅ぼしたダンテなどに比べたらマシともいえるが、
それでも兄として「弟」の愛憎というのは骨身にしみるものがある。
一時期、弟・アルフォンスは自分の事を恨んでいるのではないか?と思っていただけに、
こうした強烈な怨嗟は堪えた。
傷の治りは速いほうであるのに、
今回の打ち身だけは妙に後をひいたのはそのせいだったのかも知れない。
それでも手がかりを求めて読み進める内に、気になるキーワードを拾った。
銀成学園高校、蝶野家所有の洋館、高祖父さま、この三つ。
銀成学園高校自体に何もおかしいことは無いのだが、創設者の名が気になった。
創設者の名は蝶野爆爵。

330 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/20(木) 21:29:03 ID:hx73Y9Fg0
蝶野家の財を築き上げた祖とも言うべき敏腕の実業家なのだから、
教育業界に興味を示し、将来的な人材育成を考えても何の不思議も無い。
だが、銀成学園竣工の主要出資者である蝶野家が、同時期に別宅を新造する都合が存在しないのだ。
次に不可解だったのが、学園と洋館の位置。
近すぎるのだ。
何かしらの理由があって学園の近くに置いたとしか思えない。
元の世界でも賢者の石を作る為に似たようなことをやった連中が頭になければ、
見過ごしていただろう違和感。
それは三つ目のキーワードで更に濃くなった。
次郎の父・刺爵が度々その洋館へと足を運んでいた事だ。
僅かな供回りを連れ、一族内の重要ごとや、事業の諸問題に悩んでいる際には洋館へと足を運んでいた。
彼が理由を問いただせば、高祖父さまにお伺いを立てている、
お前が正式に蝶野家を継ぐ段になったら詳しく説明をする。
蝶野刺爵はそう説明していた。
その記述を読んだ瞬間、なにか途轍もなく不吉な予感に、失った右腕と左足が疼いた。
元の世界でイヤというほど味わった感覚である。

そこまで思い至った頃、エドワードは空腹を覚えた。
時計を見れば、水分以外丸一日何も口に入れていないことに気が付き、
駅前になにか口に入れるものを探しに出た。

331 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/09/20(木) 21:31:53 ID:hx73Y9Fg0
コンビニエンスストアだけでなく、町並みをみると、
錬金術など無くても人は発展していけるのだろうと思う。
だが、この世界の人間も無いものをねだるのだろう、
なぜ、あるものだけで満足できないのか、
そうも考えてしまう。
それが人間だとは考えたくない。
そんな事を考えていると、危うく前を歩く女性にぶつかりそうになった。
黒髪のショートカット、年齢的には自分とほぼ同年代、少女といっていい女性だ。
その相貌を真一文字に引き裂く傷痕が、エドワードには何故か数日前に闘った女戦士を思い出させたが、
それを表情に出すことはせずに、ぶつかりそうになった非礼を詫びた。
彼女の行き先も同じコンビニだったらしく、
なにか気まずい思いを抱きながらコンビニに入るエドワードだったが、
そこでいきなり携帯電話が震えた。
相手は、ソレント。ジュリアン・ソロの懐刀である。
すわお小言かと思って出てみると、
ジュリアン・ソロが来日するとのことだった。
日時は来月だったが、つまりはそれまでに一定の成果を出しておけとのことだ。
彼は明日にでも洋館を訪ねる覚悟を決めると、腹が減っては戦は出来ぬとばかりに食品棚のほうへ向かった。


332 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/20(木) 21:38:10 ID:hx73Y9Fg0
祝!蟹さん登場!
マニゴルト=死刑執行人とはまた味な名前で期待大であります。
はたして如何なる戦いを見せてくれるのか?活躍=死亡フラグの先代黄金勢ですが
死に様含めて魅せてくれるから気が抜けませぬ
ニアミスする三陣営の人間。
勤め人してる星華姉さん、携帯使うエド、コンビニで買い物する斗貴子さん
バトル物の作品で日常描写が描かれる事は数少ないですし、
特に車田作品はそういった事をスポイルしたからこその魅力があるのですが、
やはり人間味が薄れてしまうことは確か
というわけでこうして描いているわけですが、なんか星華も星矢も妙に馴染んでいて不思議な気分でございます

>>260さん
ぶっちゃけ、聖域裏事情やらオリンポス12神あたりはほぼ銀杏丸オリジナル設定のオンパレードでございます…
そこらへん原作でもアニメでもなーんも描かれてない(アニメだとサガ命令でタンカー爆破とかやってますがw)ので
銀杏丸が妄想を膨らませて色々やってます
アポロンとアルテミスは天界編が出展といえば言えるのですが殆ど銀杏丸オリジナルになっており、
そっちのファンの方には申し訳ないことになっております…

>>261さん
風間虎太郎の名前の元ネタは「風魔の小次郎」だったりします。(実写ドラマ化して驚き)
風魔→風間 小次郎&虎次郎→虎太郎
虎は中座してる続編の主人公からです

>>262さん
なんとかペース掴んでやっております
予定ではもうだいぶ進んでいるはずだったのに、何故だろう…

333 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/20(木) 21:52:16 ID:hx73Y9Fg0
>さいさん
黒幕のサムナーですら捨て駒だったという展開はゾクゾクしてきます、老獪にして邪悪!
拙作でも錬金戦団がきな臭さ大爆発ですが、こういう社会悪的な視点が足りないなと思うばかり
無能を装う老獪さをもつ奴っていうのは、見抜けないとホント、苦労どころの話じゃないくらいです
混沌とした事態をさらに混沌の向こう側へとやるべく神父登場で、
果たして火渡は、千歳は、ブラボーはどう決着つけるのでしょうか?wktkしながらまっております

>スターダストさん
赤兎馬バイクで紅武者のダビットソンを思い出す銀杏丸でございます
アニメで逆胴→パキーンは大爆笑こいたのですが、日本刀の特性を持つのならば折れやすいのは当たり前かなと
後になって納得した次第であります
刀と刀の鍔迫り合いって迫力ありますが、下手こくとポッキンと折れてエライ事態になったそうで
デストロイカケガワシティの皆様が最小の斬撃で殺すってのは実に理にかなっているのだなと思うばかりです
駿河城御前試合でもたしかそんなネタがあったような気が…
軍医の武装錬金に関しては、19世紀末〜20世紀初頭なのにクローン再生とかどうなってんだろう?
という疑問に対する自分なりの答えでして、被っていたとしたら申し訳ございません
闘争本能に由来する武装錬金の中で兵站の武装錬金というのはレアなんでしょうねぇ…
よぉ〜うぅやく、斗貴子さん登場、でもニアミス…。果たして何時になったらちゃんと斗貴子さん書けるんだ!俺!

>ふら〜りさん
完結おめでとうございます
クウガ最終回のあのラストは実に爽やかにさせてくれて、
新しい仮面ライダーの「らしさ」を感じたのを覚えております
しかし、まさかあの時のクウガの中の人が黒沢さんだったとは!
鼻水たらして、汗かいて、ずたぼろになっても僅かな勇気をかき集めて立ち上がるから
人の心を奮起させる黒沢さんのお話をまた読んでみたいです
パトレイバーというと、僕は劇パト2の印象がでかすぎるので
ふら〜りさんの描く特車二課は新鮮です

では、またお会いしましょう!

334 :作者の都合により名無しです:2007/09/20(木) 22:47:04 ID:fHsBiJMX0
>ハシさん
お疲れ様でした。正直、投げ出しかな?とも思いましたけど
見事に終わらせましたね。納得されるエンディングが書けるまで
何度か書き直されていたとは、職人魂に感服です。

シグバールたちの日常に帰る姿はどこか寂しげで、
作中で激闘を繰り返していたとは思えませんね。
また、新作お待ちしております!!


>銀杏丸さん
星矢たちの日常がなんとなく生々しくて微笑んでしまいますね。
まあ、爆爵たちも出てきましたからなかなか平和には
なりそうもないですがw




335 :作者の都合により名無しです:2007/09/21(金) 14:40:57 ID:FSlKRc4+0
戦闘神話第三回でパート4でアクト3なんだなw
まあともあれ銀杏丸さん乙。

336 :作者の都合により名無しです:2007/09/21(金) 22:03:39 ID:4W0tmmKg0
戦闘神話、風呂敷が大きくなりすぎて
そろそろキャラがどういうベクトルで動いているのか
わからなくなってきたw

まあ今回は日常シーンメインだからほのぼのしてていいけどねw


337 :作者の都合により名無しです:2007/09/22(土) 00:27:01 ID:zcR/Qz130
たたみきれないものは
たたまない方がかえっていいのになと思う

338 :作者の都合により名無しです:2007/09/22(土) 08:24:54 ID:eVRmdrEa0
おくばせながらハシさんお疲れ様でした。
原作を知らなくても楽しめる、凝った演出やキャラのかっこよさが好きでした。

次回作をお待ちしております。

339 :作者の都合により名無しです:2007/09/23(日) 13:45:13 ID:01AGn/wq0
今夜あたりスターダストさんが来るか

340 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/09/23(日) 21:02:07 ID:/Vru4ObV0
>>339
正解。少々お待ちを。

341 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:29:56 ID:/Vru4ObV0
第021話 「環境の変化(中編)」

「俺のシルバースキンは精神状態によって硬度が大きく左右される。戦闘時には例えミサイル
が直撃しても爆ぜない……というのは既に何度も聞かせたな」
シルバースキンを解除し、脇腹の辺りを確認した防人はちょっと顔をしかめた。
つなぎが破られ、一文字の朱線から血のしずくがこぽこぽとこぼれている。
「ええ」
秋水はうなずくと、「それに倣ってみました」と言葉少なにつぶやいた。
表情は暗い。防人の傷を深刻そうに眺め、持っていた核鉄を差し出した。

シルバースキンが砕けた瞬間、あわや刃が肉に食い込む寸前で秋水は武装錬金を解除し
たのだ。

「気にするな。そうやって咄嗟に止められただけでも偉い」
秋水を手で制して笑って見せる防人だが、もっとも内心はけして穏やかではない。
心中の彼は髪や瞳や不精ひげや肌の色素すべて真っ白にして、ぜぇぜぇ息ついている。
(危なかった! 確か戦士・秋水の逆胴は真剣ならば二本差しごと胴体真っ二つにできる威
力──! 生身で食らってたら俺は死んでいた……!)
ンな物を生身で受けかけてはさすがの防人も死の危機感に冷汗三斗だ。
「と、とにかく、ブラボーだ。闘争心の昂りに応じて刀の硬度を高めようとする着想、大成功だ!」
秋水の肩をぽんぽん叩きながら、惜しみない心からの賛辞を防人は送る。
本当は頭をわしゃわしゃ撫でてやりたいほど嬉しいが、どうも相手が秋水のような美丈夫だと
悪いような気がするので、親しみを声に精一杯込めるのである。
「しかしさっきの攻撃、君にしては大胆だったが、必ず敗れるという確証はあったのか?」
「いいえ」
秋水はかぶりをふった。ふるだけでも声はいかにも格好良い。
「通じなければ撃たれるだけです。そして俺はすでに何度も撃たれています」
「フム。確かにそうだが…… にしても少し無謀すぎないか」
「無謀なぐらいが俺にはいいんです」
「……少なくても”彼”なら、傷だらけになるコトを厭わない、か?」
「ええ」
顔の曇った部下に、防人も少しつられる思いだ。

342 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:31:47 ID:/Vru4ObV0
(そうだな。お前が戦士になった理由も闘っている理由も、”彼”の存在が大きいからな──…)
この元・信奉者の人生に重大な影響を及ぼした男はいまだ月に居て、はたして帰ってくるか
どうかも分からない。
直面している欠如は、余人にはとうてい解決できそうにない巨大な物だ。
防人は早々に、斗貴子を始めとする関係者を見守るほかないと決めてはいるが、できるのは
結局それだけで、それだけだと決めてしまえられる理性の成熟が恨めしい。
若い頃ならば自分の努力によって総てを救えると信じていた。
だが過酷な現実の前に砕かれ、それ以降でも任務の中で忸怩たる思いをしたコトなどいくら
でもある。部下だった剣持とて采配の至らなさゆえにムーンフェイスに斃されてもいる。
だからこそ、秋水のような若い戦士には親身になりたい防人である。
「戦士・秋水」
「はい」
名前を呼んだ青年は、いかにも生真面目な面持ちである。
L・X・Eという、序列の順守を怠ればすぐに命を失う組織で過ごしていたせいか、目上の人間
との会話には必要以上に力が入るのだろう。
「あー、なんだ」
声を所在無げにぶらしながら、意識的におどけさせる。
「さっきみたいなコトはだな、なるべく峰打ちでやってくれないか? もし途中で止まらないと
俺は死んでしまう。いくら鍛え抜いていても刃物だけはさすがに厳しい」
冗談めかして笑ってみる。たいていの相手は、これでフっと緊張状態を解いてくれる。
例えば斗貴子なら高確率で白けたり呆れたりする。が、そんな人間的な感情の緩みが生じて
くれれば、少しは会話もしやすくなる。
防人が部下とのコミュニケーションから地道に学んだ一種の呼吸だ。(生来の天分も大きいが)
「尽力はします。けれど」
「けれど?」
顔は相変わらず硬いが、返答してくれるだけでもありがたい。
「ソードサムライXは両刃です」
「ん。そうか。じゃあだな、もう片方を斬れないようにするコトは可能か? 俗にいう『逆刃刀』と
いう奴だ。確か幕末か明治に『不殺』を掲げた剣豪が使っていたらしいが」
「さすがにそこまでは。大体、峰と刃を逆にしても殺傷能力にあまり変わりはありません」

343 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:33:13 ID:/Vru4ObV0
日本刀は鉄でできているから、切れ味がなくてもちょっとした鈍器ぐらいの威力がある。
だから頭や腹など撃てば、脳や内臓に致命的なダメージがいくのではないか、というのが秋
水の弁である。
「無理、か。まぁ、仕方ない。武装錬金にもできるコトとできないコトがある」
目をすうっと細くして、防人は次にああいう斬撃がきたときどう避けるか考えるコトにした。
そういうのも教導の醍醐味だし、防人自身の成長にも繋がる。
「しかしなぁ、英語版のタイトルが名前なのだからできても不思議は……」
皺の寄った顎にピストル状の手を当て細目で上を見ながら、防人はぼそりと呟いた。
「?」
「ん? 俺は何かいったか? あぁ、そうだ。君に二つほどいいコトを教えてあげよう」
いうが早いか防人はシルバースキンを再度発動した。
ただし今度は身にまとうのではなく、自分の横に立たせる形であり、色も黒い。
「まずはシルバースキンリバース。ムーンフェイスを倒した手段だ。参考までに見ておきなさい」
漆黒の防護服の各部で何やら雲霞のように渦巻いたと見るや、それらはびゅーっと帯状に
伸びて部屋の中央へと飛んで行った。
もし秋水に編み物の素養があれば、毛糸を引き抜かれるセーターを想起しただろう。
帯の長さに反比例して、防護服はみるみると形が崩れていく。
要するに構成素材たるヘキサゴンパネルを解体して、帯の形にしているらしい。
秋水が内心下を捲いたのは、帯どもが実に滑らかに宙を走っているところだ。
てっきり防御一辺倒の武装錬金だとばかり思っていたから、こういう奇妙な芸当を見せられ
ると、目が引きつけられてしまう。
やがて帯によって、幅、奥行き、高さ、いずれの観点からも「部屋の中心」たる所へ大きな円
が描かれた。
次はその上下に一定間隔をおいて少し小さな円。
さらにその側面を接合するように帯が弧を描いて、縦方向にもいくつかの円を描いた。
これはむかし公園によくあった円状のジャングルジムに近い。
「さて、この中に何か入れてみると効果が分かるんだが」
「ハイ! ちょうど空のペットボトルがあったよブラボー!」
「ム! いいぞ、ブラボーなタイミングだ」

344 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:34:15 ID:/Vru4ObV0
快活な声と一緒に飛んできたペットボトルをキャッチしたブラボー、それをジャングルジムの
中に放り込んだ。
秋水はその光景を真剣に見ていたが、しかし何かが引っかかる。
「これの名前は、ストレイトネットという」
考えかけたが防人の説明を聞く方が大事なので、ペットボトルに目を向ける。
実に奇異である。
防人が遠巻きに手をかざすと、ヘキサゴンパネルで構成された球体がペットボトルに向かっ
て狭まっていき、やがては人の拳よりも小さくなった。
当然、防人が武装錬金を解除した後に落ちたのは、超(蝶としたいがなんか文脈に合わな
いので超とする)圧縮されたペットボトル。
世に疎い秋水でも「深海に持っていかれたカップヌードルの容器」ぐらいは教科書経由で知っ
ている。いま見ているのはまさにそれだ。
青い半透明のプラスチックは溶けて再び固まったように不規則な皺を浮かべて、カチンコチン
に固まっている。フタの部分などはとっくに割り砕けているから凄まじい。
「とまぁ、こんな要領で分身したムーンフェイスたちを一ヶ所に集めてだな、後はこう」
粉砕・ブラボクラッシュ! と子供のような手つきで正拳を繰り出した。
「一気に斃したという訳だ。奴は分身が一体でも残れば復活するからな」
「なるほど。道理で」
納得した秋水に向って、防人は「さて」とおどけた様子で問いかけた。
「ちなみにこの技、実はちょっとしたモチーフがある。君にはそれを答えて欲しい。制限時間は
ジャスト三十秒!」
快活な防人に反して、秋水の顔は驚きに曇った。
答えづらい問いかけである。
予想していない事柄について問われても、即座に展開できるだけの柔軟性を持っていないし
また、世界に対する知識も乏しい。
剣ならばいい。繰り返し繰り返し修練しているから、ある程度までは反応できる。
しかし会話はまったく違う。出自ゆえにどうも桜花以外の人間との対等な会話というのは不
慣れなむきがある。
なのに生真面目な性分ゆえに、百パーセント正しい回答を出さねばならないという義務感に
駆られて何もできなくなっている。

345 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:35:21 ID:/Vru4ObV0
「さ、どうした早く答えるんだ戦士・秋水。決断力も戦士には重要な要素だぞ」
防人は秋水の機微がよく分かるらしく、ニヤっと笑いながら回答を促した。
「……」
物事をよく知ってさえいれば、今見た現象と似た物を選んで口に上らせるコトができるのだ
が、どうしても見つからない。
「そんな深刻に考えなくても大丈夫だよ秋水先輩。ちょっとしたクイズって思えば」
「そうは言うが、咄嗟には……」
美貌は暗く、煮え切らない。防人がやれやれとため息をついたのもむべなるかな。
「甘いぞ戦士・秋水! 戦いは常に予想外の事が起こるものだ! それに咄嗟に反応できる
かどうか、戦士の真価はそこにこそある!! 何もせず、ただ状況に流されているだけでは
敵のペースにはまるだけだ! 完璧でなくてもいい、とにかくまずは動くコトが重要だぞ!」
発破に秋水の顔がゆらめいた。いい兆候かも知れないと防人は思い、さらにもうひと押し。
「現に先ほど、ソードサムライXを咄嗟に解除できただろう。あの要領を思い出せ! こういう
のは才能じゃないんだぞ。反射的な行動の繰り返しで十分培える」
「そうだよ。こういう時は肩の力を抜いてリラックスだよ。そしたらいい考えが浮かぶかも!
(……そうだな)
交互に向かってくる声の中で悩みながら、目を閉じ、考える。
(正答が出せずともいい。まずは俺に分かる範囲で答えていけばいい)
すると先ほどまでの焦りが少しずつ余裕へと融和していくから不思議なものだ。
きっとそういう心境になれるのは、外からの声のおかげなのだろう。
外からの声。遠い昔、桜花と二人してアパートの一室に閉じ込められた時は、いくら扉を叩
いても返ってこなかったものだ。
(それに今こうして何かを与えられているから、不思議な話だ。そして)
思考の手がかりは、先ほどの技名だ。
(ストレイトネット……網。網状の物といえば──…」
「蜘蛛の巣、でしょうか。計上こそ少し異なっていますが、敵を拘束するにはこれしかないと
俺は思いました」
防人は惜しそうな顔でボサボサの黒髪をかきむしった。
「惜しい! 網状という部分は合っている。正解は地引き網だ。むかし、とある任務で住民たち
と一緒に魚を獲る機会があってな、その時にこの技を思いついた」

346 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:37:02 ID:04EG4Ctn0
なるほど、と正解を与えられた秋水の顔に光が射したが、すぐ不思議そうな風体になった。
どうも防人のいいたいコトが分からない。
という気配がすぐ伝わったらしく、防人はこう続けた。
「要するに、だ秋水。武装錬金にはこういう応用の仕方があるというコトだ。そう難しく考える
必要はない。さっき闘争心を高ぶらせて武装錬金の硬度を上げたように、ちょっとした着想
で君の武装錬金も闘い方を変えるコトができる……それを伝えたかった」
ニっと唇の端を吊り上げるガキ大将みたいないつもの笑みで、防人は親指を立てた。
(確かに、これからはそういう戦い方も必要になってくる)
斗貴子や剛太が破れて、しばらく戦闘不能である以上、秋水が戦う機会が増加するのは目
に見えている。
ちなみに現時点では、LXEの逆向・佐藤といった顔なじみや、総角率いる六体のホムンクル
スと敵対する可能性が非常に高い。
やや不安ではあるが、アドバイスがあるというのは心強い。
だから防人という戦士長が、ひどくありがたい存在のように思えてきた。
秋水には剣技での師匠がいるが、武装錬金にとっての師匠は防人になるかも知れない。
「そして以前俺は、君のいう”彼”に一つの試験を施した。身体能力のみでシルバースキンを
破れば戦士合格……そういう条件で、だ」
遠くから瞳を覗き込んでくる防人に、秋水は「え?」という表情をした。
「悟ったようだな。そう、君の身体能力はすでに”彼”を超えている。あの時は試験用だった
が、今回は戦闘用。硬度はまったく違う。これが二つ目」
実際問題、当時の”彼”と秋水では、まだ秋水の方が諸々の要素からして上だった。
それがとある奇策で敗れただけであって、武技だけで競えば秋水の勝ちは揺らがなかったと
いえるだろう。
そこから修行に行って防人や剣道部の面々とも鍛錬を繰り返している以上、成果がでない
ワケはない。
「……本当ですか?」
「ああ。こういうコトは命に関わるからな。俺は嘘はいわない。君は着実に強くなってきている。
だから自信を持っていいぞ」
まだ少し信じられないという様子の秋水の肩をぽんぽん叩く防人の後ろで、
「うーん。よく分からないけど、良かったね秋水先輩」
まひろも嬉しそうに笑った。

