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落ち着いてLRS小説を投下するスレ6

1 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/21(日) 00:40:23 ID:???
このスレはLRS(レイ×シンジ)小説を投稿するスレです。
他のキャラとの恋愛を絡めた話を書きたいのなら、相応しいスレに投下しましょう。

前スレ
落ち着いてLRS小説を投下するスレ5
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1164097545/

過去ログ

落ち着いてLRS小説を投下するスレ
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1083495097/
落ち着いてLRS小説を投下するスレ2
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1110013621/
落ち着いてLRS小説を投下するスレ3
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1146477583/
落ち着いてLRS小説を投下するスレ4
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1155597854

関連スレ

【恋愛投下】世界の中心で愛を叫んだけもの 第三章
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1167408006/

2 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/21(日) 00:46:55 ID:???
>>1


3 :前スレ963:2007/10/21(日) 11:22:02 ID:???
>>1、乙

前スレ977も締めの投下乙!
リクエストに答えてくれて感謝しています

4 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/21(日) 22:11:11 ID:???
条件しぼったんですか。
ま、前スレのラストがああだったし。



5 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/21(日) 22:56:18 ID:???
>1 条件
多少の寛容さは有っても良いと思うけど・・・
比較的反発有ったみたいだし、しょうがないのかな?

まあ前スレの投稿さんは乙でした。俺は楽しめたよ。

6 :前スレ593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/21(日) 23:51:32 ID:???
条件を絞るのも悪くないと思います。
問題があるなら別のスレを立てればいいだけです。

というわけで、私のも反発というか問題が無かった訳ではないし、もはやスレ違いなので投下を中止します。
長すぎるっていうこともあったし。


7 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 00:05:08 ID:???
あんまスレ乱立させるのもなんだけど、ここはLRS小説を投下するスレだしな。
だけど前スレの977氏みたいなのは何処に該当するんだ?LRASかね?

8 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 00:07:14 ID:???
>>6
んー? リツコが出張りすぎとか言われたことー?
あんなんいいんじゃね?

まー593が熱意醒めたんならしょーがないけど
ここまで楽しめたから、とりあえず乙でした

9 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 00:18:08 ID:???
>>6
え、もう投下しないの?
オレは593の作品は楽しめたからちょっと残念だな。
またこのスレに該当するやつで投下したかったらしてな。
お疲れ様。

オレも書いてみるかな……

10 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 00:23:43 ID:???
>>8-9
ありがとです。
まあ、あれは脇に置いといて、ちょっと別のものを考えてみます。

早速ですが、この設定ならこのスレ向き。
シンジとレイしか居ないエヴァを考えてみようかと……

11 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 00:24:49 ID:???
第三新東京市に到着した碇シンジは、さっそく連絡を取るために携帯電話を取り出した。

何故ここに来たのか、実のところはよく判っていない。
来た理由は一通の手紙。内容は「来て」の一言。
そして到着後に電話するようにという簡単なメモだけが書かれてあった。
そんな手紙一通でホイホイやってくるのもどうか、と普通なら考えるところだが、
しかしシンジには拒否することが出来なかった。
その差出人こそ、両親が他界してから自分の養育費を支払っている当の相手であったのだから。

電話を掛けようとした瞬間に、自分のことをジッと見ている少女の存在に気が付いた。
「ん……うわっ」

ばさばさばさっ

近くで急に沢山の鳩が飛び立ち、驚かされるシンジ。
フンなど引っかけられていないだろうかと自分の身体を点検しながら、再び自分を見つめていた少女を捜す。
が、その姿は無い。
「……?」
まあいい、とりあえず電話だ、と気持ちを切り替えて携帯を持ち直したその瞬間、
「うわぁっ!」
再び驚かされるシンジ。
先程の少女が、すぐ隣に急に現れたのだ。

12 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 00:26:32 ID:???
「……電話。」
その少女はボソリと呟く。

「え?」
「電話……して。」
「え、あ、はい。」 トゥルルルルル……
ぴんぽろぱんぽろぱん……ピッ 「はい、綾波です。」
「あ、ああ、成る程。あなたが綾波さんだったんですか……って、あなたが!?」
それを聞いて少女はうなづく。

シンジの掛けた電話で少女の携帯電話が鳴った。ということは、本人証明のために掛けさせたのだ。
などと説明している場合ではない。シンジが驚くのも無理はなかった。
その目の前の、どうみても同年代の少女が自分を養っていたということになるからだ。
……いや、代理人ということも考えられないか?

シンジは尋ねる。
「あの、綾波っていうことは綾波レイさんの娘さんとか?」
「いえ、綾波レイは私。綾波は私以外に誰もいない……」

ぼそぼそと小声で説明する少女。そんな彼女を不思議そうな顔で見つめるシンジ。
しかし、そこで疑問に思っている場合ではない。
更なる(誰もが知ってる)事態の急変はすぐ間近に迫っているのだ。


13 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 00:27:44 ID:???
とりあえず、ここまでですー

14 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 00:48:42 ID:???
とりあえず乙
これって登場人物がこのふたりだけってことか?

15 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 01:07:41 ID:???

俺は8だが、熱意さめたかー?なんて言ってゴメンよ
しかし◆LRvRIPAn.sは出だしは面白いの書くな

16 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 04:07:56 ID:???
熱心な投下人がいてくれるのはいい事だよな
続きwktk

17 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 17:04:29 ID:???
ふと思ったんだが、レイ以外の女性キャラが出張っていてスレの趣旨から少しズレているけど
LRS小説であることには間違いないという作品は、LRS小説まとめサイト用アップローダーに
うpするというのはどうだろうか?

http://lrs.s282.xrea.com/up/upload.html




18 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 20:26:33 ID:???
>>17
一応、>>1に紹介されてる恋愛雑居スレがあるけどね。
しかし、使い物になるかどうか。

19 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 20:31:17 ID:???
>>前スレ593
もう投下しないのか…
久しぶりに完結するちゃんとした話が読めると期待してたんだが…
よかったら、全部書ききって、うpろだにでもあげてくれないか?

20 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 23:43:58 ID:???
「私に着いてきて。すぐ現れるから。」
「え、ど、どこへ?あの、何が?あの、君はその……」

もうシンジは何から尋ねて良いやら判らない。
が、そんな混乱し続ける彼の手を、レイと名乗る少女は無理から引っ張っていく。
「こっち。」
「あ、ああ……」

話が変わるようだが、やはり男というのはしょうがない生き物である。
こんな訳の判らない状況にあっても、シンジは自分の手を握る少女の肌の柔らかさにドキドキする。
よく見るとあんがい可愛い顔をしている。ちょっと無愛想なのがあれだけど。
同年代のようで、現地のモノらしい学校の制服姿だ。
しかし蒼い髪なんて初めて見た。しかも目の色が赤……ま、それはどうでもいいとして。

と、しょうのないシンジが人物観察を続けている内に、何やら遠くから物凄い轟音が聞こえて来た。
なんだろうと振り返る。だんだんこちらに近づいてくる様子だが。

 ずしぃぃぃん……ずしぃぃぃん……ずしぃぃぃん……
 
それに加えて、ワーッキャーッという悲鳴まで。
何事だ?と驚くシンジの隣で、レイはぼそり。
「あ、警報わすれた。」


21 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 23:45:20 ID:???
そう言ったが早いか、シンジの周囲にそびえ立つビルをなぎ倒して現れたもの!

   ばきばきばきっ!!
      ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜っ!!!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!なんだありゃぁぁぁぁぁっ!!」
突然現れた白黒のコンストラストの巨人を見て、ひっくり返りそうになりながらシンジは叫ぶ。

それをレイは迷子になった子犬を見つけたように指をさし、説明する。
「という訳で、あれが使徒サキエル。」
「い、いや、あの、綾波さん?いきなり、という訳とか言われても。」
「とりあえず、時間を稼ぐ。(ぴっ)警報発令。第三新東京市、戦闘形態に移行。」
レイが自分の携帯を取り出してそう命じた瞬間、

 うぅぅぅぅぅぅぅぅ〜っ
 ……ごごごごごごごごごごごっ!!
 
サイレンが鳴り出し、周囲のビルが一斉に動き出す。
その有様を見てシンジは驚愕。
「な、な、な、な……」
「この第三新東京市は、あの使徒を迎え撃つために建造したの。でも、ビルしまうの、ちょっと遅かった。」


22 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 23:46:40 ID:???
ちょっとどころではなく十分遅すぎる。もうビルのあらかたは壊されつつある。
この状態では死傷者の数は半端ではないだろう。
ていうか、あんな怪物を迎え撃つなら都市なんて建造しなければいいのに。

レイは携帯をかけ直して更に命ずる。
「戦略自衛隊、厚木と入間の全部隊出動。」
「……は!?」
シンジはもう何が何だか判らない。
どうみても同年代の少女が国家権力たる戦自に命令しているのだ。
何者だ?とか疑問に思っている場合ではない。
いったい自分はどこの不思議の国に紛れ込んでしまったのか。そう悩むのが適切だ。

そしてシンジを見つめるレイ。
「それから、碇君にはあれを倒して貰うから。」
今度は君に命じる、というわけだ。

「あ、あの……綾波さん?う、嘘でしょ?」
「嘘じゃない。こっち。」
「え、あの」
「あ、待って。」
「はい?」


23 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 23:48:00 ID:???
  ずしぃぃぃぃぃぃぃぃぃん……

「ひっ……!!」
シンジは腰を抜かしてへたり込む。
無理もない、目の前に巨大なビルのカケラが落下してきたのだから。

もうシンジは発狂寸前だ。
「あ、あ、あ、あ……」
「立てない?」
「い、いや、あの……」
「おんぶ。」

そういってレイはシンジの目の前で背中を向けてしゃがみこんだ。
「早く。」
そう言われて、仕方なくおずおずと手を伸ばすシンジ。
そんなシンジをレイは背負って少しよろめきながらも立ち上がる。
「あの、綾波……さん……?」
「大丈夫。しっかり掴まってて。」
そういって、レイはゆっくりと歩き出した。

シンジは、なんだか情けないような気持ちを味わいながらも、
レイの背中の暖かさのお陰で少しづつ冷静さを取り戻しつつある。


24 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 23:49:15 ID:???
同年代の、しかも異性であるレイが肌を触れることも厭わずに、自分を背負って歩くその姿。
それは優しさというよりも、気迫のようなものをシンジには感じられて仕方がない。
自分にあの使徒を倒させる、そのためには何でもするという執念を。

その背後では大暴れする使徒サキエル。
そして彼女に命じられるままに出撃した戦自の戦闘ヘリ部隊による、死にもの狂いの戦闘が展開されていた。
未だ聞こえてくる人々の悲鳴、壊されていく建造物。

それらを目の当たりにしたシンジは賢明に心を引き締めようとした。
混乱している場合ではない。
何が何だか判らなくとも、僕は何かをやらなければならない。
そう心に言い聞かせようとシンジが身を震わせていた、その時。

そんなシンジに、レイがそっと優しく囁いた。
「着くまで寝ていて。必ず、私があなたを守るから……」


25 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 23:51:59 ID:???
とりあえず、ここまでですー

前スレのあれの続きを要望していただけるのは非情に光栄です。
私も中途半端はいけないと思っています。
気の向き加減になっちゃいますが、あっちを書いたりこっちを書いたりしてみようと思います。


26 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/22(月) 23:55:29 ID:???
○ 非常 もしくは 誠に
× 非情

27 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/23(火) 00:23:50 ID:???
「あ、警報わすれた。」
ちょwww

28 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/23(火) 00:40:23 ID:???
(゜゜)新風の予感!

29 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:06:59 ID:???
ばっしゃーんっ!!

「ぶ、ぶ、ごぼごぼっ……ぶっはぁっ!!」

いきなり水槽に叩き落とされたシンジは、あやうく溺れかける寸前でようやく目を覚ました。
そうか、自分は眠ってしまったんだ、と我に返りながら自分に伸ばされた棒を掴む。
その棒を差し出した者。それは、さっき出会った綾波レイ。

「目、さめた?」
「え、あ、はい、さめてます!起きてますってば!」
そう言いながらも水槽から這い上がったシンジに、少し堅めのタオルを手渡すレイ。

それで顔や頭を拭きながら、シンジは少し愚痴を言う。
「な、なにもこんな起こし方をしなくても。」
「ごめんなさい。薬を嗅いでもらったから、なかなか起こせなくて……こっち。」
そんなふうに謝りながらレイはシンジを薄暗い空間の中へ案内していく。
そこは地下だろうか。窓明かりがまったくなく、点々と小さな電灯が点されているだけの場所だった。
しかし、天井がやたらと高い。

シンジは尋ねる。
「ここは……どこなの?」
「秘密基地。判りやすく言うと。」


30 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:08:08 ID:???
「秘密基地ぃ?」
「世間ではあまり知られていないから。ここはエヴァを建造、メンテナンスするための施設。」
そういいながらレイは壁のスイッチをぱちんと入れる。
すると、がしゃんがしゃんがしゃん……という騒々しい音がして巨大なライトが次々と点灯された。
そしてシンジの目の前に現れた物。
それは金属で出来ているらしい巨大で仰々しい人型の顔。

「ロボット?きょ、巨大ロボット!?」
「そう。正確に言うと、特殊な有機生命体を電気的に制御可能とするために改造されたもの。
 正式名称は最終決戦用人型兵器、エヴァンゲリオン。」
「……それでエヴァっていうのか。」
「そう、これに乗ってあなたは使徒と戦ったの。」
「で、でも、こんなの初めて見るし、操縦なんて出来る訳が……あれ?戦ったって、僕が?」
「そう、あの使徒は殲滅されたわ。お疲れ様。」
「……はあ。」
出会った頃から、レイの話はそんな訳の分からないことばかりだ。
シンジはもう困惑するのも飽き飽きした様子である。

シンジの居る所は巨大な水槽の縁で、そこにエヴァンゲリオンは首元まで水に浸けられて安置されている。
その水槽を見てシンジはゾクッと身を震わせた。
こんな深いところに自分を叩き落としたのか、と。


31 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:09:11 ID:???
レイはシンジを案内しながら説明を続ける。
「一応、操縦方法があるのだけれど、初めて見る碇君にいきなり覚えろというのは無理。
 だから薬で更に眠って貰って、操縦席に押し込んだの。」
「……でも、眠ってちゃ何にも出来る訳が」
「大丈夫。案の定、エヴァは使徒に攻撃されて頭に来たのか、怒って勝手に倒してくれたから。」
「それじゃ生きてるの?これ。」
「さっきも言ったけど、これはロボットじゃなくて特殊な有機生命体。
 生命体だけど魂がない。だからパイロットが魂となることでようやく動ける。」
「あ、ああ、成る程……」
そんな理屈が通っているような通っていないようなレイの説明で、無理矢理にシンジは理解した。
とりあえず、納得できることは少しずつでも納得するしかないようだ、という面持ちで。

そして、二人は薄暗い廊下を歩いていくと、シンジとレイの鈍い足音が響くばかり。
そして少し高いところにある埃だらけの蛍光灯がチカチカと明滅する他は、何の物音も聞こえてこない。

シンジは尋ねる。
「あの……他には誰もいないの?」
「いうなれば私以外には、ここには誰もいない。」
「いうなれば……?」
「あそこ。今日からあそこに泊まって。お風呂も沸かしているから。」
そう言って、レイはある扉を指さして示した。



32 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:10:18 ID:???
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その扉の向こうは家庭的な和室になっていた。
六畳ぐらいの広さで、中にはちゃぶ台に食器棚や電気ポットにお茶のセット一式、
そして今どき珍しいブラウン管のカラーテレビなどが所狭しと置かれている。
そして、ガラス戸で隔てられた向こうの台所には古びた冷蔵庫。
その冷蔵庫、シールの跡などがあちこちにあって、ずいぶん使い込まれているのが判る。

「ご飯の用意をするから、お風呂に入ってきて。」
レイはそう言ってシンジに新しいタオルを手渡し、指をさして風呂場を示す。

「あの……服が濡れちゃって。」
「洗濯機に放り込んでおいて。洗うから。」
「でも、着替え……」
「気にしなくて良いから。」
「……」

しょうがなく風呂場へと向かうシンジを見送り、レイはカチャカチャとご飯茶碗と箸をちゃぶ台に並べる。
一組目、二組目、三組目、そして4組目、更に……
その時、物凄い悲鳴とともにシンジが飛び出してきた。

「なああああああああああああああああああああっ!!」


33 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:11:26 ID:???
大慌てのシンジに、レイは真顔で問いかける。
「どうしたの。」
「あ、あ、あ、あの、あの、」
「落ち着いて。」
「お、落ち着いてったって、あれは、あれは……」

そんなふうにあたふたするシンジの後ろをフラリと通りすがる者。

それは、綾波レイの姿そのものであった。
シンジは一瞬、何か勘違いをしたのかとキョロキョロと見渡したが、
しかし自分を案内してきた制服姿のレイは、先程と変わらず目の前にいる。
そのもう一人の「レイ」、彼女は間違いなくシンジと入れ替わりで風呂から上がり、
タオル一枚を引っかけただけの素っ裸同然の姿で、恥ずかしげもなく制服のレイの隣にペタリと座った。

シンジはこの有様に驚愕して、何か尋ねようにもなかなか言葉がまとまらない。
「こ、こ、これは……」
「碇君、落ち着いて。あなた、彼が恥ずかしがるから何か着て。」
「そ、そ、そういうことじゃなくて……」
「ああ、ご免なさい。おでこの数字が消えてる。ほら、もう一回書くから。」

そしてレイはサインペンを取り出し、「レイ」のおでこにキュキュっと数字の「3」を書く。
「これで見分けがつくわね。」


34 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:12:29 ID:???
「そういうことじゃなくて、あの……何でもう一人の君が……」
「私のクローン。人手が足りないから作ったの。
 あなたの知らないところで、科学技術はずっと進んでいるの。
 このクローンの技術こそ、はエヴァの開発に絶対不可欠だった。」
「あ、あ、ああ……そうなのか……」
困惑続きのシンジもようやく呼吸が整ってきた様子である。
その表情は既に憔悴しきっては居たが。
ふと、レイは何を思ったのか。シンジに向かって「3」と書かれた裸の「レイ」をぐいっと突き出す。
「よかったら、使う?」
「え……使うって、あの……」
「使う?」

そのレイはどういう意味で言ってるのか、その意味が判ったのかどうか判らないがシンジは慌てて断った。
「い、いや、あの……遠慮しとく。」
「そう……」
なにか残念だったのだろうか。そう言ってレイは少し目を伏せた。

「綾波、その……それで、さっきは『いうなれば』って言ってたのか。」
「そういうこと。私と私の複製以外には、この秘密基地には誰もない。」
「そ、それじゃあのエヴァとかいうロボットも君達だけで?」
「そう……それより前を隠した方が。」
「あ……」


35 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:13:34 ID:???
素っ裸のシンジは赤面しながら、慌てて風呂場へと戻っていった。

その風呂場、そこは公衆浴場並の広さでゆったりと身体を伸ばして浸かることが出来た。
そこで身体を温めながら、ようやくシンジは人心地を着いた気分になる。

シンジは湯船に浸かりながら考える。
エヴァのこと、そしてこの秘密基地、街に現れた「使徒」、そして綾波レイと、その複製。
もう何が何だかさっぱり判らない。しかも、その使徒を僕が倒した?眠っている状態で?

