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種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-11

1 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/17(土) 23:53:42 ID:???
「新シャア板でガンダムWについて語るならここだ!」
「GガンやXが盛り上がってるから、Wも盛り上げて行こうぜ」
「職人さん常時募集中です」
「現在、SS連載中だ。荒れ防止のため「sage」進行を勧める。」
「荒らし・煽りはエレガントにスルーするのが基本だ。諸君らもエレガントな心を忘れないでくれたまえ」
「職人の作品投下中はレスを控えてくれ。職人も投下終了が分かりやすいよう配慮してくれるとありがたい」
「職人の作品に対して意見したいこともあるだろうが、単なる誹謗・中傷の類は控えたまえ」

「前スレはこちらになる。」
種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-10
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1193632579/

「こちらがまとめサイトになります。」
ttp://wctts.hp.infoseek.co.jp/
http://arte.wikiwiki.jp/

「避難所はこちらだ。」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/1777/1161501957/l50

「タイトルロゴもあるんだ。」
ttp://wctts.hp.infoseek.co.jp/1-59-2/images/uzhseuwl10324710.gif

2 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/18(日) 00:19:35 ID:???
えぇ、落ちたのかよ・・・

3 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/18(日) 00:49:05 ID:???
おれもびっくりしたぜ。

4 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/18(日) 00:58:36 ID:???
そういやビルゴU何処にメガビーム砲つないでんのか
気になったんで調査した結果肩の後ろの追加装備に
ビームジェネレーターが内蔵されていてそこにケーブルで
接続されているらしい。前方はビームライフル等の武器コンテナ
後方は機動力増強のための大型の噴射口があると多機能だな。
メガビーム砲もヴァイエイトの武器と同系統で威力は
無印ビルゴと同等か上らしい。長文になってしまった。

5 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/18(日) 08:58:50 ID:???
>>1
24時間も経ってないカキコあっても落ちるのかよ……
やっぱageなきゃ駄目なのか?

6 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/18(日) 12:06:57 ID:???
やっとGW-P消したな。>>1

7 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/19(月) 16:16:10 ID:???
ほしゅ

8 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/19(月) 22:21:13 ID:???
700越え保守

9 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/20(火) 11:11:35 ID:Hreb8AnZ
保守

10 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/20(火) 13:50:08 ID:???
歌姫はまだかい(・∀・ )っ/凵 ⌒☆チン

11 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:16:38 ID:???
投下します。今まででいちばん長いので、恐らく2〜3回の規制が入ります。

12 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:18:36 ID:???
 最初に攻撃を受けたのは、地上へと補給物資を届けるべく進発した補給部隊
の一団であった。輸送船や牽引コンテナに大量の物資、主に食料品、医療品、
弾薬など軍事行動には欠かせない品々を詰め込んだそれは、三隻の護衛艦、い
ずれもザフト戦艦に守られながら、ザフトが確保している地球までの航路を進
んでいた。
 その任に当たったのはまだ若い士官で、若いといってもアスランやハイネな
どよりずっと年上なのだが、宇宙艦隊勤務においてある程度の実績を上げた男
であった。軍部としては何か事故が起こってもこの者なら対処できると考えた
のだが、その考えは見事に外れた。戦闘に置いてはそこそこに使える男であっ
たのが、補給任務においては、まったくの無能とはいわないまでも有能にはな
り得なかった。
 まあ、彼の方にも言い分はあるだろう。いきなりレーダーに反応があったか
と思ったら、五十隻近い艦艇が襲来し彼が指揮する補給船団に砲撃を開始した
のだ。どんなに慎重に行動しようと、これでは援軍を呼ぶ間もなくやられてし
まう。現に敵戦艦から発射された無数の長距離砲が、モビルスーツを発進させ
る時間も与えぬ苛烈さで殺到し、護衛艦隊を消滅させてしまったのだ。そして
盾を失った補給艦は、何の抵抗も出来ずに積み込まれていた膨大な物資ごと火
球と化して爆発した。
「敵補給船団の全滅を確認!」
 ファントムペインの強襲艦隊を指揮していたのは、月アルザッヘル基地の暫
定的司令官であるイアン・リー少佐だった。彼は天才的な能力を持ち合わせた
士官ではなかったが、その用兵手腕は実に手堅く、ネオ・ロアノーク大佐など
からも強く信頼されていた。この時彼は、可能な限り速い速度と、動員できる
だけの兵力を動員して敵補給部隊の撃滅に動いた。過剰とも言える数の暴力は、相手を一方的に打ちのめすには十分すぎた。
 もっとも、イアンがこのような選択を取ったのには別の理由もあった。彼は
以前、ザフト軍の地上降下作戦を阻止するために八隻ほどの艦隊を派遣したこ
とがあるのだが、ものの見事に全滅させられたのだ。たった一機の、モビルス
ーツの手によって。
 恐らく核動力機の類だろうと思われたが、また襲撃を阻まれ、全滅させられ
たら堪ったものではない。そこでイアンは大軍を持って襲撃することで、不測
の事態にも対処できるように考えたのだ。
 幸い、イアンが恐れていたような事態にはならなかったが、油断は禁物だ。
「全艦、アルザッヘルへ帰投する。急速回頭」
 事の次第に気付いたザフトが艦隊を派遣してくる前に、月基地へと帰還しな
くてはならない。イアンは、通信士官にヘブンズベースへ報告を送るように命
じた。
「我が艦隊、敵補給部隊の全滅に成功。後はそちらにお任せする」
 やがて、ザフトの艦隊が救援に駆けつけたが、既にイアン艦隊の姿はなく、
虚しくも散った補給艦の残骸が漂うだけだった。



         39話「PXシステム起動」



13 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:19:43 ID:???
 ファントムペインによって補給線を絶たれたザフト軍は、その報告を受けて
行動を開始したファントムペイン地上軍の攻撃を受けつつあった。最初に敵と
遭遇したのはマハムール陸上艦隊で、前方から砂煙を上げて大軍が向かってく
るのが偵察機の報告で知らされた。偵察機は報告を送ったてきた数秒後に、そ
の反応を消滅させている。
「来たか……索敵班は敵の総数を算出しろ。オペレーターは予想接触時間を計
算!」
「時間的距離による計算の結果、予想接触時間は約8分から10分の間です!」
 オペレーターからすぐに返答がある。
「全艦総力戦用意! 機動兵器は全部出撃させろ。索敵班、敵の数はまだ判ら
ないのか?」
 ラドルは慌ただしげに問いただすが、索敵担当の士官は青い顔をして振り向
いた。
「て、敵の総数は五百機を超えます!」
「五百機を超えるだと!? 何かの間違いではないのか」
「機甲部隊だけでも800台近くのリニアガン・タンクが動員されている模様」
 リニアガン・タンクとは、旧連合が開発し運用していた装甲車で、前大戦の
序盤においては主力戦闘車として稼働していた。モビルスーツの装甲すら貫く
電磁リニアガンを主武装に、凹凸のあるモビルスーツでは歩行が複雑な地形に
も対応できることからモビルスーツが一般化されてからも、モビルスーツとの
連係攻撃を視野にいれて運用されることが多い。
「しかし、これは……」
 だが、全軍の大半をリニアガン・タンクで構成してくるなどラドルの予想範
囲外であった。何せ、いくら使えるとはいえ時代はモビルスーツのはずだ。在
庫一斉処分じゃあるまいし、よくもこれだけの数を集めたものだ。
 それに引き替えラドルの艦隊はというと、撤退作業の途中であり実は各地に
分散した兵力の一部が未だ戻ってきていない。故に全軍を持って敵と向かい合
うことが出来なかった。
「バクゥ及びガズウート発進。敵機甲部隊を殲滅せよ!」
 ラドルが命令を飛ばし、各艦隊から次々とバクゥやガズウートが発進する。
この二機はザフトの地上における主力モビルスーツであるが、ガズウートはキ
ャタピラ装備のモビルスーツに重武装を施した砲戦専用の機体で、バクゥは猟
犬をイメージさせる四つ足と、その脚力から織りなされる運動性が特徴的な機
体だ。
 ガズウートに関しては、ザフトとしては不本意ながらリニアガン・タンクに
機動力と速射性で劣っており、前大戦は少なからず苦戦した。だが、バクゥの
登場により徐々に圧倒していき、ついには砂漠などの地上戦においてはバクゥ
こそ覇者であることが証明された、はずだった。
「ガズウートは無理に前に出ようとせず、長距離からバクゥの支援を行え。バ
クゥは前面の敵に攻撃を集中して突破を心がけろ」
 命令しながら、ラドルは考える。敵がいよいよ攻撃を開始してきたというの
なら、敵と遭遇しているのは自分たちだけではないはずだ。我々がこうして地
上部隊と戦闘を始めるということは……
「他の艦隊も、今頃敵と遭遇している頃か」
 ラドルが呟いたそこの言葉は、誰にも聞かれることはなかった。