347 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:39:29 ID:04EG4Ctn0
刹那、防人と秋水は凍りつく思いで彼女を見た。
いつの間にいるのか。そういえば先程からの元気良い声は彼女だったのか。
で、二人して軽い硬直状態で首とか関節をぎぎぃっと鳴らしつつ顔を見合わせた。
(なぁ、戦士・秋水。一つ聞きたいんだが、彼女はどうやってきたんだ。そりゃ、彼女もカズキ
や斗貴子が戦士というコトは知っているが、こういう場所に来られると少々マズいぞ)
(むしろ俺が聞きたいぐらいです。特訓中は入口を封鎖しておくんじゃなかったんですか?)
(ああ、したともさ。しなければ戦士・千歳にひどく怒られるからな。実際、俺は生徒から没収
したブラボーな本だって、見つからないよう厳重に隠している! 特集別にきちんと整理整
頓した上でな。そして俺は鍛え抜いたこの眼力で絶対に見つからないであろう場所を見繕
い、隠している! よって絶対に見つかるコトはないといえるだろう!)
ちなみに後年、パピヨンパークという場所での任務時に千歳から「知ってるわ」と冷たくいわ
れるのだが、それはまた、別のお話。
防人と秋水がヒソヒソ話す間にもまひろは周囲を見回して
「あ、でもここなんなんだろう? もしかして秘密基地? 特訓場! それともそれともなにか
こう、私たちのいる世界とはかくぜつされたじげんだんそーのすきま、いわゆるへいさくうか
んとか!? うーん、自分でいっててよくわからないけど、そうだったらいいな」
と目を輝かせながら勝手な感想をすっちゃかめっちゃかな口調で漏らしている。
(いや、戦士長。話が逸れていませんか?)
(おっと俺としたコトが。すまんすまん。とにかくだな、今日だって扉を閉めてから厳重に厳重に
チェックした。だがしかし、彼女はココにいる! 謎だな! よーし!)
むしろこの不測の自体に、防人は燃えているらしい。拳と拳をがっしり衝突させて 
(戦士・秋水。ちょっとお前が聞いてみろ! こいつは戦士長命令だ。逆らうコトはできないぞ!)
とか言い出した。
なんで自分が、という感想も少しはあったが、上司の命令は絶対なのでまひろにくるりと向き
直って所在なげに接近。いったい何をしているのか。まるで女子高生探偵と胡散臭い助手に

348 :永遠の扉:2007/09/23(日) 21:40:45 ID:04EG4Ctn0
事務所を奪われた上に薄給で働かされるハメになったチンピラのようにしょぼくれていると、
(まぁ、アニメではなぜか声が変わったのだが)好奇心いっぱいの人懐っこい瞳が向いてきた。
不思議といろいろな疲れが抜ける感じがするが、それも困惑。
「えーと。どうして君はここに来たんだ?」
まったく平坦でひねりもないセリフだ。
「先輩レーダー!!」
まったく突飛で理解したがいセリフだ。
「用事があったから秋水先輩を探してたんだよ! でもなかなか見つからなかったから、どこ
かなー、どこかなー、って寄宿舎をうろうろしてたら、ちょうどココの上のね、管理人室の辺りで
みゅう、みゅうみゅうみゅう、みゅーっ! てレーダーに反応したの! むむっ、コレはもしか
して斗貴子さんレーダーの秋水先輩版!? とゆーコトで畳とか叩いてたら、ココに来たん
だよ」
(……話の筋道が立っているのか立っていないのか分からないな)
(戦士・斗貴子や戦士・秋水を素で感知できるとは……戦士・千歳も驚きだな)
「ちなみにね、特訓の手伝いなら私もするよ! これでも昔はアメフト部でマネージャーをね」
「ほう。君がそういうのをやっていたとは初耳だな。確かにそういう声だが」
「ううん。違うよブラボー、やれたらいいなぁーって、思ってたの。でも意気込みだけなら十分ッ!」
秋水にはだんだん、はしと拳を固めて力説するまひろが暴走機関車に見えてきた。
止められる者はいるのだろうか。
「あー、力説のところ悪いが武藤まひろ。ここは立ち入り禁止なんだ」
(いた!)
秋水が驚く中、まひろは青くなって謝り倒したがそこは割愛。
「で、用事というのは?」
「あ、用事というのはね……」
先に断わっておく。
その用事というのは、秋水が今後しばらくまひろやヴィクトリア、千里に沙織といった女性陣
に振り回される「用事」だった。

349 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/09/23(日) 21:42:29 ID:04EG4Ctn0
さぁやるぞと気合いを入れたにも関わらず、なんでか体が動かない。
疲労? というワケで明日はなるべく眠ってみようと勘案中。
だいたい平日仕事で休日に趣味全開なら疲労がたまらない方がおかしい……
あぁ、RPGの宿屋に行きたい。ひと眠りしたら完全回復って現象、うらやましすぎる。
で、この疲労感が重病の予兆でなければいいんですが。はたして。

>>312さん(恐縮です)
いろいろな能力いろいろな性格を持ったキャラがわーっと一気呵成に出てきて死にまくる……
かの山本賢二先生の作品のような要素はあこがれの一つです。ただ、自分はどうもキャラ
クターを掘り下げてしまう癖がありますので、その結果として群像劇になってしまったようですw

>>313さん
描いている自分としても、二転三転のバトルの後にこういうまったりした話を描くのは楽しい
です。まひろのセリフは必要以上にノっていますね。あ、ちなみに秋水の声の人はネウロの
吾代忍でもあります。ドラマCD限定ですが。防人もいずれは熱く戦いますよ!

>>314さん
るろうにでいうと雷十太編初頭……かも。ただし東京編とそれ以降に分けた場合、東京編の
大体6割ほどであります。秋水とまひろはココから転機を迎えていきます。どういう転機かは
まだヒミツ。何故なら(ry そこで彼らはようやく普通の男女らしい会話をするかも。

350 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/09/23(日) 21:43:47 ID:04EG4Ctn0
>>315さん
頑張ります! 今度は静止画じゃなくアニメなので、動きで魅せます!

ふら〜りさん
そうなのですよ。秋水にはまだまだ伸びしろがあります。で、世界との兼ね合いでちょっと
ずつ精神的成長を遂げさせつつ、刀一本でいろいろな武装錬金と渡り合えるようにしてや
りたいと。その中でカズキを刺した贖罪とか、「自分に勝つ」って課題を達成させたくも。

銀杏丸さん
エドにとっちゃ次郎さんの恨み事はキツいでしょうね…… 洋館に行くとなるとやはりLXEの
連中とひと波乱あるワケで、斗貴子さんの活躍はやはりそこでしょうか! 銀杏丸さん版の
斗貴子さんはスゴく熱そうなのでwktkしております。ところで時期的にカズキも?

いやはやそれにしても呂布トールギス、赤兎馬バイクのみならず天玉鎧というオーキスもどき
までつくとは。このコテゆえに何とも血が騒ぎます。孫権ガンダム(GP03)も期待大。ノイエも出ないか。
最近読んだものの本によりますと、刀は寒さでも折れるらしく、強度はあまりよろしくないw
とはいえやはり武器の王道ですので、いろいろカッコいい戦闘を描きたくも。
あ、軍医については本当大丈夫です。本当ですよ。ええ。考えているのは衛生兵……

351 :作者の都合により名無しです:2007/09/24(月) 16:13:46 ID:nPxE/yLL0
スターダスト氏乙
まひろは天然なのかね?
どこか月のようなイメージのある秋水と
太陽のようなまひろはいいコンビかも。
ちょっと唐突で空気読めないところあるけど。

352 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/24(月) 23:14:43 ID:6kZWfrIl0
《EPISODE13:Will you partake of that last offered cup or disappear into the potter's ground》

ほの暗い部屋の中、二台のモニターに向かう老人がいた。
一台は砂嵐のようなノイズ、もう一台は“SOUND ONLY”という赤文字をそれぞれ映し出している。
どちらも何一つ音声らしきものは発していない。
傍らに立っていた秘書らしきスーツ姿の中年女性はリモコンで二台のモニターの電源を切ると、
老人に話しかけた。

「シャムロックは完全に沈黙。サムナー戦士長もこの分では……」

「構わんさ。彼に任せた任務は改良型ホムンクルスの稼動実験とイスラム原理主義者への武力供給だ。
New Real IRAに関しては二次的なものに過ぎん。サムナー戦士長は立派に務めを果たしてくれた」

「しかし……」

「いいのだよ。今回はサムナーに命じた任務の成功以外にも、たくさんの“収穫”があったからね。
アレクサンド・アンデルセン神父の戦闘解析と、日本の戦士達の始末が同時に行える。
まあ、“同士討ち”が最も理想的なのだが、あまり多くを求めすぎてもいかんしな。
それと、だ。ウィンストン大戦士長をどう思う? 彼はあまりにも無能だとは思わんか?
自分の部下を掌握し切れず、サムナー戦士長のような恐ろしい“裏切り者”を生み出した責任を
取らせるべきではないかな。大戦士長職の解任という形でね。フフフ……」

「とはいえ、現在の大英帝国支部の戦力はあまりにも薄すぎます。このままでは“敵対勢力”への
攻撃もままなりません。現在育成中の“戦士”達が使い物になるまでは、未だ長い訓練期間を要します。
それにマーティン評議員……。あなたには、その……あまり時間が……」

「もちろん、戦力不足という点には私も頭を痛めている。欧州を代表する二人の戦士を失うのは
大英帝国支部にとって大打撃と言ってもいいだろう。
しかし、物事を成すには長期的展望に立たなくてはいかん。私はね、この大仕事を私の代だけで
終わらせられるとは思っていないよ。むしろ『終わらせてはいけない』とも考えている。

353 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/24(月) 23:16:49 ID:6kZWfrIl0
“大英帝国支部復興”は我々の悲願であると同時に、達成が極めて困難な一大事業なのだ。
充分な準備と入念な計画を以って当たらねばならん。その為には時間も、資金も、どれだけ掛けても
掛け過ぎとは言わん。私の“寿命”も考慮に入れる必要など無いのだ。
私が死んでも誰かが私の遺志を引き継げば良い。これは、“私”の計画ではない。“我々”の計画なのだから。
そして、君の言うとおり我々には“敵”が多い。ホムンクルスを手に入れたイスラム系テロリスト、
ヴァチカン第13課。……そして、錬金戦団日本支部。彼らに対抗するにはまだまだ足りないものだらけだ。
人員も、装備も……」

「お、仰るとおりです……」

「ところで、だ。君に任せた“対錬金の戦士用”錬金の戦士の育成だが……――」



サムナーの死体には一瞥もくれず、アンデルセンは火渡に大股で歩み寄る。
火渡もまた再び前進を開始している。
“錬金の戦士”と“第13課 聖堂騎士(イスカリオテ・パラディン)”の二度目の対峙である。
紅蓮の拳に軍配が上がった“死にぞこないの夜(ナイト・オブ・ザ・リビングデッド)”。
そして、陽はまた昇り、銃剣が再来した“皆殺しの朝(ドーン・オブ・ザ・デッド)”へ。
白々と光る夜明けの陽が徐々に廊下を、二人の男を、躊躇無く歩を進める脚を、笑みを浮かべる口元を照らしてゆく。
やがて胸と胸が、顔と顔が触れ合わんばかりに接近するに至り、両者はようやく脚を止めた。
眼を見開き、歯を剥き出した、二つの歓喜の表情が真正面から睨み合う。
どちらも眼力だけで相手を殺傷せしめんとする程の殺気を放っている。
177cmの火渡は怯む事無く2mのアンデルセンを見上げながら、再会の挨拶を吐きかけた。
「よォ、ヴァチカンの犬っコロ」
「ほざくな、手品師風情がァ……」
アンデルセンもまた、この異端の重罪人との再会を心待ちにしていたのだ。
二人は尚も鼻先数cmの距離で、常人には到底耐えられないであろう殺伐とした世間話を続ける。
「テメエ、上から来たんだよな? てことはテロリストの野郎共は――」
「ああ、上の連中はすべて始末した。パトリック・オコーネルはなかなか骨のある奴だったぞ?
貴様らが作り出した化物(ホムンクルス)なんぞより、ずっとなァ……」

354 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/24(月) 23:18:01 ID:6kZWfrIl0
アンデルセンはこう認識しているだけだ。

『自分が殺したNew Real IRAのギャラクシアン兄弟を作り出し、操っていたのは錬金戦団。
そして、目の前にいるこの錬金の戦士はその構成員』

錬金戦団大英帝国支部の思惑とテロリスト、そして日本の戦士の関係性に気づかないでもなかったのだが、
アンデルセンは上記の認識以上の事をあえて考えようとはしなかった。
異教徒・異端者は皆殺しにすればいい。それでこの世に存在する問題はすべて解決するのだから。
一方の火渡にしてみれば、ホムンクルスを世界にバラ撒く裏切り者と同列に並べられるのは
腹立たしい限りであろう。
「あァ? 何、ワケのわからねえ事を言ってんだ」
「ククク……。まあ、いい」
自分で振った話題に無関心のアンデルセンに対し、火渡は多少のおかしさを覚えた。
いや、この血で血を洗う鉄火場でそんなおかしさを覚える自分のシュールさにおかしさを覚えるのか。
どちらが先かはわからないが、いずれにせよアンデルセンの意見には賛成だ。
「ハハッ、だよなァ。“俺達”にゃどうでもいい事だ」
そうなのだ。まったくもって“どうでもいい事”なのだ。
武器を握り向かい合う戦士達にとっては。獲物をその眼に捉えた捕食者にとっては。
やがて“それ”は静かに、かつ唐突に始まった。どちらからともなく――

「フッ、ククッ、クックックックッ……」

「ヘッ、ヘヘヘヘヘヘヘッ……」

二人はただ不気味な低い笑い声を発しながら、肩を揺らしている。
お互いがお互いから眼をそらさず、ただ笑い続ける。
火渡がアンデルセンと共に織り成す病的なこの光景。千歳は我が友人ながら、背中に走る何とも言えない
怖気を禁じ得ずにいる。
同じだ。まるで同じだ。まるで同じ二人の狂人がこの場に存在するかのようだ。
“同類”という言葉が頭に浮かんだ千歳であったが、急いで頭を振ってそれを打ち消した。

355 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/09/24(月) 23:19:52 ID:6kZWfrIl0
付き合いはそれなりに長いとはいえ、彼女はここまでの火渡の姿を見た事が無かった。
まるで、あの神父に共鳴しているかのような……。

「!」
二人の笑い声が途絶えた。
火渡は笑いの表情すらも消えている。
ただし、アンデルセンの顔には狂喜の笑みが貼りついたままであったが。
いつの間にか、火渡の腹に銃剣が深々と突き立てられていた。アンデルセンが左手に握る銃剣だ。







ども、こんばんは。さいです。
今日はちょっと短めで。何にも考えずにひたすら寝てたらこんな短くなっちゃいました。
超テキトーな作者でホントすみません。人生コナタ\(=ω=.)/
では、また近いうちに会いましょう。さようなら。
うへへ、『永遠の扉』のまっぴー可愛い、うへへ。

356 :作者の都合により名無しです:2007/09/25(火) 08:47:09 ID:K9TYROuq0
お疲れ様ですさいさん。
今回はちょっと短いですけど
内容は重要そうな回ですね。
次回からの決戦をお待ちしております!

357 :作者の都合により名無しです:2007/09/25(火) 14:32:23 ID:4i6Tom4D0
スターダスト氏、さい氏いつもお疲れ様です。

>永遠の扉
ブラボーとまひろの明るさにちょっとテンションの違う秋水が
逆に浮いている感じで可愛い。意外といいカップルになりそうな感じですね。
お互い足りない所を補い合う?って感じで。

>WHEN THE MAN COMES AROUND
火渡は流石に錬金戦士ナンバー1の武闘派だけの事はあって
神父を前にしても不適なまでに堂々としてますね。
でも神父の方がやはり格上っぽいけど。

358 :作者の都合により名無しです:2007/09/25(火) 17:20:18 ID:VNsynjcZ0
スターダスト氏とさい氏が連続で来ると錬金スレのようだw
お2人とも乙です。

スターダスト氏、横山MADもあなたの作品と知ってビビりましたw

359 :ふら〜り:2007/09/25(火) 21:56:46 ID:NzCSHR+y0
>>銀杏丸さん
今思えば、範海王なんかメじゃない壮大なスケールのフェイクキャラでしたな星華姉。しかし
こうなると星矢、沙織に美穂ちゃんに星華姉にとなかなかの包囲ぶり。この上、斗貴子まで
絡むのかな? 仰る通り、原作は生活感がないから日常シーンの日常展開が新鮮で楽しい。

>>スターダストさん(ちなみに私の一番は♪人間全員で♪の辺りです)
ん〜やっぱり防人の「年長・先輩キャラ」らしさは良い。こんな人に見守られてるとあっては、
皆も心強く戦えるというものでしょうな。前作でも彼の千歳への父性愛(?)が、見てて心地
良かったです。で秋水はまた百花繚乱な本作女性陣相手にギャルゲ展開か……幸せ者めっ。

>>さいさん
>私の“寿命”も考慮に入れる必要など無いのだ。
理屈ヌキで打ち震えました。敵には敵の美学・信念があってこそ、主人公側も引き立つと
いうもの。但しそこに「正義」まで入れて半端に同情を引くのはあまり好きではありませぬ私。
が本作の場合、今回も大活躍の彼がいるから安心。遠慮容赦ない豪快バトルが観れる♪

>>337
賛成。畳めるのが理想ではありますが、>>337さんの仰せられるのは正論と思います私も。
北斗・キン肉・星矢辺りの、二十年経っても色あせぬ(つーかある意味現役の)
伝説級名作たちには、少なからずそういう面がありますしね。

360 :作者の都合により名無しです:2007/09/25(火) 22:23:12 ID:S5kvfE6F0
スターダストさんの作品はまだまだ続きそうだが
さいさんの作品はあと1ヶ月くらいで終わりそうだな・・

361 :作者の都合により名無しです:2007/09/25(火) 22:25:41 ID:vHb7m7N80
大丈夫。まだまだ次回作の構想もお持ちだし。

362 :戦闘神話・第三回:2007/09/25(火) 23:36:43 ID:tAKUrRsL0
part.5

星華とすれ違い、エドワードとぶつかりそうになった少女は、
言うまでもないが錬金戦団亜細亜支部所属の戦士・津村斗貴子である。
彼女はこれでも忙しい。
戦闘終結と同時に事後処理に奔走する事になり、
それらがようやく落ち着いた今は、戦闘レポートの作成にかかりっきりだ。
今回の任務は、はっきり言ってしまえば大失態の連続だった。
着任早々に一般人に被害、回収した核金を使用しての治療が無ければ被害者は死んでいた。
本格的にホムンクルスとの戦闘に入ってみれば、その被害者の協力が無ければ失敗し、
挙句の果てには自分自身がホムンクルスになっていたという事実、
幸いにして、被害者にして協力者である武藤カズキの奮闘もあり、
辛うじて一連のホムンクルス事件の主犯格を打倒する事ができたが、
彼女自身が培ってきた矜持を痛く傷つける結果であったことは事実だった。
この地上に存在するホムンクルスの一切合切を認めない。
この地上に存在するホムンクルスを皆殺す。
その為だけに津村斗貴子は錬金の戦士となったのだ。

錬金の戦士にとって、最悪の事態とは何か?
命を永らえて引退した錬金の戦士の多くは、後進を育てるべく指導教官となる者が多い。
斗貴子の指導教官となった武田という男は、ホムンクルスとの戦いで右腕と右目を失ったそうだが、
それでもそのホムンクルスを討ち取ったという。
その彼が、候補生となった少年少女たちに先ず最初に教えるのが、その最悪の事態である。
核金を奪われることか?
命を落とすことか?
敗北か?
どれも、否。

363 :戦闘神話・第三回:2007/09/25(火) 23:39:51 ID:tAKUrRsL0
答えは只一つ、自分自身がホムンクルスとなることである。
その最悪の事態を招きかけたことが、津村斗貴子のなかで昏く燃えていた。
自分の過去を奪ったホムンクルスに自分自身が成り果てるというのは、許されざることだ。
そう自分の思考に埋没していた彼女は、自分自身に向けられた視線の中に、
警戒の目が含まれていたことに気が付かなかった。
視線の主は、帰宅途中の中年男性である。
彼の職業は銀成署に勤める刑事なのだが、同時にホムンクルス信奉者の一人であり、
その職権を使って市内の行方不明事件のもみ消しを行っている不正警官でもあった。
不老不死の魅力に勝てる人間は少ない。
彼は、パピヨンが回収された翌日の夜に行われた緊急集会にて、
錬金の戦士が銀成市内に潜伏している事を知らされており、
不審な人物に対する注意を呼びかけられていたのだ。

通常のホムンクルスコミュニティは、人間型一体に対して信奉者、
もしくは人間型一体を中心として非人間型数体、そして信奉者というケースが一般的である。
人間型のみが寄り集まるというケースは非常に稀なのだ。
人間型ホムンクルスは、基本的に非常に独占欲が強く、自分の作ったコミュニティを侵す者や、
その潜在的要因を極力廃す傾向が強いためである。
錬金戦団が過去に扱った事件で、
複数の人間型ホムンクルスがコミュニティを形成していたケースを数えるには、
片手で足りてしまう程である事がその証明といえるだろう。
故に、この第三のケースを錬金戦団上層部は思考の埒外に置いてしまう場合が多い。
この時点で戦士長火渡らが闘っているホムンクルスコミュニティもまた、第二のケースであり、
日本国内のホムンクルスコミュニティに、
第三のケースは今まで存在しなかった事も錬金戦団の思考硬化を招いた原因でもあるのだが…。