またしても訳の分からない状態に陥りそうな頭を、
いったんザブンと湯に沈めてから顔をバシャバシャと洗った。

そうやって、シンジが気持ちを落ち着けようとしていた所へ、外からレイの声がする。
「ごめんなさい。作業が終わった子たちがお風呂に入るから。
 さあ、みんな。彼の邪魔をしないようにね。」

え……と、何を言われたのか判らない状態でシンジは驚く。
そしてガラガラガラッと磨りガラスの扉が開かれ、どやどやとなだれ込むように入ってきたのは、
4番から10番までの数字がおでこに書かれたレイ、レイ、綾波レイの群れ……

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」



36 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/24(水) 23:15:07 ID:???
とりあえずここまでですー

37 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/24(水) 23:38:30 ID:???
(いい意味で)笑わせてくれるぜ


38 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/24(水) 23:47:00 ID:???
すげえ斬新w
「おんぶ。」 に萌え

39 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/25(木) 00:20:37 ID:???
おでこに数字w
想像するとすげーシュールな気がするwww

40 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/25(木) 01:18:53 ID:???
綾波レイ、それはシュールレアリスム。
こんな環境でも順応できそうなのが人間の凄いところである。

41 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/25(木) 02:31:43 ID:???
何人いるんだろ?
208とか209とか居たらスゴイなw

42 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:50:38 ID:???
気が付くと、シンジは先程の居間に寝かされていた。
目を開ければ、和室向けの電灯が淡い光を放っている木製柄の天井が見える。
それはシンジにとって知らない天井……などと言っている場合ではない。
流石に気がとがめたのか、レイはシンジに謝る。
「ごめんなさい。驚かせてばかりで。」
まことにもって、驚かせすぎである。

シンジが起きあがって見てみると、その六畳一間の部屋に合計9名のレイがギッシリと並んでいた。
皆それぞれに着ているものは違っていたが、Tシャツとかカッターシャツとかを裸の上に着ただけらしく、
うっかり見てはならないものを見てしまいそうで、まったく気が抜けない状況である。
そんな彼女たちのおでこに、風呂場で消えたらしい数字を書き直しているのが制服姿のレイ。
その彼女にシンジは尋ねる。
「えーと……ということは君がオリジナル?」
「そう。見分けが付かなくなるからピアスを付けたの。似合う?」
「そうか、耳を見て区別をつければいいんだね。」
「……似合う?」
「あ、ああ、ゴメン。似合うよ、綾波。」

それにしても、こうして全く同じ顔の少女が並んでいるのは実にシュールな光景だ。
まだ彼女たちの可愛らしさが助けとなって、悪夢に陥ることを免れてはいたのだが。
しかし、全員ニコリともしないのはおろか、まったくの無表情。
本当に大量コピーしただけようにそっくりな「レイ達」であった。


43 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:51:43 ID:???
そこまできてシンジは、ようやく自分が全裸にタオル一枚の状態であることに気が付いた。
聞けば、大量のレイを見て風呂場で気絶したらしかったのだ。
それはそうだろう。すでにクローンの存在を聞かされていたものの、あんな光景を見せられてはたまらない。
しかし、なんだか頭がフラフラする。
それも無理は無い話で、倒れた直接の原因は精神的ショックだけではなく
大量の少女の裸を目の当たりにした事で、鼻血による大量出血したのが原因だったのだから。
慌てて股間を隠しなおすシンジにオリジナルのレイは言う。
「だから、気にしなくて良いから。」
「あの……僕の服は?」
「洗濯中。気になるなら、この子達も裸に。」
「ま、待ってよ。それになんの意味が……」
レイは、みんな一緒に裸になって何をしようと考えているのか。
どうにもレイの人格が少し疑わしくなってきたが、しかし今更ながら逃げられない。
とりあえずシンジは、Tシャツとトレパンのようなものを借りて人心地つくことができた。

「さあ、晩ご飯にしましょう。」
そのオリジナルの一言を聞いて、コピー達はシンジが寝ていた空間にちゃぶ台を運び込む。
そして炊飯器がパカッと開けられ、次々と茶碗につがれていくご飯。

ご飯が並べられ、9人のレイと一緒にグルリとちゃぶ台を取り囲んだシンジは、
なんだかルーレットの当たりになったような気分である。
準備が整い、レイ達は合掌した手に箸を構えて「いただきます」のポーズをとった。


44 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:52:53 ID:???
「……あの。」
ここで流石のシンジも尋ねざるを得なかった。

「何?」
「ご飯だけ?」
「そう、晩のご飯。」
そう答えるオリジナルのレイに呼応して、全員同時に頷くレイのコピー達。

「あの、ご馳走になる身で悪いんだけど……他には何も?」
「塩。」
そう言って、レイは水色の蓋の小瓶をちゃぶ台の上にコトン。

シンジは目を丸くした。
「あの……綾波、塩って。」
「うん、味塩。」
「いや、だから、あの……」
「只の塩じゃない。味塩の成分はグリタミン酸ナトリウムだから、昆布と同じ旨み成分の……」
「いや、そういうことじゃなくて、その……」

何を言って良いのか判らなくなってるシンジの茶碗に、オリジナルのレイはパラパラと塩を振りかける。
それをみんな待っていたのだろう。次々と味塩を回し合うコピー達。
「さ、みんな食べましょう。」


45 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:54:40 ID:???
シンジはしょうがなく、レイ達と一緒にモクモクとご飯を食べ続けた。
なんだか喉を突っ返そうになりながら、なんとか最後の一口を飲み込んだシンジ。
僕はいじめられているのだろうかと考えてしまいそうになるのだが、
しかしレイ達も同じように同じ物を食べているのだ。
これがここの生活だ、と言わんばかりに。
「おかわりは?」と尋ねられてが、シンジは首を振って拒否をする。
それは仕方がないだろう。飽食の生活の中で、白ご飯を塩だけで食べ続けられるものではない。

さて食事が終わった。あとは寝るだけだ。
「みんな、休む準備を。私はお風呂に入るから。」
といって立ち上がるオリジナルの一言で、シンジはコピー達にぐいっと両脇を引っ張られて立たされる。
何事かとキョロキョロしていると、コピー達は一度は運び込んだちゃぶ台をもう一度そとに運び出し、
そして押し入れから布団を出して引き始めた。
六畳間に敷き布団三組がギッシリと敷かれて、毛布が適当に広げられる。
そしてポンポンと置かれる枕代わりのクッション達。

「あ、あの、まさか皆いっしょにここで寝るの?」
うん、とピッタリ同時にうなずくレイ9人。
そのまま無言でシンジをほとんど押し倒すようにして寝かしつける。
「ちょ、ちょっと……」
だが、コピーのレイ達は無言でシンジと共に横たわり、部屋の電気を消してしまった。
もしかしたら、クローンには言葉を話す機能が損なわれているのだろうか。


46 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:55:48 ID:???
だが、シンジにはそんなことを考察している場合ではないはず。
六畳間、いや動かせない家具のお陰でもっと狭い。そこに9名なのだ。
「ぶふっ……いや、ちょっと、あの!」
レイ達は遠慮無くシンジと共に身体を寄り添い合う。
もう寄り添うどころか身体を絡めなければ、とても横になることなど出来ないのだ。
レイの身体の感触をもろに感じてしまい、性欲真っ盛りの中学生シンジは悲鳴を上げて逃げようとする。
だが、どこにそんな逃げ場があるというのか。

そういえば電話ボックスに何人はいることが試すとか、以前にバラエティ番組で有ったような気がする。
いやシンジ、そんな余計なことを考えている場合ではない。
そういう場合は笑いを取るために、後からこれでもかというダメ押しが……ほら、やってきた。

がらがらがら……
「良いお湯だった。それじゃ皆、お休みなさい。」
そして無理から布団に潜りこもうとするオリジナルレイが、更にシンジを圧殺する。
シンジはなんとか腕や何かで支えて、身体の下手な部分が触れないように頑張っていたが、
更に逃げようとしたのが裏目に出て、レイ達と後ろから前からの状態に陥り……

「ご、ごめん!僕、外で寝る!」
遂に我慢の限界突破。
レイ達の頭を踏みそうになりながら、シンジはつま先立ちで居間を飛び出していった。


47 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:56:58 ID:???
翌朝。

廊下で体育座りで座って寝ていたシンジ。
だが目を覚ましてみると毛布が一枚かけられていることに気が付いた。
そしてシンジは肩に重みを感じる。
なんだろうと思って見てみると、レイの一人がもたれかかって寝息を立てていた。
そして、そのレイのおでこには数字の「3」。
気を使ってオリジナルが置いていったのだろうか。毛布と一緒に身体を温める抱き枕がわりとして。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「さあ、朝ご飯にしましょう。」
オリジナル・レイの先導でちゃぶ台に茶碗が並べられる。
そう、朝のご飯である。ちゃぶ台の上には白飯の茶碗と箸しかない。
「あの……朝はご飯だけ?」
そう尋ねたシンジに、オリジナルは無言で首を横に振って否定する。
そして冷蔵庫から取り出した物。
「綾波、あの……これは……」
「キャベツ。」
そう、半玉のキャベツであった。
いやわざわざ尋ねなくても見れば判る。
しかし、昨日の塩に比べれば、調味料でないだけでもマシだと思うのだが。


48 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:58:04 ID:???
「あの……これで、ご飯を食べるの?」
一斉にうなずくレイ達。そしてシンジをジッと見つめる。
彼が最初に取るのを待っているのだろう、
シンジはどうすればいいのか判らないままキャベツを一枚はがすと、
レイ達はそこから時計回りでキャベツをまわし合い、一枚ずつはがしていく。

その様子を見て、流石のシンジもたまりかねたのだろう。
こんな申し出をした。
「綾波、その……野菜炒め、作ろうか。肉抜きでよければ。」
「うん、お肉きらい。」
そういってオリジナルは自分のレタスをシンジに渡し、コピー達もそれに習う。

シンジは溜息混じりに使ったことが無さそうな包丁やフライパンを探し当てる。
どうやら僕に出来ることがありそうだと、考えながら。


49 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/25(木) 23:59:07 ID:???
とりあえず、ここまでですー

50 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/26(金) 01:43:55 ID:???
乙!
なんかすげーやwww
読んでてすげーシュール。

51 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/26(金) 02:25:44 ID:???
おつおつ
キャベツがレタスになってるw

52 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/26(金) 22:21:28 ID:???
おもしろいんだけど、この描写だけ続くとダレてくるかも・・・
けちつけてゴメン。期待の現われという事で。

53 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/26(金) 23:46:10 ID:???
もし三人目が自分からシンジのとこに来てたのなら俺は三人目を応援せざるを得ない

54 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/27(土) 12:54:25 ID:???
シンジはおれを怒らせた。
昨日の夕飯がマジで塩とご飯だったオレを怒らせた

55 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:42:16 ID:???
さて朝食が終わり、レイ達はさっそく仕事場へと向かう。

そのレイ達の動きを見れば、一列に並んで歩く様からレミングスを連想したり、
先頭のオリジナルの命令に従い作業を行う、いうなればピクミンを連想する方もいるだろう。
しかし作業を終えて何もすることが無くなると、
その場で立ちつくして呆然とするコピー達の有様を見る限り、
エイジオブエンパイヤというゲームがもっとも的を得ているような気がする。
まあ、そんな元ネタのゲームが判らなければ意味のない例え話はさておいて。

ようするにコピー達では能力的に人間と同じというわけにはいかないらしく、
結局はオリジナルのレイがコピー達の管理に奔走しながら、自分自身も作業に追われる始末。
とても、コピーのお陰で手が足りているとは言い難く、レイ一人が作業しているのに等しい状態である。

それはともかく、レイ達が作業に向かった先を見てシンジは驚いた。
初号機とは別に、もう一台のエヴァが存在したのだ。
「これは零号機。初号機より以前に製造された、いわばプロトタイプ。」
と、レイは解説する。

「これを現在は改良中。それが終われば、初号機と共に戦える。」
「でもさ、綾波。パイロットは?」
「私が乗る。あなた一人に戦わせやしない。それに、どんな使徒が来るのか判らない。
 戦力増強をしておくことに、こしたことはない。」



56 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:43:20 ID:???
その零号機は初号機とほぼ同じ大きさで、初号機の仰々しい顔とは違ってシンプルな一つ目である。
プロトタイプと言うことであまり作りに凝らなかったのだろう。
だがその他の基本的な構造は大体は同じようだ。

コピー達と共にボルトをせっせと締め続けるレイに、合間を見てシンジは尋ねる。
「こうしてエヴァの整備をして、さらにパイロットもするというの?」
「勿論。エヴァが動いている時に、同時に整備をすることは出来ないから大丈夫。」
「でも、それでは大変だよ。使徒が沢山やってきたら休む暇も……」

その時、レイは作業の手を止めて、何かを思い浮かべるかのように中空を見上げた。
そして語り始める。
「それは大正時代のこと……」
「大正?」

「そう。ある戦闘集団の中に機械工学に長けた技術者が加わっていたの。
 その人は戦いにおける能力は低いけど、それでも戦闘に参加しつつ兵器の開発とメンテナンスをこなし、
 仲間の命を守るために懸命に励んでいた。」
「……」
「私にはその人の笑顔が一番かがやいて見えた。その戦闘集団の名は帝国……」
「綾波。それ、フィクションだよ?」
「うん、好きなの。香蘭が。」
大まじめな顔でコクリと頷くレイ。シンジはかろうじてその元ネタを知っていたようだ。


57 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:44:37 ID:???
「碇君、今日はのんびりしてて。」
そう綾波に促されて、シンジは居間へと戻った。
確かにレイ達の作業を眺めていてもしょうがない。
しかし部屋に戻ってみても退屈だ。テレビはあるけど、その時間は大した番組はやってない。
ふと思い立ち、冷蔵庫を開いてみたのだが禄な材料が入ってない。
とりあえず見つけたのはキュウリが10本。ということは……

そこに、レイ達がぞろぞろと帰ってきた。
「そろそろお昼ご飯にするから。おかずはそれ。」
案の定である。今度はキュウリだけでご飯を食べろというのだ。
ご飯がつがれて、その横にキュウリが添えられた食卓はシンプルで実に美しい。
しかし、箸も取らずにそれを眺めている訳にもいかない。

幸い、基本的な調味料が揃っている。さあ、シンジの出番だ。
シンジはまだ封の切られていない酢の蓋を開けて三杯酢をこしらえ、
薄切りにしたキュウリをそれに漬け込んだ。

「美味しいわ、碇君。」
シンジは喜ぶべきである。
例え、顔色一つ替えずに漏らした褒め言葉であったとしても。
しかし、こんな食生活ではダメだと考えるシンジ。
そんな彼を無理もないと言って良いのか、贅沢だと叱るべきか。


58 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:45:42 ID:???
シンジはレイ達に食後のお茶をつぎながら尋ねる。
「あのさ、綾波。買い物に行きたいんだけど近くに店とかある?」
「買い物?」
「うん、服とか大して持って来てないし。あとさ、今日の夕飯は僕がいろいろ作ってあげるよ。」
「そう。お金はあるの?」
「えーと、少しだけなら。」
「待ってて。(携帯電話をピッ)もしもし、お金を届けて。」
「え……?」

誰かにお金を無心する、というのはそれほど不思議な話ではない。
しかし、くれと言えば貰えると信じて疑わないようなレイの頼み方が気になって仕方がないのだが。
それはともかく、シンジはレイに連れられて地上へと昇ったのだが、今度は地上の有様に唖然とした。

「あの、綾波……何も、無いんだけど……」
「昨日の戦闘で壊しちゃったみたいね。」

その通りに地上は瓦礫の山と化していた。
いや、建物が全く残っていないわけではないけど、よく見ると半分しかなかったり根元だけだったり。
それどころか、まったく人の気配が無いのだ。みな逃げ去ったのか、それとも戦いに巻き込まれたのか。
シンジが来たときは車も電車も走っていて、十分活気のある街だったのに。
それがこの有様である。いったい初号機はどれだけ大暴れしたというのだろう。


59 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:46:51 ID:???
ある時、レイは空を指さす。
やってきたのは一機のヘリコプター。どうやら戦自のものらしい。
そして何かパラシュート付きの荷物を投下して、そのまま着陸せずに行ってしまう。
シンジとレイがその荷物に駆け寄り開いてみれば、数億もあろうかという札束がギッシリ。
「さあ、碇君。それで買い物を……」
「どこで?」
「……」
「……」

仕方なく、レイ達と十人がかりでその札束の山を地下に持ち帰る。
そしてシンジは悟る。物の価値は人の間に生まれる空想である、ということを。
大切そうに持ち帰る札束が、この陸の孤島では単なるゴミの山でしかない。

流石のレイもとぼけてばかりいる訳にもいかない。
ノートパソコンを持ってきて、シンジがネットショッピング出来る環境を用意してくれた。
支払いは気にしなくて良いから何でも欲しい物を注文しろ、またヘリが届けるから、と。

シンジは夕飯のメニューを考えながら、夢中で注文内容をリストアップしたのだが……
ここで当然ながら疑問が浮かぶ。そして、それをそのままにしておく訳にはいかなくなった。
「ねえ、綾波。聞いても良いかな。」
「何?」
「綾波は一体、何者なの?」



60 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:47:58 ID:???
確かにもっともな疑問である。自分と同い年ぐらいで、シンジの小さな頃から養育費を支払い、
自衛隊の指揮権を保有していて、現金でも何でも欲しい物が届けられ、
この街で使徒を迎え撃つために一人で待機し、クローン技術をも手にしてエヴァの管理を司り……
それもたった一人で。

レイは姿勢を正して答える。
「私は……実をいうと人間ではないの。」
「ええ!?」
「あなたに判るような言葉で言うと宇宙人。全宇宙に広がる情報統合思念体……
 それは肉体を持たない超高度な知性を持つ情報生命体。
 それらより、あなたを観測するために送り込まれたヒューマノイドインターフェース。それが私……」
 
しかし、シンジは冷静にツッコミを入れた。
「綾波。それ、嘘でしょ。」
「うん、嘘。」

シンジが元ネタを知っていたかどうかは定かではないが、彼の好奇心を打ち砕くことには成功したらしい。

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さあ、お待ちかねの夕食である。


61 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:49:29 ID:???
シンジが自信満々に作り上げたのは、大根と豆腐の田楽に味噌だれを添えた物ときんぴらゴボウ。
さらにほうれん草のお浸しにワカメのシンプルなお吸い物。
肉が嫌いと言っていたレイを思ってのメニューだ。
しかし流石にシンジには物足りないので、自分には茹でたソーセージを数本そえた。

「美味しいわ、碇君。」
昼食の時と同じく無表情なお褒めの言葉だ。喜べ、シンジ。
実際、レイ達は献立に不満な様子もなく料理を全て平らげている。
そのことだけでも収穫があったと心で唱えながら、シンジはレイ達と共に後片付けをする。

しかし、シンジにとって最大の不安材料がもうすぐやってくる。
昨夜と同様、再びこの部屋にすし詰めで寝ることを要求されてはたまらない。
が、レイ達が寝る準備をするのを見て驚いた。敷かれた布団は一組だけ。

流石にシンジは疑問に思った。
「あの、綾波?今日はみんな一緒じゃないの?」
「うん、夜は碇君にこの部屋をゆずる。私はこの子達の大部屋で寝るから。」
「大部屋って……それじゃ昨日のは?」
「あなたの歓迎のためのサービス。男の人はハーレムが好きだと思って。」
「……はあ?」

とんでもないことをレイは淡々とした顔で言い続ける。


62 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:50:39 ID:???
「でも、あなたは好きじゃないみたいだから今日は一人で寝て。」
「……」

そして今日はきっちり入れ替わりで風呂に入り、
オリジナルはコピー達を引き連れて部屋を出ようとするが……

レイは気を変えたのか、急に振り向いてシンジに告げる。
「やっぱり一人だけ置いてく。気が向いたら使って。」
「あ、あのねぇ、綾波。僕がそんなことをすると思う?」
「して貰わなければ困るの。一緒に生活をしている私を血迷って襲わないように。」
「あ、ああ……そういう意味なんだね……」

思わずシンジは大きな溜息。かなりショックだったようである。
それはコピーを身代わりに置くレイの人格に対してか、あるいは振られたような気分を味わったためだろうか。
しかし、コピーなら自由にしても良いというレイの人格を疑いたくなるところだが。

「昨日は3番と一緒だったから、情が移るのもマズイので今日は4番。明日は5番……」
そんなことを言いながら布団に枕をもう一つポンと置き、改めてレイは部屋を出て行く。
そして布団の隣で正座で待つ「4番」。

シンジは何かに失望した様子で、4番が「ふつつかものですが」とか言い出さないうちに、
もう一組の布団を敷いてそちらで寝てしまった。


63 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/28(日) 22:51:57 ID:???
あんまり進展なくてすんません。
とりあえず、ここまでですー

64 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/28(日) 23:58:26 ID:???
乙!
期待してる

65 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/29(月) 00:47:22 ID:???
傑作だw 続きを楽しみにしてます

66 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/29(月) 01:32:24 ID:???
ワロタw
このシュール感がいいわwww

67 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/29(月) 02:50:45 ID:???
元ネタは理解したw
コピーに情が移るはマズイのか・・・