14 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:20:50 ID:???
 嫌な読みほど当たるのは世の中の必然なのか、ラドルの予想通り各地に散ら
ばっていたザフト軍はそれぞれファントムペインの軍勢と遭遇していた。
 紅海にて艦隊の撤退行動を開始していたモラシム艦隊の後背に、敵艦隊が出
現したのである。
「全艦急速反転、敵艦隊の迎撃を開始する!」
 敵艦隊の迅速な行動に対して逃げ切ることは出来ないと悟ったモラシムは、
すぐさま戦闘を決意、各艦隊に攻勢の準備をさせた。
「モビルスーツは全機発進! 何、心配するな。お前らの司令官は紅海の鯱だ。
この海で俺が負けるはずはない!」
 艦橋から歓声が上がる。時として司令官はこのような言葉で味方を鼓舞しな
ければならない。モラシム自身、紅海という場所で戦って負けることはないと
思いはしたものの、艦隊の状況から考えるにそれほど勝率が高いとも思えない
のも確かだった。
「ほぅ、戦うつもりか。敵の指揮官は武人だな」
 一方、そんなモラシムと戦うこととなったファントムペインの艦隊は数にお
いてモラシム艦隊よりも多かった。それもそのはずで、彼が遭遇したのは逃げ
たとされるスエズ艦隊ではなく、ヘブンズベースをひたすら南下し、喜望峰を
ぐるりと回ってきた遠征艦隊だった。周辺にいた少数部隊なども結集した結果、かなりの数が集まっており、艦隊指揮官はダーレス少将であった。
「こちらもモビルスーツの発進用意。数はこちらの方が上だが敵は百戦錬磨の
武人だ、心して掛かれ!」
 彼は前大戦時に旧連合の艦隊指揮官兼司令官として活躍した人物で、海戦に
おいて相応の実績を持つ男だった。武勲の数からいえば、中将に昇進していて
もおかしくはないのだが、前大戦時の『オーブ解放作戦』に置いて艦隊の指揮
を執った際、オーブ軍こそ圧倒したもののオーブの自爆作戦を止められず、貴
重なマスドライバーや研究施設などの確保に失敗した。元々、ブルーコスモス
とは一線を置く立場にあったため、この失敗により前ブルーコスモス盟主、故
ムルタ・アズラエル疎まれ、前線指揮官らか後方へ回されるという憂き目にあ
った。
 その後は後方担当として過ごしていた彼だが、旧連合が消滅しファントムペ
インに吸収されたことで、艦隊司令官として艦隊の一部を預かるように指示さ
れた。ファントムペインとしては有能な人材は可能な限り使いたいと思ったの
であろうし、後方で腐っていたことによりダーレス自身も鬱憤が溜まっており、
ブルーコスモスに対しての不破はこの際抑え、要求に応じたのである。
「敵を返り討ちにしてしまえ!」
 相手の指揮官が誰であろうと、倒すと決めたからには全力で戦う。モラシム
は全艦に長距離魚雷の発射を命じ、着弾後にモビルスーツ隊を発進させようと
した。だが、ダーレスはこれに対し魚雷のロックオンシステムを攪乱する囮を
射出して全弾回避した。
「モビルスーツ隊、発進!」
 これにより、モビルスーツ発進のタイミングはダーレスが握り、先手を取っ
て海中用モビルスーツ部隊を出撃させた。これに遅れる形で、モラシムもザフ
トが誇る海中用モビルスーツの数々を出撃させはじめた。
「紅海の鯱を舐めるなよ……ここは俺の狩り場だ」
 この時のモラシムには、まだ十分の余裕があった。


15 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:22:07 ID:???

 場所を移して、地中海においてもファントムペインとザフトの間に戦端が開
かれていた。スエズ基地を撤収し、急ぎディオキア基地へと撤退を開始したミ
ネルバが敵の小規模艦隊とキプロス近くの海域で遭遇したのだ。
「敵はどこから現れたの!?」
 突然の敵襲来にタリアは驚き、同じようにブリッジクールのほとんどが動揺
していた。敵が紅海を抜けて殺到してきたというのならともかく、全く別の方
角から現れたのである。
「これはまさか!」
 アーサーが何かに思い当たったように声を上げた。
「どうしたの、アーサー?」
「敵は基地から逃げ出したのではなかったのです」
「なんですって!」
 アーサーの考えによれば、敵艦隊が敵を放棄して逃げたことこそ擬態であり、
地中海の何処かに隠れていたに違いない。隠れた場所で時期を待ち、ザフト軍
が焦土作戦により疲弊し、基地を放棄したところで一気に襲撃する、これこそ
が敵の真の作戦なのだ。
「恐らく、スルト湾辺りに潜伏していたのでしょう。ジブラルタル艦隊の航路
からも外れてますし、姿を隠すにはもってこいです」
「初めから私たちは、敵の手の中で踊らされてたってわけね……」
 歯ぎしりしながらタリアが答える。
 というのも、敵が少数とはいえ今のミネルバはほんの僅かな艦艇を指揮する
だけの小集団に過ぎない。分艦隊の大半はモラシムが持って行ってしまい、今
ミネルバの周囲にはオズゴロフ級が二隻しかいないのだ。対する敵は倍以上の
艦艇が確認されている。
「モビルスーツ各機発進! 全力を持って敵艦隊を叩け!」
 ミネルバだけなら、その足の速さに頼って逃げることは出来たかも知れない。
だが、幕艦である二隻を見捨てて逃げるわけにも行かず、ミネルバは不利な戦いを強いられることとなった。
「海中部隊は、オズゴロフ級に搭載されている艦載機に任すしかない。俺達は
敵のウィンダム隊だけに専念するぞ」
 ハイネは出撃準備を急ぐパイロットたちに、大まかな対応策を伝えた。
「レイとルナマリアはあくまで後方支援だ。グゥルの機動力を考えて、無理は
するなよ」
 前衛として敵モビルスーツ隊と戦うのはハイネのセイバー、アスランのジャ
スティス、オデルのジェミナス、シンのインパルスと計4機だ。いずれもエース
パイロットと最高の機体ではあるのだが、敵の数はそれを遙かに上回っている。
それどころか、この時彼らが遭遇した艦隊にも三人のエースパイロットが存在
していた。
「モビルスーツ隊出撃準備、指揮はスウェンに任せる」
 そう、ミネルバに対して戦いを挑んできたのはホアキン中佐が指揮する艦隊
だった。彼はファントムペインに対して何かと因縁のあるこの相手を、自ら志
願し、倒すためにヘブンズベースからわざわざやってきたのだ。
「ミネルバよ、今日こそ貴様の最後だ」
 ホアキンは呟くと、全艦に砲撃開始の命令を飛ばした。


16 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:24:03 ID:???
 クレタにおいて艦隊を集結させ、撤退の準備をいち早く終えジブラルタルへ
と帰投を開始していたウィラード艦隊にも、ファントムペインによる攻撃が開
始されていた。イオニア海を進むジブラルタル軍は側背から現れた敵艦隊に猛
撃を喰らった。
「どうやら敵はアドリア海に身を潜めていたようだな。ワシとしたことが迂闊
だった」
 ウィラードは弛んだ顎をなで回しながら、苦々しげに呟いた。スエズ艦隊は
どうやら艦隊を二分させ、それぞれ別の場所に潜ませていたらしい。
「閣下、どうなさいますか!?」
 焦ったように副官が訪ねてくるが、ウィラードはまだ冷静だった。撤退準備
を早期に終えていたこともあり、遭遇戦の対して素早い対応をすることが出来
たのだ。
「今はひたすら逃げるしかあるまい。砲火を拡散して敵の前進を阻み、急ぎジ
ブラルタルへと戻るしかあるまい」
 ジブラルタルへは至急応援を寄こすように通信を送ったが、果たして送って
くるかどうか。仮に送ってきたとして、その時にはもう自分たちがやられてし
まっている可能性も十分にある。
「これは……ダメかもしれんな」
 ウィラードは思わず悲観的な言葉をいってしまったが、幸いそれを聞いた者
は誰もいなかった。
 そして、そんなウィラードに対し攻撃を仕掛けたのはネオ・ロアノークが指
揮する艦隊だった。彼はホアキンと共にスエズ基地に赴き、艦隊の大部分の指
揮を任されていた。
「さすがはザフトの宿将だ。戦うことを考えずに、逃げることを第一にしてい
るな」
 相手が戦う気満々であるのなら、ネオは全力を持ってこれに対抗したであろ
うが、ほとんど隙を見せずに後退していく敵艦隊に舌打ちせずにはいられなか
った。
「敵の砲火は拡散されている分、威力がない。装甲の厚い艦を前面に出して、
逃げる敵艦隊を追い散らせ!」
 その間に、スティング・オークレーが指揮する空戦モビルスーツ隊と、アウ
ル・ニーダが指揮する海中モビルスーツ隊が出撃準備をさせた。モビルスーツ
であれば、逃げる敵に追いすがり捕らえることも可能なはずだ。

 旗艦のパイロットたちが待機する場所に、ステラとアウルがいた。先ほどま
でスティングもいたのだが、彼は出撃命令が出ると同時に飛び出していった。
アウルにも出ているのだが、「先に行ってくれ」とスティングを先に行かせた。
「行かなくて良いの?」
 不思議そうにステラが訪ねる。彼女は今回、居残り組である。彼女の機体は
空も飛べなければ泳ぐことも出来ない陸戦型である。海中モビルスーツも動か
せなくはないが、敢えて不慣れな物に乗る必要はないと、ネオが判断したのだ。
「ステラ……」
 アウルの顔は、どこか思い詰めたような、緊張の面持ちだった。
「何?」
 問い返すステラに、アウルは息を呑む。彼はここ数日、ステラの精神が酷く
不安定なことを知っていた。


17 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:25:14 ID:???
 そう、あのラクス・クラインを誘拐するために行動を起こした事件の日以来、
ステラは何かが変わってしまった。酷く沈んだような、失望と絶望を折り合わ
せたような表情、身体は脱力しきっており、受け答えも上の空。
 スティングは、ネオの役に立てなかったことを悔やんでいるのだというが、
アウルはそうは思わない。きっと、何かあったのだ。彼女の精神を狂わせる衝
撃的な……悲しい出来事が。現にアウルは、テロ事件の失敗の翌日、ヘブンズ
ベースへと戻る船の中で、彼女が泣いているのを目撃している。
 何故だか、凄く気になった。
 理由は上手く説明できないが、ステラが泣いているのを見て、その理由が知
りたくなった。そして、それを誰にも打ち明けないことが、非常に腹立たしか
った。
 確かに自分は、ネオやスティングほどステラに好かれているとは思えない。
それどころか、もしかしたら嫌われているかも知れないし、欠片も好かれてな
い気もする。だが、アウルにとってステラはロドニアにあったラボからの、大
事な友人だ。ステラが信頼しているネオよりも、ずっとずっと付き合いは長い
のだ。
 この時、アウルの中に生まれた感情は奇妙なものだった。
 ステラが抱えている何かを、殴ってでも聞き出したいという気持ちと、彼女
に手を挙げる事なんて出来ないという気持ち、聞き出すことで彼女が信頼して
いるネオよりも彼女と親しくなれるのではないかという秘密の共有、しかし彼
女に触れることで壊してしまうのではないかという恐怖感、そして……
 ステラのことをもっと知りたいという好奇心、ステラの心にいる何かを排除
したいという劣等感、ステラを誰にも渡したくないという独占欲が、アウルの
中には芽生えつつあった。
 本人は、これがどういう気持ちなのか、説明が出来ない。ただ、自分には理
解不能な複雑な気持ちが絡み合っていることだけは確かだった。
「ステラ、後で話がある」
「話?」
「後で、どうしてもお前に言いたいことがあるんだ」
 聞きたいことではなくて、言いたいこと。何故、自分がそのようなことを言
ったのか、アウル自身判らなかった。
「この戦闘から帰ってきたら、話があるから、ちゃんと、ちゃんと聞いてくれ
よ!」
「う、うん。わかった……」
 いつになく熱のこもったアウルに、気圧されるようにステラは頷いた。アウ
ルはそれを確認すると、さっと扉の方へ駆け出た。
「じゃあ、行ってくる!」
 アウルがステラに対して抱いた気持ちは、彼には複雑だったが、言葉にする
とたった一言で終わるものだった。たった一言、それに気付くことが出来れば、
アウルはもう少し素直に慣れたのかも知れない。
 だが、アウルがそれに気付くことは、一生無かった。