364 :戦闘神話・第三回:2007/09/25(火) 23:50:38 ID:tAKUrRsL0
第一のケースは規模が小さい為に駆除は容易いが、隠密性・機動性が高いために行動に迅速さが求められ、
第二のケースは規模の大きさと戦力的な充実により、戦士といえども後れを取ることも少なくない。
今回銀成市において発生した「パピヨン事件」は、結果的には後者に分類されるが、
実は斗貴子が投入された時点では前者のケースと見なされていた。
元々銀成市自体が、先代亜細亜支部大戦士長・犬飼による錬金術及び核金探査レポート、
通称犬飼レポートの中でもあまり危険視されていない一件であったことが原因である。
彼女の上司であるキャプテンブラボーが、錬金の戦士育成最終段階で手が離せないことや、
また若輩ながらも、豊富な実戦経験をもつ彼女自身のキャリアを重視される形で、
津村斗貴子の単独投入という形になったのである。
その結果が、この体たらくである。
(しかし、斗貴子自身はそれを失態の理由にしない。それが彼女の生真面目さ、美しい部分なのだろう。)
作戦完了の報告は上へと上がっているものの、
現場の綱渡り的な深刻さまでは上層部に伝わっては居ないし、現在の上層部は汲み取ろうとはしない。
それが結果として半月後の亜細亜支部大戦士長・坂口照星更迭へと繋がるのだが、
神ならぬ津村斗貴子にそれを知る由は無かった。

現在、非人間型ホムンクルスが単独で徘徊するというケースは先ず無い。
ヴィクター事件以降一時的に増加したものの、錬金戦団の暗部の証人とも言うべき連中であるため、
優先的に狩られていたためである。
それが結果として欧州からのホムンクルス一掃という形になるものの、
同時に人間型ホムンクルスの拡散という事態を招いている。
百年物(ヴィンテージ)と俗称される人間型は、主にこの時代の生まれである為、
非常に狡猾であり、人間社会への浸透性が極めて高い厄介な存在だ。
実際、海外のある都市を裏から支配していたケースもある。
この百年物の一人であるムーン・フェイスは、駅前で斗貴子を見かけた信奉者から電話報告を受けると、
それをバタフライに伝わらないように情報を握りつぶした。
彼の真の目的の為には、是非とも錬金戦団が超人選民同盟L.X.E.と事を起こしてくれなければ成らない。
警戒してくれるのは結構だが、今ここで本格的な警戒態勢に入られては困るのだ。

365 :戦闘神話・第三回:2007/09/25(火) 23:55:44 ID:tAKUrRsL0
いや、警戒態勢だけならばまだいい。
先走って事を起こされ、錬金の戦士の大量投入を誘発し、
ヴィクターを破壊されでもしたらたまったものではない。
幸か不幸か、錬金の戦士と戦闘を経験したパピヨンは、
事前調査と行動を見る限りこちらの支配下に収まることを良しとしない性分だ。
完全復活したら早々に錬金の戦士に宣戦布告でもしにいくに違いない。
彼の回復は予想外のスピードで進んでおり、
おそらくあと一週間ほどで行動可能状態にまで回復するだろう。
わずかであるが、ムーン・フェイスにそれが是非とも欲しい。

「むーん。
 U.K.だけでなく、ギリシャ…。
 私でなければ参ってしまうね、むーん」

思わず愚痴も出ようというものだ。
彼の武装錬金の特性は、30体もの分身体を生み出すことである。
研究畑の彼としては、自分と全く同じ思考をする助手の存在というのは諸手を挙げて喜べるのだが、
彼の本当の仲間はこれを連絡要員として使ってくれるからたまらない。
たしかにタイムラグなしでの情報伝達というのは重要なのだが…。
本部に一体残しているのだが、この分では、
もう一体別行動を起こさねばならない分身を出さねば成らないだろう。
あまり分身を出すと、思考が乱れる為に歓迎は出来ないのだが、人手不足であることは否めない。
彼の本来の目的を知る者は、少なければ少ないほど良いのだ。

ノックの音と共に、彼の研究室の扉の向うから声がかかる。
声の主は、信奉者の中でも特に優秀な双子の片割れだ。

「ムーン・フェイスさま。ドクトルバタフライさまが御呼びですわ」

彼女の名は、早坂桜花。

366 :戦闘神話・第三回:2007/09/26(水) 00:00:17 ID:izvSCB1C0
「むーん。
 それは大変♪
 …ああ、そうそう。キミ、聞いていたのかね?」

おどけた風で部屋をでると、彼は長身を屈めて桜花にそう問いかけた。
三日月型のその顔が、まるで槍の穂先のように桜花に突きつけられる。
この目聡く小賢しい切れ者の少女を、ムーン・フェイスはそれなりに買っている。

「あら?一体何のことです?」

そう言ってみせる桜花に、ムーン・フェイスは少し、
ほんの刹那にも満たないほどの少しだけ厳しい視線を向けると、
どうでも良いとばかりに笑って桜花に背を向けて歩き出した。
たしかに、ホムンクルスの叡智に匹敵するような切れ者は必要だ。
しかし、切れすぎる剃刀は要らないのだ。


ムーン・フェイスの中に密かな警戒を作り出した桜花は、
基本的に自分と弟以外の世界に興味を持たない。
だが、二人だけの世界を傷つけ侵そうとするモノを決して看過しない。
故に、潜在敵の発見を兼ねた情報収集に余念が無い。そうして磨かれた
情報収集と解析能力は、他の追随を寄せないほどのレベルに達している。
それ故に、現在L.X.E.の雑務諸々を任されているのだが、
つい先日、高笑いをあげるムーン・フェイスの姿を目撃して以来、彼女は彼の行動を洗いなおしていた。
おぞましい三日月の姿に、桜花は自分と弟の世界を侵す可能性を見て取ったのだ。
自分と弟が永遠の世界を得るまでは、盟主とその片割れの機嫌を損ねるのは得策ではないが、
それでも何かが桜花の勘に引っかかった。

367 :戦闘神話・第三回:2007/09/26(水) 00:06:21 ID:izvSCB1C0
L.X.E.発祥自体から調べたかったが、それはドクトルバタフライの逆鱗に触れかねないので、
ここ数十年の行動を、当たり障りの無いところから洗ってみたのだが、
木を隠すなら森とばかりに怪しいことばかりで絞り切れない。
だが、それでも彼女の勘に引っかかるものは諦めを許さない。
そうして苦労して調べ続けているのだが、以外な点が明らかになった。
外出が多いのである。
数日開ける事はざら、多いときは数週間から数ヶ月もの間この洋館から姿を消している。
どうもバタフライとムーン・フェイスはある一点を除いて相互不干渉を決め込んでいるらしく、
一般人に目撃される事や、錬金戦団に捕捉される事を除けばなにも言っていないらしい。
それはいいのだ。
北関東全域に強い影響力を及ぼすL.X.E.だけに、他のコミュニティと繋がりを持つことは重要だ。
しかし、それ以外の外出が海外であることが、桜花には非常に気にかかった。
一応、海外に存在するホムンクルスコミュニティとの接触という建前があるが、それだって本当の事か怪しい。
なにせ、現在表立って活動できるほど海外にホムンクルスの数は多く無いのだ。
百年前からこっち、世界各地の紛争や戦争の影で錬金戦団は暗躍し、ホムンクルスを狩り続けてきた。
ゆえに、その存在が公にしられないように、ひっそりとなりを潜め息を殺しているのが、
海外のホムンクルスコミュニティの実情であり、目だった活動ができるコミュニティなど、先ず無い。
いくら世界的な錬金術ブームが起こっているとはいえ、その流れに乗じて浮ついた行動でもすれば、
錬金戦団の餌食となるだろう。
しかも最近、「聖域」とよばれる集団が活発に活動しているのだ。

368 :戦闘神話・第三回:2007/09/26(水) 00:11:17 ID:izvSCB1C0
錬金戦団の手の及び難いイスラム圏に潜伏し、
海外で最大の勢力を誇っていたホムンクルスコミュニティが壊滅したのは記憶に新しいし、
唯でさえ目立ちやすい外見の彼が出歩くことは様々な意味で危険極まりない。
そんな危険的情勢下の海外コミュニティとの接触など、メリット以上にリスクが大きい。
そんな桜花でも分かりそうなことが分からないムーン・フェイスではないだろう。
おそらく、先ほどの独り言「U.K.」と「ギリシャ」がその答えなのだ。
勿論、潜在的な敵を危険視し、詳しい情勢を知る為に海外へと脚を伸ばしていると見ることも出来る。
「U.K.」は錬金戦団イギリス本部の事だろう。
ホムンクルスとして錬金戦団の動向が気にかかるのは当然の事だ。
「ギリシャ」は、噂に過ぎないが「聖域」と呼ばれる集団の本拠地であるらしいので、
気にかけていてもおかしくは無いだろう。
だが、先日の笑い声や、先ほどの口ぶりからしてそれだけとは思えない。
バタフライに知らせるにせよ、なんににせよ、まだ判断材料が少なすぎる。
桜花はそう一応の結論を出し、遅い夕食をとるために弟・秋水の下へと向かうのだった。

369 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/26(水) 00:16:55 ID:izvSCB1C0
アニメ版の斗貴子さんはデレ分多すぎな気がするのです…
もっとツンを!
星矢のアニメ版、あの触れれば切れるような魔鈴さんがなんか弱弱しくて
アニメの魔鈴さんだけは好きになれないです
桜花は武装錬金の女性キャラでは斗貴子についで好きなキャラ(まひろは別格)ですんで
ちょっとばかり彼女視点が出てきてしまいました、なんか死亡フラグたてた希ガス…

>>334さん
武装錬金は「日常から非日常に行ってそこから日常に帰ってくる物語」なので
やっぱり日常描写はだいじだとおもっております
コンビニで買い物する斗貴子さんとか妄想すると、何故か萌えます

>>335さん
まだ第三回!と自分のモチベーションをあげる為の嘘といいましょうか…
実際、まだ道のりながいもので…

>>336さん
またキャラクター紹介を兼ねた各陣営のベクトルを書くべきなのかもしれません…
分かりづらくて申し訳ないです

>>337さん
なるべくたたむ方針で頑張って行きたいです
マップスだってちゃんと大風呂敷たためたんですから!がんばりますよ!僕も!
なげっぱなしドワオ!は石川賢先生だけの特権です
なんか物凄く小市民的だな、俺…

370 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/26(水) 00:24:11 ID:izvSCB1C0
>>さいさん
ヘルシング一巻でアーカードと対峙する神父がとても好きなので、今回はキました
悪党には悪党の義があってこそ光るわけで、信念もって貫いたやつは本物
本物の悪党の凄みと、嵐の前の凪。激突が否が応にも期待たかまります
燃え盛る中の決闘ってクウガみたいで燃えます

>>スターダストさん(MADには痺れました)
こう、ふわふわーっとしていながら、確りと芯のあるのがまひろ
武装錬金の「日常」の象徴でもあるだけに、非日常側の人間であった秋水が
ふりまわされちゃうのは仕方ないのかもしれません
戦闘神話の桜花と秋水、さっさと日のあたるところへ出したいです
兄弟、姉弟、兄妹、姉妹と、四作品に共通するのは血縁関係だったりしますが
すでに失われてしまい、本人も人間であることを止めてしまった蝶野兄弟の場合
その遺恨が残りの面々に色々と影響を及ぼしていくことになります
ぶっちゃけ、こんだけ次郎さんを掘り下げるSSも珍しかろうなと自分で思う次第
斗貴子さん出てきても、台詞が一個もねぇ…
羅刹のような斗貴子さん登場はまだまだでございます、無念


371 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/09/26(水) 00:25:31 ID:izvSCB1C0
>>ふら〜りさん
星華姉さんのフェイクっぷりはもはや常識!とでも申しましょうか
身長体重生年月日まで一緒で別人という凄いフェイクぶりの彼女たち
魔鈴さんは数ある車田作品の姉さんキャラ中、菊姉、華蓮と並んで大好きなキャラなもんで
戦闘神話でも神出鬼没ぶりを発揮しております、っつーか名前だけしか出てきてねぇけど!!
好きすぎて追いそれとかけないどうしてくれようこのもどかしさ
(ふりかえるとツンデレ比率が非常に高いですね、車田作品てw)
魔鈴さんの弟さんが展開変で出てると知ったときは、
義弟VS実弟の戦いがみられるのかと興奮したのですが、内容まさしく展開変…orz
そのときのフラストレーションを晴らすべく、
拙作では大激突させるべく目下ない頭ひねっております
(ボロクソにいってる展開変ですが、一輝&瞬の兄弟タッグと
気の抜けた星矢の声と、0087時点のアムロの声がほとんど同じで、
アムロとヒイロがドツキあってるとか思ったあのあたりが唯一気に入ってるシーンです)

では、またお会いしましょう!

372 :作者の都合により名無しです:2007/09/26(水) 13:52:28 ID:WAolrqyC0
お疲れさんです銀杏丸さん。
原作でお気に入りのムーンフェイスが
結構重要なキャラになりそうで嬉しいです。

あと、この作品でも桜花と秋水が活躍ですね。
ますますエドの影が薄くなるなw

373 :作者の都合により名無しです:2007/09/26(水) 17:55:27 ID:8dofD22l0
銀ちゃん乙
盛り上がってきた感じだな
先は長そうだけどw

374 :作者の都合により名無しです:2007/09/26(水) 21:25:05 ID:Fi3qPo6M0
銀杏丸さんお疲れ様でした
そういえばこの作品は聖域対ホムンクルス軍団というのが大儀でしたね
バタフライのもとに集まる集団があの聖域をどう崩していくか楽しみです



375 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 04:16:20 ID:JhGIL9Fn0
その場には、数多の戦場を駆け抜けた者達が居た。
北斗七星より、悪を滅ぼす使者として世に送られた死神。
神に祝福された、獣を、人を超えた業火を操る超越的生物。
邪悪な生を受け、醜い容姿に生まれながらも、正しい魂を身に持つ青年。
治療という、民に希望を与えるべき行為を虐殺に使った愚者。
そして、海賊を生業にしながらも、命の尊さを誰よりも知る数少ない真の海の男。

激突し合う4人と1匹の中へ単身、乗り込む男が一人。
一見するとただの鎧を着た兵士だが、その場の全員が理解していた。
歩行速度は一般人並みである、いや、一般人並に歩けている。
身体を二周りは大きく見せる程の分厚い鎧、ハンマーかと勘違いさせる巨大な盾。
あれを着て動ける人間は、それだけで達人である事を物語っている。

「よお、酒代まけてやるから俺も混ぜてくれよ。
足引っ張らないように、オジサン頑張るからよ。」
言うが速いか抜くが早いか、手にはいつの間にか剣が握られていた。
巨躯の男が、巨大な鎧、巨大な盾、だが剣には軽さを重視した細身の長剣を選んでいた。
(なんだ・・・この男は。いつ剣を抜いたんだ?)
得体のしれない男、リオレウスの火球を剣圧で消し飛ばす程の使い手である。

「おい!裸のにーちゃんと、トカゲの旦那は変な頭したイカれ野郎だ!
ドラゴンは俺と裸のオッサンで年寄り同士、仲良くやるぞ!」
「誰が裸のオッサンだ!まだ29だぞ!」
瞬時に的確な判断を下す鎧の戦士、反対の理由は全くと言っていい位存在しない。オッサン発言以外。

アミバは一撃必殺の秘孔の使い手である、回避能力が無ければ太刀打ちできない。
秘孔の知識を持ったケンシロウは勿論、爬虫類独特の機敏性を持ったゲラ=ハなら信用できる。

リオレウスは巨体を活かした体当たり等の攻撃を、近距離で出す事がある。
これをかわすか受け流すかの判断力、つまり熟練が必要なのである。
判断力は時として力や知識より遙かに有用で、頭があっても判断や決断が出来なければ持ち腐れてしまう。

376 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 04:17:42 ID:JhGIL9Fn0
「まずいっ!分断しろぉぉ!奴等の思い通りにさせるなレウス!」
空中へと舞い上がりながら炎を吐き出す。
火竜が飛びながら火を吐く時は、必ず後ろへ飛びながら火を吐く。
喉への負担を減らすためだ。
だが、アミバの異常なトレーニングが与えた効果は絶大であった。
今まで休息を取りつつ吐いていたため、全く喉にダメージは無かった。
相手を餌ではなく、完全に敵と判断した今、殺す事に手段を選ばなかった。

なんと、火炎を吐きながらの前進。
通常の火竜では絶対に真似出来ない荒業、火炎の衝撃を前へ進む事で増加させる。
しかし、それは喉に更なる負担をかける事となる。
巨大で、屈強な翼で力強く飛び上がり衝撃を受け流さず、受け止める捨て身の技。

街の城門すら吹き飛ばす炎と、鎧ごと肉体を引きちぎる力と死の猛毒を秘めた爪との二段攻撃である。
「嘘だろっ!?」
竜が飛んだ時の風圧で体制を保てなかったホーク目掛けて、2つの驚異が一度に襲いかかってきた。
炎が目の前に迫る、すると気でも違ったのか突然、炎に向かって自分から突っ込む。

爆炎に押され、吹き飛ぶホーク。
火竜の毒爪の対象がホークと連携を取ろうとしていたベアへと向けられた。
彼も恐怖で我を忘れたのか、大地に根を張ったかのようにして立ち向かった。

「パリィ!」
剣の刃ではなく、刀身を横にして相手の攻撃を弾くようにして受け流す。
相手は飛竜、分厚い大剣ならば問題ないが細身の長剣でやるのは頼りない。
押し当てた剣、そこを鎧と一体化しているガントレットで殴る様にして更に押す。
ベアの足が地面に減り込む、押しつぶされる前に転がる様にして下を潜り抜けその場を逃れる。

下を潜り抜け視界から逃がしたが、体制が崩れているのを本能で悟る。
すかさず尻尾を振り回す、ドスッ、という重い音と同時に初めての感覚を味わった。
振り抜けないのだ、岩石も、鉄も、狩人達が同胞の遺体をズタズタにして作り上げた忌むべき鎧も砕いてきた。
だが、尾の先に居る男は地面から足を離す事なく立っていた。

377 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 04:19:15 ID:JhGIL9Fn0
ガラガラと瓦礫が崩れる音がした、振り向くと同時に斧が火竜の脳天に突き刺さる。
「い・・・・ってぇ〜じゃねーか。スタンの剣、やっぱし『炎』に関係してるな。」
胸元にサブウェポンとして用意していたスタンの剣、ソーディアン・ディムロス。
武器でありながら炎への抵抗を大きく高める力があるようだ。
(持ってたのはラッキーだったぜ。この戦いで真価を・・・剣は得意じゃないんだが大丈夫なのか?)
ホークの心配とは別に、アミバの指示が効果を現したらしくケンシロウとの1vs1に持ち込んでいた。

「仲間が心配か?ケンシロウ!」
間違った秘孔へ気を流し込み、筋肉を肥大化させる。
完全な自爆技だが、秘孔への抵抗力を完全と成しているようだ。
前回以上の力に加え、比較的正確な位置への秘孔、そして俊敏な動き。
アミバを支える『執念』が、ケンシロウを追い詰める。
ホーク達を援護に向かう余裕はない、急いで始末しなければ。

筋肉が肥大した個所は主に上半身に集中している。
怒りで脳のリミッターを解除しつつあるアミバの筋肉は鋼鉄以上である。
だが下半身の筋肉や頭部には変化が薄い。
下半身に必殺の秘孔は存在しない、狙うのは頭部。
「ああぁったぁ!北斗壊骨け・・・っ!」
ゼロ距離から放たれた、アミバの北斗剛掌破が腹部を撃ち抜く。

隙を見せたケンシロウへ追い打ちをかけず後ろへ下がるアミバ。
何か企んでいるのは明白だったが、腹部の痛みは頭部の痛みより抜けにくい。
「いいぞ、その顔だ。何かされると分かっていても何も出来ない己の無力、思い知れぇ!」
奇妙な構えから漆黒の波動を打ち出すアミバ。
空間が歪み、足場が消える、間違いない。
この感覚には覚えがある。
「そうか、闇に堕ちて力を手に入れた貴様なら・・・。」

暗琉天破、闘気に己の持つ邪悪な心を加え、生み出された魔闘気によって繰り出される奥義。
だが、この技は北斗神拳ではなく、北斗神拳の宗家を祖とした北斗琉拳の物。
ルーツは同一で共通点も多いが、アミバが独学で生み出せる拳法ではない。

378 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 04:20:20 ID:JhGIL9Fn0
「ククク、そうだケンシロウ。俺は地獄でお前の戦いの全てを見ていたのだ。
カイオウ如き小物の使う手品程度、この俺様の手にかかれば造作もないわ!」
アミバが猛スピードで迫る、だが足の筋肉の強化が出来ていないので、
重くなった上半身が速度を鈍らせている。
この内に回転し、己の位置を掴まなければ。
だが、腕は空しく空を切るしかなかった。
この技はかけられた直後、己の位置を完全に失う前に回転を行う必要があったのだ。

「ケンシロウ!これを受け取りなさい!」
ゲラ=ハの投げたランスを受け止める、目の前ではアミバが拳を繰り出そうとしていた。

「そんな棒っきれで、なぁにが出来るんだぁぁぁ!?フハハァ・・・は?」
片手で握ったそれを使い、ポールダンサーのように槍を軸にして回転する。
「助かったぞ、ゲラ=ハ。遠心力の中心、それさえ分かれば自分の位置を掴める。後は・・・。」
ランスの様に円錐状に見えていた先端、よく見れば実は粗雑な作りの石槍だった。
何故そう見えたのか、それは高速で回転するドリルの溝が見えない事と同じ。
槍を回転させながら投げていたから。

「おおぁあ!」
勢いよく飛びこむアミバに、遠心力を味方につけたケンシロウの拳が命中する。
「へっ・・・ぶぱっ!」
飛び込んできた時、否、それ以上の勢いで盛大に吹っ飛ぶ。
魔闘気の流れが弱くなり、完全に感覚を取り戻す。

ゲラ=ハが援護に駆けつけるため走る。
だが、ケンシロウの目を見てそれが無用である事を悟った。
槍を持ち主に返し、地面から起き上がろうとする愚者へ目を向ける。
「北斗神拳の戦いに一対多数は無い、ここからが本番だ。アミバ。」