68 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/29(月) 11:07:40 ID:???
なんなんだよ、襲わなくちゃ困るってwww

69 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/29(月) 22:20:17 ID:???
気が回りすぎですってw

70 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/29(月) 23:50:09 ID:???
女だけどレイ萌(・∀・)

71 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:01:17 ID:???
さて、使徒戦である。
といっても、その話は省略してもいいくらいあっさりしたものであった。

あれからシンジは、数日間の訓練を経てようやくエヴァを思い通りに動かすことをマスターする。
エヴァの操縦席はエントリープラグという筒型のカプセルで、エヴァの脊髄にあたる箇所に埋め込まれる。
全身の神経をエヴァと接続しているから、身体を動かすイメージをするだけで操縦が可能であるという。
しかし、そのカプセル内はLCLという液体が満たされ、そこに浸からなければならないのには閉口した。

操縦席にいるシンジに、レイはモニタを通して解説する。
「そのLCLが全ての神経を接続する役割を果たす。だから液化して身体を包む必要があった。」
「そうなんだ。でも息苦しくないのが不思議だね。酸素を含んでいるからかな。」
「LCLの正体、それはエヴァの血だから。」
「う……」
シンジは思わず胃袋の中身をLCLにばらまくところであった。

で、出撃。
新たに現れた使徒は長い胴体が蛇のようでもあり、カサカサと動き続ける胸部の触手が虫のようでもあり。
そう書くと何だか気持ち悪い生き物のように聞こえるが、チャームポイントのつぶらな瞳が実に愛らしい。
とはいえ、使徒である。倒さなければ倒される。
シンジはビシバシと繰り出す使徒の鞭のような触手をなんとかかいくぐり、相手を見事にひっくり返して踏みつけにする。
きゅーきゅーと藻掻く使徒の弱点、赤いコアを見つけてプログナイフで打ち砕きゲームセット。
実に簡単に勝負はついた。


72 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:02:21 ID:???
帰還したシンジをレイ達は拍手喝采で出迎える。
しかし、あいかわらずの無表情。お愛想で良いから笑えと言いたい。

「あっさり勝ててよかったよ。思ったより簡単に倒せるんだね。」
などというシンジにオリジナルのレイは言う。
「エヴァがあるからこそ簡単に倒せたの。エヴァの力でATフィールドを中和しているから。」
「ATフィールド?」
「そう、絶対不可侵と言われる防御壁。それがあるから使徒は殲滅できないと思われた。
 いま現在、それを突破する方法は一つだけ。エヴァの放つATフィールドで中和すること。」

それを聞いたシンジは少し眉をしかめて尋ねる。
「それじゃ……エヴァっていうのは、まさか……」
「使徒。」
「……ええ!?」
シンジがそんなレイのあっさりした返答に驚いていた時のこと。

  ぴんぽろぱんぽろぴんぽろぱんぽろ……

レイの携帯電話の着信音だ。
「はい、綾波です……え?テレビを見ろ?」

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-


73 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:03:25 ID:???
シンジがシャワーを浴びて居間にもどると、すでに9人のレイがテレビの前にずらりと並んでいた。
その真ん中が空いていて座布団が敷かれている。
シンジは説明を受けるまでもなくそこに座った。
ていうか、全てのレイがテレビに釘付けで、シンジに声を掛けようとはしないからだ。
居並んだシンジとレイ、まさしく記念写真を撮らなきゃ勿体ないとかいう解説は自重するとして、
シンジは既に始まっているレポーターの熱いアナウンスに聞き入った。

『素晴らしい!動いております!歩いております!日本のロボット工学はここまで来ました!
 これぞ我々の敵、使徒を倒すべく開発された最終兵器「ジェットアローン」なのです!』

「へええ!あの使徒を僕達だけで戦うものとてっきり思っていたよ。心強いね、綾波?」
映像を見たシンジは、そんな無邪気な感想を述べる。
しかし、レイの口から出たのは、少しトゲのあるこんな言葉であった。
「今更なんのつもりか……いや、彼らの思惑はなんとなく判る。」

シンジはキョトンとした顔でレイに振り返った。
「あ、綾波?その……どういうことなの?」
「もともと使徒を相手に戦わなければならないと、彼らに言ったのは私。
 しかし彼らはおびえて、全ての役目を私に押しつけた。
 あのセカンドインパクトの後だから無理もない、と言ってもいいけど。」


74 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:04:34 ID:???
シンジは重ねて尋ねる。
「彼らって……誰?」
「国連。」
「こ、こく……」
「最初の使徒がもたらしたセカンドインパクト。
 それが人口の半分を失われるに至った大災害だけど、それは結果的に使徒の失敗に終わったの。
 彼らの使命を果たすため再び後続の使徒が現れる。それに備えなければならないと私は主張した。」
「私はって、あの……」
「そのセカンドインパクトの後に残された使徒アダムの遺骸。それの甦らせて対抗するプロジェクトを起ち上げた。
 でも、誰もが尻込みして参加しようとしなかった。
 そうするしかない、ということを理論上の証明をして見せても。
 しかし、人口の半分を失わせるほどの使徒の力に対抗することなど無理ではないか、と彼らは恐れた。」
「……」
「私は、次に使徒が訪れるのは日本だと告げた。それで仕方なく日本はしぶしぶ援助をすることを承諾した。
 それに続いて国連所属の代表国も援助を表明したのだけれど。」

その説明を聞きながらシンジはテレビを見ていたが、あることに気付く。
「あのジェットアローンのパーツ、どっかで見たような気がしたけど、まさか……」
「その通り。エヴァに使われいるものと同じ装甲のようね。」
「ええ!?」
「何も私だけの力でエヴァを作り上げた訳じゃない。様々な設計はしたけど、部品各種は重機産業に発注した。
 エヴァの技術の多くは情報をオープンにしている。そうせざるを得なかった。」


75 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:05:40 ID:???
しかし、レイはジェットアローンを否定する。
「でも、あれでは使徒には勝てない。核融合炉を使ったリアクターでは危険すぎる。
 それに人的制御ではない無人のロボットの動きでは足元をすくわれる……」

そのレイの否定論を、アナウンサーは聞いていたかのように反論する。
『リアクターを危険視する意見もありますが大丈夫、何重にもガードが施されていて万全の対策が取られています。
 さあ、ご覧下さい。まさに格闘家のようなこの動き。
 無数のセンサーとスーパーコンピュータMAGIの制御によって、人間以上の戦闘能力を誇り……』

「スーパーコンピュータMAGI……それも私が設計して発注した筈なのに。
 いや、それでも使徒は倒せない。使徒には絶対不可侵の……」

『しかし、まだまだ未解決の問題もあります。使徒には強固なATフィールドという防御手段があるのです。
 それについては様々な武器が考案されていますが、まずはこれです!
 戦自研により開発された陽電子砲を実用化したポジトロンライフルです!』
 
「それも私が発注した物……彼らはどこまで私の物を盗むつもりか……」

その時であった。
再びレイの携帯電話が鳴り響いたのだ。レイはそれに対して、むっつりとした口調で返答する。
「見たわ。だから何?」



76 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:06:50 ID:???
レイは黙って電話の主の話を聞いていたが、ろくな返答もせずにピッと通話を打ち切る。
そしてゴトンとちゃぶ台の上に電話を放り投げた。
無表情なレイにしては珍しい、怒りを表す感嘆符であった。

シンジは恐る恐る尋ねてみる。
「……綾波、どうしたというの。」
「次の使徒が来たら黙って見ていろ、と言ってきた。私が手にした援助の利権が欲しくなったようね。
 それで自分達で戦う気になったみたい。」
「あのさ。一緒に戦ってくれる、とは考えられないのかな。」
「だと本当に良いのだけど、そうではない。殲滅が自分達で可能なら、ここから立ち退いて貰う、とも言ってきた。」
「……」

「彼らは誰かを、市民を守るという意識で動いている訳ではない。
 私に追従しなかったのは、使徒と戦って勝つという重責から逃れたいため。
 そして碇君は使徒と戦い、方法が有れば倒せることを世間に知らしめた。
 その上でジェットアローンが発表された。
 方法さえ揃えれば倒せるなら、自分達で倒した方が良い。
 各国の援助を元手に使徒を倒せるほどの実力が得られる。
 こんな素晴らしいことは無い。」

流石のシンジも、レイの言うことに少し引いた。
国連や日本政府はそこまで腹黒くはないだろう、と。


77 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:08:02 ID:???
だが、レイは更に覚めた口調で話し続ける。

「全ては国民を守るため、などと言っているがそれには嘘がある。
 私はこの地を街ではなく要塞にすべきと主張したけど、その意見は通らなかった。
 それで仕方なく人に住ませる都市として建造した。それは何故か。
 要塞だと費用がかかるだけ。都市なら企業や住人からフィードバックが期待できる。」
「……」
「もし被害者が出ても国として費用をさきやすい。すでにこの騒ぎだし。
 あるいは、戦争下において住民を守れる都市を造るためのモデルとするためか。
 考えられることはいろいろある。彼らは誰かを守るために戦うという意識は無い。全ては自分達のため。」

そんなことを言うレイだが、最初に警報の発令を忘れたことはまだまだ記憶に新しい。
それに遠慮無く自衛隊の投入を命じたのも彼女だ。
彼女こそ人の命を軽視していると見えなくもない。

それはともかく、シンジにはまだまだ聞きたいことがあるのだが、まずはこれを聞かずにはいれなかった。
「綾波、君は……君は本当に何者なの?その、14年もの前のセカンドインパクトのことを……」
「時が来たら話す。彼らが何をしようと関係ない。使徒に勝つためには、ためらいは厳禁。
 使徒が来たら即座にエヴァで倒す。いい?」

シンジは黙って頷く他はなかった。
無表情なレイに何故か気迫を感じて、「もう権利なんてゆずってやればいい」と言い出せなかったのだ。


78 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/30(火) 00:09:03 ID:???
とりあえず、ここまでですー

79 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/30(火) 00:21:10 ID:???
乙!

おもろいが……口調のためか、
綾波が微妙にハレのちグゥのグゥっぽく思える。

どちらかというとハルヒの長門なんだろうけど
ハルヒよく知らないので判らん。

80 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/30(火) 01:33:08 ID:???
オツ
きゅーきゅー藻掻くシャムシエルがかわいいw


81 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/30(火) 07:46:16 ID:???
乙です!

82 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/30(火) 14:19:42 ID:???
次はラーラーと歌ってくれるラミエルかwww

83 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/31(水) 00:40:55 ID:???
今日は投下なしかな?

84 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 00:55:27 ID:???
「使徒ラミエル……よりにもよって、ここであれが来るなんて……」
珍しく、言葉を詰まらせるようなレイの口調。

シンジはモニタに映る正四面体の使徒の姿を見ながら、レイに尋ねる。
「綾波、あれを知ってるの?」
「簡単には倒せない。前回のシャムシエルなどとは格が違いすぎる。」

そのレイの答えになっていない答えが余計に気になる。
まるで使徒を知っているどころか、戦ったことがあるかのよう。
が、とりあえず出撃しなければならないだろう。
「綾波。とにかく着替えてくるね。」
「……」
そう言って駆け出すシンジの後ろ姿を見送るレイであったが、
その直後に、レイとそのコピー達は円陣を組んで頭を寄せた。
さしずめ綾波会議というべきか、これも珍しい光景だ。

そしてシンジが帰ってきた頃には、オリジナルのレイもプラグスーツに着替えていた。
「綾波も出るの?」
「今回は私だけが出撃するわ。あなたはここで待機してて。」
「でも……」
「あれを相手に近接戦闘は通用しないわ。絶対の防御と長距離攻撃を誇る使徒、それがラミエル。
 接近してATフィールドを中和しつつ近接戦闘をするのは無理がある。」


85 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 00:57:18 ID:???
「それじゃ、どうするの。」
「槍を使うわ。遠方からATフィールドを突破して使徒を倒せる武器はそれだけよ。」
「……槍?」
「あなたは出撃準備のまま待機してて。私の失敗した場合はその時に考える。」

そう言いながら手首にあるスイッチをカチリと押すと、シュッと身につけたスーツが引きしまる。
それはエヴァとの神経接続を補助するために作られたもので、
シンジもまた色違いの同じ物を着用していた。
そしてレイは緊張の出撃前のにも関わらず、むしろ優しい口調でシンジに言う。

「大丈夫、私が必ずあなたを守るから。」
「……綾波、失敗しても必ず帰ってきてね。」
そう言うシンジにコクリと頷いて、レイはエヴァの操縦席となるエントリープラグに乗り込んだ。

そして零号機は『槍』と称した巨大な串のような物を手にして、地上へと射出されていく。
その様子をモニタで見守るシンジとレイのコピー達。
地上にたどり着いたレイの零号機が槍を投擲体勢を取ろうとした、その時。
『早い!』
何がどうしたのか、何が早いのか。モニタを通してレイの驚愕が伝わってきた。

「綾波、どうしたの!?うわッ!」
使徒から目も眩むような閃光が放たれ、そしてモニタが真っ白になる。


86 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 00:58:21 ID:???
  ピガッッッ!!
                  キュドドドドドドドドドドドドドッ!!

いったい何が起こったのかシンジにはさっぱり判らない。
しかしモニタの真横にある零号機の状態を表す画面を見れば、
機体の胸部、ちょうど綾波が居るはずである所が赤く点灯ではないか。

シンジは訳が判らないものの、大慌てで側にいるコピー達にむかって叫んだ。
「戻して!零号機を戻して!早く!」
コピー達は即座に端末を叩いて操作する。
幸い零号機は射出用のエレベーターから一歩も動いてはいなかった。

零号機が格納庫に到着すると、コピー達の操作でエントリープラグがイジェクトされる。
その元へシンジは誰よりも早く駆けつけた。しかし、プラグがイジェクトされたものの、ハッチが開かない。
シンジは手動のハンドルに触れようとするが、しかし。
「あ、あ、あつッ!!」
そのハンドル、使徒の閃光により高温で熱せられていたのだ。
後ろに駆けつけたコピーの一人が制止しようとしたが、シンジはそれを乱暴に振り払った。
再びハンドルを握ると、本気で手の肉がじゅうじゅうと音を立てて焼かれていく。
しかしシンジは覚悟を決めて絶対に離すまいと腕に力を込めた。

「ぐ、ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおあああああああああああああッ!!」


87 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 00:59:24 ID:???
シンジはそんな恐ろしいほどの呻き声を上げながらも、遂にハンドルを回しきりハッチを開いた。
「綾波!大丈夫!?綾波ッ!!」
そう叫びながらプラグ内をシンジは覗き込む。

プラグ内にはぐったりとしたレイが顔を伏せている。
が、ようやく顔を上げてシンジの顔を見ると、コクリと微かに頷きかけた。

シンジはレイが無事な様子を見て気が抜けたか、あるいはハッチを開くために全ての気力を使い果たしたのだろう。
そのまま崩れ落ちるように倒れてしまった。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「う〜ん……う〜ん……」
居間に敷かれた布団の中でシンジは呻き声を上げていた。
シンジとレイ、これではどちらが戦闘に敗れて負傷したのか判らない。
その布団の周りには7番から10番までのレイのコピー達が並んで座り、看病に当たっていた。
シンジは高熱を出しているらしい。そのおでこには古典的な氷嚢がぶら下げられている。

そこにオリジナルのレイがやってきたのを見て、シンジは何故か謝る。
レイの方は怪我も何もなかったらしくピンピンしていた。
「ああ、綾波……ごめんね。何もしてない僕がこんな……」
「いい。さっきはありがとう。」


88 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 01:01:12 ID:???
「あの、綾波……使徒は……?」
「今だ健在。それについて政府の関係者がこの基地に来ているの。話をしてくるから。」
「あ……」

シンジはそっけなく立ち去ろうとするレイを、思わず呼び止めようとした。
「何?」
「いや……なんでもない……」
「そう、それじゃ。」

流石にレイのあまりの素っ気なさぶりに何か言いたかったのだろうか。
しかし、レイは一目だけの見舞いをしただけであっさりと部屋を出て行った。
それを切なく見送るシンジ。
そんな彼の氷嚢を取り替えたり、焼けただれた手の包帯と取り替えたりと、
シンジの側に張り付いているコピー達はせっせと看病に励んでいた。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

そのままシンジが寝ていると外から何かガヤガヤという声が聞こえてくる。
政府関係者というか軍人だろうか。その口調からかなり怖面の連中らしいことが判る。
しかし、話している内容まではシンジには聞き取ることが出来ないようだ。


89 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 01:02:26 ID:???
だが、もう一つ聞こえてくる妙な音。
シンジが寝ている天井の上から、カリカリカリカリ……

シンジがその音を気にしていた丁度その時、そこにレイのコピー達が担架を持ってやってきた。
どうやらシンジを移動させるつもりらしい。
レイ数人がかりで担ぎ上げられ、シンジは居間の外へと担ぎ出されていく。

そうして担ぎ出された場所はエヴァの格納庫。
油やら何やらで汚れた床の上にシートを広げて新しい布団が惹かれていた。
そこに寝かされながらシンジはオリジナルのレイを見つけたが、なんだか沈んだ表情でうつむいている。
そういえば、政府の関係者とかいう連中の姿が見えない。
もう帰ったのだろうか。

レイはボソリとシンジに話す。
「あのジェットアローンを出撃させるらしいの。」
「……そうなんだ。」
「あなたを一番安全な場所、エヴァに乗せて脱出して貰おうと思った。
 けど……それも出来なくなった。」
「何故?」
「あのポジトロンライフルのエネルギーとするために電力を全て徴収するというの。
 日本中の全ての電力を集めるらしい。この基地の電力も例外ではない。」


90 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 01:03:38 ID:???
「そんな……でも、エヴァが無ければ使徒は……」
「彼らは失敗しないから問題ないと主張している。
 交渉はしてみたけれど、ここは核融合炉を使った独自の発電を行っている。
 だからここの強力な電力に手を付けない訳にはいかない。作戦場所から一番ちかい発電源だし。」
「……」
「国の名において命じられたらどうしようもない。私は国の名において援助を受けてきたのだから。」

レイはシンジの枕元に座り、吸い飲みでジュースを飲ませてやりながら話し続ける。
「彼らが失敗すれば全て終わり。もはや、成功することを期待するしかない。」
「でも、彼らが成功したら僕達は……」
「そう、立ち退きを要求される。でも、それだけは避けるように交渉するつもり。」

ガリガリガリガリガリガリ……

シンジが居間で聞いていた音。それがだんだん大きくなってきている。
「綾波……あの音は何?」
「使徒。」
「え?」
「ここは幾重にも防壁が張られているけど、あの使徒ラミエルがそれを食い破りつつある。
 それがここに到達すれば全ては終わる。」

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ……


91 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 01:04:44 ID:???
その時、レイはラジオのスイッチをカチリといれる。
どうやら、使徒殲滅の作戦内容が全て放送されているらしい。

『さあ、いよいよ作戦決行となりました。あれ以来、使徒は動きを見せていません。
 おや?配電線にミスがあったようです。司令部より10分の作戦決行時間の延長が……』

シンジはそれを聞いて目を丸くした。
「ちょっと……そんな悠長なことをしてたら、使徒の侵入に間に合わなく……」
「ここの侵入なんてどうでもいいのかもしれない。彼らにとっては。」

ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!

使徒が防御壁を破ろうとする音が更に大きくなりつつある。
シンジ達の居る場所へと近づきつつあるのだ。

「あ、綾波……あの……」
「大丈夫。多分……MAGIと陽電子砲、私の設計通りに造られているのなら。」

そんなふうに余裕で構えるレイ。あるいは、それは開き直りか。

ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!
ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!


92 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 01:06:10 ID:???
この轟音、間違いなく最後の隔壁が破られつつある。
もう駄目か。
ジェットアローンの攻撃は間に合わないのか。
あるいは既に失敗したのか。

シンジは、もはやこれまでかと、顔をしかめる。
そんな思いからギュッと握りしめた彼の拳を、
コピーの一人がそっと両手で包み込んだ。
再び新しい包帯をまき直すために。


93 : ◆LRvRIPAn.s :2007/10/31(水) 01:07:13 ID:???
とりあえず、ここまでですー

94 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/31(水) 01:23:40 ID:???
乙です!