 地表にて、リニアガン・タンクの大軍と戦うこととなったヨアヒム・ラドル
指揮するマハムール艦隊は、意外な苦戦を強いられていた。既に三度、モビル
スーツによる突撃が行われたが、そのこと如くが跳ね飛ばされた。

18 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:26:15 ID:???
「敵はモビルスーツじゃないんだぞ。何を手間取っている!」
 敵のリニアガン・タンクは数の有利さを十分に活かした横列陣をいくつも引
いており、向かい来る敵を長距離砲でもある電磁砲を使って撃ち崩した。正面
から突っ込んでくる敵に対して連続砲撃を浴びせるだけなのだから、これほど
簡単なものはない。バクゥやザウートは後退しては粘り強く突撃を続けていた
が、これでは数を減らすだけである。
「がむしゃらに突っ込むだけだから苦戦しているのだ! 部隊を密集させて砲
火を一点に集中しろ」
 正しい選択でもあり、間違った選択でもある。ラドルは戦力を密集させるこ
とで攻撃力・防御力の強化を図ったが、この時、敵が密集したモビルスーツ隊
に一点集中砲火を浴びせかければ、ザフト軍は総崩れになったかも知れない。
ラドルにしてもそれを考えないではなかったが、元々数においてこちは敵より
少ないのだ。それが分散していては、各個撃破の的となるだけである。
「その方がまだマシだ」
 旗艦レセップス級戦艦『デズモンド』にて指揮を行っていたが、ラドルは敵
の一斉攻撃に対抗するべく周囲の艦隊を集め、艦砲射撃とミサイルによる反撃
も考えたが、敵は仕掛けてこなかった。それどころか、もっと恐るべき手段を
使ってきた。
「こ、これは!」
 戦闘開始から方向のため叫びっぱなしで、声もそろそろ枯れてきたオペレー
ターがそれまでよりも大きく声を上げた。
「どうした?」
 ラドルは指揮座から身を乗り出して訪ねる。
「敵の一部が各所で急速に移動を開始しています。これはまさか、我が艦隊を
包囲するつもりでは!?」
「しまった、その手があったか!」
 ラドルが兵力を密集させたことにより、広範囲での攻勢を必要としなくなっ
た敵軍が陣形を広げ、マハムール艦隊を包囲するため動き始めたのだ。ラドル
は慌ててこれを阻もうとし、移動する敵部隊に対して攻撃を加えた。それによ
って、リニアガン・タンクのいくつかは破壊されたのだが、その犠牲を払って
敵は包囲網を完成させたのだ。
「隊長、我が軍は敵の完全な包囲下にありますぞ!」
 うわずった声で副官が言うが、そんなことはラドルも判ってる。
「敵将はなかなかに狡猾な奴だな……効率的で、必ず敵に勝てる戦術を駆使し
てくる」
 敵ながら賞賛に値するとはこの事か。ただ数で押すだけではなく、ちゃんと
した戦術を使うことで、確実にマハムール艦隊を追いつめている。
「これだけリニアガン・タンク部隊を上手く使うとは、敵将は一体――?」

 ラドルによって賞賛された、このリニアガン・タンク部隊の大軍を指揮する
のはモーガン・シュバリエ、『月下の狂犬』とあだ名される男だった。
「敵の指揮官、なかなかの手練れだな。だが、残念なことに陣容が薄い」
 モーガンは旧連合はユーラシア連邦に所属する軍人で、前大戦時はリニアガ
ン・タンクで構成された戦車部隊を率いて戦っていた。夜戦を得意とし、敵の
作戦を完全に読む戦略家である彼についたのが月下の狂犬という異名であり、
多数を指揮する能力と、敵戦力の位置把握において比類無い存在だった。

19 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:27:30 ID:???
 モーガンはユーラシア連邦に所属する身であるが故、大西洋連邦に属してい
るといっていいファントムペインに対し、あまり良い感情は持っていなかった
が、今回の作戦への参加を命じられ、断ることが出来なかった。前大戦時、大
西洋連邦側の独断でユーラシア連邦にあったアラスカが自爆させられて以来、
何かと国の政治力が弱まってしまったのだ。
「まあ、連中に借りを作っておくのも悪くはないか」
 今回の戦いを行うに当たって、モーガンは敢えてモビルスーツではなくリニ
アガン・タンクを使用することを決めた。これは、地上戦において旧連合及び
ファントムペインの持つモビルスーツがザフトのそれと比べて性能が落ちるこ
とと、急場においても十分な数を揃えることが出来ることが利点だった。彼は
スエズの陸上戦力に加えて、ビクトリア宇宙港に駐留する部隊からもリニアガ
ン・タンクを招集した。これは人間真理の面白さと言うべきか、モビルスーツ
を貸せと言えば嫌がる奴も、リニアガン・タンクを貸せと言えば案外すんなり
と貸すのだ。いつの間にか人の間にモビルスーツの方がリニアガン・タンクよ
り圧倒的に強いという図式が生まれた結果だが、モーガンはそうは思わない。
彼に言わせれば、戦場次第ではモビルスーツよりもリニアガン・タンクのほう
がよっぽど強い。現に彼は、それを証明しつつある。
「敵は完全にこちらの包囲下だ。長距離砲でも打ち続ければ必ず当たる。確実
に敵を仕留めろよ」
 モーガンも、そして彼が指揮する部隊も、活力に満ちていた。敵よりも多い
数で、包囲網が完全なものとなった今、士気は頗る高まっていた。何より、ザ
フトと違って補給物資はタップリあるので、その分の精神的重圧が存在しなか
ったのだ。


 ラドル艦隊が劣勢に陥る中、紅海のモラシム艦隊も敵に対して優勢に立つこ
とが出来ないでいた。艦隊戦においては互角の戦いをしている自信があるのだ
が、モビルスーツ戦闘に置いてザフトは敵に押されつつあった。
「最新鋭機のアッシュを大量に突入しながら、何と無様なことだ!」
 モラシムは激怒するが、彼の旗下の部隊が苦戦を強いられているのには分け
があった。ファントムペインは、この大戦のはじめ、第三次カサブランカ沖海
戦においてザフトの新型モビルスーツアッシュの前に自軍のモビルスーツが敵
わなかったことを知り、対応策を考えた。それまるで、ザフトが、ファントム
ペインのウィンダムなどに対抗するにはどうすればいいかと考えたように。
 結果、ザフトが優れた空戦能力を持つ機体の開発に着手したように、ファン
トムペインは既存のフォビドゥン・ブルーと、ディープ・フォビドゥンをさら
に改良したフォビドゥンヴォーテクスを完成させたのだ。
 新型には更なる新型で、何とも安直な発想だが、こうして人類の技術は進歩
していったのだとも言えるだろう。
「それにしても何と味方の不甲斐ないことか」
 だが、モラシムに言わせれば少し性能の上がった敵が現れたぐらいでこうも
苦戦する味方にこそ問題があるように思えた。熟練兵ならジンでもザクに勝て
る、つまり彼の部下は熟練兵ではないのだ。
「所詮、新兵の寄せ集めなどこの程度か」
 しかし、それでめげるわけにはいかなかった。モラシムは味方が苦戦に陥る
都度、的確な指示を各所に飛ばし、戦線を支えた。だが、それはあくまで支え
るだけに過ぎず、敵に勝つというものではなかった。
 認めたくない話だが、モラシムは敵に圧倒されつつあった。

20 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:30:34 ID:???

 ミネルバは奮戦していた。といっても、それは各モビルスーツパイロットに
よる実績であり、ミネルバ自身は後方にあって敵の攻撃を回避し、迎撃するの
で手一杯だった。
「敵の中央部に火砲を集中して分断しろ! 敵に密集体型を取らせるな!」
 アーサーによる指示で敵艦隊の動きをある程度封じ込みはしたものの、いず
れにせよ状況は不利だ。艦隊戦はもとより、モビルスーツ戦においてもミネル
バは不利だった。空戦の方は、ハイネやアスランを初めとしたエースパイロッ
トたちが奮戦を続けて何とか持ちこたえているが、海中においては敵の新型に
押されており、防戦一方という状態になっている。
「新型? ただのマイナーチェンジじゃないの! まったく情けないわね」
 味方の不甲斐なさにここぞとばかりタリアは叫ぶが、叫んで戦況が変わるの
なら苦労はしない。
「敵が優勢ならそれを逆手に取るまでよ。敵機が突出してきたところを複数で
囲んで後方を遮断、ミネルバとオズゴロフ級の魚雷を叩き込め!」
 タリアにしては、といったら失礼であろうが、なかなかに的確な指示だった。
ミネルバとオズゴロフ級の装備はほぼ対艦用が主立ったもので、威力こそ高い
がモビルスーツのように小回りの利く相手には避けられてしまう。だが、味方
モビルスーツの支援により確実に射程内に引きずり込めば、話は違う。ディー
プ・フォビドゥンの一機が、この戦法に嵌った。ミネルバの魚雷こそ回避した
物の、絶妙な時間差を付けて発射されたオズゴロフ級の対艦魚雷をまともに食
らったのだ。
「いいぞ、上手く敵の数を減らせてる」
 モニターを見ながら、思わずアーサーは握り拳を作る。敵も対応策は考える
だろうが、しばらくは時間が稼げるはずだ。
「空戦の方はどうだ?」
 これで空戦も圧倒できれば、流れを引き寄せることが出来るかも知れない。
アーサーはオペレーターのメイリンに状況報告を求めるが、
「それが……少し変なんです」
「変? もっと具体的に報告してくれ」
「ジャスティスの動きが、不安定というか」
「なんだって?」
 空戦において各機が様々な活躍を見せるなかで、アスランのジャスティスの
み妙に動きが鈍かった。動作が不安定というか、バランス感覚が崩れていると
いうか……
「アスランさん、どうしたんですか?」
 メイリンが通信を送って訪ねるが、返答がない。無論、状況が状況だけに送
り返している余裕がないのだろうが、通信機器に異常があるという可能性もあ
る。メイリンの心中に不安が募ってゆくが、突如としてアスランが一時帰投す
るとの通信を送ってきた。
「どういうことですか?」
 訪ねるメイリンに対して帰ってきたのは、酷く怒りに満ちた声、
『どうもこうもあるか! 駆動部分のケーブルが一つ損失してる。一度、ミネ
ルバに戻る!』