379 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 04:22:43 ID:JhGIL9Fn0
「ふざけやがって・・・今だって俺が遊んでやらなかったら貴様は粉々になっていたんだぁーっ!」
もう油断はしない、全ての動きは見切っている。
今度は激振孔を全力で撃ちこみ、最大の苦痛を味あわせてやる。

南斗聖拳特有の素早い突きで翻弄する。
しかし、同じように闘気を腕に纏いながら腕を払いのけ、生じた隙を的確に狙うケンシロウ。
秘孔を外す事には成功しているが、焦りと不安は蓄積されていく。
さっきまで優勢だったのにパンチ一撃で形勢を逆転されてしまった。
「な・・・何故だ!何故この天才の拳が当たらんのだ!」

北斗千手殺、千の拳を打ち出しその全てが必殺の秘孔を狙い撃つ。
だが、仕留める事に気を取られた今のアミバは、秘孔に当てようとしてフェイクも入れず、
手の秘孔に防御を集中させその隙に〜等の作戦も無く闇雲に殴りかかっているだけだった。
そんな物が通用する筈もなく、全ての拳を叩き落とされてしまった。

「無様だな、お前のそれは北斗神拳ではない。
お前は道化だ、秘孔を理解したつもりの拳法家を演じているにすぎない。」
この一言がアミバから理性をむしり取ってしまった。
怒りで噴き出す闘気がケンシロウを上回るのに時間はかからなかった。

理性を失っても本能で闘気の差を理解しているアミバは、
いつまでも当たらない秘孔に頼るのを止め、完全に南斗聖拳に切り替えた。
冥府から全ての戦いを見ていただけあって、南斗六星拳までもコピーしていた。
「死ねぇぇい!ケンシロウ!」
鳳凰の翼を模るようにして腕を広げ、無駄な足掻きという事にも気づかずに闘気を集める。

「やはりお前は天才なんかではない、忘れているのか?北斗神拳には一度使った技は通用しない。
お前が只コピーしただけの偽拳法では俺は未来永劫、絶対に倒せん!」
ケンシロウの言葉を無視し、両腕に集めた気を容赦なく撃ち出そうと腕を振り下ろす。
妙だ、気が出ない。それに振り下ろしたはずの腕が視界に入ってこない。
代わりに、地面に転がる人体の一部が視界に入った。
鎧の破片も見当たらず兵士の物ではないのは確かだ、太く不自然な筋肉、それは自分の腕であった。

380 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 07:04:08 ID:JhGIL9Fn0
「しかし、飛竜なんて初めて相手にしたがこりゃすげぇな・・・。」
脳天に叩きこんだ愛用の石斧を見上げながら、思わず口にしてしまう。
こんな化け物を一人で撃退したケンシロウはきっと人間ではない。
エルフか獣人か、もしやヴァンパイアだろうか。しかし陽の光に当たってもなんともない。
ホークがそんな疑問を掲げているが、飛竜にとってはどうでもいい事であった。
自分に攻撃という敵意を向けたからには許す訳にはいかない。
唸り声を上げながらホークに向かって突っ込んでいく。

今度は炎の攻撃ではないのでディムロスで無効化する事はできない。
廻り込むようにして走り、飛び込むようにしてギリギリで体当たりをかわす。
直進は速いが旋回は遅い、という飛竜全般に当てはまる弱点を突いた回避方法。
「フゥ、『飛竜狩りの基本〜初めての火竜討伐〜(民明書房)』を読んでおいて助か・・・。」
立ち上がり、後ろを振り返ると低空に飛び上がり口から炎を漏らす火竜の姿があった。
放たれた火炎を咄嗟にディムロスで受け止めるが、火炎弾の衝撃までは吸収できない。

ホークの移動力を奪った事を察したリオレウスは、着地と同時に突撃の体制を取る。
「おい、トカゲの兄ちゃん!」
「分かってます!」
力強く、尚且つ素早い切り返しによるベアの二段斬りが飛竜の足首を切り裂く。
そしてベアが攻撃した足首へ、更にゲラ=ハが追い打ちをかける。
槍に力をこめ、突く。『十方』と呼ばれる槍技。
槍の先端を微細な動きで操り、真空波を操作して全方位から攻撃する。

「グウァァ・・・!」
自身の巨体を支えるたった二本の脚である、どんなに発達した筋力でも限界がある。
強靭な再生力に妨げられ、致命傷にはならないが大きな隙を生み出す事が出来る。

「ぬおっしゃあ!」
起きると同時に飛び上がり、脳天に突き刺さった石斧へとディムロスを振り下ろす。
ベキン、という何かが折れる音と同時に飛竜の叫び声が響き渡る。
砕けた斧が深く突き刺ささり、剥がれ落ちた鱗の間の肉から血を噴き出す火竜。
だが、その眼に映るのは更なる怒りと飽くなき闘争心だった。

381 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 07:05:29 ID:JhGIL9Fn0
足を捻り、後ろを向ける。
背を向けるという表現をしなかったのは、背ではなく尾を向けているからだ。
「危ねぇっ!」
ホークを突き飛ばし、大盾で尻尾を受け止めるベア。
なんとか踏ん張り、その場を凌いだが足が瓦礫に減り込んでしまった。

襲い来る尻尾の連撃、岩石を猛スピードで連続して叩きつけていることになる。
だが、盾と巨大な鎧で全て受け止めている。
「しつこいぞテメェっ!」
足を瓦礫に取られ、耐える事しかできないベアを救出すべくディムロスで斬りかかる。
だが、剣を得意としていないホークでは力任せに斬るしかなかった。
溶岩に触れても解ける事のない、岩石を超える強度と沸点。
自然界の生み出した大いなる生命、それが『竜』なのだ。
考えもなく斬りかかって勝てる筈がない。

爪を瓦礫に引っ掛け、地面を掘り起こし土塊を蹴りあげる。
眼潰しなどが目的ではなく、巨大な脚で力強く蹴りあげたそれは大砲に匹敵した。
「おごぉぉ!?」
思わぬ攻撃方法に防御もままならず、思わずディムロスを手放してしまった。

槍を手に、再び足を攻撃して時間を稼ぐため力を込める。
だが、ゲラ=ハの足もとに向かって炎を吐き出し爆風で行動を阻止する。
動きが止まったのを見計らい、今度は本体に向けて炎を吐き出す。
爆炎に包まれ吹き飛ばされるゲラ=ハ。
丈夫な鱗が全身に張り付いているので死にはしなかったが重傷である。

二人を打ちのめすと、再びベアへと尻尾を叩きこむ。
ベアの分厚く、巨大な鎧の表面がボコボコにへこまされている。
「へっ、『守り』が下手だからお前等そうなるんだよ。見てな・・・。」
何を思ったか、盾を捨て、剣を放り投げ自分の肉体と鎧のみの状態になる。

382 :六十六話「愛を取り戻せ!中編3」:2007/09/27(木) 07:07:29 ID:JhGIL9Fn0
「馬鹿野郎!死ぬ気か!?」
リオレウスに手加減は無かった、鎧の崩れる音、火竜の尾が奏でる死への行進曲。
しかし、ベアの目に死を恐れる様子は一切なかった。

「何で俺が吹っ飛ばないか教えてやるよ・・・『守る』ためさ。」
不意にリオレウスの動きが止まった、尻尾が急に動きを止めたのだ。
巨大な槌の様な尾は、血塗れの鎧にしっかりと受け止められその場をピクリとも動かせなくなっていた。

「俺の命は皇帝陛下の為にある。だが、陛下は己の命は民のためにあると語ってくれた。
そして行動で示してくれた、化物を倒すため自己を犠牲とし、新たな陛下に精神を受け継がせた。
陛下の心が死なない様、俺は陛下を守りたい、そして陛下の命である、民の命も守りたい!」
ベアが渾身の力で尻尾を締め付けると、音を立てて鱗が剥がれ落ちていった。

「俺がこんな重っ苦しい鎧を着てるのは、俺の命が軽々しく吹っ飛ばないようにする重りさ。
俺は『盾』だ、陛下も仲間も、そして民も命を賭して『守り』抜く!吹っ飛ぶ訳にはいかねぇよ!」
尻尾からベキベキという音と共に、更に激しく鱗が剥げ落ちて行く。
激しく尻尾を揺り動かし、夢中でベアの手を逃れようとする。

尾から噴き出す血と、鎧に付着した己の血でぬめっていた為、尻尾が抜けてしまった。
だが、リオレウスは攻撃に出る事はなく、翼をバタバタと動かしていた。
「覚えておけ、『守る』力は決して『攻める』力に負けはしないという事を。」
本能のみで行動するリオレウスが退却しようとしている。
負けを認めたのだ、ケンシロウの時と同じく自ら身を退く。

両腕を失い、戦意を喪失しているアミバへ止めを刺すべく拳を振り上げるケンシロウ。
両翼で力強く羽ばたき、突風を生み出しそれを邪魔する。
火竜は倒れ込んだアミバを口に咥えて空へと飛び立っていった。

「勝ったか、また逃がしちまったな。」
ホークが水術で傷を癒しながらケンシロウの元へと近づく。
晴れやかな顔をして、昼間の酒飲みとは大違いだ、とお互い気付く事無く同じ事を思っていた。
「また来たら、また追い払えばいいさ・・・。」

383 :邪神?:2007/09/27(木) 07:09:22 ID:JhGIL9Fn0
いつもより長めにやってみますた、邪神です(0w0)
またもケンシロウにフラグ立たず・・・無理にでもアミバ戦長引かせるべきだったか。

ちなみに、気づいてる人は恐らく少数だと思いますが結構前から重大な矛盾があります。
一応、回収方法は用意してますのでスルーしてあげてね(;0w0)

〜感謝のお言葉〜

>>293氏 秘孔とは血液の流れ〜とかサウザー戦で語ってましたから多分ありますw
    アミバを使ってもっと成長させたかったんですがベアにページ取られちゃった(*0w0)

>>295氏 >>相手が雑魚なので、ケンにはもっと大物といずれ戦ってほしいな
    アミバ様涙目・・・まぁ主人公に張り付いてて雑魚戦続きってのも萎えますね。
    ベアの参戦でマッチョ4人組になったし戦略も広がるかなー。

>>296氏 最近スレが停滞気味ですからねぇ、まぁ危機って程ではないですが不安は拭えないかも。
    あとどっかで見かけた「バキ成分不足」ってのも思ったり。
    そろそろ解毒イベントかなー。

>>ふら〜り氏 華麗に乙でした、平成ライダーはファイズとブレイドしかまともに見てなかったり。
       しかし最終回に定評のあるクウガ、ニコニコで削除されながらも生き延びてますな。
       レンタル費用のない貧乏学生は低画質で楽しむとします・・・。

>>スターダスト氏 アドバイスまで頂いて恐縮です。ジョジョの購入で金銭面がきつい・・・。
         画像をパソコンに取り込む術もないし、静止画になりそうな。
         しかし男は度胸なんでも試してみるもんさ。という言葉通りやるだけやってみます。(0w0)
         >>あぁ、RPGの宿屋に行きたい。ひと眠りしたら完全回復って現象、うらやましすぎる。
         現実(?)はそんなに甘くないとVIPの勇者が申しております。
         ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm325909

384 :邪神?:2007/09/27(木) 07:10:35 ID:JhGIL9Fn0
〜講座〜

北斗琉拳 北斗関連の講座はいらないとか言われたが、「カイオウ編はクソカス。」という一部の
     評判にガッカリで見ても居ない人の為に。
     北斗神拳の創始者シュケンの従兄、リュウオウによって作られた。
     個人的な見方だが、北斗神拳以上に殺す事を目的とした拳法で超強力。
     だが、千変万化する戦場で鍛え抜かれた北斗神拳と違って、大抵の技に受身が開発されている。

暗流天破 魔闘気によって無重力に近い状態を作り出す。拳法というより幻術である。
     恐らくカイオウにアンチが多いのはこういった小細工が多いからであろう。
     これを見切ったケンシロウは空中を回転し続け遠心力で自分の位置をつかんだ。
     だが、どう見ても無防備である。北斗豪掌波の様な技を使用されたら直撃間違いなし。
     これでは勝って当然、カイオウが井の中の蛙なのも仕方のない話である。
     初対面で容赦なく使う辺り、隠しておく程の技ではなくいつも使っていたのではないだろうか。
     暗流天破→パンチ→終了 では強くなれる訳がない。才能だけでよく頑張ったものである。

パリィ  前回ベアの説明でも出たこの「パリィ」だが、序盤で覚える技だというのに戦略的すぎる技である。
     一部の例外はあるが大半の物理攻撃は「パリィ」を使用中のキャラには高確率で無効化される。
     防御力の高いキャラに攻撃を集中させる陣形でコレを使う。
     物理攻撃しか出来ない可哀そうな子はもはや涙目寸前である。(魔法?何それ食えんの?)
     インペリアルアロー、通称『死の陣形』で、先頭をベアにして「パリィ」。
     敵の攻撃が次々とベアの餌食になる事から『生贄の陣』と呼ばれ多くのファンに愛用されている。
     攻撃ではなく完全なる防御、守る力は何者にも屈服しないのだ。

385 :作者の都合により名無しです:2007/09/27(木) 13:14:22 ID:mBh36xSn0
お疲れ様です邪神さん。

意外と強敵だったアミバですが、また再登場があるみたいですね。
結構ケンシロウと他のメンバーとの連携も出来てて
ケンシロウもこのパーティに常駐するんだなあ、と思いました。

でも、ちょっとこのケンシロウしゃべり過ぎのような気がするw

386 :作者の都合により名無しです:2007/09/27(木) 18:19:53 ID:gCrtRxMT0
俺はこのケン、フレンドリーで好きだよ
人間らしく結構良く悩むしね
トカゲとかとつるんでる姿とか可愛いし。

387 :作者の都合により名無しです:2007/09/27(木) 22:47:59 ID:wvvM9GDC0
確か邪神さんはつい最近まで高校生だったと記憶したが
よくケンシロウとかアミバとか知ってるね
絶対にリアルタイムじゃないのに

388 :作者の都合により名無しです:2007/09/28(金) 11:45:56 ID:aqawfx790
ケンシロウは10代でも知ってるだろw

389 :作者の都合により名無しです:2007/09/28(金) 16:47:15 ID:XSng6qMn0
パチスロにもなってるから50代のオッサンオバサンも知ってる

390 :ふら〜り:2007/09/28(金) 22:42:50 ID:PbbE05u10
今、北斗はパチスロで知ってから漫画に入る人も多いとか。そういう人はパチスロでの
第一印象があるから、「ザコキャラ」「強キャラ」のイメージが漫画派アニメ派とは少々
食い違っていると聞き及びます。

>>銀杏丸さん(シュラに惚れ アフロに和んだ 黄金時代 序盤終盤 それぞれ萌え燃え)
そういえば星矢と同じくこちらも姉弟か。兄妹より姉弟が好きなもので、ブラコンっぷりの
発揮は望むトコろ。しかし改めて、星矢たちが過去にブチのめしてきた連中とは違うなぁと。
単純な戦力以外が深い。もし星矢一人だったらポルナレフvsパッショーネみたいになるかも?

>>邪神? さん
アミバとケンシロウ、天才同士だけど格の違いが出てますね。状況に応じて冷静に応用も
効くケンシロウと、予定が狂うと途端に崩れるアミバ。あと今回は「守り」で渋くキメてくれた
ベアが印象的でした。血気盛んな若ぇヒーローの、「攻撃こそ最大の防御」とは一味違う。


391 :作者の都合により名無しです:2007/09/29(土) 02:10:40 ID:bgWVn0E80
ここ漫画オンリーですか?
明らかに原作ネタのハルヒのSS書きたいんだけど専用スレが見つからない・・・

392 :作者の都合により名無しです:2007/09/29(土) 08:41:02 ID:5TD/gQSz0
どうぞどうぞ
もはや何でもありになりました


393 :作者の都合により名無しです:2007/09/29(土) 14:13:49 ID:AV0OpcMD0
この前、しぇきさんがハルヒネタ書いてたよね。
ハルヒ好きなので是非お願いします>391さん。

394 :“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコトT:2007/09/29(土) 14:49:11 ID:bgWVn0E80
 今も時々思い出す。
 あれから三年半も経っているっていうのに、すごく鮮明に。
 今が楽しくないわけじゃない。
 あの頃に比べたら、何もかもを壊したかった頃に比べたら、私は楽しい。
 でも、足りない。
 あの日には、あの場所には、あの人には、届かない。

 「七夕…か」
 7月7日、日本は全国的に七夕祭りの日を迎えた。
 東中の一年生の教室で、涼みやハルヒは呟いた。
 織姫と彦星が年に一回だけ会えるっていう誰でも知ってるような話の詳細は置いておく
として、放課後のHR中に夜空を見上げる少女にとっては、一年の内で誕生日よりもクリス
マスよりもお正月よりも楽しみにしている日だった。
 だけど、最近は少し憂鬱だわ。
 と、ハルヒは思う。
 これまた有名な七夕伝説だが、短冊に願い事を書いて笹につるすと願いが叶うという話
しがある。ハルヒはそれをここ数年間、それは丁寧に、(世界中の誰よりも念入りにやっ
ていると自覚できるくらい)丁寧にやってきたのだ。
 なのに、未だ願いが叶う気配がない。
 最近はベガとアルタイルに願いが届いて帰ってくるまで時間が掛かるからだっていう屁理屈
も考えてみたが、正直どうかと思う。
 でも、だったら何で・・・?
 今日は快晴だ。夜空を見上げれば、どっちも良く見えるだろう。
 迷信めいているということは分かってる。
 でも、ないなんて、信じない。
 不思議なことはあるって、信じたい。
「だから私が証明するのよ」
 教室内の生徒達から集まる視線を完全に無視し、涼宮ハルヒは教室を出た。



395 :“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコト:2007/09/29(土) 14:56:36 ID:bgWVn0E80
 よく晴れているというのに、日本独特の湿った風が纏わりつく。昼間とはまた違った熱さだ。
 この後重労働することを考えると少し不安だが、まあ、大丈夫だろう。
 ハルヒはこの数時間で色々なものを用意していた。校門の鍵、図面、そして肝心な石灰と白線引
きは体育倉庫の裏に隠してある。
 すっかりあたりは暗くなっていた。
 でもその分、星は良く見える。
 コレなら自分のメッセージも届くだろう、と満足げに夜空を見るハルヒは、
いよいよどり着いた学校の校門によじ登ろうとした。

 その時だった。

「おい」

 不意に後ろから声がかかった。ビクッとしたが、その声は成人以上のそれとはとても思えなかったので、

「なによっ」
と、強気に答え、頭を声が発せられた方へ向けた。

 そいつは変なヤツだった。
こんな時間に制服で歩いている上に、背中に誰か背負っている。顔は良く見えなかった。
「なに、あんた? 変態? 誘拐犯? 怪しいわね」
自分も十分に怪しいことは認識していたが、それは頭の隅に追いやって、できるだけ不審者を見る目で相手を見つめてみる。
 しかし相手もまんざら馬鹿ではなかったようで、痛いところを突いてきた。
「おまえこそ、何をやってるんだ」
「決まってるじゃないの。不法侵入よ」
 仕方がないので開き直ってやった。初対面なはずなのにおまえと呼ばれたからか、なんとなく
弱いところを見られたくなかった。


396 :“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコト:2007/09/29(土) 15:01:10 ID:bgWVn0E80
 そいつはやっぱり変なヤツだった。
 完全に開き直って手伝えとか言ってみたら、本当に手伝い始めた。
 最初本物の不審者なのかと思ったが、何故か不思議とそんな感じはしないし。
 だったら使わない手はないわね。と、朝礼台の上から思う存分命令する。
 30分程そうしていたが、ふと、思った。

 こいつなら、わかってくれるのかな…?

 朝礼台から飛び降りた。
 本当は少し怖かったけど。
 私はそいつに近づいた。
 でも、こいつなら、他の誰とも違うことをいってくれるんじゃないかと思ったから。
 そしてなんとなく、線引きを取って、
 聞いた。

 「ねえ、あんた。宇宙人、いると思う?」
  少し驚いたから、怖かった。あんたも、一緒なの?
 「いるんじゃねーの」
 意外な軽い答えに、しかし確信のようなものを感じたのは気のせいだろうか。
 「じゃあ、未来人は?」
 「まあ、いてもおかしくはないな」
 何がおかしいのか、今度は微笑交じりだ。
 「超能力者なら?」
 「配り歩くほどいるだろうよ」
 妙に自身ありげね。
 「異世界人は?」
 「それはまだ知り合ってないな」
 「……ふーん」
 やっぱり、変なヤツ。
 「ま、いっか」
 だけど、面白いヤツでもあるみたいだから。


397 :“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコト:2007/09/29(土) 15:07:52 ID:bgWVn0E80
 ついでのように質問してみる。もう少し話したかったからかも知れない。

「それ北高の制服よね」
「まあな」
「あんた、名前は?」
「ジョン・スミス」
「……バカじゃないの」

しばらくそんな会話をして、そいつと別れた。
別れる前、自称ジョン・スミスは北高に、私と似たようなことをするヤツがいるって言ってた。
あいつでさえ、今まであった中では最高に変なヤツだったのに。
それとも、あいつ自身がその人なのかしら。


 そして今、私は北高で、楽しく過ごしている。
後悔はしてないわ。本当に、すごく楽しいから。
仲間だっている。

 でも、それでも、あなたにもう一度会いたいの。

 あなたがここにいないのは分かっていたけど、それでも会えるかもしれないと思ったから。
 まだ、足りないから。これ以上はあると思うから。
だから。

 私は、ここにいる。


398 :hii:2007/09/29(土) 15:16:19 ID:bgWVn0E80
こんにちは。
>>392さん、>>393さん、素朴な疑問に答えてくださってありがとうございます。
なのでいささかスレ違いですが、“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコトを書かせていただきました。
hiiと呼んでもらえると嬉しいです。

SS初心者なんで、いろいろ目が当てられないところがあるかと思います・・・。
温かい目で見てやってください。でも突っ込みは大歓迎です。ていうか突っ込んでくださいw
ていうかこういうのもSSですかね?