95 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/31(水) 01:26:53 ID:???
なかなか空気をつくってくれるじゃないの。続きに大いに期待。
しかしこの状況の話でもコピー達の地の文にはシュールな笑いを感じてしまう・・・ もはや虜か・・・w

96 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/31(水) 02:29:14 ID:???
おつ〜
新ラミエルじゃないみたいやね

97 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/31(水) 23:08:04 ID:???
wktk

98 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/01(木) 22:19:14 ID:???
 しゅ〜ん…………

「え?」
急に音が止み、どうしたのかとシンジは困惑する。
そしてオリジナルのレイは即座に立ち上がり、様子を見に駆け出した。
「あの……綾波、危ないから……」
そう言いながらシンジは身体を起こそうとするが、発熱のために身体が言うことをきかない。
両脇からコピー二人に支えられてようやく立ち上がった、その時である。

『やりました!使徒は完全に活動停止し、殲滅は完遂しました!
 成功です!我々の開発したポジトロンライフルが見事に使徒のATフィールドを打ち破ったのです!』

ラジオから聞こえてくる驚喜のアナウンサーの声。
もう間違いないだろう。ジェットアローンが使徒殲滅に成功したのだ。

だが、それはレイへの援助が打ち切られ、立ち退きを要求されることを意味していた。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

シンジはコピー二人の支えで、オリジナルが向かった方へゆっくりと歩いていく。
行き着いた先はシンジがさっきまで寝ていた六畳間。
シンジはその有様を見て驚愕した。


99 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/01(木) 22:20:24 ID:???
天井が丸ごと無くなっていたのだ。
どうやら、丁度そこが使徒の侵入ポイントだったらしい。
天井にぽっかりと丸い穴が開けられ、遙か彼方の夜空まで綺麗に見渡すことが出来る状態だ。
しかし、壊された時の破片が一欠片も残っていない。
使徒は吸い上げながら掘削したのか、それとも熱で焼却してしまったのか。

オリジナルのレイはそこにいた。天井から差し込む月明かりに照らされながら。
そして携帯電話を耳に当てて何やら話し込んでいる。
その相手はシンジには知るよしもないが、間違いなく話の内容は自分達の今後についてだろう。

とりあえずシンジは改めてそこの布団に寝かされたが、しかし部屋の明かりが失われている。
月明かりだけでは心許ないために、シンジは何か明かりを持ってくるように頼んでいた時、
ようやくレイは電話を切ってシンジに向き直った。

「私達が立ち退く必要は無くなった。ただし……」
レイは相変わらずの無表情ながら、憔悴しきった様子で説明する。
「ただし、日本政府は今後の援助は行わない。自分達で殲滅が可能となり、私達は必要なくなったから。
 立ち退くつもりがないなら、私達の安全は保証できない。戦闘に巻き込まれても関知しない、と。」
「綾波……それじゃ……」
「ここの電力の供給や作戦の協力と引き替えに援助を要求したけど、それも駄目だった。
 今後、エヴァのメンテナンスに必要な費用の援助や資材の搬入は無い。
 これでは、私達はいずれやってくる使徒と戦い続けることが出来なくなる。」


100 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/01(木) 22:21:29 ID:???
レイはシンジの寝ている隣りにペタリと座り込んで話を続ける。
「彼らが出来るという援助は只一つ。ここの立ち退きと、その後の生活保障の費用だけ。
 でも、それは出来ない。私達はここで戦い続けなければならないのに。」
「……どうして?彼らに任せてしまっては駄目なの?」

そう問いかけたシンジだが、しかしレイは何も答えない。
かたくなに自分が使徒に勝つことに執着しているのか、それとも何か事情があるのか。

しかし、レイはシンジの問いかけには答えず、上を見上げてつぶやいた。
「ここで寝るのは良くない。やはり別の部屋で寝て貰うわ。コピー達の大部屋が無事だから……」
「いや、今日はここが良いよ。こんな天井で寝るのは初めてだから。」
ポッカリと空いた天井の穴。そこに丁度さしかかっている月を眺めながら、シンジはそう答えた。

普通に考えれば、その天井の窓から新たな使徒が侵入を果たす危険を感じられる。
しかし、レイはそれを言わなかった。
そしていつも通りにコピーを一人おいて自分の寝床に去っていく。
今日の当番は5番だった。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

シンジはしばらく朦朧としながら寝付くことが出来ずにいた。
隣で横になっているコピーもまた入眠せずにいる。


101 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/01(木) 22:22:32 ID:???
そして時折、コピーが熱を測ったり氷嚢を取り替えたりするため起き上がる。
そんな看病を受けながら、シンジはしきりと考えていた。
綾波レイの失策について。

明らかに組織力不足である。
コピーをどれだけ引き連れていたとしても所詮は一人。
どれほどの資金力や技術力を保有していたとしても、所詮は一人である。
エヴァの製造とメンテナンスだけではなく、政治的な交渉まで一人で行っていては追いつくはずはない。
しかし、それだけでエヴァを作り上げて使徒と戦う力を得るに至ったのは実に驚異であるが、
しかしここまでだ。そう考えざるを得ない。

人手さえあれば金や力は幾らでも沸いてくる。
金や力があっても、それらを使う手が足りなければ意味がない。
そして巨大な組織の力で、その金と力をも奪われつつある。
まあ……実のところは、その金と力は巨大な組織を利用して得ていたのではあるのだが。

その巨大な組織、国連や日本政府を冷たい目で見つめていたレイ。
その組織の中に一人でも良い、レイにとって信頼できる者が居たら違ってきただろう。
そうした者が居なかったというよりも、あるいはレイが心を開かなかったためだろうか。
レイはその組織を、いうなれば人類を背に向けて戦っていたに等しい。
彼女が共に戦うことを選んだのはシンジ一人だけ。無力な14歳の少年ただ一人。
レイとシンジ。ただ二人だけで使徒と戦い続けるなど、初めから無理が有りすぎる。


102 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/01(木) 22:23:57 ID:???
レイはいったい何のために戦っているのだろう。
レイは何を相手に戦っているのだろう。
日本が、国連が戦いたいと言うなら、任せておけばいいのではないか。
何故、かたくなに自分の手で戦うことにこだわっているのだろう……

そこまで考えていたシンジは、思わず歌を口ずさみ始めた。
「♪貧しさに……負けた?……いえ……世間に……負けた……」

隣で寝ているコピーは、それを聞いて起き上がる。
しかし、何か命じられたわけではない、と判断したのだろう。
シンジの歌声を聞きながら、再び自分の布団に戻り天井の月を見上げた。

これから先、もはや資金の援助も断たれて資材や生活用品の発注も出来なくなるだろう。
世間に負われて只二人で貧しい生活を強いられる。
そんなところから、シンジはそんな歌を連想したのだろうか。
そして今度は一変して、陽気なメロディーで歌い始めたシンジ。

「♪ちゃららったったったったったー♪ちゃららったったったっらったー
 ♪ちゃららったったったっらららー♪ちゃららっちゃっちゃっちゃっちゃー」
 
シンジの突然のはっちゃけぶりに、今度は跳ね起きて驚くコピー。
もはやシンジは高熱で精神が侵され始めたのではないか、と。


103 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/01(木) 22:25:01 ID:???
そのメロディー、文字で書いただけでは判りにくいが実はチャップリンの映画の挿入歌だったのである。
それはモダンタイムズという映画で、貧しい男女が身を寄せ合って共に暮らし始めるという話。
しかし運良くレストランでの仕事にありつき、そこで主役のチャップリンが客に披露した歌がそれである。
そしてその映画の顛末というのは、結局その二人は人々から負われて逃げていくハメになるのだが、
しかし最後のシーンでチャップリンが何て言っていただろう。それが上手く思い出せない。
その台詞ひとつで、不幸な顛末をハッピーエンドに変えてしまったかのような……

コピーがシンジの脇の下に体温計を挟もうとした時、シンジはようやくそのラストを思い出した。
「そうだよ、綾波。こんなときは笑えばいいんだ。」

今日の当番、コピー5号はキョトンとした顔でシンジを覗き込む。
しかし、ようやく彼の命令を理解したらしい。
忠実なコピーは命令に従い、シンジに優しく微笑みかけたのだが……
既にシンジは目を閉じて眠ってしまい、その笑顔を見ることは出来なかった。

すーすーと寝息を立てるシンジをコピーはそのまま見守り続ける。
天井の崩れた和室六畳間に差し込む、蒼く美しい月明かりの下で。


104 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/01(木) 22:26:10 ID:???
とりあえず、ここまでですー

105 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/01(木) 22:36:06 ID:???
乙。
アンタのそのはっちゃけぶりが面白いわw

106 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/01(木) 22:44:42 ID:???
キタキタ\(≧▽≦)丿

107 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/01(木) 22:56:47 ID:???
だんだんこのペースにハマってく

108 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/02(金) 00:39:23 ID:???
乙です
がんばって下さい!

109 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/02(金) 01:47:32 ID:???
おつおつ
部屋が使途直下に近すぎw

110 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:44:39 ID:???
「うわぁっ!……ああ、おはよう……今日も朝から怖いね、君は。」

あれから一週間ほど過ぎた頃。
シンジは穴の空いた六畳間ではなく、エヴァの格納庫で寝泊まりをしていた。
彼が驚いているのは、すぐそこで初号機の巨大な怖面が見おろしていたからである。
もうこの基地の防壁が破られて巨大な穴が空いている状態、
何かあればすぐにでも初号機に飛び乗れるように、という用心であった。

シンジが起床すると、隣りで寝ていた当番のコピーもすぐ起きて洗顔を済ませ、朝食の粥を炊き始める。
添い寝当番の後は、そのまま家事当番という訳だ。更に洗濯物を抱えて奔走するなど大忙しの有様である。
オリジナルのレイは大部屋から残りのコピー全員を引き連れ、シンジに朝の挨拶を済ませる。
そして朝食後はエヴァのメンテナンスを開始。
シンジはといえば取り立ててすることはなく、当番のコピーを手伝うために大部屋の掃除へと向った

しかし最近はそんな忙しさが無くなりつつある。
もう機材の搬入がなく、エヴァに対して出来ることが無くなってしまったのだ。
あれこれとエヴァのテストを行い改良をしようにも、それを行う材料が無ければ意味がない。
することがなくて呆然と座り込んでいるコピー達をほっといて、ひたすらノートパソコンに向かうオリジナル。
エヴァの改良案でも考えているらしく、機材がなければ着手できない設計書を書き貯めては溜息をついていた。


111 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:45:47 ID:???
まさに取引先を失い、仕事が無くて暇をもてあます零細企業のような状態である。
幸い電力源は保有しているし、水の備蓄はたっぷりある。
当分は何の収入が無くても生活は出来るだろう。
しかし、問題なのは食事である。幸いにも米と塩だけは大量に備蓄しているが、それだけだ。
シンジは生鮮食料だけではなく保存食や日持ちする材料を購入しておくべきだったと後悔するが、
しかし、そんな後悔は先に立たない。節約のために塩で粥ばかりすする毎日である。
もはやネットからの注文システムは止められているし、地上の街も消失している。
もはや、シンジとレイの基地は正しく陸の孤島と化してしまった。

さて、シンジは何をしているのか?というと、主に暇を持てあましているコピー達と過ごしていた。
言われるがままに何でも言うことを聞くコピー達。
家事当番とその手伝いに当たる数名を除いて、することもなく大部屋で点々と座っている彼女たちを見て、
何か人間らしいことを教えたりすることが出来ないかとシンジは考えたのだ。
おいで、と呼びかけると、コピー達はいそいそとシンジの前に集まってくる。
無表情ながらも基本的にレイは美少女である。その可愛い有様を見てシンジは大いに張り切った。

とりあえず遊んでみようとトランプを取り出したシンジ。しかし、これは失敗だった。
ババ抜きのルールを簡単に説明するとテキパキとこなしていく彼女達の性能は流石だが、
ゲームと言うより作業をこなしているようにしか見えず、
コピー達はトランプのソート技術を完璧にマスターしてゲーム終了。
二枚ペアに揃えて、ご丁寧にも番号順に並べたカードの束にジョーカーを添えて提出されたとき、
シンジはとてつもない空しさを覚えて、コピー達と楽しく遊ぶことは完全に諦めてしまった。


112 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:47:41 ID:???
だが、シンジはめげない。今度は奥の手、チェロを引っ張り出してきた。
生活用品を注文する傍らで、ちゃっかりそんなものまで遠慮無く取り寄せていた訳である。
演奏するから聞いてみて、と言うと、コピー達はシンジの前に横一列に整列してペタリと正座で座る。
そんなに構えられては誰だって緊張する。シンジはまたしても止めときゃよかったと後悔するが、
しかし演奏を始めるとコピー達は目を閉じて頭をゆらゆらさせながら聞き入っている。
どうやら効果があるかもしれない。コピー達の揺らぎが完全に同期しているのが気になるけど。

シンジが一曲だけ演奏を終えると、コピー達の他に真後ろから拍手が聞こえてきた。
どうやらオリジナルのレイも演奏を聴いていたらしい。

「そんな特技があるとは知らなかった。音楽はいいわね。」
「い、いやあ、まだまだ下手くそだよ。あんまり演奏できる曲も少ないし。」
「ネットから楽譜が入手できるかもしれない。それで練習すれば良いと思う。時間もあるし……」
「そうだね。で、どうなったの?」
「うん……」
どうやら何かの結果待ちだったらしい。しかし、レイの表情は暗い。

「EU圏は駄目になった。なぜなら、国連艦隊の手によって発見された敵を殲滅したらしい。」
「本当に?」
「戦艦2隻を捨てる結果になったらしいけど。
 しかし、ますます使徒の殲滅にエヴァが必須ではないことが世間に広まりつつある。
 もう国連が私のいうことを聞く理由がない。」


113 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:49:32 ID:???
レイは在住している日本を見限り、世界各国に働きかけをしていたらしい。しかし結果は前述の通り。
それ以後も、言うなれば「朗報」が次々と入ってくる。

『浅間山火口で孵化を始めようとしていた使徒の捕獲に試みるも失敗。ただし殲滅に成功。』
『巨大なクモ型の使徒が発生。旧第三新東京市跡地を目指して移動中であったが、
 これをポジトロンライフルで狙撃し殲滅に成功。しかし、その体液により被害は甚大。』
『大気圏外に巨大な使徒が発生。日本の関東平野を目指して落下中。
 これを日米共同で開発した陽電子砲搭載の新鋭戦闘機で、これを撃破。』

それをレイは解説する。
「まぐれとか言うつもりはない。彼らはちゃんと実力で殲滅している。
 ただし、その実力は主に破壊力であり、これまでの勝因は単に運が良かっただけ。」
「運?」
「まず使徒ガギエル。
 戦艦2隻でコアをゼロ距離射撃が出来たのは、たまたま使徒が食らい付いてくれたから。
 浅間山火口の使徒サンダルフォンも同様。
 捕獲を試みた調査艇を飲み込んだのは良いけど、それに送り込まれていた冷気で自滅。
 使徒マトリエルは……それは無防備な姿で溶解液を運んでいた使徒の方が間抜けだったというしかない。
 天空から飛来した使徒サハクィエルについては、見事だと思う。
 ただ、命中精度はかなり低かったようだし、よくぞ戦闘機で保有できるエネルギーで倒せたものだと思うけど。」
「……」


114 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:50:47 ID:???
レイは少しだけ眉をしかめながら話を続ける。
「勿論、運の良さも実力の内。このまま彼らが倒し続けることが出来るなら、それに越したことはない。
 ただし、もし彼らが失敗したら最後の砦は補給の断たれた私達だけ。
 補給だけが問題じゃない。私は順々に使徒を倒していき、戦闘の経験が積まれていくことを期待していた。
 いきなり実戦に突入して、果たして私達が満足に戦えるかどうか。」

しかし、シンジは楽天家であるようだ。
「でもさ、綾波。使徒が来て戦うとなれば、いわゆる彼らと共同で戦うことになる。
 戦力としては十分じゃないかな。」
「だと良いけど。でも、使徒の方もこれまでの二の舞は踏まないはず。
 次からはピンポイントでここに来ると思う。碇君、心構えをしておいて。」
「……判ったよ。可能な範囲で訓練をしようよ、綾波。」

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

レイがそんな話をしたのが早いか、すぐその夜のことであった。

「ん……むにゃ……あ、綾波……?」
シンジは目を覚ますと、レイとそのコピー達に完全に取り囲まれていた。
そして一斉に手を伸ばして、バリバリとシンジの服を引きちぎり始めたではないか。

「ちょ、ちょっと、何するの!や、止めてよ!」


115 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:52:26 ID:???
そうシンジが叫ぶが、しかし彼が完全に丸裸になるまで止めようとはしない。
そして引き裂かれた服を一箇所に積み上げて、ガスバーナーで燃やそうとする。
しかしその服からチラチラと赤い光を放ち、どうやらそれが防いでいるらしくなかなか着火できそうにない。
「あ、あの光はまさか……」
驚愕するシンジにレイは答える。
「ATフィールドね。あなたの服に取り付いたらしい。危ないところだった。」
「ええ!?」
「さあ、プラグスーツに着替えて、エヴァに乗って。使徒を駆除しなくては。」
そう言いながら丸裸で股間を隠すシンジにレイはスーツを手渡す。
その側でコピーの一人が放射能検知器のようなものでシンジの身体をなぞっていく。
身体に取り付いてやしないかと調べているのだろう。

さて、使徒の駆除、もとい殲滅の開始である。
「その壁も全部はがしてしまって。ああ、その床も構わないからどんどん破いて。」
あらゆるところに使徒が感染しているらしく、シンジはレイに指示を受けながら、基地を片っ端から壊していく。
やはりあの穴からだろうか。例の六畳間もまとめてぶち壊すハメになってしまった。
そして一定量の鉄くずやら何やらをエヴァ射出用エレベーターに積み上げる。
「とりあえずそれを地上に持って行って。私も零号機で残りを持って行くから。」
そう指示されるままに、シンジは初号機で地上に向かった。

なんだか年末の大掃除でもしている気分だが油断は出来ない。
気を抜くと使徒に初号機のATフィールドを突破されて、初号機に感染してしまうからだ。


116 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:53:32 ID:???
エヴァ用のゴム手袋や割烹着が必要だな、とかシンジは考えながら地下基地の残骸を積み上げていると、
零号機が残りの残骸をもって地上にやってきた。
そしてアンビリカルケーブルを伸ばして残骸に当てて放電を開始。
零号機はATフィールドを中和し、初号機はATフィールドで身を守りながら殲滅を担当。
溶接をしているようにも見えるが、まるでエヴァ2体で焚き火をしているかのような光景だ。
レイが殲滅完了を宣言した後も、まだ赤々と燃え続ける基地の残骸をエヴァ2体で体育座りで眺めていた。

レイは通信モニタ越しでシンジに話しかける。
『基地はなんとか機能できるけど……かなり悲惨な状態よ。
 お風呂場とかも壊しちゃったから、これからの生活が大変……』
「そうなんだ。まあ、仕方ないよ。」
『ごめんなさい……これから先の生活、もっと辛い思いをさせるかも……』
「まあ、なんとかなるよ。コンロとか大部屋の台所にもあったから料理も出来るし、
 それにシャワールームも別にあるから。」
そんなふうに、しみじみと話す二人。

『……碇君。』
「え?」
『もう聞かないの?なぜ、自分を呼んだのか、そして私が何者なのか……』
「うーんと、そうだね……」
『ここから、逃げたいと思わないの……?』


117 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:54:37 ID:???
それを聞いたシンジは両手を頭の後ろに回して、うーんと伸びをしながら考えた。
そしてレイに笑って答える。

「どうでもいいよ。こうして綾波達と生活しているのが楽しいし。」
『……楽しい?苦しい生活をしながら、使徒との戦いを待ち続けるのが?』
「うん。君に会うまで僕は独りぼっちだったし。」
『……』
「何故だか判らないけど、僕と一緒に生活して戦ってくれるのが嬉しくてさ。
 その理由とか聞いちゃうと全部こわれちゃいそうな気がして。アハハ……」
『そう……』
「……」

そんなふうにポツリポツリと話をしながら、残骸が燃え尽きるのを眺めている二人。
気が付くと、すでに夜が明けていた。東の空から太陽が昇り始めている。
「徹夜の作業になっちゃったね。そろそろ戻る?」
『待って……あれは?』
「え?」