21 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:32:16 ID:???
 アスランはルナマリアの支援の元、ぐらつく機体を何とか制御しながらミネ
ルバへと一時退却を余儀なくされた。戦闘で破損したとか、エネルギーが尽き
たなどと言う話ならともかく、これは明らかに整備の不手際である。ミネルバ
へと帰還したアスランは、メカニックの、ジャスティスの整備を担当していた
ヨウランとヴィーノの二人の胸ぐらを掴み上げた。
「お前らぁっ! ここはアカデミーじゃないんだぞ。ケーブルの接続が出来て
ないとはどういうことだっ!」
 ジャスティスは駆動に重要なケーブルの一本が抜けており、接続事故を起こ
していたのだ。アスランが帰投を決断しなければ、撃墜されていたこともあり
得る。
「アスラン! やめてください!」
 慌ててルナマリアが止めにはいる。戦闘で興奮しているせいもあるのだろう
が、ここまでアスランが感情を激するのも珍しいことだった。
「くそっ、再出撃するぞ! ケーブルを繋ぎ直せ」
「あ、私の方もエネルギーパックの交換を」
 戦力的にも、本来ならミネルバは真っ先にやられてもおかしくはない。それ
がここまで戦況を支えられている理由は、やはりアスランを初めとしたエース
の存在が大きい。彼等が奮戦することである程度の優勢を確保し、反撃する。
だが、既に戦局は局地的な勝利ではどうしようもない状況にまで陥っていた。


 マハムール艦隊の戦闘力は、ほとんど尽きかけていた。艦隊の半数が破壊な
いし破損し、モビルスーツの消耗も激しく、戦闘不能状態に陥っていたのだ。
「破損したモビルスーツは即時収容し、傷ついた味方艦は内側に避けろ! も
う少しだけ踏ん張れ」
 もはや戦局は決したかに見えたものの、ラドルにはまだ起死回生の手段があ
った。
「隊長、これ以上戦闘を続けるのは不可能とは言いませんが困難です。この先
に待つのは死か、それとも降伏か、いずれにせよ決断するべきかと思われます
が」
「まだだ! まだ負けたわけではない!」
 ラドルは決して大言壮語を吐くような男ではない。副官も、彼が何かを待っ
ているとはわかったものの、それが何であるかが判らなかった。
「こ、これは!」
 その時、デズモンドのオペレーターが声を上げた。
「何事か!」
「味方です。各地に分散した味方の一部が、来援してきました!」
 ラドルは指揮座から身を乗り出した。その顔は、勝利を確信しないまでも、
形勢逆転の駒を得た将官の顔だった。
「来たか!」
 ラドルは即座に指示を飛ばし、ザウートを中心とした火力に富んだ部隊に包
囲網の一角に集中砲火を浴びせかけるように命じた。
「あの部隊との挟撃が成功すれば、包囲網は崩れる。これで逆転だ」
 来援してきた部隊は、バクゥを中心とした機動力に富んだ部隊である。これ
が包囲網の内側にいるザウート隊が包囲網の一角に集中砲火を開始したことを
知り、外側からも攻撃を仕掛けるべく殺到してきた。

22 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:33:29 ID:???
 これが成功していれば、ファントムペインが敷いた包囲網は一挙に崩れ去る
こととなっただろう。いや、現に一度は崩れようとしていたのだ。
「無理に敵を止める必要はない。包囲網の中に入れてやれ」
 モーガンはこの戦闘に置いてもっとも的確な指示を飛ばした。挟撃を受けた
包囲網の一角にいたリニアガン・タンク部隊は、敵の攻撃の前に怯んだかのよ
うに体勢を崩し、左右へと壊走した。少なくとも、バクゥやザウートのパイロ
ットにはそう見えた。
「今だ! 一気に突破できるぞ!」
 包囲網が崩れ去ったと思い込んだ外と中のモビルスーツ双方が、進入と突破
を試みて前後入り乱れる形となり、一時的だが大きな混乱が巻き起こった。そ
して、モーガンはそれを見逃さなかった。
「よし、砲身回頭! 砲撃しろ!」
 前後から挟撃していたはずのザフト軍モビルスーツが、今度は左右から敵の
リニアガン・タンク部隊に挟撃される形となったのだ。味方同士入り乱れ、混
乱したところに電磁砲が吹き荒れる。五分もたたぬうちに、その場にいたザフ
ト軍モビルスーツは壊滅状態となった。
「これが用兵と言うものだよ。コーディの諸君」
 モーガンはファントムペインの期待に見事応え、月下の狂犬という異名に恥
じぬ功績を十分に打ち立てていた。現にラドルがこのまま攻勢を継続していれ
ば、マハムール艦隊は全滅を余儀なくされただろう。しかし、そこまでヨアヒ
ム・ラドルという男は愚かではなかった。
「死ぬのも降伏するのも真っ平だ。この上は逃げるしかあるまい」
 ラドルはすぐさま決断すると、脱出のための血路を作るために動き出した。
残り少ない戦力を結集して紡錘陣形を取らせ、さきほどと同じポイントに全戦
力を叩き込んだのである。敵は左右挟撃の体制から完全に立ち直ってはおらず、
正にその隙をついた絶妙な一撃だった。
「ぬぅっ!」
 モーガンもまた、この反撃には予想外だったようで対応に後れを取った。そ
して遂に包囲網は崩れた。
「デズモンドはこの場に踏みとどまれ! 旗艦のダメージは少ない、他の味方
艦を逃がすのが先だ!」
 ラドルの指示でデズモンドは最後まで奮戦を続けた。主砲である40cm連装砲
は敵のリニアガン・タンク部隊を吹き飛ばし、味方の脱出を支援した。だが、
それも長くは続かなかった。モーガンはデズモンドが旗艦として奮闘している
ことを見抜くと、この最終局面において空戦部隊を出撃させたのだ。
「敵の旗艦に爆撃を加えろ! それでこの戦いは終わりだ」
 スカイグラスパーやスピアヘッドを中心とした戦闘機が陸上空母から次々に
発進され、デズモンドに対して対艦ミサイルを発射した。デズモンドもまたミ
サイル攻撃で反撃を試みるが、スカイグラスパーの一機が大胆な急接近を図り、
砲塔式大型キャノン砲をミサイル発射管に撃ちはなった。
 致命傷だった。
 デズモンドは発車寸前だったミサイルの爆発で艦体を大きく損傷させ、そこ
に容赦ない敵戦闘機の攻撃が降り注いだのである。
「これまでか……!」
 ラドルは爆発、炎上する艦橋に立ちつくし、未だ起動し続けるモニターに目
を向けた。味方は、どうやら半数以上離脱に成功したようだ。

23 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:34:36 ID:???
「生き残れよ。残念だが、こっから先、私は何の責任も持て――」
 デズモンドの艦橋に一発のミサイルが着弾した。
 ザフト軍マハムール基地司令官にして、駐留艦隊指揮官ヨアヒム・ラドルが、
ここに戦死した。

「そろそろ潮時か……」
 同じ頃、紅海における攻防においてもモラシムが一つの決断をしたところで
あった。
「艦隊を四隻ずつの小集団に分ける。急げよ!」
 既にスエズ運河まで目前という位置まで後退していたモラシムだったが、敵
の苛烈な攻撃を前になかなか撤退できずにいた。だが、海中でのモビルスーツ
戦闘に思わぬ苦戦を強いられたこともあり、これ以上の戦闘継続は無意味と判
断したのだろう。
「地中海に出て、ミネルバやジブラルタル艦隊と合流できれば戦況を五分に戻
せるはずだ……」
 モラシムはここにきても希望を捨てずにいた。いや、果たしてそれが希望と
呼べる物なのかは判らないが、彼は未だに戦意を失っていなかったのだ。彼は
直属部隊による砲火の密集とモビルスーツによる有機的な連携を作り上げると、
その隙に四隻ずつの小集団へと分かれた艦隊が、一組ずつスエズ運河を抜けて
地球海へと離脱を開始した。この素早い動きはモラシムと対するダーレスも驚
く、めざましいものだった。
「やるな……しかし、そう簡単に逃がしはしない」
 モラシムが直属艦隊と共に離脱を始めたのを知ったダーレスは、全軍に追撃
を命じた。モビルスーツ部隊が殺到し、あわやモラシムは後背を突かれたかに
見えた。
「後ろから群がってくる小魚の集団に、餌を置いてってやれ」
 瞬間、モラシムの旗艦目指してスエズ運河へと突入しモビルスーツが爆発を
起こして吹き飛んだ。モラシムは逃げる際に大量の機雷を敷設していたのだ。
これにより、ダーレスは機雷を撤去せねば先に進むことが出来ず、モラシムが
逃げ出す時間を与えることとなった。
「さすが紅海の鯱と言われるだけのことはある。単なる戦闘屋というわけでは
なさそうだ」
 ダーレスは機雷撤去作業に手間取りながらも、スエズ運河へと突入し、スエ
ズ基地の再奪取に成功した。だが、いつまでも留まっているわけではない。僅
かな部隊を基地に残すと、決戦場となる地中海へと乗り出した。


「モラシム隊長の艦隊が地中海まで後退してきたようね……」
 報告書を読むタリアの顔は険しい。彼はミネルバ、そしてジブラルタル艦隊
と合流して敵と正面決戦を挑むつもりなのが、送られてきた通信からもハッキ
リと判った。
「艦長、撤退するにしてもモラシム艦隊と合流できれば、かなりの戦力増加を
期待できるのではありませんか?」
 あくまで一般論として、アーサーが言う。
「同時にモラシム艦隊を追ってきた敵を相手にすることにもなるわ。仮にジブ
ラルタル艦隊も加えたところで、こちらは二個艦隊に満たない」