あ、あと、最初ののタイトルに付いてるTは無視してください。
ちょっとしたミスです。

今後もよろしくです

399 :作者の都合により名無しです:2007/09/29(土) 17:49:58 ID:5TD/gQSz0
おお、hiiさん(ヒイさん?)新連載おめでとうございます。
初心者と言うことですが、どんどん上手くなってレギュラーで書いてる人を
追い越して下さい。ハルヒ好きなんで期待してます。
もう少し情景描写を詳しくするともっと良くなるかも。
でも、あまり書きすぎるとしつこくなるので加減が難しそうですがw

400 :作者の都合により名無しです:2007/09/29(土) 19:52:32 ID:LciYGPiv0
お疲れ様ですhiiさん
新連載、とても嬉しいです
正直ハルヒは名前くらいしか知りませんが、
ぜひ原作を読みたくなるような面白いSSになるのを期待してます

ハルヒの独白劇みたいな感じになるのかな?
結構1人称の作品は難しいと思いますが
(特に、動きを語らせるのが難しい)
頑張って長編にして、完結させて下さい

応援してますよ!

401 :hii:2007/09/30(日) 00:19:02 ID:WJZzcRAf0
>>399さん
>>400さん
どうもです。まだ右も左も分からない素人ですが、よろしくお願いします。
ありがたいご意見参考に、次もがんばります。
名前は某任天堂のゲーム機的な発音ですw

402 :作者の都合により名無しです:2007/09/30(日) 07:44:00 ID:rt0Za48/0
ヒーさんですか。
私もハルヒの新連載たのしみにしてます。
完結目指して頑張って下さい。

403 :作者の都合により名無しです:2007/09/30(日) 18:39:33 ID:nedD4PNK0
ハルヒは結構好きなので楽しみだな

404 :項羽と劉邦:2007/10/01(月) 00:27:23 ID:+JKyNAjJ0
霧がまだけぶっている森の中。
「あー…」
劉邦の口から気の抜けた声があがった。
「あー…」
韓信も同じくだ。
目の前では張良が呂后を解体している。
「あー…」
また所在なげな声を上げて劉邦が右に首を曲げると
「あー…」
韓信も応答して劉邦の目をみた。
んで、蕭何が呂后の腹を裂いた。
「やっっぱり、ウソだったんじゃないですか」
かーなしーみーのー むこうへぇとー たどりーつけぇーるなーらーぁ
「中に誰もいませんよ」
斬新な視点でお楽しみください。

「終わったな」
「終わりましたね」
「長かった」
「ええ、長かったです」
「竜神伝説は面白いの」
「はい、竜神伝説は面白いですね」
「うむ。それはそうと」
劉邦はニコリと笑って
「このたわけがぁあああああ! 結局鉄人最終巻発売後まで投下が伸びとるではないかああ
あ! 何か月開いた? ええ!? 何か月投下が開いた!!!」
韓信の頬にビンタをかました!!
「だいたいお前、前回鉄人28号の最終巻発売日が7月とかいってたが!! 実際は9月じ
ゃろうが! 武装錬金DVD最終巻のちょっと後! 6月時点でVL2号もギャロンも出て込ん
だから、おかしいと思って調べたらこれじゃ! またかよ! この前は火まんじ間違えたし!」
「ははは。だから10月からはちょびっと支出減りますね。良かった良かった」
「書いてるやつの懐具合などはどうでもいいわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

405 :項羽と劉邦:2007/10/01(月) 00:28:46 ID:+JKyNAjJ0
劉邦は狂ったように韓信をたたく! 韓信は甘んじて受ける!
別に連載が滞ったのは精神状態うんぬんではなく、ただ執筆すべききっかけが掴めなかった
だけだ!
断じてREDのGRのカオスっぷりを見て「あれあんのに執筆するのどうするよやめとくのがいい
のです←結論」と意気消沈したワケではない。いや、ちょっとはありますごめんなさい。
「るせぇ! ラノベの後書きっぽい内輪ネタばっか振ってんじゃねぇぞおおおお!!」
不意の声とともに、劉邦の足もとが爆ぜた!
どうやらレーザー光線らしい。少なくても張良はそう分析した。
「だ、誰じゃ!」
劉邦が蒼白になったのもむべなるかな! すでに最大の宿敵である呂后は苦戦の末に葬っ
た! しかしそれとほぼ入れ替わりに恐るべき能力者が襲来している!
「てめーら、この時代に呂后殺ってんじゃねーぞ! もっと後の時代に殺されるんだろーが!」
見れば白い影が光線銃を持ってわりと遠い場所にいる!
「日食にビビり倒して犬にかまれてくだらん痣を作って、読者に見たくもない胸チラ見せてよ、
んで死ぬのが正しい呂后の在り方なんだよおおお!! だから今は助けるのが筋だ!!」
『馬鹿め! それを決めるのは我らだ!』
まったく張良は抜け目ない。銀線を手にもう謎の男の背後にいる。
後は首なり頭なりをカッ切るつもりなのだろう。
「ヘッ! そういやニコ動によぉ〜!」
謎の男は張良に気付いていないらしい。腰の辺りで銃を構えたまま、怒声を劉邦たちに
浴びせ始めた。
「白昼の残月(鉄人28号の映画版です)あがってるじゃあねーか! おじさんアレにゃあビビ
ったぜ。映画とかどうやって上げてんだろうなあ。映画館で撮影してんのか? ま、どーせD
VD借りてみるから関係ねーが」
『なっ……』
律儀にも虫文字で張良が驚愕したその理由を、韓信は一拍遅れて理解した。」
銀線は男の前でくにゃりと曲線を描いたまま、空中で静止している。
張良が意図的に止めていないのは、彼の握りこぶしが紅潮するほどに強く握られ、果ては内
側より赤い液体が漏れている事からも明らかだ。
「握ッタ銀線ガ拳ニ食イ込ンデイルセイダト思ワレマス」
バベルの塔のコンピュータっぽく分析する蕭何はさておき、それだけ張良は力を込めている。
にもかかわらず彼はなんら男に傷をつけられずにいる。

406 :項羽と劉邦:2007/10/01(月) 00:29:52 ID:+JKyNAjJ0
「よーぅ。張良さんよー。司馬遼版じゃいやに病弱な張良さんよぉ〜」
謎の男は振り返ると、ニヤリと笑みをくれた。その顔立ちや髪形にデジャビュを覚えた張良で
はあるが、横山作品の主人公というのは大抵この系統の顔立ちなので気のせいだ。
大体にして登場人物の容姿がバラエティに富んでいるのはマーズか影丸か鉄人ぐらいで、
後はもう似たり寄ったりなのである。学校の先生なんて特にそうなのである。更には登場人物
の名前も「権左」だの「山部」だのがよく被る。
「いっとくがあんたの攻撃は通じないぜ。なぜならおじさんは……おっとこれ以上は内緒だ」
「敵に能力をばらす馬鹿もいない、でしょう?」
韓信はぼーっとした顔のまま、ポツリとつぶやいた。声はあまりに小さく、男はそれが自分に
投げかけられた声だと気づくまでやや時間を要した。
「その通りだ」
「でも分かっちゃいました。バリアー張ってますよね? 原理はよくわかりませんけど」
男はちょっと飛び上がりそうになった。で、声をノド元の辺りで飲み込み、落ち着くために自分の
目的を反芻する。
彼の名前はジュン。通称を時の行者といい、戦国時代から江戸時代の日本へタイムスリップ
を繰り返したコトで有名である。
そんな彼はなぜか今回古代中国にいる。で、探ってみたら劉邦らが呂后を殺そうとしている。
基本的に歴史に不干渉な行者としてはそれは見逃せない。
ちなみに年表では

前204 本SSの舞台
前180 呂后死去

となっており、ココで呂后を殺られちまうと、歴史を変えたくない行者にゃ分が悪い。
(しかしおじさんのバリアーを見抜くとはねー 参った参った! さすがは大元帥! まぁしかし
攻撃が通じないのは確かだぜ。なら、一方的に攻め……)
「張良どの、御子息を召喚ください。それで十分やぶれます」
『いいですとも!!』
「……なぜにゴルベーザ?
劉邦のぼやきはさておいて、張良が手を上げると地面が砂柱を上げ、大人より大きな黒光り
が9体、空高く舞い上がった!

407 :項羽と劉邦:2007/10/01(月) 00:30:58 ID:+JKyNAjJ0
「まず一番手は影となり!」
「姿はあれど音は無し!」
「静かなれども振り向かば!」
「十重二十重に舞い上がる!」
「菊の花びら!」
「浮世の湖面に映り散る!」
「望みとあらば目にもの見せよう!」
「我ら命の大あばれ!」
「九紋の龍が天を貫く!」
単行本ではページの順番が変わっていたあの口上だ。
それが終わると影どもは重苦しくドサドサ着地した。
薄暗い森の中。劉邦がそれらの正体を理解するまでしばらくかかった。
だが……
「アリ…?」
フォルムはそれだが、しかしおかしい。
「アリですね。あ、漢王は困ると情けない顔にございまする」
「わしの顔はともかくでかすぎないか? 本当にあんな生き物がアリなのか?」
「”蟻”と”有り”を掛けているのですね?」
「殺すぞ。8年後ぐらいに殺すぞ。で、あのア…黒いのは張良の何なのじゃ?」
触覚をもさもさ動かすアリたちは、ピザ丸出しの呂后を乗せても走れそうな位の大きさだ。
もちろん鉄人28号に出てきた巨大アリが元ネタであるコトはいうまでもない。
案外鉄人はこういうヘンなモンスターと戦ったりする。食人植物とか。いや、こっちはサンダー
大王だけど。ちなみにサンダー大王はマーズや鉄人28号のひな型となった作品ではあるが
いかんせん知名度が低すぎる。でもあの古代ローマみたいな甲冑姿は格好良い。
話はそれたが、アリが規格外すぎるんで劉邦は困った。
困りながら、眉毛をシャキンと引き締めた。情けない顔といわれたのを気にしているのだろう。
『韓信どのがおっしゃってるではありませんか。これぞ我が息子たち! 名を張辟彊(ちょうへ
ききょう)』
「月が綺麗じゃのう……」
うっそうと繁る木の葉たちを見上げ、劉邦は呟いた。狂った現実から目を逸らしたい時だってあるさ。
『まだ3かげつだが強いぞ。さぁ行け!』
張辟彊たちはかさこそ走り、行者に飛びかかった。

408 :項羽と劉邦:2007/10/01(月) 00:32:04 ID:+JKyNAjJ0
「フン、馬鹿め! こちらに光線銃があるのを忘れたか!!」
ああ! 行者の言葉通り光が瞬くたびにあたら幼い命は爆砕されて終わった。
『はーはっはっは!! こりゃ僕の予想外!! まいったなあ!!』
「これ → 『』 が同じだからといって、首が回転して猫娘になりそうなテンションはやめろ!」
「なったらいいですよね。呂后ぐらいしか女のコいませんし」
あれを女のコと定義するのは、ゆめりあ先生を横山キャラとしてカウントするぐらい無理が
あるだろう。ちなみにゆめりあ先生はふたば発祥のキャラらしいです。
「クソが! どうしてそういうマニアックな方向でネタ振るんだよボケ作者ああああああ!!」
馬鹿め。これが俺だ。参ったか。
「ならてめーの好きな横山キャラを皆殺しにしてやらあああああああ!!」
行者は光線銃を乱射しまくった。
飛びかかろうとしていた張良がまず撃たれて爆砕した。
続いて飛びかかった蕭何も同じ運命。
彼らの肉片やら汁が行者のバリアーに降り積もった。
んで韓信が劉邦をかばったが、レーザーが貫通して二人とも臓物をブチ撒けた。
おお、なんというコトを。確かに山風作品じゃ鉄砲最強だが。
「これで俺最強ピャポピャポ」
勇む行者であったが、叫んだせいか息が切れる。
そもバリアーは攻撃を遮断する代わりに空気も遮断するのだ。
だから長時間使用するとかえって身がやばい。まぁ、それは後付け設定なワケで、島原の
乱にでくわした時は一時間以上水の中で耐えしのいでいたワケだが。
ぜぇぜぇと息つきながら行者は勝利者特有のギラついた笑みを浮かべて
「まぁいい、このままじゃ呂后も助けられない。バリアー解除だ!!」
軽はずみな行動をしばらく後悔する羽目になった。
バリアーの上に付着していた血、これをただの血だと思って受けたのが悪かった。
肩口やら頭についたそれらはぶしゅう〜〜〜〜〜〜と白煙上げて体組織を溶かし始めたで
はないか。
「うっぎゃあああああああああ───────────────────────!!」
苦痛に絶叫しつつ地面を転げまわる行者を冷たく見下ろす4つの影があった。
言わずと知れた劉邦と3つのしもべだ。
爆砕したはずの彼らがなぜ生きているかというと。

409 :項羽と劉邦:2007/10/01(月) 00:34:09 ID:v+WO9Ceu0
『馬鹿め。貴様はすでに韓信殿の術中に陥っていたのだ。我々だと思って殺したのは我が
息子・張辟彊。血だと思っていたのは……何物をも溶かす蟻酸だ』
「彼らの体内を流れている蟻酸は魔界のマグマと同じ成分でね…! 温度は超高熱! そ
して強い酸をも含んでいる!」
「今度は死神かい……」
「まぁ、組曲作った後なので使いたいのでしょう。で、私は予め例の霧のぶそ……いや、魔界
衆の残した宝貝を使っておきましたので」
「やった! バベルの籠城編がOVA化されたよママン!!」
何事か喚きながら光線銃をめたらやったら撃ちまくる行者を、劉邦たちは呆れたように見た。
『──この通り、お前は既に幻覚と現実の区別もつかない精神地獄(ワンダーランド)に陥っ
ている。もはやこの声もキチンと届いているかどうか』
「ともかく放っておきましょう。いまは呂后にトドメを刺すのが急務」
「いや、解体してスクランの最終回みたいな目に遭わしたらたいていの奴は死ぬと思うが」
笑いながら振り返った劉邦(ちょっと主人公として問題があるような気もするが、元来こういう
奴です。逃走中に子供を馬車から振り落として逃げる速度を早くしようとしたり、功臣を次々
粛清したり)の表情が硬直した。

解体したはずの呂后の死骸!
それが皮一枚だけになってベロンと地面に横たわっている!
まるで昆虫が脱皮して抜け殻だけ遺すように!

いったい呂后はどこに消えたのか!?

──次回を待て!

410 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/10/01(月) 00:36:01 ID:v+WO9Ceu0
実はスクランの深夜版、あの修羅場っぷりが大好きです。
マガジン連載の奴じゃヒロイン2がヒロイン1殺して終わるという真逆展開なのも面白い。
しかし「ぐるぐる回る〜♪」てなOPの時とはずいぶん変わっちゃいましたが、これも夕方から
深夜へ移行したためなんでしょうかね。>スクラン

>>351さん
日常パートでは賛否の分かれるコかも>まひろ ただしシリアスパートとなるとそれはもう
ヒロインとしてかなりの破壊力のあるコですので、その辺りで秋水といい連携を取って欲しく
思っております。その通りに動いてくれるかどうかが心配ですが……

>>357さん
秋水は悩める主人公。その葛藤の緩和や最後のひと押しをまひろがやってくれたら、それは
もういい信頼関係に基づいたいいカップルになると思うのです。男女が懸命に何かを共同で
やる。ただの恋愛よりも深く愛しい関係こそ自分の理想なのですよ。

>>358さん。
おお。意外にアレは有名なのでしょうか。時期としてはバキスレにくる一ヶ月くらい前の作品
だったように記憶しているのですが…… あれは桃園の誓いが自分的ハイライトでした。その
後の劉備のお母さんが泣いている所も。長大な物語の幕開けは、最終回とは違った意味で感慨深く……

ふら〜りさん
錬金キャラでは秋水よりも防人の方に年齢が近いので、妙に感情移入してしまいますw 彼
の若くないって感傷は、ほぼそのまま自分の感覚。で、彼の年上目線はちょっと自分の願望
込み。年齢相応の責任というのが性格・環境上持てないコトもままあるのです。

>>360さん
なるべく長く確実に完結させる所存であります。その前に項羽と劉邦も。

銀杏丸さん(ありがとうございます!)
ムーンフェイスはやはり食えない男。深謀遠慮でも桜花が勝てるかどうか。これは原作の早坂
姉弟編が大胆にアレンジされるかも。あぁでも、その前にカズキの出番ってあるのでしょうか。
というか武装錬金のSSで出番少ないような。うーん。原作で描写されつくしているせい?

411 :作者の都合により名無しです:2007/10/01(月) 08:56:57 ID:s06cIOWB0
お疲れ様です
永遠の方とはまったく違う方向性で脱線しておりますが
どんどん趣味に走ってくださいw

412 :作者の都合により名無しです:2007/10/01(月) 14:13:38 ID:lliRUsoe0
スターダストさんは本当にSSを書くのが好きなんだなあ、と
この作品は特に伝わってくる。
ナンセンスギャグが多いけどなw
横山光輝なんて氏の年齢からしたら普通は守備範囲外だろうにw

413 :作者の都合により名無しです:2007/10/01(月) 22:41:04 ID:0Mg5TRRb0
永遠の扉は好きなんだけど、こっちはちょっとあれかな・・
横山光輝あんまり知らないし・・


414 :作者の都合により名無しです:2007/10/02(火) 15:49:42 ID:oAwByNAW0
俺はスターダストさんが楽しんで書いてる感じで好きだけどな

415 :作者の都合により名無しです:2007/10/02(火) 20:48:28 ID:+OOj6dr4O
>>410
チラチラしか見た事無いけどそれってスクランではなくスクイズでは・・・・

416 :ふら〜り:2007/10/02(火) 21:30:03 ID:hXUjtUtQ0
>>hiiさん(おいでませ! 錬金同様、私の中で原作とは別のハルヒ像ができるのが楽しみ)
特撮に史実軍記に推理小説まで持ち出した私がおりますゆえ、ご安心めされ。でハルヒは
未読ですが、本作を見る限り聞き及んでいたイメージより可愛く思えます。偉そうながら
無邪気な感じ。釣り合いそうな男の子もいるし、ここからまた違った一面を見せてくれる?

>>スターダストさん(私もつい先日、某懐アニDVDBOXを購入して浸っておるトコです)
女の子の不在っぷりといい、明るく元気な殺伐ワールドといい……前にも言いましたが、
本気で『永遠〜』との番外共演編に興味アリ。何気に結構な戦闘能力を誇るこっちの面々、
ヒケをとらないかも。むしろ問題は、呂后に慣れた彼らが小札や千歳を見た時の反応かも。


417 :モノノ怪〜ヤコとカマイタチ〜:2007/10/04(木) 21:14:41 ID:ItO8MhiX0


風が強く吹いていた。
全てを切り裂いたその風は、桂木弥子の日常を吹き飛ばし、少しの悲しみをはらんで、
そして何よりヤコの命より大切なものを奪い去っていった。


   モノノ怪〜ヤコとカマイタチ〜


「ああもう、何で秋って何食べても美味しいんだろ」
有り金叩いて買った石焼いもの山を着々と胃袋へと消滅させながらヤコは呟いた。
「あんたはいつも何食べても美味しいでしょ」
籠原叶絵が冷静に言う。この宝物の山をみて冷静な叶絵はどこかおかしいに違いないとヤコは思う。
「全くもう、どうすんのよ有り金叩いちゃって」
「いいじゃない、お芋屋さんのおじさん喜んでたし。人助け人助け」
「人助けはいいけどさ、あんた。あと旅行一泊あんのよ?
 前払いだから宿代はいいとして、明日の昼ごはんとかお土産とかどうするの」
「…………!!!」
「なによその超意外なこと言われましたみたいな顔は」
「…………」
「なによその今なら靴だって舐められるみたいな顔は」
「叶絵ぇぇぇ」
「あんたの食事代なんてだしたらあたしが破産でしょ!その芋で明日の昼凌いで土産にしなさい」
「こんなのおやつなのに……」
「あたしなら三日は凌げるんだけど」
「食欲の秋なのに……」
「あたしにも秋はきてるんだけど」
「はああああ」



418 :モノノ怪〜ヤコとカマイタチ〜:2007/10/04(木) 21:16:52 ID:ItO8MhiX0

ヤコは口に芋を詰め込みながらため息をついた。
横で叶絵があんた器用よねなどと呟いているが気にしない。頭を回転させる為には糖分が必要なのである。
とにかく、この急場を乗り越えなければならない。
明日のお昼ご飯が食べられないなんて考えただけで飢え死にしそうである。
もくもくと芋を頬張りながらヤコは考える。
「……あんた考えてる速度より食べてる速度のが速いんじゃないの」
叶絵が横で何か言っているがヤコは気にしない。今、ヤコの頭脳はヤコ史上最速で回転しているのだ。
もくもくもくもく、と芋を食らうのに……ならぬ思考を巡らすのに集中していると、かちりと歯に何かが当たった。
「? なんだろ」
それは小さなアルミホイルだった。

芋の旨さのあまり周りのアルミホイルまで食べてしまったのかと一瞬思ったけれど、
小さく折りたたまれているところを見るとそうではなさそうだ。中に何か入っているようである。
ホイルを広げてみると小さい紙きれが入っていた。
『京都の名店 絶品コンソメスープ食べ放題券』
「叶絵!これはお芋屋さんの恩返しだよ!」
「……それはどうだろう」
「あああもう、これで飢え死にしなくてすむよ叶絵、これは命より大事にしなきゃ!」
小さな紙切れを拝む勢いのヤコを見て、叶絵はため息をつく。
「多少怪しい気もするけど、まああたしにたかられなくて良かったよ。ほら宿着いたよ」



419 :モノノ怪〜ヤコとカマイタチ〜:2007/10/04(木) 21:18:15 ID:ItO8MhiX0

叶絵に促されて漸くヤコは宿に着いたことに気がついた。
食べるのに、いや考えるのに夢中のヤコを叶絵がナビゲートしてくれたのだ。
叶絵が居なかったら歩いている間に最低五回は土管に落ちたり電信柱にぶつかったりしただろう。
やはり持つべきものは友である。