レイが、というより零号機が指さした先、何かがこちらにやって来る。
「あれは……ジープ?戦自のかな。」
そうシンジが答えた通り、それは戦自の陸戦隊らしい男達を乗せたジープだった。


118 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:55:41 ID:???
そしてエヴァから一定の距離を置いたところで停車し、一人の男が降りてこちらに向かってくる。
どうやら交渉役を買って出た代表のようだ。
見た目、隊長クラスにも見えなくもないが、しかし誰かからの使いにしてはラフな雰囲気でもある。

『碇君、少し通信を切るわ。待ってて。』
「え?」
シンジは何かを聞き返そうとしたが、もうすでに通信モニタはプツッと切れてしまった。

なんのために切ったのか。
普通に考えて通信を切る理由はただ一つ。別の相手と通信をするためだ。

それが終わったのだろう。しばらくして、レイとの通信が再開する。
『お待たせ……私が彼らと話してみる。碇君は射出エレベーターの位置に初号機を移動させて待機。』
「うん、判ったよ。でも……」
『あまり心配は無いと思う。使徒の反応は検出されていないし。でも、念のために油断しないで。いい?』
「うん……」

不安げに頷くシンジを見ながら、エントリープラグをイジェクトさせるレイ。
そしてLCLを勢いよく噴出させながら出てきた彼女の腰には、一丁の拳銃が釣り下げられていた。


119 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/02(金) 23:57:07 ID:???
とりあえず、ここまでですー

120 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/03(土) 00:27:00 ID:???
>>119
今日も投下お疲れ様ですー

121 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/03(土) 02:53:03 ID:???
おつぅ

122 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/03(土) 15:42:16 ID:???
この話は愛せる・・・

123 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/03(土) 20:34:18 ID:???
シンジとレイしか居ないエヴァ全部読んだ

投下マダ〜

124 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 19:26:57 ID:???
投下町

125 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 22:54:27 ID:???
レイはゆっくりと歩いて、その自衛隊員に近づいていく。
その隊員は流石にプロである。レイを見て、腰につるされた「警戒」のサインに気が付いたらしい。
手のひらで制して「待て」の合図をしてから、自分の武装をジープに投げ込み、
改めてレイの方に歩み寄り正式な敬礼を取る。
とにかく、紳士的に接しようとしていることを示したいようだ。

シンジはコックピットからその様子を眺めていたが、どんな話をしているのかサッパリ判らない。
ずいぶん時間を掛けている。10分、いや15分は過ぎただろうか。
次にレイや自衛隊員はどう動くのか。まさか、レイが腰の銃を抜くような展開が?
しかし、仮にそうなったとしてもシンジは初号機に乗ったまま。
イザとなれば自分が暴れれば済む話だ。

……なんていう心配は無用だったらしい。
レイがこちらの方を見て手招きをしている。降りてこいという合図だ。
シンジがあたふたと地上に降り立ち二人の元にやってくると、
その隊員は、レイは例外としても14歳の子供にすぎない彼にまでキッチリと敬礼をした。
そして、その隊員は後ろを振り向いてOKのサインを送っている。

シンジは小声でレイに囁く。
「綾波、大丈夫……なの?」
「大丈夫と思うわ。どうやら、彼らは軍の命令ではなく個人的に私達に会いに来たみたい。」
「僕達に、個人的に?」


126 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 22:55:40 ID:???
「そう。この隊員達は私のことを知っていて、なんの支援も受けられない私達の状態が心配だと言っている。
 それで支援物資を送りたいと。」
「……そうなんだ。」
「一応、日本国政府には問い合わせたの。
 この人達の行動は政府や軍の命令ではない。我々が下したのは命令ではなく許可。
 政府は私達に援助を行うつもりはないけど、禁止を発令している訳ではない。
 個人的に支援したいなら、それを止める理由はない、と。」
「成る程……」

そんな話をしていると、遠方から数台のトラックやジープの増援がやってきた。
そして、それらから下ろされた物資は大半が保存の利く缶詰や食料ばかり。
中には米や生鮮食料、そしてジュースや酒、寝袋や燃料といった非常用品まで混じっている。
問題はその量からしてレイの配下には多数の部下が居ると思っているらしい。
とどめには、大鍋を取り出して火を焚く準備を始めている。
なんと、この場でカレーを作ってくれるというのだ。

物資の運搬後に作り始めて、今夜には出来上がるから他の仲間も呼んでこい、と隊員達は言うが、
しかしレイは、私達二人だけしかいないと答える他はなかった。
とてもコピー達を見せるわけにはいかないからだ。
それを聞いた隊員達は変な顔をしたが、しかし彼らは問いつめようとはしなかった。


127 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 22:57:05 ID:???
そしてレイを見張り役に残して、シンジはエヴァを使って支援物資の運搬を開始。
使徒殲滅が本領の筈が荷物運びをしていると考えると、初号機はさぞ泣いていることだろう。
ま、それはそれとして、その後は彼らの作るカレーが出来上がるまで一眠り。
そんなことをしているうちに、既に時刻は夕暮れに差し掛かっていた。
搬入した物資の整理はコピー達に任せてシンジが地上に戻ると、物凄く良い匂いが漂ってくる。
自衛隊員の作るカレーがいよいよ出来上がるらしいのだ。
お暇な方は是非とも自衛隊カレーをキーワードに動画などを検索していただきたい。
大鍋と聞いただけでも期待が出来るというのに、その豪快さは男の中の男の料理。
その造る様を見るだけで絶対に旨くない筈はないと決めつけてしまうのが不思議な話だ。

実際、シンジは大満足だったらしい。
涙を流さんばかり、というとオーバーなのだが、これまで米と塩ばかりで生活してきた彼である。
肉はもちろん野菜や強い香辛料など、すっかり身体が忘れかけたものばかりを味わったシンジは、
周囲で隊員達が笑ってみているのも気にせず、ほとんどトランス状態に陥るほどに夢中で食べ続けた。
無理もないだろう。育ち盛りの年代の彼が、あまりにも過酷な生活を続けてきたのだから。

しかしシンジは、これまでの生活を意外と過酷に感じてなかったことにも気付く。
はたして、それは何故だろう。
様々な運命の変転、謎だらけの自分の状況、使徒の襲来を待ち続ける日々に夢中で我を忘れていたか。
あるいは、綾波レイの存在のおかげか。


128 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 22:58:21 ID:???
ふと気が付いて、隣にいるレイを振り返る。
「綾波……平気?」
「何が?」
「そのカレー、肉入りだよ?」
「うん……平気……」

そういって二回目のお代わりを貰いに立ち上がるレイを、シンジは呆然と見送っていた。
確か、肉は嫌いといった筈である。
そのレイが大量の肉が入っている筈のカレーを、ゆっくりと味わって食べている。
とてもお義理で口に運んで、無理矢理のみこんでいるようには決して見えなかった。

しかしそのカレー、100人分よりもっと多いだろうか。こっちは二人しかいない。
その大量をカレーをどうやって始末をつける?と悩んでいたのも束の間のこと。
後から後からやってきた自衛隊員の連中のお陰で、その心配は不要となった。
流石は国防戦力の彼らである。無謀と思われた大鍋カレーがみるみるうちに空っぽになってしまった。

そして宴も果てて、最後には記念撮影まで求められてパーティーは無事終了。
流石は軍隊、後片付けをテキパキと済ませて帰って行った。
そんな彼らを見送りながらシンジは言う。

「綾波は……多分、判ってると思うけど。」
「何?」


129 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 23:01:00 ID:???
「私的に援助っていうのは嘘だと思う。私的であれだけの物資は援助できないんじゃないかな。」
「……」
「なんだかさ、メシ抜きを子供に宣告しておいて、
 後でおにぎりを持って行けって母親にこっそり命じる頑固親父みたいで。」
「そうかもしれないわね……でも、違うかも知れない。自分で言うのもなんだけど……」
「え?」
「私、何故か彼らに人気があるみたい……何かの折に私のことを知ったみたいね。」

それを聞いたシンジは吹き出して笑い始めた。
「アハハ、隊員さん達に写真を見せて貰ったよ。綾波の姿を隠し撮りしてたらしくってさ。」
「何度か戦自の基地に出入りすることがあったから、その時みたいね。
 指揮権を得るために各部隊の将校との挨拶回り。
 でもね……あの人達、最初に私が投入を命じた厚木と入間の部隊の生き残りなの。」
「え……?」

そしてレイは表情を少し曇らせながら話を続ける。
「その彼らが私に会いに来たというのを聞いて複雑な気持ちだった。
 私は彼らに対して死ねと命じたに等しい相手の筈なのに。
 しかし彼らは仲間を失った恨み辛みなんていう気持ちはこれっぽっちも抱いていない。
 しかも、彼らはこんなものを私にくれた。」


130 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 23:02:15 ID:???
そして取り出した一枚の紙切れ。そこには電話番号のようなものが書かれてある。
「これで自分達に直に命令してくれというの。融通の利かない政府なんかほっといて。
 軍隊を抜けて、基地から兵器をぶんどって必ず参戦するから、と。」
「……」
「何故そこまで?と聞いたら……やっぱり自分では言いにくいけど、みんな私のファンだから、と。
 自分達で兵器を開発して戦おうとする私のファンだから、と言ってくれた。」
「……」

シンジは少し考えていたが、やがて笑みを浮かべながらこう答えた。
「判るよ、その人達の気持ち。国とかいう大きな物のためより、誰かのために戦って死ねたら最高じゃないか。」
「……」
「人が命をかけたいと思う気持ちって、そういうものだと思う。国を守りたいという大義も根本はそれだと思う。
 僕がここに止まりたいって思うのは、それと同じ気持ちだと思う。」
「……ありがとう、碇君。」

そしてレイはシンジの正面に立ち、改めてシンジの目を見据えた。
「碇君。なぜ、あなたをここに呼んだのか。それを教えたいと思うの。」
「え……?」
「ここで使徒と戦っているのは、何も世界を守るためとか、サードインパクトの勃発を防ぐためとか、
 実を言うとそんな理由とはまったく違うの。使徒がやってくる理由も違う。」



131 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 23:03:22 ID:???
「それじゃ……何のために?」
「あなた。」
「え?」

「使徒はあなたを消すために、あなたを目指して襲来している。
 ここにあなたを呼んだのは、『この場所に使徒が来る』ためではなく、『碇君をこの場所で守る』ため。
 実を言えば、私は人類を守るため、なんてそんなつもりは全く無かったの。
 私はあなたを守るために。それだけのために、こうして戦ってきたの。
 ここからあなたが移動すれば、使徒は必ずあなたを追いかけてくる。
 それが、あなたをここに招いた理由。
 たとえ誰からの援助も無くなったとしても、立ち退きを要求されても、私があなたをつれて逃げることは出来ない。
 私は人類の資材を全て投じても、他の全ての人達の命を犠牲にしても、あなた一人の命を守るために。」


132 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/04(日) 23:04:26 ID:???
とりあえず、ここまでですー

133 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 00:01:02 ID:???
おおなんか話の核心きたぞー
今回はシンジの素朴な語りがいいね・・・
毎回楽しませてもらってます

134 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 01:56:07 ID:???
おつ
コピー達を公にできないとなると、結末時が心配だわ

135 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 03:36:50 ID:???
面白い

136 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 22:01:52 ID:???
コピーにもカレーを食わせてやってくれぇぇぇ(泣)
塩とご飯だけなんてあんまりだよぉ。

でもGJ!おもろいわ。

137 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 22:43:54 ID:???
おつです
GJです

138 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:00:37 ID:???
シンジは目眩にも似た感覚を味わいながら、レイに聞き返した。
「そ、それじゃ……サードインパクトが起きるというのは……」
「いえ、セカンドと同じぐらいの大惨事が起きると思うわ。それ以上かも……」
「それじゃ……どうしてそれを隠していたの?」
「このことを世間に知らせる訳にはいかないの。
 どんなことがあるか判らない。例え、碇君だけに伝えたとしても、どんな経緯で知られるか判らない。
 仮に知られたら、使徒の襲来を防ぐにはあなたを消せばいい、という誤解を招く。」
「それじゃ……それじゃ……」

しばらく言葉に詰まってしまったシンジだが、深呼吸をしてから思い切って尋ねた。
「それじゃ……それじゃ、僕は何なの?」
「それは……」

今度はレイの方が覚悟を決める番であった。
しばらく沈黙していたレイ。そして意を決して口を開いた、その時。

 ♪ぴんぽろぱんぽろぴんぽろぱんぽろ……

レイの携帯電話の着信音である。
その電話を受けたレイは目を丸くした。
「私達がこうして会話しちゃいけないって、あれほど……
 そう……そうね、判ったわ。」


139 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:01:46 ID:???
そんなレイを、シンジはかえって心配顔になってを見つめる。
レイは伏し目がちに、そのシンジの無言の問いかけに答えた。
「ごめんなさい……さっきの質問には……」
「いや、いいよ。なんだか……物凄く怖いビックリ箱を開いてしまうところだったかもね。アハハ……」
そんなふうに寛大に笑ってくれるシンジに、レイは感謝する他はなかった。

さて、ボロボロになってしまった地下基地に二人が戻ると、
コピー達が物を言わずジッと立ちつくして待っていた。
地下の薄暗さのお陰か、なんだか今の彼女達が恐ろしくも見えてしまう。
普段は、無表情ながらも愛嬌を感じて仕方がない同じ姿のコピー達。
しかし今は一変して、同じ姿さながらの不気味さが際だっているかのような……

そんな彼女達を見て思わずゾクリとするシンジに、
「シャワールームが無事だから、それを使って休む準備をして。」
と促すレイ。
シンジは勧められた通りに下の階層にあるシャワールームに向かった。
レイと、そのコピー達を後にして。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

それ以後、シンジの様子が微妙な状態となってしまった。
じっと座って何かを考えていることが多くなりつつあるようだ。


140 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:03:03 ID:???
かといって自分の世界に引きこもってばかりいる訳でもない。
レイ達と共に食事を取り、エヴァの訓練や家事全般の手伝いも休むことなくこなして、普段通りには見えるのだが。

ある時、オリジナルのレイがシンジの所にやってきた。
「碇君、大丈夫?この前の話が気になっているようにも見えるけど。」
「ああ、そりゃショックだったよ。それは当然。」
「あんな話をしてご免なさい。」
「いや、いいよ。僕は大丈夫だから。」
「それで、いろいろと隠していたことがあるけど、有る程度のことを知って貰おうと思ったの。」
「え?」
「来てくれる?」
と、レイは誘いかける。
シンジは否応なしに、レイの後に続いた。

そして、やってきたのは初めて見る部屋だ。
なんだか、何かの研究室にも見える。薄汚れていて、ずいぶん使い込まれていることが判る。
スチール製の本棚には難しいタイトルの本がズラリと並び、
机には幾台ものパソコンが積み上げられ、それらは全て稼働していた。
どうやらそれらが、この基地の制御などを司っているらしい。

そして、レイがシンジに手渡したのは一枚の写真。
研究者らしい白衣を着た男女の姿。女性はパイプ椅子に座り、その側にはメガネを掛けた男が立っている。


141 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:04:11 ID:???
「それ、あなたのご両親。」
「……ええ!?」
シンジは驚愕する。ということは、自分の両親の姿を見るのは初めてだったらしい。

「綾波、君は……僕の両親のことを知ってるの?」
「うん。あなたは何も知らないのね……それでは赤木ナオコ博士のことも?」
「いや、知らない。それは……誰?」

レイは写真を食い入るように見つめるシンジに、ゆっくりと話し始める。
「かつて、あなたのご両親や赤木博士は共同でバイオテクノロジーの研究を続けていた。
 その研究、究極の目的はクローン技術に基づく新機軸の医学療法を開発するため。」
「クローン技術……」
「その研究の果てに、とてつもない怪物が副産物として完成してしまった。
 超絶的な力と自己修復機能を兼ね備えた究極の生命体。それが……」
「使徒、というわけか。」
「そう。それを見た者が考えることは二通り。すぐにでもそれを処分しなければならないという考えと、もう一つ。
 科学、政治、様々な面で発達し尽くした現代人間社会で、世界制覇を成し遂げるにはうってつけの……」
「せ、世界征服ぅ!?」
「その野望を持つに至った赤木博士を阻止するために、あなたのお父さんはあえて使徒と同等能力のエヴァを開発。
 しかし、初戦で敗れたあなたのご両親は、唯一の息子であるあなたに託すしか他になかった。
 なぜなら、あなたのお父さんの頑なな設計思想で、自らの遺伝子をエヴァを起動する鍵としてしまったのだから。
 けど、そのことを赤木博士に知られてしまうことになる。そして私はあなたの保護を……」


142 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:05:31 ID:???
そこで、シンジは写真をレイに突き返して一言。
「あのさ……これ、僕と綾波のコラ写真じゃないの?」
「あ、ばれた?徹夜で作ったのに……」
「……」
「……」

「それじゃ、今の僕の両親の話は?」
「嘘。」
「……」
「……」

さて、シンジはどんな態度をとるだろうか。
と、不安になったのも束の間である。シンジは大いに笑い出した。

「アハハハハハ……やっぱり?なーんか、話が出来すぎてると思った。」
「やりすぎて、あなたを怒らせたかと思ったわ。」
「いや、なんか面白かったよ。それにさ……僕、本当に自分の親のことは知らなかったから。
 もしかしたら、木の股や脇の下から生まれてきた親なしっ子じゃないかと思ってたぐらいに知らないんだよ。」
「そう……」
「なんかさ。綾波に筋書きを立ててくれたお陰で、やっと自分にも親が居るような気になってきたよ。
 この写真もらっていい?」
そう言って、大切そうにシンジは写真を眺め続けていた。


143 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:06:42 ID:???
はてさて、シンジは寛大なのか楽天家なのか、あるいは全てにおいてどうでもいいのか。
そのいずれであろうと、シンジが明るく振る舞っていてくれることは、レイにとって実に助かることなのだ。
過去がどうであったかよりも、これからどうするかが重要な時。
判らない、見えない世界の情勢よりも、目の前の現実をどうするか。
二人は、それらを相手に立ち向かわなければならないのである。

とはいっても、シンジの心情に何も影響しない筈はなく、明るい彼の表情も空元気に見えなくもない。
原因であるシンジが消される懸念よりも、シンジ自身が首を括りかねない、という心配もあるからだ。
何かを心の奥底で考え込んで、悩みの種を育ててなければいいのだが。

しかし、
「みんな、おいでー」
とチェロを片手にシンジは呼びかけ、そんな彼の元へあたふたと集まるコピー達。
森の動物たちを相手に演奏会を開く「セロ弾きのゴーシュ」さながらである。
そうして彼女達に音楽を聴かせてやることで、自分自身の心の安定を図っているのだろう。

だが、そんな彼らに追い打ちを掛けるような事態が巻き起こるのも、この世の必然なのかもしれない。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

ここは自衛隊の駐屯地。
使徒の来襲、その他の危機に備えて多くの隊員達が寝泊まりする場所。


144 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:07:45 ID:???
隊員達は音楽を聴いたり雑誌を片手にしながらくつろいでいる。
その傍らにはレイの素っ気ない横顔の写真が一枚。
もうすっかり彼らのアイドルとなっているのだろう。
TVに登場する造られた存在よりも、自然に降ってわいたような彼女の存在に注目する方が面白いに違いない。

その危機感のない空気、もはや彼らは使徒の襲来を楽観視しているようである。
最初の使徒の襲来で出撃し、多くの犠牲者を出す結果となった。
しかし今では使徒に対抗しうるジェットアローンが開発され、既に量産体制に入っている。
最近、現れた使徒に対しても2機のジェットアローンが出動し無事に殲滅完了。
弱点であるコアを二つ持っている厄介な相手であったが、
スーパーコンピュータMAGIの制御により2点同時攻撃が見事に成功。
もはや彼らにとって使徒というものは、出てくれば潰せばいいだけの害虫のような存在であった。

そんな彼らの足元に蠢く白く細長い影。
蛇のようにも見える。しかし、螺旋状の身体をした奇妙な……

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「使徒!?」
オリジナルのレイに叩き起こされたシンジは、あたふたとプラグスーツにその場で着替えている。
彼女の目の前なのだが、もはや気にしては居られない。
後ろを向いてではあるが、遠慮無く全裸になって袖を通しながらレイに問いかけた。