24 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:35:46 ID:???
 それに引き替え、敵の総数は三個艦隊以上だ。しかも、それぞれの有能な指
揮官とエースパイロット揃い。
 こちらが戦力を結集したところで、勝てるのか?
「でも、そうね、今更ながらの話だけど、戦力分散は一番やってはいけないこ
とだった。今からでも遅くないのだとしたら、それに賭けてみましょう……タ
ンホイザー起動! 敵中央を突破する」
 ミネルバの艦首砲、陽電子破砕砲タンホイザーが発射された。ホアキンはこ
れをある程度読んでいたので、素早く回避運動を取らせることに成功したが、
ミネルバが突破するには十分な時間だった。
「今は行かせてやれ。敵は戦力の集結を図るはずだ。こちらも、ダーレス、ロ
アノーク両艦隊と合流するぞ」
 今追撃戦を行っても、足自慢のミネルバに翻弄され、ミネルバが別艦隊と合
流したところで逆撃を喰らう可能性がある。それが判らないホアキンではなか
ったので、ここは敢えて譲ったのだ。
 一方、ミネルバでは激戦から帰投したパイロットたちが、息も絶え絶えにグ
ッタリとしていた。本来ならこの間に食事を済ませたり、シャワーを浴びたり
するのだが、誰も彼もが疲れ果ててた。唯一、女性のルナマリアだけは重い身
体を引きずりながらシャワールームへと向かったが、男性陣はそれに習おうと
しなかった。
「この局面で戦力を結集して、何が出来るのやら」
 ハイネはハイカロリービスケットを噛み砕き、プロテイン入り飲料で飲み込
んだ。固形物を食べられるだけ、まだまだ余力はあった。シンやレイなどは胃
が縮んでしまったのか、飲料水を飲むだけだった。
「戦場を限定して、戦力を上手く配置できれば、まだ十分に戦えるのではない
ですか?」
 レイが自分の戦略眼を持ってハイネに尋ねるが、彼は首を横に振った。
「そうするだけの余裕があれば、だな。俺達は精神的に追いつめられてる。食
い物もなく、現れた敵相手に退却を繰り返し……肉体的以上に、そっちの疲労
の方が人によっては強いはずだ」
 確かに、まだ勝敗が決したわけではない。艦隊を結集して再攻勢を掛けるこ
とが出来れば、あるいは勝機もあるかも知れない。
「ザフトにもう後がないことを考えれば、やはり戦うしかないだろう」
 栄養素のみを追求したビスケットの味気なさに顔を顰めながら、アスランが
呟くように言った。
「ここで撤退したところで、ファントムペインは勢いに任せて逆攻勢をしかけ
てくるはずだ。ディオキアかジブラルタル、あるいはその両方の失落を、覚悟
しなきゃいけなくなる」
 それを避けるためにも、もう一戦行うことで、敵のそうした意図を挫く必要
がある。ジブラルタル艦体を指揮するウィラードが、戦意だけを高ぶらせるモ
ラシムの考えに乗ったのも、そうした事情があった。
「決戦場は、どこになるのかな……」
 漏れた声はシン・アスカのものだったが、それは誰に対して問いかけたもの
ではなかった。

「敵はどうやら戦力を結集させるらしいな」
 ネオはホアキンやダーレスから届いた通信文を読み、状況を把握した。

25 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:37:34 ID:???
 彼は先ほどまでジブラルタル艦隊相手に追撃戦を行っていた。さすがウィラ
ードはザフトの宿将だけあって、ネオが望む正面からの戦闘には乗ってこず、
ひたすら撤退することに専念し、付けいる隙を与えなかった。そこでネオは、
艦隊運動とモビルスーツの巧みな連携を持って敵の退路を断つべく行動を起こ
した。多少時間は掛かるが成功すれば効果的この上ない戦法だった。しかし、
その完成を目前に敵は突如として転進し、この海域を急速離脱したのだ。あま
りの突然さと、唖然とする速度にネオは驚き、罠の存在を疑い深追いを避けた。
「なるほどな、これで敵の行動は読めたぞ」
 序盤において、ファントムペインはザフト軍を圧倒していた。地上戦では敵
陸上艦隊を壊滅に追い込み、指揮官のヨアヒム・ラドルを戦死させた。海上戦
でも不利に陥るということは一切無く、さほどの損害や被害も出さず、始終敵
を圧倒していた。だが、ネオにはまだ不安要素があった。
「ホアキンの奴、デカイ口を叩いておきながらミネルバを撃ち漏らしたな」
 ミネルバの存在は、ネオにとっても無視できないものだった。他の幹部や士
官のように、別にミネルバが死神だとか、そんなことは考えていない。ミネル
バの驚異というのは、そんな迷信じみた言い回しや、幸運などの験担ぎではな
く、単純に優れた戦術運用をしている戦闘艦という点だ。
 圧倒的な火力と最新鋭モビルスーツ、そして一流のパイロットも揃っている。
この総合的な戦闘力の高さが、ミネルバの力強さを表している。難局にあって
もモビルスーツたちが奮闘し、ミネルバの攻撃力を持って戦局を打開する、だ
からこそあの艦は強いのだ。
「……獲物の一番うまい肉を、ホアキンに譲ってやることもないか」
 ネオは通信機を操作し、旗艦の整備班に回線を繋いだ。
「私だ。次の戦闘開始までに、ユークリッドを出撃できるようにしておいてく
れ」
 それは、ネオ自らが出撃するという意味に他ならなかった。


 何とかジブラルタル艦隊及びモラシム艦隊に合流を果たしたミネルバは、そ
こで初めてヨアヒム・ラドル率いるマハムール艦隊が壊滅し、指揮官であるラ
ドルが戦死したことを知らされた。一度は同じ戦場を共にした僚友の死に、タ
リアを初めとしたミネルバクルーは悲しんだが、いつまでもそうしているわけ
にも行かない。敵がこの海域に現れる前に艦隊を再編し、陣形を整えなくては
ならないのだ。
「モラシム艦隊の被害が思ったよりも少ないわね……」
 イオニア諸島近くの海域へと艦隊を結集したザフト軍は、迫り来るファント
ムペイン艦隊に応戦するため、戦力の立て直しを行っていた。敗走してきた艦
隊の割りに、それなりの数が残っていることがタリアには意外だった。
「艦長、ウィラード艦長より通信が入っています」
「繋いで頂戴」
 メインスクリーンに、いささか疲れた様子のウィラードが映し出された。歴
戦の将をして、ここまでの道のりは一筋縄ではいかなかったらしい。
『どうも旗色が悪い。一応、陣形としてはモラシムの艦隊を中心とした凸型陣
で行くことになりそうだが、貴官はどう思う?』
「随分、攻撃的な陣形ですわね」
『今更防御陣形を取ったところで、どうにもならんだろう。我々には後がない』

26 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:38:50 ID:???
 基本方針としては、正面から来る敵に対し中央突破戦法を図り敵を分断、各
個撃破するというものだった。ミネルバとウィラードの艦隊はこの両翼を務め
る。
『強引だがこちらの物資の量を考えると、短期決戦に持ち込む以外手はないの
だ』
「その通りですわね……判りました。そのように準備を始めます」
 ウィラードとの通信を終えると、タリアは急いで指示事項を伝達した。だが、
艦内の空気は慌ただしいがどこか重く、よどんでいた。マハムール艦隊が敗れ
去ったことはザフトにとっては衝撃的すぎたのだ。
「既にマハムールが敗れたってのに、司令部はまだ戦うつもりなのか?」
「一矢報いるつもりなんだろ?」
「だが、敵の方が戦力が多いんだろう? 勝てるのか……」
「知るか、そうならないための司令部だろう」
 口々に話す兵士たちだったが、彼らはそれほど司令部を当てにしているわけ
でもなかった、信頼していなかったという方が正しいか、必ず勝てると言われ
て進軍を行い、その結果がこれなのだ。中にはスエズ基地を占拠した時点で進
軍を停止すべきだったと信じて止まない兵士もおり、この惨状は一部出世欲に
駈られた高官によるものだと憤慨していた。
 それでも彼らが叛乱等を起こさず、こうして任務に従事しているのはナチュ
ラルの存在が憎いことに代わりはなく、また、敵に降伏したところで捕虜にす
らなれにという現実があったからだ。ファントムペインなどに代表されるナチ
ュラルの軍隊はコーディネイターを蔑視する余り、彼らを捕虜にすることを拒
み、一人残らず虐殺するのだ。それが判っているからこそ、戦わねばならない。
全ては明日を生きるために……

 やがて、ファントムペインの艦隊が現れ、戦闘が開始された。ファントムペ
イン艦隊は、凸型陣を取る敵に対し密集隊系を取り、こちらも攻撃的な突撃を
行ってきた。まともに正面からぶつかってはザフト艦隊の戦端が折れてしまう。
この力ずくといえる攻撃に中央を指揮するモラシムは驚いたものの、敢えて正
面からぶつかり合うことを選んだ。今更陣形を変える余裕はなかったし、後退
しても敵の勢いは止まらない。
「モビルスーツ隊各機発進、敵モビルスーツを駆逐しつつ、一席でも多くの艦
艇を沈めろ!」
 艦隊戦における不利をモビルスーツでカバーすることが出来るのが、この世
界の素晴らしいところだろう。戦艦等、所謂大艦巨砲主義がなかったA.C世界の
住人であるオデルなどには、軍艦船発達しているこのC.E世界に違和感を憶えな
いでもなかったが、それはまた別の話だ。
 各艦隊から発進されたモビルスーツが、敵艦から発進されたモビルスーツと
激突する。数においてはザフト軍の方がやや劣るが、勢いではまだ負けていな
かった。
「ここで負けると、マジで後がなさそうだな!」
 特にミネルバから発進したモビルスーツ部隊の活躍はめざましいものがあっ
た。ザフトのエースである彼らを倒そうと、幾重にもビームとミサイルが襲い
かかるのだが、その程度の攻撃は通用しないと言わんばかりに、次々と敵を倒
していった。
「なんて数だ……」