と。
宿の前に一人の男が居た。
妙な青い和装。頭にも青い布を巻いている。
大きな箱を背負い、腰には狛犬のような装飾の棒がさしてある。剣だろうか。
鼻筋と目の淵に茶の隈取りがしてあり、目の下には点が三つ同じ色で描いてある。
静かに佇むその瞳は宿をひたと見据えていた。
「か、叶絵、なんだろあの人」
「馬ッ鹿、ここは京都だよ?太秦あたりの役者さんでしょ。
 それよりイケメンよイケメン!」
「ええ?だってここ太秦から離れてるし衣装のまま宿泊まる?」
「大丈夫だって。―――あのう、役者さんですか?」
腰の引けているヤコと違って叶絵は積極的に男に話しかけた。
きっと叶絵は青い服の魔人に毎日いびられた事が無いから警戒心が薄いのだろう。
ヤコなどその魔人のお陰で毎日生死の淵を彷徨っているのだ。
青い服の妙な男というだけで警戒してしまう。



420 :モノノ怪〜ヤコとカマイタチ〜:2007/10/04(木) 21:19:38 ID:ItO8MhiX0

「いいえ、」
男は視線をヤコ達に移した。束ねてある髪が少し揺れる。
「ただの、薬売り―――、ですよ」
「薬売りさんですか……」
ヤコと叶絵は目を合わせる。富山の置き薬というものを聞いたことがあるがその類だろうか。
「こちらへも、薬を売りに?」
なんとか男と会話を続けたいのだろう、叶絵が訊く。
薬売りは少しだけ口を歪めて視線を宿へ戻した。
「物の怪が―――出るのでね」

その時、一陣の風が吹き抜けた。
「風、か」
その風は足元の木の葉を舞い上げ、唖然としていたヤコの手から小さな紙切れを奪い去った。
……ヤコが絶望の悲鳴を上げるのは18秒後のことである。

                             <続く>

421 :ぽん:2007/10/04(木) 21:24:32 ID:ItO8MhiX0
こんばんは。ぽんと申します。
自分はオリンピック並の頻度でしか投下してませんが
皆様の投下をいつも楽しみにしてます。

モノノ怪アニメ終了記念とネウロアニメ開始記念でコラボしてみました。
タイトルで思いっきりネタバレしてますがまあそんなお話を書けたらと思います。
ちなみにネウロは全く出ませんw

一応3、4話くらいの予定で、週一くらいで書けたらなあと思ってはいるのですが
来週はネット接続のできない環境へ行かねばならないこともあり
もしかしたら少し遅くなるかもしれません。

が、書ききるつもりはありますので、皆様しばらくお付き合いください。

422 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 09:45:27 ID:P1NT/8Jo0
P2!〜after 10 years〜 前篇

―――時は西暦2017年。週刊少年ジャンプにおいて、ある意味伝説と化した一つの漫画があった。
其の名は<P2!>。21世紀最大のトンデモ卓球漫画とも称される名作にして問題作である。
世に卓球ブームを巻き起こし、アニメ化・実写映画化・カードゲーム化・ミュージカル化・その他ありとあらゆる
メディアミックスを行いながら、連載開始から足掛け11年。
ついに久瀬北と王華学園との、波乱に満ちた全国大会決勝戦が始まろうとしていた―――

「とうとうここまで来たな…」
大歓声の中、感慨深げに眼鏡の男―――久瀬北卓球部部長・遊部(あそべ)が呟いた。
ここは全国大会決勝の地、中学生で卓球を志す者ならば誰もが憧れる場所―――そう、聖地・甲子園である!
そしてグラウンドのド真ん中にどっしりと設置された、神々しさすら放つ一つの卓球台―――
それこそが両雄相まみえる、最終最後の決戦場なのだ!
「色々あったな…」
同じく感慨深げに言ったのは、遊部の盟友にして、卓球部副部長・川末(かわずえ)。
そう、本当に色々あった。ピンポン玉で人や物が吹っ飛ぶなど序の口、最終的にはラケットを振った風圧だけで地面が
抉れている始末だった。
「だが、ここではそんな心配はいらん。卓球の聖地・甲子園―――そこらの試合場とは頑丈さが違う。滅多なことでは
壊れはしないさ。気にせず存分にやればいい―――気にするのは、相手だけにしろ」
卓球部顧問・蒔絵(まきえ)は向い側に並ぶ王華学園の面々を見据えた。
「王華…!」
居並ぶ面々の中でも一際小柄な少年―――藍川ヒロムは闘志を漲らせていた。王華との因縁―――その全てに決着をつける
時がついに来たのだ。
「久瀬北か…やはり来たな!」
王華卓球部副部長・鰐淵(わにぶち)が厳めしい顔で睨みつけてくる。その身体からは、金色の光が溢れ出していた。
そんな彼を、部長・相馬(そうま)が宥める。
「ふ…落ち着け、鰐淵。オーラが漏れているぞ」
「む、すまん。こんなところで無駄にオーラを出して、体力を消耗させては元も子もないな…」

423 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 09:46:37 ID:P1NT/8Jo0
―――さて、P2!愛読者には今さら言うまでもないだろうが、一応オーラについて説明しておこう。
オーラ。それは県大会3回戦で初めて確認された現象であり、強力な卓球プレイヤーのみが生み出すことのできる神秘の
パワーにして、トッププロですら会得している者は10人にも満たないという、卓球プレイヤーの究極の境地である。
その割には全国だと基本的に全員オーラが出せるのだが、それについての質問は一切受け付けん!
「頑張れよ、藍川…それにみんな…!」
三塁側観客席(久瀬北の応援席)からヒロムたちに声援を送るのは、かつてはヒロムと反目していた男・前園である。
久瀬北の活躍を間近で見てきた彼は、今や久瀬北になくてはならない応援団長だ。え、乙女ちゃん?アキラ?お嬢?
ああ、そんな子たちもいたね。
関東大会入った辺りから女性キャラほぼ全員、全然出なくなったけど。その代わり美少年キャラは醗酵するくらい出てくる
ようになったけど。
まあとにかく前園は、今では「藍川たちの活躍をいつか漫画にしてやるぜ!」と意気込んでいる。後に釣船屋で額に汗して
働きながら漫画を描く彼の姿があったというが、定かではない。
それはともかく、ついに試合開始である。
まずはS(シングルス)1―――久瀬北は遊部!そして王華は一年生にしてレギュラーを勝ち取った柊十悟(とうご)!
事前の予想では、遊部の圧勝と見られていた。それもそのはず、十悟の卓球力は精々ピンポン玉でコンクリートを破壊する
程度―――数値に直すと130程度だが、遊部の卓球力は実に300(ショットの余波だけでクレーター)に達していた。
彼我の実力差は歴然―――事実、序盤は遊部が完全にゲームを支配していた。だがセットカウント2−1になったその時、
十悟の身に変化が起こった。
「遊部さん…悪いがサービスタイムは終わりだ。俺の本当の力を見せてやるぜ!」
「…!?な、何やて!?あれは…まさか、サタン化か!?」

424 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 09:47:37 ID:P1NT/8Jo0
―――さて、P2!愛読者には今さら言うまでもないだろうが、一応サタン化について説明しておこう。
サタン化。それは全身に漲るオーラを全て暴力的な方向に向けた、卓球の暗黒面の奥義である。県大会準決勝において、
日本に来た三人のチャイナの二人目がこれを使い、遊部を瀕死の状態にまで追い詰めたが、結局は己の力を制御しきれず
に、再起不能に追い込まれてしまった。
遊部の脳裏には、その時の悪夢のような光景がまざまざと蘇っていた。サタン化―――それは絶対に使ってはならない、
云わば禁断の扉の先の開かずの間のパンドラの箱に閉じ込められた、えーと、とにかくヤバいのである!
「あかん…!十悟くん!それだけはやめるんや!二度と卓球ができひん身体になってまうで!」
「うるせえええええぇぇぇ!!」
十悟はもはや聞く耳持たない。サタン化のもたらす力に、完全に心を奪われているのだ。見る見る内に、遊部の身体が血に
染まっていく。遊部もオーラで身を護るが、それではとても追いつかない。
「オラオラァ!そんなチンケなオーラで俺のサタン卓球術を破れるかよぉ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」
「ぐうっ…しゃあないな。アレをやるしかないか!」
遊部は満身創痍の身体に気合を入れ、ラケットを握る手にオーラを注ぎ込む。
「ドーマンセーマン!その悪しき思い、清めるも陰陽の道!成仏せいやぁ!」
これぞ遊部の秘技・悪神殺し(サタン・スレイヤー)!ラケットに清浄なるオーラを込めて放つショットは、全てを癒し
清める―――そう、サタン化さえも例外ではない!
いや、むしろ遊部はサタン化の危険性を身をもって知っているからこそ、この技を編み出したのだ!
「あ…ああ…」
遊部のオーラを浴びた十悟から、ドス黒いサタンオーラが消えていく。そして、彼の中の悪しき心も―――
「どや…ええ気持ち…やろ…」
遊部はそう笑いながら―――その場に倒れ伏した。
悪神殺し―――それを使うためには、体内のオーラ全てを絞り出す必要がある。結果、遊部はもはや、立つことすらも
ままならなくなったのである。
「あ…遊部さん…あんた…大バカ野郎だ…!俺なんかのために…!うわぁぁぁーーーっ!」
十悟は泣いた。己の罪深さと、そして、そんな愚か者を救うために命を賭した漢のために―――

425 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 09:48:41 ID:P1NT/8Jo0
10分後。
「いやー、すまん。勝てんかったわ」
応急処置を終え、意識を取り戻した遊部は皆に詫びる。
「そんな。遊部さん以外が彼の相手をしていたら、命に関わっていたかもしれません」
ちなみに試合結果は、その後十悟が責任を感じて棄権を申し出たため、引き分けとなった。卓球に引き分けのルールが
あるのかどうか知らないが(多分ない)、とにかく引き分けである。
「S2は、僕に任せてください!」
力強く言い放ち、卓球台の前に立ったのは眞白(ましろ)―――天才の異名を持つ、白皙の美少年だ。
まあ、この漫画で天才なんて言われたところで今さら有難味はない。全国だけで天才と呼ばれる男は2ダースくらいいた。
けどまあ眞白、彼は天才である。天才だから強い。多分。
「お前か…眞白」
対するは王華副部長・鰐淵。二人は以前の練習試合で戦って以来の因縁の相手だ。
S2、眞白VS鰐淵―――始め!
「行くぞ!サイドワインダー最終進化系・・・バハムート!」
―――さて、P2!愛読者には今さら言うまでもないだろうが、一応サイドワインダーについて説明しておこう。
サイドワインダー。それは眞白の必殺技であり、玉が真横に跳ねるという、連載開始時は凄かったが今思えば実に普通な
技である。色々進化系もあるのだが、基本的にどう変わってるのかよく分からんという意見が2ちゃんでは大半だ。
ちなみに多用すると肘が壊れるという設定もあったが、そんなもん今は何処吹く風。肘?湿布貼れば治るよ。
しかし何でサイドワインダーの最終進化系が蛇とは無関係なバハムート(神話でのバハムートは魚である)なのか、
理解に苦しむところである。
とにかく眞白は必殺のバハムートをいきなり放った!大して鰐淵は―――
「成程…インパクトの瞬間に肘を20度右方向に回転させ、その0.1秒以内に逆に左方向に30度回転、そしてオーラ
を込めて打ち出す…実に理にかなったショットだ」
分かったような分からんような解説をしつつ、彼はかっと目を見開き、気合一閃、バハムートを打ち返す!
「だが、それが切り札というなら哀れだな!はああああ!覇神砲(ゴッド・ブラスター)・1cm口径!」
「な…うわああああ!」
ミサイルの如き破壊力でかっ飛んで来るピンポン玉。眞白はその直撃を受け、フェンスにめり込んだ。そのまま気絶
するかと思われたが、彼はフェンスから脱出し、よろよろと立ち上がった。

426 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 09:49:41 ID:P1NT/8Jo0
「ま…まさか…なんて威力だ…しかも…一段だと…?まだ上があるのか…!?」
「ほお…立ち上がったか。素晴らしい精神力だ…それに敬意を表し、最初に言っておこう…」
鰐淵は眞白に向けて、絶望的な宣告を行う―――!
「俺の覇神砲は、108cm口径まであるぞ」
それを聞き、誰もがざわめく。恐るべき威力の奥義・覇神砲―――それがまだ、ほんの入り口でしかなかったのだ!

―――その後の戦いは、まさに一方的な虐殺だった。
眞白も諦めずにバハムートを打ち続けるも、鰐淵には通用しない。大して鰐淵は、どんどん覇神砲の口径を上げていく。
もはや眞白は一撃ごとに観客席へと叩きつけられるサンドバッグ同然だ。
点差ももはや絶望的だった。セットカウント2−0。しかもあと一点取られればマッチポイントである。
「眞白…お前はよく戦った。もはや棄権したとて恥ではない。ここまでだ」
棄権を迫る鰐淵。だが―――
「ぐ…まだだ…」
だが―――眞白の目は、まだ死んでいない!
「まだ…こんなことで…」
「…死に急ぐか、眞白。いいだろう…ここまで口径を上げたのはお前が初めてだ!覇神砲・69cm口径!」
もはやそれは、ピンポン玉の威力を明らかに超えていた。一個兵器に匹敵すると言っても過言ではないだろう。
眞白は上空数十メートルまで打ち上げられながら、脳裏にこれまでの人生を浮かべていた。
最後に浮かんだのは、卓球部の仲間たちの笑顔だった。
(ごめん…みんな…僕は…ここまでだよ…)
そのまま、眞白は観客席に叩きつけられる―――かと思われた時、突如飛び出した巨大な影が、眞白を受け止めた!
「ふう…危なっかしくて、見てらんねえぜ」
それは、人間離れした巨体を誇る男だった。
「何諦めてんだ…眞白ちゃんよ」
「あ…あなたは…」
眞白はその男を見て驚愕を隠せない。何故ならば、その男は―――
「あなたは…超山崎(ちょうやまざき)さん!」

427 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 10:03:18 ID:kP/PyMVR0
―――さて、P2!愛読者には(以下略)超山崎さんについて説明せねばならないだろう。
超山崎。その名の通り、地区大会準決勝の相手である秀鳳学園の副部長である大山崎とは従兄弟―――の親戚の叔父さんの
甥っ子の又従兄弟の叔母さんの祖父の孫の友達の隣の家に住むという、深い因縁を持つ男であり、P2!において、初めて
試合で相手を病院送りにした男である。
県大会決勝、S3で眞白と戦い、大山崎の2倍のパワー・体力・身長・体重を持って眞白を終始圧倒したが、最後の最後で
眞白が編み出した新技・ヨルムンガンドによって体育館の壁に激突、全治3ヶ月の重傷を負い集中治療室に運ばれた。
その彼が、何故ここに―――
「へ…決まってんだろ。てめえに気合を入れにだ。この俺様を倒しといて、あんな野郎に負けてんじゃねえよ!」
バン!と眞白の背を叩く超山崎さん。その荒々しくも、何よりも優しい激励に、眞白の眼に闘志が蘇った。
「ありがとう…超山崎さん…」
そして、ゆっくりと、だが、力強くグラウンドに向けて歩き出す!
「もう一度だけ…やってきます!」
「ああ…やってこい!骨は拾ってやらあ!」
観客席から降り立ち、再び卓球台へ向かう眞白。ボロボロに成り果て、それでもなお諦めぬその漢に、会場の誰もが静かに
拍手を送る。
「待たせたね…鰐淵さん」
「この卓球台に舞い戻ったことは誉めてやろう…だが、これで終わりだ!」
鰐淵は勝利を確信し、覇神砲・108cm口径を放つ!全てを砕く必殺の一撃を前に、不思議と眞白の心は穏やかだった。
そして、眞白はゆっくりとラケットを振る―――
(みんな…見ていてくれ…これが僕の最後のショット…)
それは風前の灯火なのか―――眞白のオーラがこれまでになく激しく光り輝いた!
「サイドワインダー・最終を超えた究極進化系―――八岐大蛇(ヤマタノオロチ)!」
鰐淵渾身の覇神砲・108cm口径すら吹き飛ばし、さらに原理は分からないが八つに分裂したピンポン玉が、鰐淵を襲う!
それはまさに―――八頭の大蛇(ヤマタノオロチ)!
「な、何い…ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
勝利を確信したが故に、鰐淵には油断が生じていた。彼は八岐大蛇をまともに喰らい、ラッキーゾーンへと放り込まれた。
白目を剥いて、ピクリとも動かない。完全に失神していた。

428 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 10:04:19 ID:kP/PyMVR0
「し…勝者眞白!」
審判が勝鬨をあげる。プレイヤーが戦闘不能に陥った場合、それまでの得点に関係なくその場で敗北は決まってしまうのだ。
つまり勝ったのは―――眞白だ!
それと同時に、ヒロムを先頭として仲間たちが眞白に駆け寄った。
「やったな、眞白!」
「すごいで、ほんま!大金星や!」
「眞白くん!眞白…」
祝福の言葉を言おうとして、ヒロムは気付いた。眞白はもはや―――何も見えていない。何も聞こえていない。
彼は己の全てを使い果たし―――力尽きていた。その身体はゆっくりと、グラウンドに崩れ落ちていく―――
「眞白くん…?…眞白くーーーーーーーーーーーーん!」
ヒロムの悲痛な声が、甲子園の空にこだました―――!

429 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2007/10/05(金) 10:05:22 ID:kP/PyMVR0
投下完了。意味もなく前後篇ものだったり。
執筆がいまいちなので、気分転換に書いてみた駄作。
週間少年ジャンプで連載中のP2!が10年後も連載が続いてたらこんなんになるのかなあ…と
思いながらも、こうはなってほしくないと願いながら書いてます。
ある意味テニプリとのクロスオーバーかも。
ただし、今回のが大不評だったらお蔵入りです。

>>236
僕なんぞと比べたらサナダムシさんに失礼ですよ。彼は本当に偉大。

>>237 >>238
復帰したというにまだスランプの上こんなアホなもん書いてます。

>>239
正直、あんま期待せんでください(笑)ただ、どんだけスランプでも、例え十年かかっても完結だけはさせたい…

>>ふら〜りさん
まあ、女子供というだけでブチのめすのには抵抗ができるのが人の情け。なので、ラスボスは同情の余地ゼロ、
完全無欠のゲス野郎を出します。

>>銀杏丸さん
星矢への愛、いつもながら感服…二次創作SSの基本は、原作への愛だと思ってます。それについてはあなたは
間違いなく黄金聖闘士級。

430 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 11:57:38 ID:xx85HZca0
>ぽんさん
おお、新連載ですか。ぽんさんって確か以前書かれていた方ですね?
ネウロは好きなんで期待してます。ちょくちょく更新して下さい。

>サマサさん
P2!ってあの卓球漫画ですねw結構ネタにされやすいあの漫画w
こういう、前後編のお話も好きです。長期連載あわせて頑張って下さい。


431 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 17:14:33 ID:VjJGYt7Z0
P2とはこりゃ意外な線をw
サマサさん後編も期待しております。

あとぽんさん、復活おめ!
ネウロは話を広げやすそうだから楽しみ。

432 :作者の都合により名無しです:2007/10/05(金) 20:08:00 ID:rgBG6Jcy0
>ぽん市
ネウロと出会う前の話ですかね?ヤコの日常風景から始まってるし。
原作とは違うような、基地外の出ないどこか牧歌的な話になるのかな?
トトロみたいな感じの。あと、前にかいてた方ですか?