145 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:08:47 ID:???
「だんだんと巨大化しながらこちらに向かっている。
 既にジェットアローンがこちらに向けて発進したみたいだけど、あなたも初号機で待機していて。
 そこが、あなたを守るためには一番安全な場所だから。」
「わ、判ったよ、綾波。」

そう返事して初号機へと駆け出すシンジ。
それを見送りながらレイはノートパソコンに映るレーダーを見据えた。
それに映る使徒のマークが徐々にこちらに迫りつつあることが見て取れる。

地下基地からうかがえる情報はそれだけだ。
ただし、エヴァを地上に挙げればそれを通して使徒の様子も観察することが出来る。
レイは迷った。あまり頼り切ることは出来ないが、できれば無人兵器であるジェットアローンに先手を打って欲しい。
だが、共同戦線を張ることは出来ない。こういうときに外交政略的な問題がもどかしくて仕方がない。
しかし、ジェットアローンの到着が遅い。
もし、エヴァを出すより先に使徒が到着すれば、下手をすると将棋で言う穴熊囲いの焼き討ちにされてしまいかねない。
ならば、結論は一つ。
躊躇無く初号機を出撃させるしかない。

レイはエントリープラグ内のシンジを呼び出す。
「碇君。出撃、いい?」
『判った。出して、綾波。』


146 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:09:50 ID:???
「続けて、零号機で出るから。すぐにジェットアローンも到着する。
 戦闘になってもATフィールド最大で防御に徹して、自分で使徒を倒そうと考えないで。」
『判ったよ。気をつけるから。』

そうして、地上へと射出される初号機。それを見送るレイ。
レイは政府に対して決してムキになっている訳ではない、エヴァが使徒を倒す必要は実は言うと全くない。
自分の手で倒したいなどと考えている訳ではないし、彼らが戦果を誇りたいなら幾らでも譲るつもりでいる。
シンジを守ることができるなら。

やがて、初号機のモニタを通して、何か巨大なものが山をも越えてこちらにやって来るのが見て取れた。
それを遠巻きに取り囲む戦自の攻撃ヘリ群。だが、なぜだろう。
一機のヘリも攻撃を仕掛けようとはしない。どうして良いか判らず、狼狽しているかのように。
レイはもどかしく思った。初号機から送られる映像が小さすぎて判らない。

『綾波……あれは……まさか……そんな……』
「……碇君、どうしたの?
 いや、待って。私も出るから、決して碇君は動かないで。」
『こ、来ないで!綾波は見ちゃいけない!』
「……え!?」

だが、シンジのその拒絶でレイは察しが付いた。
そういえば、残りの使徒の中に浸食するタイプが居たはずだ、と。


147 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/05(月) 23:10:54 ID:???
とりあえず、ここまでですー

148 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 23:24:26 ID:???
乙!
なんだかこの話のシンジは明るいなぁ。
救われるよ。

149 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/06(火) 02:11:57 ID:???
おつおつ
ここまでJAが活躍したものを見たことない

150 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/06(火) 07:02:59 ID:???
面白いな

151 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/06(火) 07:13:53 ID:???
あげてしもうた
スマソ

152 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:16:17 ID:???
現れた使徒について、既にレイには察しが付いていた。
子宮を司る天使、アルミサエル。
性的な意味ではなく、胎児を守るという神聖な役目を果たすと語り継がれた天使の一人。
果たしてその伝承は嘘偽りで、まさかこれが真の姿なのだろうか。
どう見てもそれは「冒涜」以外の何者でもない。

『あ、あ、あ、あ……』
初号機から通信を介してシンジの嗚咽が聞こえてくる。
無理もない、気の弱い者なら一瞬で発狂しかねない光景である。
もはやレイの見るモニタにも、その姿がハッキリと捉えられていた。

それは、無形であった。
一定の形に止まらぬ形、蛇のように身体をうねらせたかと思えば、時には泥人形のように崩れ落ちる。
その身体を構成しているもの。それは紛れもなく人間の身体であった。
そしてその者達は誰なのか、その人々が身につけている衣服ですぐに判った。
使徒アルミサエルは大勢の隊員が集まっている戦自の駐屯地を駆けめぐり、
人間の身体を繋ぎ合わせてこね合わせた、そのおぞましい姿でここまで辿り着いてきたのである。
そう……レイとシンジの元に訪れ、温かい援助をしてくれた自衛隊員の彼らに相違なかったのだ。

モニタを見据えるオリジナルのレイも驚愕し、絶句する。
動けない。どうしていいか判らない。あれを攻撃しろ、などとシンジにはとても言えない。
何故なら、その使徒に取り込まれた人々の蠢いている様が見て取れたから。


153 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:17:27 ID:???
「あれは……私達を攻撃しようなどと考えていない。倒せるものなら倒してみろと……
 アルミサエルは自らを犠牲にして、私達そのものの心に浸食するつもりなのか……」
思わず、そんなことをつぶやくレイ。
だが、ショックを受けてばかりはいられない。
シンジの初号機に物理浸食されては全てが終わりだ。
この上はシンジを下がらせて、零号機を出撃させて……と、考えていた矢先である。

レイは突然なりだした携帯電話を開いて、そして答えた。
「何ですって!?……判ったわ。今すぐにお願い。
 構わない、エヴァならそれにも耐えられる……碇君!ATフィールドを全開!」
レイは電話の相手に答えながら、シンジに命じる。

『う……あ、あの……AT……?』
「しっかりして!ここにN2爆雷が投下される!早く!」
『わ、わかったよ……ATフィールド、全開……』

そして取り囲んでいた攻撃ヘリの部隊も一斉にその場から避難し、
その遙か上空で数機の攻撃機が風の如く飛び去っていった、その時!

    ズドドドドドドドドドドドドドドドッ!!


154 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:18:49 ID:???
凄まじい轟音、そして巨大なキノコ雲が立ち上がり、辺り一帯が真昼のように照らされる。
レイの地下基地はガタガタと振動し、あちこちで壁が崩れて鉄骨が落下した。
しかし、防壁のかなりの部分を壊してしまったとはいえ作りは頑丈である。
そこにいるレイ達はどうにか無事であった。

そして地上では、N2爆雷の投下によって燃え上がる使徒の姿があった。
そう、使徒に取り込まれてしまった隊員達は全て焼き尽くされてしまったのだ。
果たして、日本国政府がとったその「処置」は残虐というべきか、それとも英断ともいうべきか。
ただ、これだけは言えることがある。
とても、レイやシンジにはあの使徒を攻撃できるものでは無い、ということを。

やがて爆炎が引いて、三方から姿を現した者。それは三機のジェットアローンであった。
どうやら、N2爆雷による焼却を待って前線に投入されたらしい。
その寸胴のボディに黒光りする装甲の機体。
それは初めて目にするデザインで、新たに開発された最新型であるようだ。

自らの鎧を剥がされて、露わとなった使徒アルミサエルの姿。
螺旋の形状を持った蛇のような細長い身体で、彷徨うように獲物を求めて飛び回っている。
しかしジェットアローンは正確にそれを捉えていた。MAGIコンピュータの補助があるのだろう。
自らに搭載したリアクターのエネルギーより、高出力のポジトロンライフルによって三方から狙撃する。
完璧であった。
これが大量の人質を身にまとった使徒に対する、情け容赦ない政府の見事な殲滅作戦であった。


155 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:19:56 ID:???
レイは何とも言えない気持ちで、使徒が殲滅される様を見ていた。
これこそが、時として無慈悲にも悪魔にもなれる人間達の生きる力なのか。
しかしレイは彼らに対して怒りの思いを向けることは、彼女の複雑な思いが許さなかった。
人間と同様に使徒も、大自然もまたこの残酷な有り様こそが、それらの真の姿であるのだから。

ふと、コピーの一人の異変に気が付いて、オリジナルのレイが振り返る。
その無表情さは変わらないが、ポロポロと涙を流しているではないか。
そんな彼女に対してオリジナルのレイは厳しく、しかし優しい口調でたしなめる。
「顔を洗ってきて。零号機で発進しなければならない。泣いていても使徒は容赦してくれない。」

何故なら、レイが見ているレーダーには新たな使徒の存在が示されていたのだから。
どのようなことが起こったとしても、生きるために戦い続けなければならない。
碇シンジを守るために。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

そして瓦礫の山をかき分けるようにして零号機が地上に射出された。
初号機はあまり動いていなかった。すぐ斜め前に両腕をブラリとさせたまま突っ立っている。
エントリープラグに搭乗しているレイはすぐにシンジを呼び出した。

「碇君……大丈夫?すぐに新たな使徒がやってくるわ。」
『……』


156 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:21:03 ID:???
「……碇君?」
『聞こえてるよッ!』

通信モニタから音割れして聞こえてくる、シンジには珍しい怒髪天を衝くような一喝。
正にシンジは誰彼無く怒りの思いをぶちまけたいような、そんな状態だ。
あんなことの後では無理もない。
普段はまるで歌のお兄さんの様に、もとい「チェロのお兄さん」として過ごしている優しい性格の彼。
オリジナルのレイのくだらないネタ話にも笑って請け合う彼なのだ。
その健全で健康な彼があんな有様を見て動じずにいられる筈もない。

「碇君、落ち着いて。日本政府のとった処置は……」
『判ってる。判ってるよ。言われなくても……』
「……」
『……あれだね?あれが、次の敵なんだね?』

そのシンジの一言を聞いて、レイはハッとなって見上げた。
空中から飛来する巨体、それを見たレイは恐怖する。

「使徒ゼルエル……ま、まって!碇君ッ!!」
『……うおおおおああああああああああッッ!!』


157 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:22:12 ID:???
突進する初号機。それを制止しようとするレイ。
しかし、レイはその間際にあることに気付く。
レーダーには使徒の姿を示す光点が二つ映っているではないか。

「碇君!これは罠だわ、さがって!」
しかし、もうシンジの耳には聞こえていない。
レイの制止を振り切り、シンジは力の象徴たる恐るべき使徒ゼルエルの元へと駆けだした。
それに続いて、三機のジェットアローンの対応も素早かった。
すぐにポジトロンライフルを構え直して新たな敵を狙撃する。

しかし、レイには判っていた。そんなものが通用するはずはないことを。
例えATフィールドを突破する力があっても、ポジトロンライフルなどで倒せる敵では無いことを。

そして、レイはこうなることを予測していた。ジェットアローンでは歯が立たない使徒が現れることを。
何もレイが使徒の詳細を知っていたからではない。
これまでの戦闘の経緯で使徒達が何も考えず、そして準備もせずに来る訳がないではないか。

ジェットアローンの狙撃は正確だったが、あっさりとポジトロンライフルが放つ閃光ははじき返された。
そして使徒は反撃に出る。胸部にある不気味な顔の目が輝き、それの口が開かれ、そして、

  キュァァァアアアアアアッッ……
                              ズドドドドドドドドドッッ!!!


158 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:23:31 ID:???
使徒の放つ高エネルギーの閃光、その一撃でジェットアローンの一機はあっけなく消失する。
もう終わりである。ATフィールドに匹敵するような防御手段が何もないジェットアローンには、
これまでのように戦闘で先の先を取らなければ、決して勝ち目など無いのだ。

だが、残りの機体はボヤボヤしてはいなかった。
一機目が吹き飛び、巻き上がる爆炎の中から姿を現したもう一機。
仲間の死をこれっぽっちも構ってやしない、正に無人兵器が故の極めて効率的な行動であった。
どうやら、使徒の方は先程の閃光を再び放つのに時間が必要とみえる。
その隙が二機目の狙い目。使徒ゼルエルの弱点を模索し、ライフルの引き金を引こうとしたその瞬間。

 サクッ……

閃光の放つ代わりに使徒が放った攻撃手段。
それは使徒の二本の腕のようなものが伸び、
カミソリのような切れ味でジェットアローンの両腕を切り飛ばしたのだ。
そして、もう容赦はしないと三機目が動き出す前に、再び閃光が放たれる。
一機目と同様に、三機目は一瞬にして消失した。

しかし、まだだ。ジェットアローンが全て戦闘不能となった、その瞬間だった。
まるでジェットアローンと示し合わせたかのように、使徒ゼルエルに襲いかかる者。
それはエヴァ初号機であった。
初号機はライフルのような物を所持していたが、シンジはそれに頼ることを全く考えていなかった。


159 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:24:38 ID:???
手にはプログナイフ一本だけ。
飛びかかり、使徒を斬りつけ、八つ裂きにしなければ気が済まない、とでも言うかのように、
初号機は雄叫びを騰げかねない猛烈な勢いで、使徒ゼルエルの背後から飛びかかる。

しかし、いきなり戦意を失ったかのように、シュッと上空へとゼルエルは浮上する。
間を外されて、初号機は急停止して使徒を見上げた。
いったい何をするつもりか。しかし、こうなっては何らかの飛び道具がなければ使徒を倒せない。
エヴァに空を飛ぶ装備など用意されていなかったのだ。

エントリープラグ内のシンジは、思わず肩で息をしながら上空を見上げる。
目に入るのは、ぽっかりと浮かぶ使徒ゼルエル。
そして、その付近に同じく浮遊している物がある。
丸く、そして縞模様でデザインされた不気味な月。あれは……

『碇君!逃げてッ!』
絶叫するレイ。既に零号機は手近な焼け残ったビルへとよじ登っている。
「え……?」と、急に素に戻るシンジ。しかし、もう遅かった。

「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

その次の瞬間、地上は一瞬にして漆黒の闇と化し、初号機は永劫の暗闇の中へと飲み込まれていった。
夜の象徴たる使徒レリエルが生み出した、どこまでもどこまでも深い闇の世界へ。


160 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/07(水) 00:25:40 ID:???
とりあえず、ここまでですー

161 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/07(水) 01:57:41 ID:???
オツ〜
隊員・・・

162 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/07(水) 14:44:36 ID:???
>>160
シンジの鬱憤晴らしにゼルエルが八つ裂きにされるかと思ったらレリエルも一緒とは…
残るはバルディエルとアラエルそしてタブリスか…

163 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/07(水) 20:36:27 ID:???
量産機も

164 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/10(土) 01:47:58 ID:???
最近来ないなぁ
投下まだ?

165 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/10(土) 02:01:46 ID:???
携帯からです。
すんません。eonet規制に巻き添え喰らって投下できないですorz

166 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/10(土) 09:19:08 ID:???
災難だな

167 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/13(火) 07:35:52 ID:???
いつ投下できる?

168 :携帯から ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 01:42:34 ID:???
>>167
とりあえず規制解除待ちしてますが、いつ解除されるか判らんのです。

169 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/14(水) 04:12:10 ID:???
気長に待ってます

170 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:27:17 ID:???
「碇君……」
初号機が使徒レリエルの手に落ちるのを目の当たりにしたレイは、力なく彼の名を呟いた。

かろうじて零号機は無事であった。
ビルの残骸によじ登り、どうにか地表の影に触れることを免れたのだ。
しかし2体の使徒を相手に、しかも限られた足場でどうにか立っているだけの零号機で、
どうやって立ち向かえと言うのか。

そして、使徒ゼルエルは零号機に考える暇など与えない。
勝ち誇るのも時間の無駄と言いたげに、速攻で零号機に放たれる必殺の閃光。
しかし、パキンッ!!と零号機のATフィールドがそれを弾きかえし、かろうじて使徒の攻撃を凌いだ。
エヴァはジェットアローンとは違う。使徒と同等の能力を持つことを目指した機体である。
プロトタイプの改良型とはいえ、零号機はたやすく一撃で倒されるほどヤワではない。

しかし、エヴァはATフィールドの守りを持つ反面、有効な攻撃手段を欠いている。
むろん、使徒のATフィールドを中和するというエヴァならではの能力を持ちうるが、
それは近接戦闘を前提とした戦い方。
零号機の能力と装備では貧弱で、加えて中空に浮かぶ使徒達が相手ではどうしようもない。

レイは覚悟を決めて、手にしたライフルのようなものを手放した。
それはポジトロンライフルに比べてはるかに威力は低く、もはや無意味な長物であるからだ。



171 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:28:22 ID:???
唯一、効果を与えられるとすれば只一つ。
ここまで背負ってきた『ロンギヌスの槍』、それを使徒に対して投擲すること。
零号機に出来ることは、それしかない。
そして使徒の攻撃の合間を縫って、零号機は槍を構えて投擲体勢に入ろうとしている。

しかし、狙いはゼルエルではなかった。
レイの零号機が狙った先、それは中空に浮かぶ使徒レリエルの不気味な球体であった。
自分の手で使徒を倒すのではなく、初号機を救出してシンジに全ての可能性を賭けようというのだ。
逆に言えば、この戦いで生き残ったとしても、シンジが助からなければ彼女にとって意味がないのだから。

「……これを投げることが出来るのは一度きり。これを外せば二度目はない。
 何の効果もなければ、もう終わり……全ては……」
祈るようにつぶやくレイ。しかし、彼女にためらいはなかった。
狭い足場から転落して、使徒レリエルの闇に落ちることも恐れずに思い切った助走を付ける。
使徒に捕らわれた初号機が無事であることを、シンジが生きていることを、その全てを信じて。

「……碇君ッ!!」

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

シンジの、そして初号機の居場所。それは、とてつもなく広大な虚無空間であった。
「ここは……ここは何処?……なにがどうなってるの……?」


172 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:29:24 ID:???
使徒レリエルに捕らえられ、そしてうろたえるシンジ。
必死で初号機の計器を探る。しかし、何も判らない。何も掴めない。
判るはずもない。初号機の様々なレーダーには何も映らず、センサーには何の反応も無いのだ。

そしてシンジは焦り出す。
「こ、ここはどこなの?いったい、何がどうなってるの?……綾波?綾波!?
 返事をしてよ!聞こえてるんでしょ?どうして、何も言ってくれないの?」

シンジは通信モニタを必死で操作するが、しかし何も聞こえてこない。
そして焦りが混乱へと変わる。

「ねぇ!ねぇってば!
 返事をしてよ!また冗談なんだろ?嘘なんだろ?
 もうふざけるのは止めてよ!返事をしてよ!
 ねぇ、どこにいったの!聞こえてないの?ここはどこなの!誰か教えてよ!
 誰でもいい、使徒でも良い、なんでもいい!
 ここは嫌だ!一人は嫌だ!誰か僕に答えてよ!
 返事をしてよ!
 誰かッ!!