27 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:40:18 ID:???
 三機目の敵を撃墜したシンは、モニターに移る敵機の数に戦慄を憶えた。数
十機どころではない、百機以上は確実にいる。それに引き替えザフト軍は空戦
部隊の数がそれほど置く無く、未だ旧式のディンが主力なのだ。
「でも、だからって!」
 シンはインパルスのビームサーベルを抜き放つと、近くにいたウィンダムの
一機を斬り倒した。一機でも多くの敵を、倒す必要があった。
 だが、そんなシンの姿を発見したのか、一機のモビルスーツが急速に接近し、
攻撃を仕掛けてきた。
「こいつは……カーペンタリアにいた奴か」
 ビームライフルによる攻撃をシールドで防御したシンは、攻撃してきた機体
が、かつて戦ったことのある機体であることを知った。
 ストライクノワール。ファントムペインのエースパイロット、スウェン・カ
ルバヤンが乗る機体だった。
「トリコロール機がここにいるということは、近くにミネルバが居るのか?」
 スウェンは、ホアキン隊のモビルスーツの指揮を任されていたが、二機以上
の編成での各個撃破を命じると、以後は単機で敵機に格闘戦を挑み、既に五機
のディンを海面へと叩き込んでいる。
「まあいい、今はこいつを倒すだけだ」
 二刀の対艦刀を構えると、スウェンはインパルスへと襲いかかった。インパ
ルスはギリギリのタイミングでこれを避けると、バルカン砲を斉射しながら距
離を取った。シンはまともにぶつかって、ストライクノワールに勝てるとは思
っていないのだ。
「悔しいけど、攻撃力ではアイツの方が上だ」
 フォースシルエットには、ソードやブラストにはある強力な一撃がない。シ
ンはそれが判っているからこそ、ストライクノワールとの真っ向勝負を避けて
いるのだ。距離を取り、ビームライフルによる射撃戦。派手さもなく、単調で
はあるがこれしかない。
「けど、そんなことは敵だって判ってる」
 シンが言うように、スウェンはインパルスに対し射撃戦を行うつもりなど毛
頭無かった。隙あらば距離を詰め、対艦刀による斬撃を浴びせるつもりだった。
しかし、前回の戦闘で一度剣を交えているだけあって、なかなか勝負は付きそ
うになかった。
 こうした一騎打ちが十分ほど続いたときスウェンが仕掛けた。二機の真上で
戦っていたディンとウィンダムがミサイル攻撃の応酬の末、どちらも爆散し、
その破片が二機の間に降ってきたのだ。遮られる視界にシンは顔を歪ませたが、
スウェンは違った。破片などものともせず、一機突っ込んできたのだ。横薙ぎ
に振るわれるストライクノワールの対艦刀。これが命中すれば、シンはコアス
プレンダーごと斬り裂かれていただろう。
「そうはいくか!」
 瞬間、インパルスの胴体が上下に割れた。ストライクノワールの攻撃のため
ではない、シンがドッキングを解除したのだ。
「なにっ!」
 空振りに終わった攻撃の反動と、意外な防御法にスウェンは彼には珍しく驚
愕していた。そして、その間にシンは再ドッキングを果たし、スウェンの後方
を襲った。
「これでぇっ!」

28 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:42:23 ID:???
 迫り来るシンに対し、スウェンは咄嗟にアンカーランチャーを全弾発射した。
「同じ手は食わない!」
 二刀のビームサーベルでアンカーランチャーを薙ぎ払うシンだったが、スウ
ェンが体勢を立て直すにはそれで十分だった。スウェンはビームライフルを速
射し、シールドを持たないインパルスに有効な打撃を与えた。
「チッ!」
 慌ててシールドを展開して防御に移るシンだったが、かなりのダメージを喰
らったのは事実だ。
「なら……こういうのはどうだ!」
 レイやオデルが見れば、それは無茶な行動であったろう。ハイネやアスラン
が見れば、自棄になるなと諫めたかも知れない。シンは何と傷ついたボディを
見限りドッキングを完全に解除すると、分離した機体の一部をストライクノワ
ールに叩き付けたのだ。
「馬鹿な、こんな」
 こんな戦い方があるのか!?
 フォースシルエットの加速と共に突っ込んでくる機体に対し、スウェンは
175mmグレネードランチャーを撃ち込むが、期待するほどの効果は得られない。
このままでは、当たる。
「いっけぇ!」
 ストライクノワールに機体が直撃した瞬間、シンはコアスプレンダーの全武
装を機体に向けて発射した。後方から撃ち込まれた一撃に、機体は爆音と共に
爆発した。まともにその衝撃を受けたストライクノワールは、体勢を崩し、海
面へと激突していった。VPS装甲のため、今の一撃でやられたわけではないが、
少なくともこの場はシンの勝ちだった。
「ミネルバ、チェストフライヤー、フォースシルエットの射出準備を! 一時
帰投する」


 海中戦において、やはりザフトは苦戦をしていた。空戦でも苦戦し、海戦で
も苦戦していては勝てるわけがない。誰でも判りそうな事実だが、判ったとこ
ろでどうすることもできない。
「……アッシュの準備をしろ」
 海中戦闘における戦況を見ていたモラシムが、低く、だがハッキリとした口
調で副官に言った。
「ハッ? どういう意味で」
「俺が直接行って、モビルスーツ隊の指揮を執る」
 モラシムは指揮座から立ちあがった。
「何を馬鹿な、艦隊指揮はどうするのですか!」
「それは副司令官に一時的に指揮権を委譲する。このままだとモビルスーツ隊
は無様に壊滅してしまう」
 実はモラシムは、モビルスーツ戦闘に置いても勇名を轟かす武人であり、か
つて自らの部隊を率いていた頃は自らモビルスーツで出撃し、何機もの敵機を
海中の底に沈めてきた。
「我々は、負けるわけにはいかんのだ」
 止める副官を無視し、モラシムはアッシュを狩り、自ら出撃した。彼とその
周囲を援護する直属部隊は海中を突き進み、苦戦を強いられていた敵の主力部
隊に攻撃を加えた。

29 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:43:29 ID:???
 言うだけあって、モラシムは優れたモビルスーツパイロットだった。次々に
敵機を葬り、味方を鼓舞し、体勢を立て直した。
「司令官が来てくれたぞ!」
 モラシムの強さを知らないものはザフト軍には一人もない。彼が自ら出撃し、
またたくまに敵を撃ち倒した事実は、海中で戦うザフト軍のモビルスーツパイ
ロットたちの士気を高め、ファントムペインに対し反撃を開始される好機とな
った。
 だが、ファントムペインもやられてばかりではない。海中における戦いの形
勢が逆転しつつあることを知ったファントムペインのネオ・ロアノーク大佐が、
直属のアウル・ニーダのアビスを中心とした部隊を差し向けたのだ。
「こいつかよ、頑張っちゃってるのは!」
 アウルはアビスのアーマーモードから高速誘導魚雷と連装砲を撃ちはなって
モラシムの直属部隊に打撃を与えると、モビルスーツ形態に変形、ビームラン
スを片手に突っ込んできた。
「くたばりやがれ!」
 ビームランスといっても水中であるのでビームの刃は発生しないが、代わり
に水中専用の実体剣が付いている。モビルスーツの装甲であっても、十分に貫
けるはずだった。
「青二才がぁっ!」
 この一撃に対し、モラシムはアッシュのビームクローで受け止め、弾き返し
た。さらにミサイルランチャーを発射し、アビスの動きと視界を封じた。
「こいつ、強い」
 今までとは違う敵に、アウルは少なからずの動揺を憶える。そして、不意に
機体が揺れた。何かの衝撃がアビスを襲ったのだ。
「フォノンメーザー砲!? でも、レーザー角が」
 フォノンメーザー砲とは、ザフト軍が開発した水中でも使用可能な音波兵器
である。ビームと違い、フォノンメーザー自体は見ることが出来ないので、同
軸発射されたレーザー角で発射角を確認するのだが……
「同時にそれは相手に攻撃角を伝えることになるのでな」
 恐るべき事に、モラシムは経験と勘を頼りにレーザー角無しでフォノンメー
ザー砲を発射し、見事アビスに命中させて見せたのだ。見えない攻撃によって
襲われる恐怖を、アウルは実感することとなった。
「なんだよ……なんなんだよこいつは!」
 連装砲を連射し、距離を取るアビス。そこに他のファントムペインの機体や、
モラシムを援護するために現れたザフト軍の機体が入り交じり、混戦となった。
モラシムは確実に敵を討ち減らしていったが、しかし、それは眼前の敵をただ
ひたすら倒すだけのもで、戦場全てを見渡しているわけではない、モビルスー
ツパイロッとしての戦い方だった。
 やがて、緊急通信がモラシムの機体のコクピットにはいる。副司令官の乗る
艦が撃沈し、指揮系統に乱れが生じた。すぐに帰還して欲しいとの内容だった。
モラシムはこの事態に驚き、慌てて旗艦へと戻ろうとしたが、そこに数機のフ
ォビドゥンブルーが襲いかかった。モラシムは巧みに戦いを振り切ろうとした
が、一機が投げはなったトライデントが、アッシュの機体を貫いた。瞬間、次
々に投げられるトライデントがアッシュに突き刺さり、爆散した。
 マルコ・モラシムは、モビルスーツ戦闘に置いて、戦死した。