>サマサ氏
正直、このマンガは打ち切りになると思って読み飛ばしてたんですがw
今は結構人気あるみたいですね。ぜんぜん登場人物知らんw
でも、サマサさんの作風は好きなんで、後編も楽しみにしてます。

433 :作者の都合により名無しです:2007/10/06(土) 08:54:43 ID:V5YyIoxe0
P2は結構熱いよ
このSSにもその熱さが匂う

434 :作者の都合により名無しです:2007/10/07(日) 10:57:41 ID:pI3T+eSJ0
,そういやテニスのSSってまだないな

435 :項羽と劉邦:2007/10/08(月) 03:28:18 ID:UiXnj4w/0
第022話 「環境の変化(後編)」

自身の薄暗い感情をつまびらかに見据えてみると、源泉はつまる所ひとつであるらしい。
それが感情の起伏に沿って流れて樹状化し、日々の鬱陶しさと諦観へと続いている。
が、地下にいる時の陰鬱さの要因はたった一つで済んでいたから、ある意味では楽だった。
いったいこの、地上でのややこしさはどうか。
他者の事情が際限なく絡まってくる。
頭が痛い。
馬鹿馬鹿しい。
只でさえ奥に秘めた感情のもつれに長年窮々としているのに、その窮々に事情知らずの連
中が頼みもしないのに関わってきて、ますますややこしくしている。
社会の雑駁さへの怒りを禁じえないが、外からは相変わらず珍妙な指示が下ってきて動かざ
るを得ない。
声をかけているのはまひろで、実にやり辛いタイミングで支持を下してくる。
それを油の切れかけたゼンマイ仕掛けのようにぎこちなくこなすと、背後で巨大な気配が揺
れる。揺れはその原因物体を背負わせている革製のバンドを介して両脇をきゅうきゅうと締
め付けて不愉快だ。
子を背負う母のように後ろ手を伸ばして原因物体を支えればいくらか不快も和らぐだろうが、
あいにく両手にはさっきから自分の耳をぞりぞり撫でる声と同じくらい珍妙な形状の武器が
握られているからまったくもって不可能だ。

ヴィクトリアはまったくさっさとこの場を立ち去りたい気分のまま、寄宿舎食堂のド真中で演技
を続けている。
夕食にはまだ一時間ほどあるから、人影はまばらだ。机を端に寄せて練習スペースを確保し
ているが、寮母の千歳の承諾を得ており、利用者からの苦情も特にない。
話は遡る。
先ほどまひろが自室に飛び込んできて、「ね、びっきー、演劇部に入ろうよ!」と勧誘してき
た。
断った。
断ろうとした。
しかし見ればまひろの背後には千里がいた。
ついでに沙織や浮かない顔の秋水もいたが別にどうでもいい。

436 :項羽と劉邦:2007/10/08(月) 03:29:42 ID:UiXnj4w/0
ヴィクトリアは両名とも好かない。秋水はともかく、どうしてか沙織にも嫌悪感がある。
当初は猫を被っているときの自分と性格が近いゆえの同族嫌悪だと分析したのだが、どうも
それだけでは片付かない、もっと根源的で自分の最も嫌いなモノに対するようなザラついた
感覚がある。といってもそれとなく秋水から聞き出した沙織の出自は戦士とも信奉者とも、
ましてやホムンクルスともまったく無縁らしいから不思議な話である。
が、それは本題ではない。
重要なのは。
千里も演劇部だと聞いたコト。
この大人しげな眼鏡のおかっぱ少女は、今は亡き母・アレキサンドリアに似ている。
だからこう、「部活をしたら一緒にいられる時間が多くなるのかな」と柄にもない少女思考が
魔を差してしまったのも仕方ないといえる。
その葛藤をまひろは目ざとく見つけて「もしかして興味ある?」とせわしくなく聞いてきた。
彼女の問いだけなら追従笑いで振り払うコトもできた。
だが千里まで異口同音に質問を投げかけてきて、ちょっと本気で返答に困った。
で、なし崩し的に「ちょっとだけ見学してから」と例の猫かぶりで返答してしまった。

(そのせいでこのザマよ)

まったく忸怩たる思いで背後を見る。
コレらを背負えと言われる前の初見段階からしてすでに嫌悪がわいていた。
というのも大嫌いな武装錬金を想像させる幾何学的なフォルムだったからだ。
パーツは大別して三つ。
二つは銃だ。といっても非常に長大で大仰で重厚で、両手に握っている今も大砲でないかと
思えるほど白い銃身が野太い威圧感を放っている。
残る一つ、背中に背負っているのは要するにウェボンコンテナだ。
真中に支柱があって、その左右にコンテナが一つずつ。
両方、形状も大きさもまったく同じ。
プラ板を直線的に張り合わせただけのシンプルな形で、棺桶にしたら五人家族全員詰め込
んでもまだペットを詰め込めそうなぐらいのサイズだ。
それらの上には円筒型のパーツが乗っているが別に用途を知りたいとも思わない。

437 :永遠の扉:2007/10/08(月) 03:30:51 ID:UiXnj4w/0
聞けばこの人間社会の不合理と雑然を濃縮した忌まわしき権化の諸機能を、いかにも面白い
物であると指揮官(コマンダー)気どりのヘラヘラ笑顔がその珍妙さの全身全霊を以て吹聴
してくれるだろう。
(鬱陶しい)
ヴィクトリアはまったく内心で鼻白むしか術はない。
もっとも筋からいえば、その要因は百十三年前に産声を上げた時に決定づけられていたし
恨むのならば自分に名前をつけた両親か、父に名前をつけた祖父母だろう。
両親は父の女性名という理由でつけただろうし、その原因は父の名前を「ヴィクター」にした祖
父母にもある。
ともかくもヴィクトリアはヴィクトリアと命名されたがゆえに珍妙な武器を背負わされているのだ。

名を「ハルコンネンII」。設定上は

・30mmセミオート「砲(カノン)」
・最大射程4000m
・総重量315kg

だそうだ。
スペックを見ても分かる通り「馬鹿と冗談が総動員」した兵器であり、人間が扱うコト不可能、
元婦警の吸血鬼ぐらいしか扱えないのである。
だからホムンクルスのヴィクトリアなら扱えるというコトになるが、別段そこを鑑みて背負わさ
れる羽目になったというワケではない。
正体が露見しているとすれば、このような日常生活が送れようはずもない。
大体にして今背負いしハルコンネンIIは上記のような重量兵器でもなく、プラ製のレプリカだ。
社会生活の悲しさというか戯事の延長戦、演劇に使う小道具(というには少々サイズがかさば
るが)でしかなく、彼女は名前の偶然的一致によりこの「厄介事」を背負い込む事になったのだ。
なお、彼女の衣装自体は通常のセーラー服であるから、それにハルコンネンIIなるどこぞの
ガンダム試作三号機じみた物体を接合するのは浮きに浮きまくってる。

触れれば折れそうな華奢な外人少女 + セーラー服 + オーキ……もといハルコンネンII

よほどの数寄物でなければこの取り合わせは受け入れられないであろう。

438 :永遠の扉:2007/10/08(月) 03:32:53 ID:UiXnj4w/0
食堂備え付けの自販機へジュースを買いにきた剣道部の連中が時おりヴィクトリアをチラチ
ラ盗み見てくるのも実に不快極まる。
「わー、みんな注目してるねー。良かったねびっきー」
「う、うん」
目を白黒させながら、内心ではもはやまひろを罵倒せずにはいられない
(うるさいわね。いい年超えてこんな変な格好させられて……誰が喜ぶっていうのよ)

厨房の中からおたま片手にハルコンネンIIを物欲しそうな目で見る女性が一人。千歳だ。

とあるサイトによればEカップであるらしい彼女の話はさておき。
まひろと来たらヴィクトリアの機微など知らず、台本をキラキラした目で読みながら、あーだこ
ーだとヴィクトリアに次のセリフやら所作やらを教えてくる。
(……鬱陶しいったらないわねこのコ)
あくまでまひろとしては演劇部の先輩として親切に指導鞭撻しているつもりなのだろうが、彼
女を嫌うヴィクトリアとしてはいちいち指図されているような認識になり、自然、苛立ちが募っ
ていく。
こういう錯覚は社会生活でもよくあり、極端に明るい性格の人間のフレンドリーな態度という
のは閉鎖的でやや鬱ッ気のある人間にとっては目障りな物なのである。
例えば「リア充」という蔑称がある。これはおもに大学生の間で「リアルで充実している奴」を
指す言葉である。この場合の「充実」というのは、成績が優秀だったりスポーツで輝かしい成
績を出していたり気立てのいい彼女と楽しい恋愛生活を送っていたりする事を指す。
要するに人生を楽しんでいる者というのは、そうでない、何らかの重大な欠落を抱えている者
から見れば嫉妬の対象であり、話はやや逸れたが前述の「明るい性格」の人間も同様に、
どうも全体的な雰囲気から「リア充」と感じ取り、反射的に嫌悪してしまうものらしい。
ゆらい物語が大きな欠落を抱えれば抱えるほど求心力を帯び、その欠落に対して正当なる
解決手段を経ずして満ち足りた状態に至れば途端に見放されるように、またはその終末が
いかんともしがたい欠落によって結ばれればただのハッピーエンドよりも深く強く印象づくよ
うに、人というのは満たされていない物を好む癖がある。

だからか。
よく分からないがどうも先ほどからヴィクトリアの目を引いているものがある。

439 :永遠の扉:2007/10/08(月) 03:34:23 ID:UiXnj4w/0

「はははははははは」
声は大きいがどこか抑揚のない無感情な声がした。
声の主は秋水だ。沙織(髪をおろして眼鏡を掛けて葉巻を咥え中)の前に突っ立っている。
「聞いたかハインケル。聞いたか由美江。鼻血を出しながら雲霞のような化物の軍兵を前に
して」
ヴィクトリアの頬にちょっとだけ笑みが貼りつくのは、その男の逼迫した思いが空気を介して
露骨に分かるからだろう。
果たして笑みが同情なのか侮蔑なのか、親近感によるものかは分からないが。
「かかってこい?」
秋水はそれはそれは豊かで湿り気のある短髪をオールバックにまとめ上げて、眼鏡を掛け
ている。顎には不精ヒゲのメイク。これを施すときにまひろが「この前の猫ヒゲみたいだね!」
とかいってたのは良く分からないが、まったく端正な顔がひどい有様だ。
「戦ってやる?」
胸に掛けた十字架が声とともに揺れた。
「ゲァハハハハハハッ」
また何ともやりづらそうな笑い声。声自体はしっかり出てるから、棒読みっぷりが余計に際立
っている。
「ねェ、秋水センパイ? もっと感情を込めた方がいいと思うよ?」
猫をかぶったまま言外にネチネチとした感情をたっぷり込めてヴィクトリアは指摘してやった。
果たして効いた。彼は「けくっ」と声にならない声をのみ込んで、迷いの末もう一度笑った。
「ゲァハハハハハハッッッ!!」
まったく大変な笑顔だ。頬がガチガチに硬直してどこか泣きそうな気配もある。
例えば頭と内臓だけ残された状態で幸福な笑顔を強要された捜査官の……やめとこう。
「その役って外人でしょ? もっと英語っぽく発音した方がいいよ」
外国人というアドバンテージをフル活用したヴィクトリアの嫌味である。
続けてたっぷりと英語の奇麗なイントネーションを披露して、彼の発音の甘さを貶した。
それは楽しい。様々な鬱屈がいい感じに発散できて実に楽しい。
とりあえずその笑いだけで8テイクぐらい費やした後、
「間違いない。こいつはこの女はこいつらこそが、我々の怨敵よ。我々の宿敵よ」
剣道部の連中も「うわぁ」という微妙な表情で声だけ大きい大根芝居を見ている。
もしかすると彼らはヴィクトリアではなく、秋水を見ていたのかも知れない。

440 :永遠の扉:2007/10/08(月) 03:36:50 ID:f/q14vLY0
「打ち倒すのは我々だ。打ち倒してよいのは我々だけだ」
微妙な空気を察したのか、彼は必死に語調に熱を込め始めた。
それ以外に秋水はこの場を取り繕う術を知らないらしい。
透き通った瞳の奥に生じた逡巡をヴィクトリアは認め、ついでそれは自分しか理解しえない
感情だと奇妙な優越感に浸ったりもした。
「誰にもォ邪魔はさせん。誰にも! 誰にも、だぁ!」
気息奄々。そんな状態に陥ったエースを、剣道部の連中は初めてみた。
「貴様は十三課(イスカリオテ)! 邪魔立てするか貴様!」
ここにきてようやくセリフを与えられた他の演劇部員たちであったが。
彼女らは実に心胆を寒からしめた。
「五月蝿(やかまし)い!! 死人が喋るな!!」
さすがにそこは数々の修羅場をくぐってきた秋水である。
右に九十度捻じ曲げた首から背後へ発する眼光は、とてつもなく鋭かったという。

もはやお分かりであろう。
まひろの頼みは彼にこの役をやらすコトであった。
着替えからしてすっちゃかめっちゃか。
沙織にきゃーきゃーいわれたりとか、思わぬミスキャストに微妙に興奮した千里に延々と演技
指導されたりとか、まひろに不精ヒゲ描かれたりとか。

彼は思った。心底思った。
(今日の特訓が終わったとはいえ何をしているんだ俺は)
よって練習が終わった後に素直に申告した。
「すまないがとてもこの役は俺にできそうにない」
「ダメ! 諦めずに最後までやろ、ね。秋水先輩!」
「そうですよ! この人の銃剣(バイヨネット)を使った殺陣がまだですよ! 秋水先輩じゃな
いとあの迫力は出せないので、ぜひお願いします!」
沙織はともかくマジメそうな千里までもがノリノリなのがやるせない。
そもそも日本刀と銃剣では全く形状が違う。形状が違えば斬り方も違う。
更に前者は一刀、後者は二刀。
二刀といえば、剣道七段という達人の境地にいる老剣士ですら、八段の試験で遭遇すれば
委縮硬直し半世紀近くの剣暦をまるで生かせなくなるほど異質のものなのだ。

441 :永遠の扉:2007/10/08(月) 03:38:17 ID:f/q14vLY0
ましてそれが和と洋という違いがあれば、なお。
しかし説明しても「秋水先輩ならやれる」という一点張りで、そこにヴィクトリアまでもが乗っかっ
てきた時、秋水は本当にどうしようもない絶望的な気分になった。いつしか取り巻くギャラリーも
増え、その中に笑顔の桜花すら認めた瞬間の気分といったら、もう。

解放されたのは夕食の直前だ。
とりあえず桜花と
「名演技だったわね秋水クン」
「……いつから見てたんだ姉さん」
「うーん。『ゲァハハハハハハッ』の辺り? あんなに笑ってる秋水クン、初めて見たかも」
「忘れてくれ頼むから」
「ええ。秋水クンがそういうなら忘れてあげるわよ。(ビデオ撮ってダビング済みだけど)」
という会話プラス食事をして食堂を出たところで声がかかった。
「いろいろ大変だったわね」
壁にもたれて挑発的な目つきを送っているのはヴィクトリアだ。
「君も加担していただろう」
とは秋水はいわない。感想として否定のしようもないので「ああ」と短く答えたきり、廊下の端を
指差した。場所柄、あまり大声では話せない。ふとした会話からヴィクトリアがホムンクルスだ
と露見してはいろいろマズい。
「ボロなんか出さないわよ。何年誤魔化してきたと思ってるの?」
冷たく吊りあがった目に嘲けりをありありと浮かべながらも、とりあえず歩き出す。
秋水もその後をのっそりついていく。
小柄な少女の髪の束がカタカタ揺れて、姿勢のよい男がなめらかに廊下を進んでいく。
ヴィクトリアとしては遠い昔のヴィクターとの散歩を思い出したりして、わずかばかりに懐かし
い。と同時に、はてな、ヴィクターの後ろにももう一人男性がいたような気もしてきて、それが
数日前に夢の中に出てきたような、例の総角に似ていたような気もして、色々と記憶の整理
に忙しい。
(気にはなるけど別にいいわよ。別に聞いても何の得にもならないでしょうし)
秋水はひどく生真面目な男だから、こういう時に気の利いた話題など展開できよう筈もない。
ただ人目が少ない場所で、ホムンクルス特有の人喰い衝動の有無について尋ねるぐらいで
本日の演劇に対する話題交換はほぼ皆無。
むしろヴィクトリアの方が積極果敢にしたような節もある。

442 :永遠の扉:2007/10/08(月) 03:39:23 ID:f/q14vLY0
「君は馴染んできたようだ」
「は?」
「ひどく楽しそうだ。特に、若宮の話題になると」
ちょっと嬉しそうな眼光がさっと注いできて、
「べ、別に関係ないでしょ」
ヴィクトリアはちょっと頬に血が昇る思いがした。
千里に対する好意は言葉にするにはいろいろ生々しすぎて、指摘されると平常ではいられ
ない。
「いや、それでいい。君にだって開いた世界を歩く権利がある」
心底ホっとしたような表情に、ヴィクトリアは柄にもなくポカンと口を開けた。
「その為に俺にできる事があれば協力する」
「何よソレ」
戦士のクセにホムンクルスの闊歩を許すようなセリフをよくもおめおめ吐けるものだと、唾棄
したい気分になる。反面、そういえば元は信奉者というホムンクルス側だった秋水の立場に
抑えようのない興味も湧いてくるから困惑せざるを得ない。
どうにも地上に上ってからは、鬱屈とは違ったいろいろな感情が巻き起こり続けている。
一概にはいえないが、少しはいい方向に向かっているのかも知れない。
「ま、どうでもいいコトだけど。ところでアナタ、どうせ戦団の調べで私とママの経歴を知ってい
るんでしょ?」
「確かにそうだが」
「だったらアナタの」
そのまま冷然と言葉を放つのがヴィクトリアのスタイルなのだが、どうも秋水相手ではやり
辛い部分もある。鼻にかかった甘い声をいったん飲み下して、そろそろと意を決したように
もう一度発するまで少し時間が開いた。
「アナタの前歴ぐらい教えなさいよ。いっとくけど勘違いしないで。嫌いな戦士にこっちの情報
ばかり知られてるのなんて気持ち悪いから。それだけよ。分かる」
「ああ。実は──…」
まったくヴィクトリアの特定人物への嫌悪感というものは、ひたすら高じていく定めらしい。
「あ、いたいた。まっぴー、秋水先輩とびっきーいたよー」
廊下の遙か向こうから聞こえてくるのは沙織の声だ。所用でもあったのだろう。
二人を探していたとなるとこれ以上会話を続けるコトは無理なので、そこで途切れた。

443 :永遠の扉:2007/10/08(月) 03:41:31 ID:f/q14vLY0
後はまひろがやってきて次の演劇の予定を(秋水の特訓の邪魔になるようなら後回しにすると
いう前提で)話出して、適当な雑談にスライドした後散会。
ヴィクトリアは千里の部屋でいつものように髪を梳かしてもらって寝床についた。
(……本当に鬱陶しい)
うつぶせで枕に顔を埋めながら、ふくらはぎをパタパタさせる。
そんな仕草を取るというコトは、秋水の前歴に興味が出てきた証だろう。

あとがき。
なんだか最近悪ノリしていないかと心配。んー、どうでしょう。
いうまでもなく、ヴィクトリア → セラス・ヴィクトリア(婦警) 秋水 → アンデルセン神父 
沙織 → ヘルシング。コレが星矢ネタならさーちゃんはすんなりアテナになれるんですが、
0083好きとしてはデンドロもどきに心惹かれてやまぬ故にヘルシングを。

>>411さん
ココまできたら突っ走るのみですね! いちおうなんとか最後までの筋道ができてきましたw
そこからは横山好きな人なら喜べるネタだと思います。ええ。なんとですね、「アレ」を使います。
「アレ」はみんながきっと大好き。あばれ天童にも名前が出ていますし。

>>412さん
永遠の扉に比べるとシリアス分が極端に少ないので、肩の力を抜いてのびのびと描けており
ます。次から次へとネタを使えるのも魅力の一つ。本当に作品が膨大なおかげで、外道忍法
帖の忍者みたいにネタがサクサク消費できます。ビバ横山作品。若い人こそ読んで欲しい。

>>413さん
うむ。好みが分かれてしまう作品ではありますな。というコトで今回は永遠の扉の方をご賞味
下されい。でも良ければバビル2世ぐらいは読んで損はありませんよ。後は闇の土鬼とか。

>>414さん
ありがとうございます。楽しみだすと読んでくれてる人を置き去りにしがちな性格なので……

>>415さん
え!? あれってスクランじゃなかったんですか!

444 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/10/08(月) 03:43:33 ID:f/q14vLY0
ふら〜りさん
実は小札だけは能力が明かされてなく、明かされていないが故に共演時の取り扱いが難しい…… 
やはり永遠の扉の方で早く明かすしかないですね。なお、横山キャラが出演しているOVAや
REDのGRではロボットより能力者が常に強かったり。その辺りを項羽と劉邦では踏襲しております。

445 :作者の都合により名無しです:2007/10/08(月) 10:42:06 ID:ZYIcvw/g0
お疲れ様です。
孤独少女のヴィクトリアが少しずーつ平和な?日常に溶け込んでいる様子が
浮かんできますな。それ以上にまひろの影響で変わりつつある秋水がいいです。

でも最初タイトル間違っとるw

446 :ふら〜り:2007/10/08(月) 22:11:45 ID:I2ubgxzx0
>>ぽんさん(お久しゅうございますっっ!)
今時そうは見かけない、歩きながら焼いも頬張ってる女の子……いいなぁほのぼの。これ
で電信柱にぶつかったり土管に落ちたりしてたら更にらぶりぃでしたが。叶絵と比べ徹底的
に色気より食い気なとこがなんとも可愛い。このノリが、次回以降変わっていくのか否か?