 ……誰か……返事をしてよ……誰……か……」


173 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:30:31 ID:???
そんな大騒ぎの末に。
ようやく気がすんだのか、シンジは気落ちしたような声でつぶやく。
「こんな時は……そうだ、生命維持モードにしなくちゃ……」
そしてシンジがそのモードに切り替えようと端末を開いた、その時である。

【応答要求 受諾】

そんなメッセージが端末のコンソールに表示されているのを見て、シンジは驚いた。
どうやら、シンジがコンソールを目にするだいぶ前から、様々なメッセージのログが流れていたらしいのだ。
シンジは画面をスクロールさせて先頭から読み返す。

/logon guest
 ** welcome to eva system ver.2.234
/sysmap *
 - eva01.system
  + eva01.system.control
  + eva01.system.body
  + eva01.system.enagy ……

何が表示されているのかシンジにはさっぱり判らない。しかしおぼろげながら理解できる。
明らかにその様子からして、何者かが初号機のシステムに外部から割り込もうとしているのだ。
コンソールのメッセージ群は更に続く。


174 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:32:04 ID:???
/connect eva01.system.control.pilot.shinji
 ** em011213 palameter error
/info pilot.shinji
 (your type is guest/infomation level 0)
 pilot name : shinji ikari [碇 シンジ]
 age : 14
 type : humanoid
 sex : male
 language : japanese

/easychat -lang jpn -to shinji

>僕に答えてよ、返事をしてよ、誰か
balthasar ->【応答要求 受諾】
balthasar ->【機体名称:ジェットアローン タイプ3 ver3.2982】
balthasar ->【搭載コンピュータ:MAGI-System ver4.125 codename : balthasar】
>_

「ジェットアローン……バルタザール……?」
そこまでメッセージを読んだシンジは、ようやく気付く。
目の前のスクリーンに映っている、両腕を使徒に奪われたジェットアローンが浮かんでいる姿を。
つい先程までは何もなかったはずが、何時の間にそんなものが初号機の元に追いすがってきたのだろうか。


175 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:34:04 ID:???
シンジが理解していないことも含むが、現状はこういうことである。

使徒レリエルに取り込まれた初号機とジェットアローン。
そして、シンジがパニックに落ち入っている間に、ジェットアローンに搭載されたMAGIコンピュータの一つ、
バルタザールがエヴァ初号機の内部システムに潜入を果たす。
そしてエヴァの構成情報を解析し、全ての操作を統括しているキーワード「shinji」へと行き着くが、
電子的なアクセスは不可能と知る。

更なる調査の結果、「shinji」は生身の人間であることを知り得たバルタザールは、
自然言語に基づくチャット方式で「shinji」にアクセスする試みを開始。
そこにシンジの狼狽ぶりが音声入力され、それに対してバルタザールは名乗りを上げた……
とまあ、そんなところだろうか。

シンジは首を傾げる。ジェットアローンにMAGIコンピュータが搭載されていることが信じられないらしい。
「でも、スーパーコンピュータMAGIの設計書を見せて貰ったけど、すっごく大きかったはずじゃ……」
だが、相手はシンジの質問をスルーして、まったく違うことをコンソール画面上で言い始める。

balthasar ->quit
/info eva01.enagy.*
  - eva01.enagy
   - eva01.enagy.outside_cable ** not found
   - eva01.enagy.inside_buttery 13107/32768 ( nomal mode rimit 2'13'' )


176 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:36:12 ID:???
/easychat -lang jpn -to shinji
balthasar ->【緊急】
balthasar ->【要求:ジェットアローン内部電源からの電力供給】
balthasar ->【電源仕様:JIS32687-a21 下位互換にて対応可】

「え……?あ、ああ、そうか。電源を貸してくれるの?」
とシンジが問いかけるのが早いか、ジェットアローンの背中からケーブルのような物がパシュッと飛び出した。
それをシンジは捉えて、初号機の背中にあるコネクト部分に手探りで接続する。
すると、操縦席の傍らにあるバッテリー表示が無制限へと切り替わった。
流石はリアクター搭載のジェットアローン、本体だけでなくエヴァの動力をまかなうことも可能であるらしい。

「すっかり忘れてたよ、バッテリーのこと。
 生命維持モードにしてなかったから、もう少しで稼働停止するところだった。ありがとう。」
シンジは、人格を持つ相手に話しているかのように礼を言う。が、バルタザールの方は構っている暇は無いらしい。
シンジに対して次の要求を開始した。

balthasar ->【緊急】
balthasar ->【要求:ポジトロンライフルの回収、および射撃準備】

回収?と首を傾げるシンジだが、初号機の目の前にジェットアローンと同様に一丁のライフルが漂ってくるではないか。
どうやらそれは、腕を飛ばされたジェットアローンの装備していたものらしく、
まだ右腕がライフルの引き金に引っかかっている。


177 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:37:34 ID:???
「射撃準備って……あの……」
balthasar ->【要求:敵生体「使徒」の任意のポイントに対する照準設定、および射撃】
balthasar ->【ポジトロンライフル射撃可能回数:1回(推定)】

「って、どこなの?どこに向かって撃てというの?」

balthasar ->【要求:敵生体「使徒」の任意のポイントに対する照準設定、および射撃】

「……いや、同じことを繰り返されても困るよ。
 あと一発しか撃てないんでしょ?任意のポイントって、まさか当てずっぽうで撃てってことかな。
 最後の一発をそんなふうに使っていいの?せめて、コンピュータの君が決めてくれた方が……」

balthasar ->【攻撃目標算定結果:】
balthasar ->【 当機体の現在位置:「使徒」内部(推定)】
balthasar ->【 -> 攻撃ポイント:## zero divide error // 】
balthasar ->【*状況解析処理に障害発生、具体案算出手順の強制終了。行動可能な全案の比較検証を開始】
balthasar ->【 -> 攻撃ポイント暫定決議案:】
balthasar ->【  案1:状況変化の発生まで待機 -> 危険因子発生の可能性:## zero divide error //】
balthasar ->【  案2:当機バルタザールによる無作為の照準決定 -> 「使徒」殲滅の可能性 0.03233%】
balthasar ->【  案3:pilot(shinji)による無作為の照準決定 -> 「使徒」殲滅の可能性 0.03233% + α】
balthasar ->【交渉手段:算出中】


178 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:38:36 ID:???
「アルファって……ゼロじゃないけど、ましって訳か。どうして?」
balthasar ->【pilot(shinji) -> type:humanoid -> α(不確定因子の意)->不明の仮想値】
balthasar ->【交渉手段:算出中】

「不確定因子ね。そのアルファ、マイナスってことも考えられるんだけどな……」
そんなことを言いながら苦笑いするシンジ。だが、笑顔の力は偉大である。
混乱しかけていた彼であったが、少し落ち着きを取り戻しつつあるようだ。
だが、次に表示されたメッセージに、シンジは目を丸くした。

balthasar ->【交渉手段:算出完了】
balthasar ->【あなたを、信じている】

コンピュータに意味が判るはずもないメッセージを見て、シンジは大いに笑った。
「アハハハ、判ったよ。信じてくれるのは良いけど、もし失敗しても恨みっこなしだからね?」


179 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 07:39:43 ID:???
とりあえず、ここまでですー

180 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/14(水) 12:51:26 ID:???
おつ

181 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/14(水) 16:04:46 ID:???
本編の『バルタザール』ってナオコの母としての人格を移植した部分だそうだが
このSSだと設計者がレイだから、母親としてのレイの人格を移植されているのだろうか?

182 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/14(水) 23:45:27 ID:???
>>181
移植されてる人格は決めてないです。レイはあくまでも設計しかしてないです。

183 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/15(木) 20:39:56 ID:???


184 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/15(木) 21:47:14 ID:???
AI萌え属性発動中。

185 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/16(金) 20:22:03 ID:???
マダー?(°Д°)

186 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/16(金) 23:39:20 ID:???

 スカァァッッ!!!

「ああ……ッ!!」
零号機が投げた「ロンギヌスの槍」、
それは使徒レリエルの球体が幻であったかのように、ものの見事にすり抜けていった。

「しまった……では、あの球体は影なの?そして地上の闇がむしろ本体……」
狭いビルの残骸の上であったため、零号機は投擲した時の勢いで地上へドサリと転落する。
そしてレイの心もまた失意に陥るが、しかしそんな暇などある筈もない。
零号機の元に、使徒ゼルエルの巨体が迫りつつあるのだ。

「……クッ!!」
零号機は必死で立ち上がり、使徒ゼルエルの攻撃を避ける。
禍々しい口中から放たれる閃光、そして二の腕の鋭い刃先を二転、三転して零号機は必死で逃れる。
だが、ATフィールドを再び展開する暇も無く、避けきれずに左腕がバッサリと切り落とされた。
「アアッ!!」
神経接続により伝わった激痛で、思わず悲鳴を上げて腕を押さえるレイ。
もはやこれまでだ。パイロット自身もダメージを受けすぎて、もう次の攻撃は避けられないだろう。

だが切羽詰まった情況のためか、レイはすぐ目の前のことに気が付いていない。
地上の影が既に無くなっていることに。


187 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/16(金) 23:40:26 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

シンジは精神を研ぎ澄ます。
ジェットアローンことバルタザールから託されたポジトロンライフルの一撃。
その一撃で、全てが決まる。全てが、終わってしまう。

だが、シンジは冷静だった。これまでになく冷静だった。
信じることだ、全ての雑念を捨て、自分なら出来る、自分なら可能だと、真に自分に言い聞かせ続けていた。
バルタザールが「信じてくれた」自分の力、自分がまだ見ぬ不確定要素。
それが情況を打開する唯一の力だと、それ以外に方法はないと、バルタザールは覚悟を決めたのだ。
そして、レイもきっと信じているだろう。自分が生きていることを、そして自分が生還することを。

時は成った。
シンジはライフルを構えて、発射に備える。
そして待つ。

……何を?

その時だった。

『碇君ッ!!』


188 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/16(金) 23:41:31 ID:???
「そこッ!!」
シンジはまっすぐ頭上へとライフルを掲げ、そして引き金を引いた。
そして、放たれた陽電子の閃光はまっすぐに貫く。

レイの「槍」が生み出した空間のひずみを。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

ピシッ……ペキッ……パキッ……

使徒レリエルの「影」、中空に浮かんだ不気味な月が身震いを始め、更にはヒビが入り始める。
そこから輝かしい閃光が漏れてくる。間違いなく、それこそがポジトロンライフルの放った光であった。

レイはそれに気が付き、あわやこれまでという状況であるにも関わらず、ハッとなって振り返った。
何故なら、真っ先に使徒ゼルエルがその様子に驚いているからだ。
まさか、とでも思っているのか。その成り行きが予想外であったのか。

そして、レリエルの月から何かが突き出す!

   ドカァッッ!!
   
               ギャァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ……



189 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/16(金) 23:42:34 ID:???
それこそは、紛れもなく初号機の二の腕であった。
しかも、である。
その腕がレリエルの球体の裂け目を押し広げ、そこからおびただしい鮮血が吹き出し、
その苦痛に耐えかねたのか、凄まじい悲鳴が辺り一帯に響き渡ったではないか。

そして、更に残酷にもグイグイと裂け目を押し広げ、遂に姿を現した初号機の顔、
それを固定されている筈の、顎の拘束具がバキリとはじけ飛び、すさまじい雄叫びを騰げて吠え猛る!

  ウォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッ!!!

「しょ、初号機が……」
絶句するレイ。
使徒レリエルから生還した奇跡を喜ぶ暇もなく、その初号機の有様に驚愕している。
「ま、まさか……暴走……初号機が……」

初号機は更に両腕を押し広げて使徒レリエルを粉々に砕き、
そして遂に奇跡の生還を遂げて、凄まじい轟音と猛々しい咆哮と共に地上に降り立つ!

  ズシィィィィィィイイイイインンッ!!!
   
   ウォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!


190 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/16(金) 23:43:36 ID:???
そして初号機はギロリと使徒ゼルエルを睨みつける。
「あ……綾波!無事か、綾波ッ!!」
シンジの叫び声。だが、レイには容易に返答できない。
彼の生還に感激しているから?いや、実はそうではなかった。

(碇君が意識を保ったまま?ありえない。あの初号機、間違いなく暴走状態に陥っている。
 あの使徒レリエルの内部で何が起こったの?これは、もしや……)

「綾波ッ!……う、う、うう……うおおおおおあああああああああああッッ!!」
シンジがレイを呼びかける声が、次第に絶叫へ、そして狂気へとと変わりつつある。

(暴走しているのは初号機ではない。初号機は共振しているだけ。
 ……そう、碇君そのものが暴走、いや……覚醒している!?)

神の如き鋭さを見せて、見事な狙撃で生還を遂げたシンジの様子が何故これほどまでに?
だがよく見れば、腕を切り飛ばされて倒れている零号機と、トドメを刺そうとする使徒ゼルエル。
まさに今の現状、まるで最愛の彼女が暴行を加えられようとしている所に、彼氏が通りかかったかのような。
例え話がおかしい?しかし、実際そうなのだ。
なんと使徒ゼルエルはカタカタを震え上がっている。もし彼に話すことができるなら、こんな一言を発しただろう。
(やばい……)

確かにヤバイ。非常にマズイ。逃げろ、ゼルエル。


191 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/16(金) 23:44:40 ID:???
とりあえず、ここまでですー

192 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/17(土) 01:02:41 ID:???
おっちゅ

193 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/17(土) 01:19:25 ID:???
おつおつぅ

194 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/17(土) 01:43:06 ID:???
いい展開

195 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/18(日) 12:49:33 ID:???
まだ〜

196 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/18(日) 22:57:23 ID:???
eonet規制?

197 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/18(日) 23:46:01 ID:???
「あの……碇君、落ち着いて、ね?今の初号機なら確実にゼルエルなんて倒せ……」
ゼルエルだけでなくレイも怖がっている。何かにおびえて、慌ててシンジをなだめようとする。
ここは思い切って好きなだけ暴れさせればいいものを。

そして使徒ゼルエルもまたカタカタと震えている。
あのジェットアローン最新型三機を瞬殺したゼルエルが。

「き、きさ、貴様……貴様は……」
シンジは怒りで震えながら呻き声を上げ、レイはなだめようと必死である。
「だ、だめよ……いけない、これ以上は……」
『貴様……貴様は…………キサマァァァァァァアアアアッッ!!』

なんと、初号機はシンジと共振しているのか、言葉を発して叫んだではないか。

その一喝に思わずビクリとするゼルエル。そして、ぴゅーっと空高く逃げようとする。
だが、
『痴れ者ッ!同じ手が通用すると思うかッ!!』
なんと初号機はゼルエルより遙かに高く跳躍して、強烈なかかと落としを喰らわせる!

 バシィィィッ!!

             ズドドドドドッ!!


198 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/18(日) 23:47:43 ID:???
ゼルエルは地面に叩き付けられ、その側にヒラリと着地する初号機。
だが、ゼルエルはボヤボヤしていない。口を開いて例の閃光を初号機に向けて発するが、
『ハッ!そんなもの!』
初号機は右腕の一振りでバシッとそれを弾き飛ばす。
いや、「そんなもの」どころではない。
弾かれて遙か彼方に着弾した閃光は、山一つを軽く吹き飛ばす程の威力があったのだ。

使徒ゼルエルの渾身の一撃を軽くいなした初号機は、さあ使徒に襲いかかるか、と思いきや。
初号機はゆっくりと後ろを振り返り、彼の背に接続されたケーブルと一緒にぶら下がって来ていたジェットアローンを見た。
可哀想に、ジェットアローンは跳んだり跳ねたりの初号機に振り回されて、もはやボロボロに成りつつあった。
初号機は背中に腕を回してケーブルを引き抜き、更に使徒に向かって言い放つ。

『5分……俺の攻撃を5分のあいだ耐え凌いだら貴様の勝ちだ。立てッ!!』
もはやレイは言葉を失う。あそこに居るのは誰?
(ええ!?碇君とのシンクロ率は下がっていく?……89%……74%……64%……あれは初号機の人格?)
もしや、初号機の暴走によりシンジが取り込まれようとしているのか。

もはや逃げ場はないと覚悟を決めて立ち上がる使徒ゼルエル。
自ら5分のタイムリミットを宣告したにもかかわらず、初号機はそれを静かにゆったりと見守っている。

その挙げ句に、初号機はニヤリと笑ってこう言った。
『……喰ってやる。』


199 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/18(日) 23:48:48 ID:???
ヒッ……という悲鳴が聞こえてきそうなほどに、ビクリと震え上がる使徒ゼルエル。
だから、もういいから逃げろゼルエル。

そして遂に初号機の拳が、唸り声を上げてゼルエルに殺到する!!

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………

  ッ……おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらァッ!!!!!』

 ベキバキボキバキベキバキボキバキベキバキボキバキベキバキボキバキベキバキボキバキベキバキボキバキッ!!

使徒ゼルエルはボコボコに叩きのめされる。
ゼルエルは力の象徴?いったいその伝承は何の意味があったのか。ふがいもなく初号機にされるがまま。
なんだか、使徒ゼルエルがATフィールドを巡らせて守ろうとしたかに見えたが、どうやらそれは気のせいだったらしい。
初号機の連打をまともに食らい、いったいどんな姿であったか忘れてしまうほどに形まで歪み始めている。

さんざん殴りつけて気が済んだか、初号機は連打を止めた。
まさに完全なる初号機の勝利。いや勝利というか、虐待、虐殺である。
が、使徒の反応は消えては居なかった。完全にボロボロにされた身体をピクピクと振るわせている。
初号機に絶命するギリギリのところで寸止めされたのか?いや、これが使徒が持ちうるS2機関の効力だろう。
いっそのこと即死できれば良かったのに。


200 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/18(日) 23:49:58 ID:???
そんな使徒をグワシと掴んでゆっくりと持ち上げ、初号機はニタァ……と嫌らしいまでの笑みを浮かべる。
ああ、なんということだろう。初号機は、まだ息のある使徒ゼルエルを生きながら喰うつもりなのだ。
もう使徒ゼルエルが可哀想で仕方がない。
涙が流せるものなら、ゼルエルは泣いて「まず殺してくれ」と懇願するだろうに。

 がぶりっ……
             ガツッ……ガツガツッ……ガツガツッ……

「あ、あ、あ、あ……」
その初号機のおぞましい有様に、レイはもはや思考停止の状態である。
レイも気の毒だ。こんな光景を見た後では、もはやどれほど心を込めて作ったカレーでも、彼女は口にすることはないだろう。
その傍らでシンジと初号機のシンクロ率を示すメーターがカタカタと上がり続ける。
……いや、下がり続けている?

 マイナス120%……マイナス180%……マイナス260%……

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

その一方で。

地下に居るレイ達もまた、モニタを通してその情況を見ていた。
(シンクロ値がマイナス?ありえない。もはや暴走状態の初号機は計測不能と言うことか。)


201 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/18(日) 23:50:59 ID:???
そう考えながら、レイ達の一人が髪をかき上げる仕草をする。
そしてチラリと見えた耳には、小さなピアスが光っていた。

(いや……もしこれが正しい数値だとすれば、次に起こることは何だ?)

そして、シンクロ値がマイナス400%を示した、その時。

『うぉぉおおおおぉおおおぉおぉぉおおおおおおおおあああああああああああっっ!!』

雄叫びを上げ、使徒を喰らい尽くした激情のままに叫ぶ初号機。
そして次の瞬間、ありえない光景が展開された。

 がしゃん……がしゃんがしゃん……

「こ、拘束具が……」
地下のレイも、零号機に搭乗しているレイも驚愕した。
突然に甲冑を着ていた中身の騎士が消えてしまったかのように、固定されていた初号機の装甲が崩れ落ちたのだ。

そして、中空に浮かび、残っているもの。
赤くぼんやりと輝く赤い球。使徒の持つ赤いコアと全く同じそれ。
それこそが初号機の持っていたコアそのものであった。


202 :シンジとレイしか居ないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/18(日) 23:52:01 ID:???
「使徒ゼルエルの持つS2機関……それを捕食によって取り込んだ初号機。
 あれこそ、過去に砕かれたアダムのコア。それが復活した今……そして、あの球体こそまさしく……」

そうつぶやく地下のオリジナルのレイ。
だが、零号機のレイはあまりの展開に言葉を失ったままだ。

その球体はゆっくりと降下を始めて地面にほど近いところまで来た時に、すうっと姿を消し始める。
そして、その後に残されたもの。

そこから、ぽてり、と地面に落ちたのは全裸のシンジであった。

オリジナルのレイは考察する。
(行き過ぎたシンクロ値のマイナス、それが巻き起こす現象……エヴァとパイロットの逆転現象。
 碇君は初号機を自らの内に取り込んでしまった、という訳か……成る程。)

そして、彼女は零号機に向かって指示を下した。
「機体の外に出て、碇君を回収。そして速やかに地下に帰投。
 大丈夫、ジェットアローンの崩壊による炉心融解やメルトダウンのような事象は起こっていない。」


203 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/18(日) 23:53:02 ID:???
とりあえず、ここまでですー

204 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/19(月) 03:12:34 ID:???
奇想天外な展開だな!乙!

205 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/19(月) 19:34:45 ID:???
これは!
スゲー!
GJとしか言いようがない!!

206 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/19(月) 20:30:56 ID:???
おつ

207 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/19(月) 21:34:51 ID:???
初号機が喰われた;

208 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/20(火) 19:29:45 ID:???
ワクワク

209 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/22(木) 07:19:38 ID:???
まだ〜?