30 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:45:47 ID:???
「これまでか……」
 戦局を見つめていたウィラードは、自分たちが完全に負けたことを悟ってい
た。今や中央であったはずのモラシム艦隊は陣形を崩し、総崩れとなっている。
ウィラードは、全軍に撤退を指示した。この時点ではモラシム戦死の報は入っ
ていなかったが、そんなことに構ってはいられない。
 次々に艦隊と、そしてモビルスーツが反転行動を起こし、離脱を図った。当
然ファントムペインはそれを阻止すべく追撃に入るが、一部の艦隊がそれを阻
んだ。
「ミネルバが殿を務めている?」
 ウィラードは皆が逃げるこの状況で、ミネルバとその周囲にある数隻が今だ
敵に対し攻撃を行い、味方の脱出を援護しているという報告を受けた。
「女性に助けられるとは、ワシも随分耄碌したものだ……だがここは女神のご
厚意に甘えるとしようか」
 ミネルバが戦場に残った理由は、複数合った。まず、アーサーやハイネを初
めとした幕僚がタリアに味方の撤退を支援することを進言したこと。さらに、
戦場に最後まで残り味方を助けることが如何に名誉で誉れ高いことであるかを、
タリアが理解していたこと。そして、ミネルバの性能を持ってすれば敵に対し
て強行突破を図ることで離脱することも可能であること、などであった。
「砲火を集中して敵の前進を阻め!」
 モビルスーツ隊と共にミネルバは勇戦した。向かい来る敵の前進を食い止め、
味方が逃げ切れる時間を作るのに尽力した。だが、やがては両脇にあって共に
戦っていたオズゴロフ級が撃沈するなど、状況は悪くなっていった。
「艦長、そろそろ限界です」
「判ってるわ……タンホイザー起動! 敵陣の薄い部分に全ての火砲を叩き付
けて、突破とする!」
 敵陣を突破し、正面に抜ける。ミネルバの速度を持ってすれば、そのまま離
脱し、ディオキア基地へと逃げ切ることも可能なはずだ。ミネルバがまさか、
単身別の基地に逃げるなどとは敵も思っていないだろうから、これは敵の盲点
を突いた作戦のはずだった。
 しかし、それを読んでいるものが、敵にはいた。
「逃がしはしないぜ、ミネルバ!」
 タンホイザーの射線軸に、一機のモビルアーマーが浮遊していた。艦艇に紛
れたそれはミネルバの砲手やオペレーターの確認するところであったが、敵機
の一つ程度にしか考えていなかった。
 やがて、ミネルバの艦首から、突破口を開くべく陽電子破砕砲タンホイザー
が発射された。敵艦隊の薄い部分を狙ったそれは、ミネルバが逃げ出す隙を作
る程度には十分だった。
「これはっ!」
 最初の気付いたのはメイリン・ホークだった。オペレーターである彼女は、
タンホイザーの射線軸を突き進むように接近する大型機の存在に気付き、声を
上げた。
「艦長、不明の大型機が……」
 だが、報告するよりも早く、タンホイザーと大型機が衝突した。
 そして……
「タンホイザーを、弾き返した!?」

31 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:47:15 ID:???
 それは初めての経験ではなかった。なかったが、それでもミネルバのクルー
に与えた衝撃は大きかった。タンホイザーを防ぐ機体が、しかも全くの別種が、
ガルナハン以外の場所で、ミネルバの前に立ちはだかったのだ。
「ユークリッド、なるほど、ザムザザーよりも安定性があるな」
 コクピットにて、陽電子砲を初めて弾き返した感覚に震えながらネオは独白
した。彼はこの最終局面において、自らモビルアーマーも乗り込み出撃してき
たのだ。
「陽電子砲を弾き返して傷一つ無いとは、さすがだ」
 ユークリッドはザムザザー、ゲルスゲーといったモビルアーマーの一定の成
功を受けたファントムペインが新たに作成した機体である。前出の二機との違
いは格闘能力の有無で、ユークリッドは砲戦のみを考えられた武装を施されて
いる。これはモビルアーマーがモビルスーツよりも戦艦などに対して有効な兵
器であることが判ったためであり、敢えてモビルスーツと戦うための装備は外
されたのだ。さらに武装数も絞り込み、強力な高エネルギービーム砲とガトリ
ング砲のみだ。
「さぁ、これで退路は断たれたが……どうする?」


 ミネルバのブリッジは半狂乱に近かった。退路を断たれたという事実は、そ
れほどまでに大きかった。
「慌てるな! あの大型機を落とせば、こちらの攻撃は通る。モビルスーツ隊
を結集して、敵に叩き付けるのよ」
 タリアの指示は、この難局に来て正確極まるものだった。彼女は防戦の指揮
をする一方で、モビルスーツ隊の指示をだし、敵大型機の撃墜を命じた。パイ
ロットたちにしても、そうしなければ生き残れないことが判っており、すぐさ
まネオの乗るユークリッドに迫ったが、それを遮るようにスウェンやスティン
グを初めとしたファントムペインのエース機が迎え撃った。
「くそっ、そこをどけ!」
 シンはビームサーベルを振り回し、スウェンのストライクノワールに立ち向
かうが、極度の疲労でその攻撃には多少のムラがあった。それに引き替えスウ
ェンはまだまだ余裕で、しかも先ほどの雪辱をはらすために静かに燃えていた。
アスランはスティングの乗るカオスと激闘を繰り広げ、ハイネはシャムスのヴ
ェルデバスターの長距離砲に苦戦していた。ルナマリアはミューディーの乗る
ブルデュエル相手に戦っていたが、さすがに相手が悪いようだ。
 唯一、レイ・ザ・バレルが激戦の隙間を縫ってユークリッドへと迫った。
「ザクが突っ込んでくる? あの機体は……」
 ネオは額に何かを感じた。この感じ、覚えがある。以前、宇宙でミネルバ相
手に逃亡劇を繰り返していたとき、感じたものだ。
 だがネオは、もっと以前からこの感覚を知り、憶えていた。
「あの時はまさかと思っていたが、パイロットは」
 それはあり得ないことではない。ネオ自身、『奴』が死んだ瞬間を見たわけ
ではないのだ。自分が、そう、自分がそうだったように、『奴』が死なずに生
きていたとしても何ら不思議はないはずだ。
「……確かめてみる必要があるな」
 ネオは機体を動かし、迫り来る白いザクへと一騎打ちを挑んだ。
「来たな!」

32 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:48:21 ID:???
 レイは当然、そんな事情を知るわけがなく、大型機が自分を迎撃するために
向かってきたと思っていた。スラスターで大推力は得ているようだが、運動性
がそれほど高いとは思えない。近距離からビーム突撃銃を撃ち込めば、ザクで
も十分倒せるはずだ。
 ユーグリッドから放たれるビームを、レイは左右に機体を動かしながら避け
ていく。どうやらユーグリッドは直線的な攻撃しかできないらしい。
「なら、勝機は十分にある」
 ザクとユーグリッドが正面から交差し、僅かに接触する。レイは接近戦用の
トマホークを繰り出すことも考えたが、時間的余裕がなかった。ここは素早く
旋回をして……
『その白いザクのパイロット、お前に聴きたいことがある!』
 通信が入ってきた。戦場における接触通信、これはあの大型機から発信され
るものだ。
(通信を送ってこちらを混乱させる戦法か?)
 例えば、意味不明な通信を送り、パイロットを混乱させてその隙を撃つ、と
言う方法があるが、それほど効果的ではない。第一、今相手のパイロットは意
味不明であるが気になることを言った。
「何のつもりだ、貴様!」
 レイは返答代わりのビームをお見舞いするが、瞬時に発生したリフレクター
がそれを弾く。
『その声……似ているな。奴に』
 奴? 奴とは一体。
『君は、君は一体何者だ?』
 不意にレイの額に妙な感覚が走った。レイもまた、この感覚に覚えがある。
以前宇宙で、ファントムペインのモビルアーマーと交戦したときに、この感覚
知った。だが、レイは、それ以前にもこんな話を訊いたことがある。それはま
だ、彼の保護者だった男が生きていた頃の話。

――レイ、俺は戦場でどうしても殺したい相手が二人いる。
 それは誰、と幼いレイは尋ねる。
――一人は判らない。名前すらまだ判らない。でも、もう一人は知ってる。子
供の頃会ったことがあるんだ。
 そいつは、今どこに?
――判らない。でも、感じるのさ。奴が近くにいると、額の辺りがな……レイ、
いつか君にもわかる日が来るかも知れない。だが、その時は、きっと私は死ん
でいるかも知れないな。何故なら、君がそいつに会うと言うことは

「お前は、誰だ」
 今度は、レイが聞き返した。その声は震えていた。声だけじゃない、操縦桿
を握る手も、シートに預ける身体も、全体が震えていた。あり得ない。確かに
死んだはずだ。彼が死ぬ少し前、確かにあの男は死んだはずだ。彼が殺したか
った男、彼の人生を狂わせた男は。
『先に尋ねたのは私だよ。白い坊主くん』
 レイはグッと唇を噛んだ。どう答えるべきか、普通に名乗るか、それとも偽
名でも言うか、いや……
「俺は、俺はラウ・ル・クルーゼだ!」

33 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:49:39 ID:???
 一瞬、驚きを隠せいないと言った緊迫した雰囲気が、通信機越しに伝わった。
「お前は、ムウ・ラ・フラガ、エンデミュオンの鷹か!?」
 レイは言うと同時に多量のミサイルをユークリッドに叩き込んだ。
『……違う、私はネオ・ロアノークだ。ムウではない。』
「では何故、あのようなことを訊いた!」
『君は、クルーゼじゃないな。奴は、そんな口調じゃなかった』
 声の情報など当てになるものかとネオは思っていなかったが、相手がクルー
ゼじゃないという事実は確かめられた。
「いや、俺はクルーゼだ。そして、お前がムウ・ラ・フラガだというのなら、
俺はお前を、殺す!」
 彼は、もう居ない。彼のいない世界に、生きていてはいけない奴がいるとす
れば、それは二人、ムウ・ラ・フラガとキラ・ヤマトの二人だ。だが、前者は
戦場で死に、後者は戦場の後遺症で廃人になったと聞く。廃人をいたぶる趣味
は、さすがのレイにもなかった。
『君とは、長い付き合いになりそうだな』
 ネオの声は今のレイにとっては耳障りで不快なものだった。
「すぐに、すぐに終わる!」
 レイはトマホークを引き抜くと、正面からユークリッドとぶつかった。機体
の差が出る、ザクの突進力など巨体なユークリッドの前には弾き飛ばされるだ
けであった。
「くそっ!」
 ビーム突撃銃を連射するが、既にネオはレイのザクから離れていた。最大加
速度もグゥルとは比較にならず、追いつけそうになかった。レイは荒い息を整
えようと、深呼吸をする。
「ムウ・ラ・フラガ、生きていたのか?」
 彼が死んだのに、生きてないのに、なんで……
 レイは操縦板に右の拳を叩き付けた。

「このままじゃあ、ミネルバは沈む」
 戦場を、オデルのジェミナスが駆けてゆく。彼はこの戦いにおいて、未だ目
立った活躍はしていない。それもそのはずで、オデルはこの戦いに参加する前