>>サマサさん(ラスボスは同情の余地なくブチのめされるのが、やはり理想です)
野球にサッカーにテニスにと、殺傷力充分なトンデモ球技漫画は多々あれど……卓球は球
の小ささ軽さ柔らかさフィールドの狭さなど、バトルには思いきり不向き。なのにこの迫力と
きたら、少々興味が湧きましたぞ。問題はどの辺までが原作準拠なのか解らぬところですが。

>>スターダストさん
劇中劇ですか。>>445さんも仰ってる通り、秋水はだいぶほぐれてきてるみたいですね。
まひろからの「心の扉叩かれ役」でしたが、本人は気付かぬ間に扉叩き役もできるように
なってるのかも……なんて日常と、ハイレベルな高速トラップバトルの同居が本作の魅力。

447 :作者の都合により名無しです:2007/10/08(月) 22:18:58 ID:kkyfmktS0
スターダストさんお疲れさんです
まひろといいヴィクトリアといい小札といい、この作品には
味のあるヒロインが沢山いるなー。

448 :作者の都合により名無しです:2007/10/09(火) 08:29:56 ID:gsiQeBEd0
原作でまひろと秋水のフラグってなんかあったっけ?
コミックス持ってないからわかんない・・

449 :作者の都合により名無しです:2007/10/09(火) 11:35:41 ID:OXXLiUgf0
ないと思ったけど、そこがSSのいいところだな

450 :作者の都合により名無しです:2007/10/09(火) 23:47:36 ID:+agBlDZc0
テンプレ来ないな

451 :作者の都合により名無しです:2007/10/10(水) 02:59:50 ID:EuycUDfr0
>>449
そうでもなきゃ秋水主人公なんて在り得な(自主規制)

452 :作者の都合により名無しです:2007/10/10(水) 12:09:34 ID:x87wst5t0
ま、秋水好きだからいいけどね
秋水より桜花の方が好きだけど



453 :作者の都合により名無しです:2007/10/10(水) 23:37:11 ID:wJJNzuKG0
一応あった
秋水とカズキの剣道やってるシーンでマヒロの目がハートマーク

454 :作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 00:55:19 ID:ZwY3EvZM0
あれはフラグではないと思うよ
あの頃の秋水はヤンデレ街道一直線(それもやや一方通行)だったし
むしろ原作秋水は剣の道に生きて生涯独身オーラ出まくり
そんな秋水がギャルゲー状態の「永遠の扉」は正にちょっとした(どころではない)
幻想(ファンタジー)。
慣れれば意外と恍惚で病みつきかもしれない、かもしれない

455 :作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 15:39:45 ID:rpHfci+d0
まひろたんは俺の嫁なんだけどな

456 :作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 16:08:44 ID:PVZjp0jU0
そうよのお

457 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2007/10/11(木) 21:09:13 ID:0BY0q4eH0
>>455
俺の嫁だっつの

458 :作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 21:30:42 ID:LPKUrV1c0
さいですか

459 :作者の都合により名無しです:2007/10/12(金) 23:23:14 ID:Brqf9fBL0
一週間くらいこないのが普通になっちゃったな

460 :作者の都合により名無しです:2007/10/12(金) 23:27:52 ID:lHvKkFhC0
;

461 :作者の都合により名無しです:2007/10/13(土) 00:44:52 ID:WjjjGE1T0
           .,,,―''"^    ,,/::::::::::::::::::::::::::::::`゙'''ー-,,
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              |   *  "゚'` {"゚`   | <  1UPしてみないか?
              .|         ,__''_    |   \_______
             |         ー     l
               l,              /
               \          _,,/
                 `'''''――――'''`

↓↓日本一簡単なシナリオコンテスト↓↓
 
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/iga/1192036731/l50





462 :作者の都合により名無しです:2007/10/14(日) 18:01:22 ID:jsFTbmSb0
もう少ししたら書けるんだけどな・・

463 :テンプレ1:2007/10/14(日) 22:22:18 ID:GZOALkpx0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart52【創作】


元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss

464 :テンプレ2:2007/10/14(日) 22:23:47 ID:GZOALkpx0
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
戦闘神話  (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm  
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
上・ドラえもん のび太の新説桃太郎伝 下・P2!〜after 10 years〜(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/422-428

465 :テンプレ3:2007/10/14(日) 22:24:47 ID:GZOALkpx0
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (エニア氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
DBIF (クリキントン氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/293.html
ドラえもん のび太と天聖導士 (うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tennsei/01.htm
脳噛ネウロは間違えない (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/320.html
『絶対、大丈夫』 (白書氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/85.html
DIOの奇妙な放浪記  (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/371.html
るろうに剣心 ー死狂い編ー (こがん☆氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/383.html
“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコト (hii氏)
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/394-397
モノノ怪 〜ヤコとカマイタチ〜 (ぽん氏)
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/417-420

466 :ハイデッカ:2007/10/14(日) 22:27:38 ID:GZOALkpx0
結局現スレも書けなかった。すまん。
ケジメという意味で自分の作品をテンプレから消した。
とにかく最近忙しくてさー・・。
それでも1話分は書いたんだけど、あまり気に入らなくて消した。
うーん、ジャンヌが牢獄で捕まっている間の
空白部分が決まらないんだよね。ラストは決めてるんだけど。
来週の土日には、なんとか必ず。

俺の作品と、今スレで終了したハシさん・銀杏丸さん・ふらーりさんの
作品はテンプレから消してるけどそれ以外は今回は消してません。
寂しくなっちゃうからね、テンプレ。

あとゴート様、お手すきなときにサマサ氏のP2、hii氏のハルヒ、
ぽん氏のモノノ怪をまた保管お願いいたします。


467 :作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 08:22:01 ID:H+v5rWpD0
ハイデッカ乙
テンプレには20本以上あるけど
実稼動は6、7本くらいなんだよなw

468 :作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 12:06:19 ID:jBZ6+gT50
とりあえずSSも書けよ>ハイデッカ

469 :作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 14:23:31 ID:2hW+Csk30
俺はガラのやつが読みたい

470 :作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 23:20:02 ID:0kHQzB/S0
ハイデッカサボらず書け

471 :永遠の扉:2007/10/16(火) 23:25:27 ID:o6ajW9ae0
第023話 「人(?)それぞれ」

この三日間(斗貴子・剛太敗北から秋水が演劇やるまで)について。

Case.01 中村剛太

敗北後、桜花とともに下山。彼女の呼んだタクシーでサンジェルマン病院へ運ばれた。
その際に目を丸くしたのはかつて打ち破った根来が待合室にいて、しかも生々しい傷を浮か
べていたコトだ。
根来は根来で敵と戦ったとは後で聞いた話だが、あまりに意外な場所での再会に血液不足
の頭が不可解さでさらに眩む思いをした。
しかもそばには千歳がいて、以心伝心というか。会話はなけれど妙に息があっていた。
(アイツ、戦友いたのか?)
入院生活でヒマな剛太は、ベッドの上で時々そういう疑問を考えてみるが特に答えは出ない。

斗貴子には会っていない。
まさか彼女が負けて、剛太に一拍遅れて入院する羽目になろうとは。
斗貴子の強さを知る剛太にとってはまったく予想外だった。
(……やっぱ響いてんだろうなァ)
カズキの件での傷心が敗因なのだろう。そうとでも理屈をつけねば納得できない。
「連戦に連戦で疲労困憊している所に不意打ちを受けた」という顛末を聞き及んでいたとし
ても、なお。
(情けねェ。俺、結局先輩の力になれなかった)
もし自分が負けなければ斗貴子も……と考えずにはいられない。
だから次は絶対に……と気合を入れるのだが、横槍が入ってくる。
騒がしい見舞客のせいで、どうも剛太は葛藤に浸れない日々を送っている。

(いったいなんでこいつら毎日毎日来るんだ!)

今日もドアが開いた。
怒鳴りたい思いで剛太はその美しい相手と醜い相手を唖然と見た。

472 :永遠の扉:2007/10/16(火) 23:27:26 ID:o6ajW9ae0
Case.02 早坂桜花

剛太を病院に届けた後、傷だらけで気絶した斗貴子が寄宿舎の裏口に打ち捨てられていた
という連絡を受けた。それも核鉄を奪われた状態だったというから驚きだ。
ちなみに気絶した斗貴子を見つけたのは河合沙織という、桜花にとってはあまり馴染みの
少ない後輩だそうだ。
(? 変ね。夜は確か寄宿舎からの外出は許されないはずよね。でもなんで裏口に……?)
軽い疑問は浮かんだが、その後の剛太・斗貴子の入院手続きや入院準備に忙殺されて沙
織の口から聞くことはできずにいる。
ともかく。
自分の作った行きがかりのせいで秋水はどんどんとまひろと親密になっていき、戦闘のあった
晩も一緒に麻婆豆腐を食べていたという。
いかにも平和でのほほんとした微笑ましい情景だ。
その裏で桜花は少しずつ自分から離れていく秋水に胸を痛めているというのに。
(覚悟していたつもりだけど……やっぱり寂しいものね)
が、秋水が鎖された世界にいた一因は桜花にあるとも思う。だから自立を妨げられない。
けれど寂しさは払拭できず、誤魔化すように桜花は毎日剛太の見舞いに行っている。
しかし見舞いに行くといっても、桜花にはそれがひどく難しい行為に思えて初日は密かに四
苦八苦していたりもする。
社交辞令的なお見舞いならいい。適当に物を買って適当に笑っておけばいい。
恥ずかしい話、そういうのはできるのに「心を込めて」やろうとすると、途端に分からなくなった。
いろいろ調べた。本を読んでネットを調べて…… で、分からない
考えて苦悩した挙句、花とメロンを買った。そこで気づいた。「なぜ心を込めているのか」
桜花の心はらしくもなく硬直した。頬がかぁっと小娘のように赤くなるのが分かって、見舞い
自体やめようと思った。
剛太などは秋水に比べたらまったく顔が良くない。一見すると軽薄で、目だって垂れている。
そのクセ、到底かないそうにない恋愛に必死に熱を上げている。
でも剛太は斗貴子に対して懸命で真摯なのだ。世界で一番大事に思っているのが透けて見え
る。そんな部分は見ていて好ましくて、でも、いつかそれが決して報われぬと彼が知る日も予
見できる。
放っておけないと思えるのは、境涯の近さか……それとも?

473 :永遠の扉:2007/10/16(火) 23:28:42 ID:o6ajW9ae0
Case.03 エンゼル御前

一度意を決したら、後はその行為が日常に馴染んでいく。

またか、という顔をした剛太に艶然とした笑みを返すと、桜花は着席した。
花とメロン。任務がひと段落した時間にそれを持ってお見舞いするのが桜花の日課だ。
「帰って下さい。俺は怪我してるんです
「あら、メロンはお嫌い?」
「そういう問題じゃないです」
絆創膏のついた顔をプイと背けて、不機嫌なノド声を漏らした。
剛太にとっては迷惑だ。元・信奉者という得体の知らない種族が毎日毎日枕頭に花とメロン
を持ってきて、ニコニコと観察してくる。騒がしい自動人形付きで。
「ようゴーチン、核鉄どうするか決まったか? 盗られたのは仕方ねーし、ココはさっさと戦団
から新しいの貰っちまえよ!」
「うるせェぞ似非キューピー! 前にもいっただろ、戦団は今、ヴィクター討伐の余波でボロ
ボロな上に、大戦士長の誘拐でてんやわんやなんだ。新しく支給されるワケないだろ!」
まったく疲れる。ヘンな声のヘンな顔のヘンな自動人形相手にどうして病床で怒鳴らなければ
ならないのか。
しかもそのヘンな自動人形の人格は、容姿端麗なる桜花の人格をフィードバックしている。
要するに桜花の本音を聞かされているようなものだから、いくら桜花が楚々とした上品な態度
をとってきても信用できない。
「それもそうね」
剛太からその旨を告げられた桜花は、何がおかしいのかまたニコリと笑って見せた。
実に邪気がない。ないからこそ疑わしい。
「まったく何なんですか毎日毎日。つーかそろそろ敬語やめていいですか? ブッちゃけ俺、
あんたらみたいな元・信奉者、ちっとも好きじゃないんですけどね」
「ええ。好きなように」
「うんうん。ゴーチンにゃ敬語なんて似合いやしないって」
毒を吐いたのだが、二人(?)にニコリと微笑で答えられてはやり辛い。
「で、なんで毎日来るんスか?」
「いったでしょ。弟のコトで寂しいからに決まってるじゃない」
冗談めかしてるのにどこか寂しい雰囲気がにじみ出ていて、剛太はどうもやり辛い。

474 :永遠の扉:2007/10/16(火) 23:30:43 ID:o6ajW9ae0
Case.05 光が無い

八月二十九日 (斗貴子敗北から数時間も立たない頃)

「死体を運んできました」
チワワであるところの鳩尾無銘は円らな瞳を「ああ?」と不機嫌に歪ませて相手を見た。
「ですから、死体を……」
ボソボソを喋る少女の姿は闇にけぶって良く分からない。名前は鐶光(たまきひかり)。
チワワから見れば巨大な。人間なら小柄な。小札よりは若干大きい背丈。
「ほめてください無銘くん」
「黙れ。褒めどころが皆目見当つかぬ! そも汝が我が半径二尺以内に接近するコト許さず]
「そう……ですか」
後ろ髪をリボンでくくって下に垂らしている少女は、ぽつねんと呟くと、無銘を抱き上げた。
「ご褒美として、耳、噛みますね」
「離せ! というか脈絡が見当たらん! 師父、師父! 我に介添えを!」
「でだな小札、お前には銀成学園の制服が意外に似合うと思うんだ」
「師父━━━━━━━━ッ!」
「なんだ痴話喧嘩か? 感心しないな無銘。色欲に呆けていては」
「死体、運んできました」
「無銘くんに倒されて戦闘不能のおねーさんを寄宿舎裏に置いてきたというワケですね!」
小札の翻訳に無銘は鼻白んだ。死体ではないではないか。
(相も変わらず理解しがたき女! 鐶光! なぜにこやつが副長などを……!)
「予定通り、核鉄を奪取し、死ぬ前に……寄宿舎の人間へ気づかせてあります」
「フ、こういう時にお前の『特異体質』は便利だな。実に怪しまれるコトなく遂行できる」
「特異体質といえば、無銘くんはどうして……人間形態になれないのですか?」
「人間の胎児に犬型ホムンクルスの幼体を埋め込んだが故」
「そうだな。人間としての形態が確立する前に、動物型ホムンクルスになったせいで、無銘
は人間の姿になれない」
ちなみに人間だったらおおよそ10歳前後の容姿になるだろうと推測する総角をよそに。
無銘の頭に顎を乗せ、鐶は一生懸命に犬耳をねぶりだした。
「はぐはぐ」
「やめろ!! やめんかああああ!!!」

475 :永遠の扉:2007/10/16(火) 23:32:43 ID:o6ajW9ae0
Case.05 貴ぶ香り

八月三十一日

「べーっくしっ、べーっくしっ、ずあっ!!」
香美は大きなくしゃみをすると、「うあああ」とガタガタと震えて掛け布団にくるまった。
「うぅ、さむいけど頭あつい…… つめたいやつ、角ばっててつめたいのを頭にぃ〜」
『はーっはっは! あの戦士にやられた傷は回復しつつあるが、体力が低下しているので
今度は風邪をひいた! ひいたなああああああ! 熱でテンションが上がる!』
総角は口の中で「落ち着け」と呟いてからふぅーっとため息をついた。
パジャマ姿の香美が布団からずるりと抜けだし、ゾンビのようにノロノロ這いつくばってきた
からだ。髪に入ったシャギーはぱさぱさで、うぐいす色のメッシュもくすんでいる。
「ぅぅぅなにさコレ〜、つめたいのー、つめたいのもうないじゃん〜 つくって、よぉ〜〜」
枕頭を見れば、温そうな水をギラギラ湛える氷のうが、死にかけクラゲみたくヘタっている。
ほんの三十分前に変えたばかりなのに、と総角はまたため息をついた。
実を云うと香美は病弱なのだ。貴信曰く
『普通のネコだったころからそうだった! そしてそれは今でも同じだ! 僕は健康だが!』
らしい。
ちなみに香美のパジャマはピンクで、サツマイモがあますところなくプリントされているが、実
はかつおぶしの絵柄と間違えて買ったというのはまったくの余話である。どうもネコは視力が
よろしくないらしく、例えばちぎったティッシュを干しかまと見間違えてわーわー鳴いたりする。
「古人曰く、馬鹿は風邪をひかないというが」
「…………迷信は当たらないから、迷信……です」
熱にうかされたままゆらりと立ち上がり氷を必死に要求する香美は、酔っ払いか何かのようだ。
小札がやってきて氷を手品で出した。感激した香美は抱きつこうとした。途中、くしゃみが出た。
「べーっくしっ、べーっくしっ、ずあっ!!」
「のわああああ! ……ぜぇぜぇ。なんとか間一髪でよけた不肖! 回避には定評が……」
「びぇ」
「びぇ?」
「びぇぇぇぇえっけしいいいいいいいいいいいいい!!」
暴風のようなしぶきと粘液をしこたま浴びて、小札はうなだれた。
「きゅう……」

476 :永遠の扉:2007/10/16(火) 23:33:55 ID:z04kGKVb0
Case.06 チカラはゼロでも……

九月二日

「さて、小札。こうしてココに来ることができるのはお前のおかげだ。感謝している」
「お、お礼はいいのであります。不肖としてはもりもりさんのお役に立てればそれで……」
「謙虚なのが好ましいな。で、ココは『もう一つの調整体』の眠る場所」
「はい」
「フ。この前の戦士との戦いなど、お前にココを探し当てさせるための囮に過ぎなかった」
「普通に探せばそれはもう、戦士の皆様方に見つかり咎められたコトでしょう。が! 香美ど
の貴信どの無銘くん鐶副長のおかげでなんとか無事に、ココに到達できました!」
『もう一つの調整体』の眠るこの場所に」
「おおお、五つの割符もすでに鍵となる部分へ挿入済み! 手際の良さはさすがのもりもりさん!」
「いいぞもっと褒めてくれ。が、予定ではあとは戦士らの手にある割符を奪還するだけで良かった」
「予定? 良かった? ふむ、過去形にされてるとゆーコトは何か問題の予感」
「その通り。コレを見ろ」
「ぬぬぬぬ!! なんという障害でありましょう! これぞ最大最後の難関! いかに破るか!」
「な、厄介だろ? 俺には解けない。鐶の『特異体質』ならできるかと思ったが、どうも無理ら
しい。爆爵殿やムーンフェイス殿なら楽勝だが」
「が、爆爵どのはすでに故人…… ムーンフェイスどのも相手取るには難儀……打つ手ナシ?」
「なぁに大丈夫だ。もっと御しやすい相手を使えば済む」
「その方の名は」
「早坂秋水。ま、要するに秋水だ」
「なるほど。確かにこの装置の特性を踏まえればそれは容易くなせるでしょう!!」
「で、お前には秋水の捕縛を秘密裏に依頼したい。本当は俺が出張れば早いんだが、大将
の俺がいちいち動いていては、この前のようにL・X・Eの連中につけこまれる」
「むむ。かといって香美どのや貴信どのはケガと熱でまだ動けず」
「武装錬金の特性が割れている無銘も返り討ちに合いかねない。いったん本体を狙われてし
まえば、人間形態になれないアイツは不利だからな。で、鐶は最後の切り札だ」
「なるほど! そういうワケでしたら不肖、非力ではありますが粉骨砕身頑張るしだい!」
「ああ。任せたぞ。ちなみに影からこっそりやれ。こっそり、とな」

477 :永遠の扉:2007/10/16(火) 23:35:17 ID:z04kGKVb0
Case.07 津村斗貴子

病室には彼女の姿がなかった。
慌てふためいた看護婦が同僚に檄を飛ばして探させたが。
病院のどこにも津村斗貴子の姿はなかった。

ちょうど、秋水がヴィクトリアと演劇部のコトについて語り合っている頃。


以下、あとがき
自分の中で「嫁」といったらやはりTABキー。エクセルでのデータ入力時、コレを押すと
横にスイスイいけるわ、メールログイン時にIDからパスへ移動できるわ、メール作成時に
手入力した表を整えるのに便利だわで、もう最高。Shiftと併用した時にまるで移動方向が
逆になるのもヤンデレっぽくて素敵。テキスト文書から辞書作るのにも使える萌えキャラです。
え。二次元じゃない? じゃあラノベキャラ。新撰組血風録の鴨川銭取橋に出てくる藻谷君。
土方か山崎に尋問されてキョドる姿がラブリー。んでその尋問内容を五番隊に流してしまっ
て武田観柳斎の風評をガタガタに下げるところが最高。

>>445さん
孤独な少女の日常への回帰。それもまた王道! 秋水・ヴィクトリアに限らず、周りの人間
からちょっとずつ影響を受けて、かつ、それが相互のものであるとしたら、群像劇としての面
白みがでるんじゃないかなーっと。タイトルはいっちゃダメです。みんなに気づかれたら……あわわわ。

ふら〜りさん
彼はちょっとずついい方向に持っていきたく。心の扉の叩き役だけじゃあなく、日常でのさま
ざまな所感を強さの原動力にしてみたいのです。そも、武装錬金という作品での「日常」の果
たす役割は常に大きく、主人公のカズキも何度も力を貰ってますので! だから自分も準ずりますよ〜

>>447さん
おにゃのこの描写にはなんだか力が入ってしまいますw 反面、親父とかジジイみたいなの
も描いてみたく、しかしその技量があるのかとちょっと不安になる日もあるのです。そこは自助
努力により頑張りますよ。で、おにゃのこも可愛く描いてあげたい。

478 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/10/16(火) 23:36:24 ID:z04kGKVb0
>>448さん
>>453さんの挙げられてる箇所がそうといえなくもないかと。自分としては「原作ではフラグ扱い
じゃないけど、SSじゃフラグ扱いできそうな」場面としてカウントしております。

>>449さん
うむ。まったくもってそうですね。自分もいろいろ楽しまさせていただいてるので、やっぱり
SSは好き、なのかも。

>>451さん
まー、彼を主人公にして爆爵を番外編の主役に据えようと考えるのは自分ぐらいなものでしょうw
(良くも悪くも) だって三国志でいうなら秋水なんて甘寧ぐらいのポジですよ。爆爵は張角とか。
でもなんだかSS執筆を通して大好きなのです。

>>452さん
腹黒くて笑顔が素敵な和風美人。いいですよね。逆胴で人が真っ二つにできるって嬉しそうに
語っている姿がなんとも可愛らしい。

>>453さん
当時は「妹キャラなのに兄以外になびくのか」と意外でした。ああいうコって美形に反応しそう
にないので。そういう点では美的感覚が普通なのかも。「オシャレ間違ってる」ってセリフありますし。

>>454さん
個人的な恣意としてはむしろ剛太の方こそギャルゲ展開のド真中にいて欲しいのですが、
主役補正のせいか秋水が恵まれており、こういう点ですらヒケを取っている剛太が不憫。
原作秋水、もし打ち切りにあってなかったらどうなってたんでしょうね。コメディパートの彼も見たかったorz

479 :ゴート:2007/10/17(水) 11:26:36 ID:9qqYgwl20
>ハイデッカさま
間違って完結作品のところに入っていたhii氏の作品を連載中の部分に移動しておきました。
とりあえずテンプレ用に。

モノノ怪 〜ヤコとカマイタチ〜 (ぽん氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/400.html
P2!〜after 10 years〜(サマサ氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/401.html
“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコト(hii氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/398.html

ここからは私事絡みでもあるのですが、来週から向こう4〜5ヶ月の間更新があまりできなくなる可能性が高いです。
仕事でネット環境が怪しい地域に行くためです。
まったくネットにつなげないということはないと思うのですが、更新出来るほどの余裕はない様です。

というわけで、その間の更新を一時的に代行していただける方を大募集させてください。

管理は出来ないけど手伝ってもいいという方用に、とりあえず金曜日までには更新の仕方を書いたページを書いておきます。

更新頻度が低い上に、ご不便をおかけします。
ごめんなさい。


480 :作者の都合により名無しです:2007/10/17(水) 12:23:13 ID:LuqcHu2u0
スターダストさんお疲れ様です。
こういう、幕間劇風の各人の動向は大好きです。
この前のネウロに影響されたのかな?
各キャラの中でも桜花の話がよかったな。


ゴート様、お仕事大変ですねえ。
海外だと思いますが、気をつけて頑張って下さい。
毎会は出来ませんが、たまには手伝いたいと思います。
ただパソコン初心者なので、難しい保管方法なら無理ですが・・

481 :作者の都合により名無しです:2007/10/17(水) 15:05:49 ID:HMsTZ6lC0
>スターダスト氏
インターミッションのこういう短編?は楽しいですな。
つくづく個性的なキャラが揃ってるなw
次回はトキコさんからスタートか。楽しみだ。

>ゴート氏
気をつけて行って来てくだされ。
しかし優秀なビジネスマンっぽいな、ゴートさんは。
俺なんか26なのにパスポートも持ってないw

482 :作者の都合により名無しです:2007/10/17(水) 23:29:42 ID:qoLtkAsY0
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1192630797/l50

新スレ立てておきました。
スターダストさんの感想は新スレに書きます。

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