210 :シンジとレイだけしか居ない?エヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/22(木) 21:55:54 ID:???
【pilot-shinji……不確定要素……解析不能……制御不可能……怖い……恐ろしい……】

後に残された機体「バルタザール」のモニタには、そんな言葉がループされるばかり。
軍の技術者が駆けつけた時には、もはやバルタザールは「廃人」と化していた。
可哀想に、もう使い物にならないだろう。
最新型の人格移植OSであるスーパーコンピュータMAGI。
それを技術の向上により丸ごと搭載したジェットアローン。
例え人類が滅んでも自らの意思で稼働し続ける、これぞ日本が産んだ究極兵器。
しかし、常識外れの戦いを目の当たりにした「彼」は、とてつもない「精神的な」ダメージを受け、
これをもって使徒殲滅の舞台から退場することとなる。

その代わりとして、エヴァに全てすがりつこうという訳なのか。
レイの元に政府の関係者が訪れ、これまでのことを水に流して援助を受けてくれと頭を下げた。
レイはどうしようかと悩んだが、しかしシンジを守るために現状の地下基地では心許ない。
ここは遠慮無く、下心がありそうな政府の差し伸べた手を受け入れることにした。

レイの注文通りに超絶的な人海戦術が展開されて、あっというまに地下の基地が修復される。
本当にレイは遠慮していなかった。修復に使われる資材よりも人件費が数倍かかっただろう。
流石に政府は悲鳴を上げたが、レイは「今すぐに使徒が来たらどうする?」の一言でねじ伏せる。
ものの三日ほどで、基地は完全な形に戻された。あの六畳一間も大浴場も。
只一つレイが不満を感じたのは、ノスタルジックな家具やテレビが最新型に変わってしまったこと。
彼女にはかなり思い入れがあったのだろう。


211 :シンジとレイだけしか居ない?エヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/22(木) 21:57:05 ID:???
そして、シンジや他のコピー達は?
それは勿論、基地の修繕作業中は注意深く隠されていた。
人体の完全なコピーを作ることは倫理上の問題が多すぎる故に、
あんなクローン集団を世間の目に晒す訳にもいかなかったからだ。

あれ以来、シンジは寝込みっぱなしである。
その彼をせっせと付きっきりで看病するコピー達。ていうか、それ意外にやることなど何もなかったのだが。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

基地の修復が終わり、塗料もやっと乾いてレイ達は業務再開。
後に残された零号機ただ一機の整備に取りかかる。
しかし、本当に「今すぐに使徒がやってくる可能性」を無視することが出来ない現状、
切り飛ばされた左腕を手間暇かけて修理することは出来なかった。
そんな大がかりなことをしている間に使徒が来て、動かしたくても動かすことが出来ない情況になっては困るからだ。

そんな忙しい日々が幾らか続いた、ある時。
オリジナルのレイは作業の合間を見て、いつもの「シンジ詣で」に向かう。
作業の忙しさに甘えて、コピー達に看病を任せっきりだったのだが……

シンジが寝ているはずの六畳間を見て、慌ててコピー達に問いかける。彼の姿が無いのだ。
「碇君は?」


212 :シンジとレイだけしか居ない?エヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/22(木) 21:58:10 ID:???
だが、看病に当たっていた数名の彼女達は無言で首を横に振る。
恐らくシンジが勝手に出歩くのを、彼の望むがままに無言で見送ったのだろう。
コピー達の無感動、無表情さ、そして過度の従順さに、今更ながらに腹を立ててオリジナルのレイは叱責した。
「なっ……知らないでは済まされないんだ!早く探せ!」

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その頃、シンジは地上に出てフラフラとさまよい歩いていた。

完全に体調が戻っていないらしい。時折、呻き声を上げながら地面にへたり込む。
「う……うう……う……」
なんというか、まるで二日酔いで気分が優れないサラリーマンのようだ。
それも仕方がない。暴走する初号機という強烈なものを飲み込んでしまったのだから。

もはや、まともな思考も出来ない状態であるらしい。
セカンドインパクトの影響により、秋と冬を失った日本。
その真夏の太陽に照らされながら、シンジは虚ろな目つきで徘徊し続けていた。
そして何度目の嘔吐だろうか。地面にうつむいて呻いていたその時。

「ここに居たの?ずいぶん、探したわよ。」
後ろから声がする。
振り返れば、レイが立っていた。いつもと変わらぬ制服姿で蒼い髪、紅い目の彼女がそこに居た。


213 :シンジとレイだけしか居ない?エヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/22(木) 21:59:20 ID:???
「う……ああ……」
「大丈夫?早く帰って休まないと。」
「あ、ありがとう……綾波……」

女の力は偉大である。彼女の声を聞いて気持ちが和らいだのだろうか。
レイの一言で意識も正気もおぼろげながら取り戻しつつあるようだ。

「さ、立てる?」
「う、うん……」

そうして、どうにかシンジは立ち上がり、地下への出入り口を目指して歩き出した。
その出入り口はそれほど判りにくいものではなく、瓦礫と化した街であるからこそ遠目からでも判りやすい状態にあった。
まだまだ意識が完全ではないシンジでも迷子になる心配はないようだ。

だが、そんな普通ではない状態のシンジを導こうとはせず、何故か少し後ろから着いていく。
どうにも暗くジットリとした目で彼を見守りながら。

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そして地下にエレベーターが到着し、シンジが先頭に立って外に出た瞬間。
コピー達により両脇からガシッと掴まれて、大急ぎでその場から引き離されてしまった。
「な……ちょ、ちょっと……」


214 :シンジとレイだけしか居ない?エヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/22(木) 22:01:24 ID:???
シンジは驚いて出迎えたコピー集団の先頭に立つレイを見た。
その相手、よく見れば耳にオリジナルを示すピアスが光っている。

シンジは慌ただしく後ろに着いてきたレイと出迎えたレイを見比べた。
てっきり自分を外へ探しに来たレイがオリジナルだと思いこんでいたのだ。
「あ、あれ?君は……」
「ようやく気が付いたの?ヴァーカ!」

後ろから来たレイもエレベーターから下りて、オリジナルに付き従っているコピー達を見渡した。
「アンタ……ずいぶんと、えげつないことやってんのねェ。
 おでこに数字?しかもそれ、マジックで書いてんの?アタシの方が全然マシじゃないの。」

シンジはようやく頭の回転が戻ってきたのか。その二人のレイを見比べながら問いかけた。
「い、いったい誰なの?その……綾波のコピーの一人?」
「そういうこと。ねぇ?こいつらと一緒にいて、一人たりないってことの気が付かなかったの?
 そのコピー達の数字をご覧なさいな。3から始まってるはずよ。」
「え?ああ……そ、そういえば……」
「アンタ、なァんにも考えてないのねェ……あんた、バ(ピーッ)?」

しかし、何故かオリジナルは妙なことを言いながら怒り出す。
「……止めろ。その言い回しだけは止めろ!ここに居られなくなるぞ!」


215 :シンジとレイだけしか居ない?エヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/22(木) 22:02:29 ID:???
そんなオリジナルの憤慨を無視して、新参のレイはシンジに向かって胸元をグイッと開いた。
見れば、その胸の中心には「02」という刻印が付けられている。

「弐人目の綾波レイって訳よ……よくもまぁこのアタシを量産型みたいな扱いをしてくれたわねぇ、オリジナルさん?」
「だから、その言い回しは止めろと言っている!」

そんな二人を呆然と見守るシンジ。
「綾波……君が何を言ってるのか判らないんだけど……」


216 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/22(木) 22:04:21 ID:???
とりあえず、ここまでですー

217 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 04:22:18 ID:???
乙です。
最初のころから読ませていただいてますが、最近レイがレイの姿をした別物のように
感じています。今回でてきたレイ02がアスカのようなしゃべりになっているのも残念です。
レイだけではキャラとして動かし辛いかも知れませんが、レイだけしか出ないというss
でしたので残念です。

218 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/23(金) 06:28:16 ID:???
>>217
嗚呼、やっぱりダメでしたか。それでは投下はここまでにします。
スレ条件うんぬんではなく、自分で条件を付けておきながら、
自分でそれを破ってしまっては、やはりダメですね。

ていうか、もう3回目あたりから出来心で、
このオチに向けて進めてしまったので、もはや修正不可能です。
大変、失礼しました。


219 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 10:44:52 ID:???
>>217
>レイ02がアスカのようなしゃべり
何かの伏線だと思っていたんだが…

>>218
別にいいじゃないか
ここまで来て止めちゃうだなんてあまりにもがっかりだ 、以前の作品も楽しみに読んでたんだぜ
>>17のアップローダーにでもいいから投下しとくれ


220 :217:2007/11/23(金) 20:01:25 ID:???
ただ残念に感じただけですので、投下を中止することはないと思います。
あと、どのような落ちになるかも気になりますし、最後にLRSになれば問題
ないと思います。


221 :217:2007/11/23(金) 20:03:53 ID:???
あと以前の作品も読んでいたので、それも楽しみにしてます。


222 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:20:14 ID:???
いや、お恥ずかしい限りで、アスカ人格は伏線などという大したモノではなく、
シンジとレイ、二人だけという条件を逸脱したジョークの一つだったのですが、
大して面白くなかったようです。いや、お恥ずかしい。

重ねて申し上げると、実は言うと初めから(というか3回目あたりから)条件から外れる気マンマンで、
それは面白いとか面白くないとかは別にして、実にモラルに反する行為でした。
それでも思い切って進めてみて、もし良い評価が得られなかったら即座に中止するつもりでした。
と、いう理由からの投下中止の宣言でした。ご免なさい。

しかし、ここで投げるのも無責任。
>>217様に重ねてレスを頂いたこともあり、それに甘えて続けて見ようと思います。

しかし、もはや二人だけとは言えない有様ですが……

223 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:23:05 ID:???
新参のレイは、ゆっくりと歩きながらオリジナルのレイに近づいていく。
胸元に「02」と刻印された「弐人目」、もとい「二人目」のレイは、ニヤニヤと笑みを浮かべながら言う。
「ほー?アンタ、ずいぶんと怖い顔するようになったじゃない?
 あのボソボソッとしか喋らないネクラなアンタが。あの碇シンジを守るために、それだけ必死な訳かしら?」

オリジナルのレイは問いただす。
「これまで、どこをほっつき歩いていたかと思えば……それで?私に復讐しに来たのか。
 自分のアイデンティティを確立するため?」
「ま、そんなところね。カレシの目の前でアンタを八つ裂きにするのも面白いかなァって。」
そう言いながら「二人目」はカチカチとカッターナイフの刃を伸ばす。

「だから、その表現は……まあいい。」
そう言って、パキンとオリジナルが指を鳴らすと、コピー達は4人掛かりでシンジを担ぎ上げて、その場から駆け出した。
「ちょ、ちょっと!降ろしてよ!綾波!?綾波ッ!!」

シンジは叫ぶが、コピー達は今度ばかりはそれに逆らい、安全な場所へ待避するために走り続ける。
そしてオリジナルは無言で別のコピーから俗に言う「バールのようなもの」を受け取りながら「二人目」を睨む。
「私を倒すのは簡単ではないぞ?」

だが、「二人目」は余裕の表情でカッターナイフをプラプラさせながらニヤリと笑う。
「さて、どうかしら……シュッ!」
と、身を転じて凄まじい鋭さでオリジナルに襲いかかる!


224 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:25:11 ID:???
「クッ……!」
どうにか紙一重で鋭い刃先をかわしたオリジナル。だが、シュパッと着ていた制服が切り裂かれる。
しかし、負けてはいられない。バールを「二人目」に向けて振り回すが、しかし相手もさる者。
まともに受け止めようとはせずスルスルとかわし切る。余裕の笑みを浮かべながら。
だが、攻勢に転じたオリジナルのバールの間合いには、容易には近づけない。
しかし。

「せいっ!!」
あり得ない方向から蹴りを繰り出す「二人目」。まるでカポエラのような器用な足技がオリジナルを襲う。

  バキッ……

流石のオリジナルも一撃を喰らってよろめいた。
「や、やるな……しかし!」
すぐさま、身を立て直してバールを繰り出すが、
だが「二人目」は軽やかな体術で真後ろに飛び跳ね、間合いから逃れてしまう。

だが、そうと見てオリジナルがカチャリと取り出した物。それは黒光りする拳銃だった。
「なッ!?」
驚く「二人目」だが、オリジナルは遠慮はしない。容赦なく引き金を引こうとしたのだが……

「させないっ!」


225 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:26:31 ID:???
そう言ったが早いか、「二人目」のカッターナイフが銃を持っていた手を切りつけた。
思わず銃を取り落とすオリジナル。
(馬鹿な、この間合いで?)

そして気付く。「二人目」の本性を。
「貴様、使徒だな……バルディエル?」

それを聞いた「二人目」、もとい、レイに取り憑いた「バルディエル」はヘラヘラと笑った。
「あらァ?ばれちゃったのね。察しの良いこと。」
もう隠す必要もないと言うように、保っていた自らの身体を一気に崩し始める。
なんと両腕、両脚がニュルニュルとタコのそれのように伸び始めたではないか。
つまり、その自在に伸びる身体を繰り出して相手の攻撃を封じたのだ。

オリジナルのレイは思わず眉をしかめた。
「気色の悪い……海賊王にでもなる気?」
「なに、よく判らないネタを言ってんのよ。」
「つまり、不用意に作った最初のクローン体にこれ幸いと取り付いたと言う訳か。」
「そーいうこと。知っていたからね……あんたの身体なら使徒のレーダーに引っかからないことを。
 ねぇ、使徒リリスちゃん?」

ここでオリジナルは疑問に思い、尋ねる。
「ならば何故、地上で碇シンジに出会ったときに手を出さなかったのか。」


226 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:27:34 ID:???
「冗談じゃないわよ。あの使徒アダムを本気で相手できると思う?」
バルディエルたる「二人目」は、フラフラと漂うように手足を伸ばしながら答える。

「この前、ゼルエル相手に目覚めちゃったし。取りあえず、アンタの息の根を止めておこうと思ってね。
 こうしてタイマン勝負をしたがると思ってたわ。アンタを殺して、アンタに成りすまして隙をうかがう。」
「成る程……良い作戦だが言ったはず。私を倒すのは簡単ではない、と……」
そう言いながら、オリジナルのレイはチラリを後ろを向いて目測する。
零号機までの順路と、その距離を。

そして、身を翻してダッシュを開始。
むろん、バルディエルはそれを追いかける。
「させないわよ!」
そう言いながら壁や天井に飛びついてカサカサと駆け回る。
その姿、もはや人間では無い。まるで獣や虫か何かのようだ。
その勢いでオリジナルのレイに追いつくのも時間の問題か?と思いきや。

「ふんっ!!」
オリジナルは気合い一発、どんっ!!という凄まじい力の放出とともに、目の前の壁を破壊した!

  ズドドドーンッッ!!
  
せっかく直したばかりの壁に巨大な穴が開かれ、オリジナルはそこから大きく跳躍して広い空間へと踊り出す。


227 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:28:38 ID:???
そこは巨大なエヴァの倉庫。そして零号機は目前である。
オリジナルのレイも、バルディエルに呼応するかのように人間離れした能力を見せ始めていた。
その広大な空間へと一気に跳躍して、ヒラリと零号機の足下へと降り立つ。

しかし、「二人目」の足の方が一枚上手だった。
「はい、ご愁傷様。」
そう言ってバルディエルもまた蚤のような跳躍力で、オリジナルと零号機の間に着地する。
「このでくの坊に乗り込まれては堪らないからね。覚悟を決めて、アタシと勝負なさい!」

そう言うバルディエルに対して、オリジナルが何かを言おうとした、その時。
「……綾波!……綾波っ!!」
後ろの遙かに高い所から声がする。
シンジだ。コピー達の制止を振り切って、追いついて来たのだ。
倉庫の高い壁の足場に出てきたシンジは手すりから身を乗り出して叫んでいる。

オリジナルはチラリと振り返って見上げた。
が、次の瞬間。目を閉じてバッ!と手を広げて念を凝らす。

「ああッ!!」
目の前に展開された事象に、シンジは思わず声を上げた。
オリジナルのレイから輝かしい閃光が放たれ、それが消えたその場には、
巨大な球状のドームのようなものが発生し、完全にそこに居た彼女達を包み込んでしまったのだ。


228 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:29:44 ID:???
そして、そのドームの中。

「結界?やるわね。でも、どういう意味があるのかしら。
 アタシの増援の可能性?このアタシを逃がさないため?碇シンジの介入を止めるため?」
バルディエルはプラプラとカッターナイフをぶらつかせながら、そう言った。

オリジナルは、そんなバルディエルを睨み付ける。
そして彼女の身体の周囲にも又、もう一つの球体が現れ始める。
それこそ正しく、ATフィールドの輝き。

「言ったはず。私を倒すのは簡単ではないと……このガード、破ってみるか?」
「そんなこと造作もないわよ。アンタこそ、そんな防壁だけでどうやってアタシを倒すのかしら。」
「心配は要らない。ちゃんと決め手は用意してある。」
「あらそ?それは楽しみだけど、もはや見ることは無さそうね。」

バルディエルは改めてカッターナイフを構え直す。
そして、なんとそのナイフが光を放ち、みるみると形を変え始めたではないか。

驚くオリジナル。
「それは、ロンギヌスの……!?」
「そうよ!アンタが放り投げたこれを拝借させて貰ったわ。」


229 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:30:48 ID:???
ナイフはグングンとその形を変じて、毒々しい悪魔の槍へと変化する!
「これが突破できないものが何もないことぐらい、アンタが一番よく知ってるはずよ!
 アンタの防壁がどれほど硬かろうとね!」
そして、『槍』を構え直して、一気にオリジナルに向かって突進する。

   ズカァァァァァッ!!!

オリジナルのATフィールド、それを一気に突破して彼女の腹部を真っ直ぐに貫いた!

見事に命中、と言うべきだったが……
しかし、バルディエルは顔を歪める。
「ワザと受け止めた!?バカな……」

バルディエルが驚いている隙に、オリジナルはグイグイと『槍』を自らの手で食い込ませ、
そして相手の身体を両腕で捉える。
「捕まえた。」
「クッ……なんのつもり?!」
「馬鹿はあなた。ここを刺したって私は死なない。
 それに結界の意味を尋ねていたが、それは……」

その時だった。
               ガシッ!!


230 :もうシンジとレイだけとは言えないエヴァ  ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:32:51 ID:???
「ああっ……馬鹿な!なぜ、このでくの坊が……」
実は、零号機は結界の中に居た。
それが動き出して「オリジナル」と「バルディエル」の身体をまとめて握りしめたのだ。

「ちょッと!……アンタが乗ってないのに動くわけ……」
「私がこれに乗って動かしたことなど一度も無い。もっと私達をよく観察すべきだったな。
 私は、あなたを生み出したオリジナルではない。多分、私はあなたの次に作られた三人目。」
「アンタ……アンタは……」

ワナワナと震える「バルディエル」。
それを見た、これまで「オリジナル」を名乗っていた「三人目」のレイ。
今度は彼女がニヤリと笑う。
「結界の意味。それは、碇シンジにこの戦いを見せないため。
 この戦いの末に残るもの。それは私とあなたの肉塊が一つと、零号機に乗ったオリジナルの綾波レイ只一人。
 全てはアダムとリリス、その二人のために。その二人がその他全ての使徒に完全なる勝利を遂げるため。」
「アンタ……タブリスね?この裏切り者め、わざわざ犠牲になってまで我らが父に背くつもりなの?」

「ようやく気付いたか。しかし、この策略はお前を騙すためではない。
 私は初めから消えなければならなかった。貴様同様、殲滅されなければならない運命にあったのだ。
 ならば、初めから居ない方が良い。だからこそ、こうしてリリスと同じ肉体に潜り込んだという訳だ。
 そうでもしなければ、あの碇シンジは私が消えることに納得しないだろうからね。
 これまでの苦労も、ついに華開く時が来たというものだ。さあ、やるのだリリス!我々を消してしまってくれ!」


231 : ◆LRvRIPAn.s :2007/11/24(土) 00:33:55 ID:???
とりあえず、ここまでですー

232 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/25(日) 02:56:39 ID:???
おつ

233 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/25(日) 03:46:49 ID:???
毎度ながら乙。
うひょ、三人目タブリスだったのか。

234 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/28(水) 17:26:30 ID:???
マダ〜?

235 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/29(木) 07:00:04 ID:???
最近来ないな

236 : ◆LRvRIPAn.s :2007/12/02(日) 00:34:47 ID:???
えーと、すみません。
とりあえず最後まで作ったのですが、やっぱり自分の巣穴にぜんぶ置いておくことにしました。
またeonetが規制されちゃってるしw
続きを読みたいという方がおられたらご参照ください。

http://www28.atwiki.jp/ripa_ns/

それでは皆さん、お粗末様でした。


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