から、自分は何の役にも立たないだろうと言うことを知っていた。
「初めは、G-UNITがあれば何でも出来ると思っていたが……とんだ計算違いだ
ったな」
 G-UNITは、確かにこの世界では強力な兵器だ。恐らく、現時点では最強とい
っていい。だが、最強であることがイコールで不敗には繋がらないのだ。戦う
にしても無限にエネルギーが続くわけではない。補給はどうするのか、機体の
エネルギーは? 弾薬は? 各種パーツの予備はどうする。この世界には代え
がない。
 オデルは、限界あるジェミナスの力を、削り取りながら戦っていたのだ。何
が最強だ。たった一機いたところで、見ろ、ザフトはこうして負けているでは
ないか。今まさに、ミネルバと仲間と思っていたモビルスーツパイロットたち
に危機が訪れているではないか。
「いや、させない。させるものか」
 一つの決断を、オデルはした。
 彼は急いで、ミネルバへと回線を繋いだ。

34 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:50:48 ID:???
「ミネルバ、こちらオデル・バーネット」
『どうしましたか?』
 オペレーターのメイリンが返答してきた。
「艦長に繋いでくれ」
 すぐに艦長のタリアが出た。
『この非常時に何の用?』
「艦長、ミネルバがこの海域を離脱するまで、何分掛かりますか?」
 タリアは返答に詰まった。それはオデルが何を言いたいのか、理解しかねて
いるようでもあった。
『今貴方達がいるコースを通ることが出来れば、十分で敵を引き離せるわ。だ
けど、それにはモビルスーツ部隊を何とかしないと』
「それは、私が何とかします」
『えっ?』
「90秒です。90秒以内にモビルスーツ部隊を壊滅させます。後は、ミネルバに
任せます」
 言って、オデルは通信を切った。詮索されても面倒だし、上手く説明してい
る時間など無かった。今は、自分に出来ることを全力で行うしかないのだ。
 オデルは、覚悟を決めた。
「行くぞ……」
 久しぶり、最後に使ってから、もう何年もの月日が過ぎたように思える。限
界時間は、92秒から96秒の間。それ以上は、オーバードライブ状態になる。90
秒、90秒の間に敵を壊滅させなくてはならない。
「PXシステム――起動ッ!」
 遂にG-UNITが持つ最終兵器、PXシステムが作動した。
 そして、そこから90秒間、奇跡が起こった。
「ハァァァァァァァァアッ!」
 ビームサーベルを抜きはなったジェミナスが、一瞬にして付近のウィンダム
を斬り裂く。それに気付いた別の部隊が接近しようとした瞬間には、ビームラ
イフルが放たれ撃墜される。機体出力をフルにして、モビルスーツが集まる場
所に突っ込んでいく。撃って、斬って、爆発させて、貫いて、体当たりで敵機
を弾き飛ばし、無理矢理に機動を修正し、次の機体に向かう。速い、誰も追い
つけない。気付いたときには、負けている。
 エース機が動いた、スウェンのストライクノワールが、ジェミナスに迫る。
遅い、二刀の対艦刀ごと機体が斬り裂かれる。シャムスのヴェルデバスターが、
ジェミナスに砲火を放つ。弱い、シールドで防御しビームライフルで吹き飛ば
す。ミューディーのブルデュエルが、スティングのカオスが襲いかかってくる。
無駄だ、PXシステムの前に敵うものなどいない。
「ハァッ!」
 ブルデュエルとカオスが、機体に致命傷を負って離脱する。まだだ、まだ敵
は残っているはずだ。一機でも多く、一機でも多くの敵を……
「うっ――」
 オデルの視界が、一瞬暗転し、すぐに明るくなった。
 タイムリミット、活動限界時間を過ぎ、システムが強制的にシャットダウン
されたのだ。ぐらつく視界と、震える機体。久しぶりのシステム起動は、身体
に予想以上の負荷を与えた。
『大丈夫ですか! オデルさん!』

35 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:52:00 ID:???
 声がした。この声は、アディン……いや、違う。この声は。
「シン、か」
 我ながら弱々しい声だと、オデルは思った。シンのインパルスは、オデルの
ジェミナスをしっかりと支えた。
『あれ……』
 シンが、何かに気付いたように声を出す。
「どうした?」
『い、いえ、それよりも撤退です。オデルさんが血路を開いてくれたから、脱
出できます!』
 オデルは、僅か90秒の間に敵のエース機全てを含む、数十機のモビルスーツ
を、文字通り粉砕した。
 そこにミネルバがタンホイザーを初めとした砲火を集中させ、敵の艦列を大
きく崩すことに成功しいたのだ。
『今、ミネルバに運びますから!』
 シンの機体も、ボロボロだった。インパルスはこの戦いの最中、予備パーツ
を全て使い果たすほどの奮戦を行ったのだ。それはレイやルナマリア、アスラ
ンとハイネにしても同様で、皆が皆、持てる力をほとんど使い果たしていた。
 だが、とりあえず今は、逃げることだけを考えねばいけなかった。


 そして、アスランとハイネが殿を務める形でミネルバは戦場となった海域を
離脱した。この二人が殿を務めることに、それほど深い意味はない。言ってし
まえば、この二人しか人がいなかったのだ。シンのインパルスは予備パーツを
全て使い果たしてしまい、これ以上の戦闘は無理だったし、オデル・バーネッ
トは体力を使い果たして医務室送りになった。レイやルナマリアと言う手もあ
るが、ザクではやはり不安がある。故に、ジャスティスに乗るアスランと、ハ
イネが乗るセイバーと言うことになったのだ。
「チッ、妨害電波が強すぎて、ろくに通信も出来やしねぇ」
 ハイネは操縦板を軽く叩きながら、この散々たる結果に毒づいた。結局、ザ
フトは大敗してしまった。この負けを補うには、一体どれほど頑張ればならな
いのか。体勢を立て直すにしても、もはやこの辺りのザフトは大半の戦力を失
ってしまった。
「あー、イライラするな!」
 最悪、また地上基地を放棄することになるかも知れない。そうしたらまた戦
場は宇宙だ。仕方ない、ロッシェにも協力して貰ってザフトを立て為さなけれ
ばならない。でなければ……
「――ッ!?」
 その時、セイバーに一条の閃光が襲った。直撃の寸前で避けたそれは、まさ
しくビームライフルのもの。敵からではない。この攻撃は、
「アスラン、てめぇ、何の真似だ!」
 ビームを撃った相手、アスラン・ザラが乗るジャスティスへと向き直るハイ
ネのセイバー。ジャスティスは、ビームライフルの銃口を、真っ直ぐセイバー
へと向けている。
「ハイネ・ヴェステンフルス、悪いがお前には死んで貰う」

                                つづく

36 :運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/11/21(水) 01:55:57 ID:???
第39話です。
……アレ? 規制って無くなったんでしょうか。
一度も規制に陥ることなく、素早く投下が完了してしまいました。
本来なら前スレに投下したかったのですが、先週は風邪で寝込んでました。
今も病み上がりなのですが、投下ぐらいはと思ってみればスレ落ち……

今回の話は、どうしても一回で終わらせたかった話です。
なので、途方もない長さになりましたが、何の障害もなく投下できて驚きました。
次は風邪が完治してからの予定なので、しばらく掛かると思いますが、
スレを守るためにもなるべく早く戻ってきます〜。


37 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 02:12:38 ID:???
GJ!!!
>ジャスティスは駆動に重要なケーブルの一本が抜けており、接続事故を起こしていたのだ。

ヨウランとヴィーノの詰めが甘いせいでハイネがw

38 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 02:51:45 ID:???
うひょー、投下待ってました
GJです

39 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 05:55:48 ID:???
ウィラード=ビュコック
ラドル=ウランフ
モラシム=ボロディン

でFA?

40 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 09:12:50 ID:???
GJ!
アウルの死亡フラグがわかりやすすぎるwww
アスランはハイネの疑惑に気がついていたのか?
だとするとアスランのボスレベルはかなり上がってるなー

41 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 17:22:56 ID:???
申し訳ないけど誰か前スレのログをあげてくれませんか?

42 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 20:47:10 ID:???
だが断る

43 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 22:09:19 ID:???
GJ

44 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 11:18:17 ID:???
GJ!!
さすがにCEにおいてPXモードは強すぎですねw
アウルとハイネに完全に死亡フラグが…orz

45 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 13:11:58 ID:tn+MeyAQ
職人さんお疲れ様でした。いつもいつも携帯から読ませて頂いてます。風邪とかに気を付けて執筆して下さい 楽しく無い人生の楽しみです。

セイバー撃墜したら足が着かないのか? キラは、出てこないやろな

46 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 14:36:40 ID:???
さすがにアスランによる暗殺は予測できなかったw
うわー、ハイネ大丈夫か!?
後、スウェン生きてるか?

47 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 15:41:17 ID:???
いつの間に新スレに……。
前スレ幾つまでいったんだろ。

ハイネ死んじゃうのかなぁ……。

48 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 19:34:35 ID:???
保守

49 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 21:02:41 ID:???
まさかアスラン本人が来るとは…

50 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/23(金) 02:48:38 ID:???
前話がまとめにのらねぇ
まだ読んでないのに

51 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/23(金) 10:48:24 ID:???
初めてだったけど38話をまとめに登録してみた。
やってよかったのかな?

52 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/23(金) 13:21:17 ID:???
>>51かなり乙!

53 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/23(金) 15:47:16 ID:???
投下乙です。

原作では影が薄かったオッサン連中が格好良いね。
モーガンのリニアガン・タンク部隊は面白かった。ラドルは相手が悪かったね。
モラシムは惜しかったな。有能な副官がいればアウル墜とせた気がするし。
ウィラードはどんな死に様になるのかな。

あと、激戦の中でシンがブーツアタックを会得したり、レイとネオの因縁フラグが立ったり、
オデルが全力出したりと盛り沢山な内容だったね。

ラスト、この展開であえてハイネ生存とか……やっぱ無理かなぁ。

54 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/23(金) 15:57:15 ID:???
ハイネ生存はあるかもよ。
ハイネがターミナルかジャンク屋あたりに拾われて
ラクスを通じてアスランの真意を知ったキラが再起するかもしれん。

55 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/23(金) 17:40:09 ID:???
>>53
ブーツアタックじゃなくハンガーアタックでは

56 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/23(金) 19:10:12 ID:???
>>51
マジサンキュー!

57 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/24(土) 08:36:35 ID:???
土曜保守

58 :通常の名無しさんの3倍:2007/11/24(土) 17:02:53 ID:???
夕方保守

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